シーズン2の各話のあらすじ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 16:56 UTC 版)
「オスマン帝国外伝〜愛と欲望のハレム〜」の記事における「シーズン2の各話のあらすじ」の解説
回話サブタイトル各話のあらすじ25 1愛の代償「アレクサンドラ、君は生きて」と言い残してレオは自ら命を絶った。皇帝スレイマンはサドゥカを投げ飛ばし危機を脱する。大宰相邸の侍女の突然の凶行に責任を追及されたイブラヒムだったが、後から遅れて来たニギャールが密かにレオの死体の始末を付けていた。マトラークチュの手引きでハンガリーと連絡を取っていたとのサドゥカの自白をスレイマンは立ち聞きする。アイシェ殺害もサドゥカの犯行と判明する。イブラヒムはアイシェの件で一度ヒュッレムを追放処分にしていた。ヒュッレムは喪失に我を失う。ニギャールを詰問するが一部は隠蔽しながら一部は事実を語り、どの妃どの臣官に対しても最後の一手の決定的な処分は手の及ぶ限り避け続ける態度に苛立ちを募らせる。「私のお妃はあなただけ」と懇願するが、ヒュッレムはニギャールを見限る。スレイマンに疑われたイブラヒムは焦燥で怒鳴り散らす様子が目立つ。ヒュッレムはスレイマンから贈られた見事な黒いアラブ馬に「愛(アシュク)」と名付ける。快復したギュルシャーはマヒデブランに懇願して許される。一方、捕虜となっていたフランソワ1世をカール5世が解放したとの報告がなされる。 2ラヨシュへの報復ヒュッレム付き側女ナズルを連れて母后たちと昼食を取るヒュッレムは馬を贈られた話をする。御前会議ではスレイマンが報復のためハンガリー侵攻を決する。1526年5月イブラヒムの率いる先陣はプロヴディフ(現在のブルガリア)で断食月(夜明けから日没まで水一滴も飲まずに新月から新月への一ヶ月を過ごすイスラム教の慣習、ただし戦争中の男子や妊婦や子供は免除される)を終えようとしていた。家族と過ごす神聖な断食月を優先させたスレイマンは、後から陣に発ちやすいよう帝国領のうち戦地にいちばん近い北方のエディルネ宮に妃たちと来ていた。最後の日没後の食事(イフタール)は断食を無事に終えた感謝を込めて盛大に祝われる。不興を買ったマトラークチュはイブラヒムの日没後の食事に呼ばれない。エディルネ宮の宦官ギュル(薔薇の意)は、(妊婦のため除外なのだが)ヒュッレムの好物のウズラのピラフを特別に用意する。ヒュッレムはレオを殺したデザートのロクムを見て産気づく。四度目にして初めてスレイマンがそばに控えてくれる出産。第四皇子は祖父帝に倣ってバヤジト皇子と名付けられた。ベネチア庶子グリッティはバチカン法王に呼び出され、オスマン帝国が有利となるでしょうと進言する。焦ったバチカンはラヨシュ2世へ軍資金を送る決定をする。ギュル宦官の手腕が気に入ったヒュッレムは帝都トプカプ宮へギュルを連れ帰ることを願い出る。ハティジェは懐妊していた。イブラヒムを思うニギャールは懐妊をヒュッレムの耳に入れ、それとなくヒュッレムを焚き付けるが、忠誠心を疑うヒュッレムは「一度裏切れば何度でもやる」と耳を貸さない。 26 3疑われた忠誠心軍司令官マルコチョール・バリ・ベイ(S1-9と10登場のバリ・ベイ一族の者)は狙撃されたスレイマンを庇いながら勇猛果敢に刺客を殲滅する。金属の甲冑の左胸に穿孔が残り、スレイマンは死は突然間近に来るものとの教訓を刻み込んだ。ヒュッレムと不仲になったことを知られたニギャールはマヒデブランに目を留められる。ギュルシャーはヒュッレムの子守エスマに事情を聞き込む。マルコチョールは捉えた刺客からラヨシュの司令部の場所と兵士の数を聞き出した。スレイマンは決戦地をトルナ城に近いモハーチ平原として、行く手を塞ぐ川に橋を架けるよう命じる。無事に赤子を出産することに不安を抱くハティジェにヒュッレムは占星術師ヤクップを呼ぶよう持ち掛ける。スレイマンはイブラヒムに奇襲の責任があるものと叱責する。ヒュッレムはハティジェにも内密にギュルに命じてヤクップと接触する。 4モハーチの戦いニギャールを失ったヒュッレムは、エスマとナズルに加え新しく身辺に置く側女として後宮に来たばかりのニリュフェル(蓮花の意)を、スンビュルにもギュルにも助けを借りず自ら選んだ。母后は犠牲祭(イスラム教の祝日の1つで神に生贄として捧げた羊やヤギなどの家畜を肉として後ほど貧民に配布するお祭り)の準備を進め、祭典の儀式を皇帝代理としてムスタファ皇子に務めさせた。知っていればメフメト皇子を始めとして他皇子たちを連れて行けたのに、と自分の陣営側の手薄さを痛感するヒュッレム。しかも懐妊を黙っているハティジェの姿勢を知らず、ヒュッレムはスレイマンに私信で伝えてしまっており秘密にしていたイブラヒムにも懐妊が伝わってしまっていた。「勝手なことをするな。私はオスマン帝国のハティジェ皇女。奴隷のお前とは違う。イブラヒムが浮気をしたら離婚して破滅させる」と息巻くハティジェ。モハーチではトランシルヴァニア領主サポヤイが援軍を送らなかったため、イブラヒムの軍略が成功を修めて開戦から2時間程度でハンガリー国王軍2万を沈める。 27 5皇妃と皇女キリスト教世界の玄関口にたどり着いたスレイマンは、援軍を送らなかったサポヤイを好都合な傀儡としてハンガリー新国王に据える。イブラヒムは戦略が成功した褒美にハンガリーで惚れこんだギリシャ神話の彫像を帝都イスタンブルに持ち帰る許可をもらう。ヒュッレムは激昂したハティジェの言葉を忘れられず、娘ミフリマーフ皇女に「いつか私より強くなる。誰も命令できず誰もがひれ伏す」と言い聞かせる。スレイマンは反乱防止のためべフラム宰相をアナトリア軍政官としてへ派遣する。化膿した胸の軽傷が痛んだため従軍医師ヤセフに治療を命じる。ニギャールはイブラヒムにヒュッレムに見限られた窮状を訴えるが冷たく応対される。一方、地中海では海賊がスペイン船を捉え、カスティーリャ王女イザベラが捕虜となり、オスマン帝都にいるグリッティの知るところとなっていた。 6囚われの王女イザベラ王女はハプスブルグ家(神聖ローマ帝国皇帝カール5世の家柄)のオーストリア大公フェルディナントの従弟フリードリヒの婚約者で、国家紛争の火種となりかねない。グリッティはイザベラを言い値で買うと交渉を持ちかけたが、海賊は帝国のトプカプ宮殿に売るという。目下、地中海に名を馳せているバルバロス(赤ひげ)傘下だけに抜け目がない。グリッティはイブラヒムに相談するが、イブラヒムは秘密裏にイザベラを買い受けて匿ってしまう。グリッティは祖国ベネチアにも使いを出す。懐妊中のハティジェが心配でたまらない母后はダイェの助言を受けてニギャールをハティジェ付き女官にする。イスラムの長老ゼンビリが死亡したため新たに軍法官イブニ・ケマリを任じる。ヒュッレムは占星術師ヤクップに誰にも原因も治療法も分からない、ゆっくりと死に至らしめる毒の手配を依頼する。 28 7イブラヒム邸の彫像ヤクップは対象者が片時も手離さない物を持ってくるようヒュッレムに言う。スレイマンはイブラヒムから報告を受け、狩りの館に幽閉されたイザベラを訪問する。王女の世話は後宮からスンビュルだけがたまの外出を許され内密にされていた。ハンガリー遠征から持ち帰ったギリシャ神話の彫像が大宰相邸に到着する。唯一神を信望するイスラム教にとって神ならざる偶像を崇拝すること、また完全な裸の形態を人の目に触れる状態で庭に置くことは卑猥物陳列の禁忌(ハラム)であり、庭を見下ろすバルコニーから勤め始めたばかりのニギャールもハティジェと共に仰天する。ハティジェは神罰を恐れ不吉だと言う。マヒデブランはムスタファ皇子の教育を褒められスレイマンから特別予算を贈られる。マトラークチュとマルコチョールは連れ立って酒場に出かける。マルコチョールは街角で男に襲われていた娘を救助して一目惚れする。大宰相邸を訪れたヒュッレムはイブラヒムの筆記帳に目を留める。 8死の呪い帝都ではイブラヒムの彫像が物議を醸していた。詩人フィガーニーの「世界にイブラヒムは2人いる。偶像を破壊する者と建てる者」を始めとして噂が流れている(もう一人のイブラヒムとはユダヤ教、キリスト教、イスラム教で共通の始祖とされる預言者アブラハムのこと)。マヒデブランの予算を聞いたヒュッレムは母后に彫像の件を告げ口する。イブラヒムとの結婚の経緯や生まれながらのイスラム教徒でないことに加え、大宰相邸内の欧風調の食卓や絵画に抵抗感のある母后は、これに眉をひそめスレイマンに彫像の破壊を迫るが拒否される。マルコチョールが惚れた町娘がマトラークチュなじみの両替商ジョシュアの娘アルミンであることがわかる。イザベラは共に拘束された侍女カルミナと失意の日々を過ごすが、スレイマンから欧州風テーブルを贈られ心を和らげる。ヒュッレムに忠義心を見込まれたニリュフェルは大宰相邸からイブラヒムの筆記帳を持ち出す。ヤクップから呪いがこめられた筆記帳は直接手に触れてはいけない制約付きだったが、口実を付けてうまく大宰相邸に戻した。イザベラはさらに散歩と乗馬の希望を願い出てこれも許されるが逃亡を謀る。ハティジェは産気づくが、生まれた赤子は息をしていなかった。 29 9慢心の芽ハティジェの絶叫に同情したヒュッレムは機転を利かせて赤子を救う。確執があるイブラヒムからも礼を言われるが、イブラヒムはヒュッレム・ハートゥン(夫人)と呼び、ヒュッレム・スルタン(皇帝妃)とは呼ばない態度は変えない。ヒュッレムは「もう1つ無垢な命の貸しがある」とレオを思い出させる。呵責に耐えかね庭に出てヘラクレス、アポロン、ダイアナの彫像を眺めながら「帝都の海を抱く7つの丘、3つの国で、臣民はいつか我が彫像の前にひざまずく」と思わず独り言をしたところを皇帝スレイマンに目撃される。「ヘラクレスの父親は神々の王ゼウス。アポロンはディアナと双子。ではお前は?」とイブラヒム自身も双子であることを暗喩しながらスレイマンは問う。ハティジェの出産で大宰相邸を訪れた母后は彫像から目をそむけながら、苦難の出産は彫像の呪いだと呟く。そばにいたマヒデブランはムスタファ皇子の後見役であるイブラヒムの絶対の信望者らしく母后をなだめる。グリッティとマルコチョールは酒場で偶然の鉢合わせをする。ギュルは後宮を抜け出して怪しい行動を取っているスンビュルの行動を疑う。第二宰相アヤスからアナトリアの反乱が広まっていると報告を受けたイブラヒムはベフラムを罷免し、そのままアヤスに平定するよう命じる。町娘アルミンの家を突き止めたマルコチョールは押しかける。その頃、水の都ベネチア近辺の海上にフリードリヒの姿があった。 10侵入者思いが募るニギャールはイブラヒムの風呂をのぞき見る。イブラヒムはアヤスに命じたことをスレイマンに報告するが、産褥中ハティジェが心配で一人で残したくなかった心を見透かされるように、お前自身が行けと言われてしまう。スンビュルの痕跡を追ったギュルは狩りの館に辿りつき、美しく高貴な佇まいの女人であるイザベラを目撃する。グリッティはイブラヒムにイザベラの件で使節が来たと報告するが取り合われない。やむなく伝書鳩を使って王女に直接連絡を取る。ギュルから報告を受けたヒュッレムは狩りの館に女人がいてイブラヒムがたびたび訪問しているとハティジェに伝える。困惑に陥ったハティジェはニギャールを怒鳴りつけ、イブラヒムに「お前の職務は我が家族への奉仕。私こそ至高の帝国。私を失うときお前は高官の地位も失う」と言い放つ。喧嘩を立ち聞きするニギャール。ムスタファ皇子は癇癪を起こし、スレイマンから激を飛ばされる。焦りを抱えるフリードリヒは自ら極秘でグリッティに会い、金貨でも通商協定でも何でも与えるから王女を解放するよう伝えよ、とグリッティに命じるがグリッティも無力さを感じている。母后はアナトリア平定にイブラヒム以外の高官を遣るようスレイマンに願い出るが許可されない。落胆した母后は「そなたの顔は一方には明るい光、他方には冷たく濃い影。激高したときは自分が育てた子にも思えぬ。不気味で恐ろしい。父帝セリムを思い出させる。行く末が恐ろしい」と言ってしまう。大宰相邸では侍女を介して筆記帳の皮に丹念に仕込まれた経皮毒が赤子の肌に触れ、一瞬で紫に変色していた。 30 11招かれざる客ハティジェに讒言を吹き込んだとしてイブラヒムはやり返す。狩りの館では思い詰めてイザベラ奪還を果たそうとしたフリードリヒが拘束されていた。ハティジェの子は野生梨を煮出した湯での沐浴で一命を取りとめる(実は経皮毒であるため)。狩りの館に囲った女人は皇帝陛下のとても大切な客人と聞かされたヒュッレムはハティジェに尋ねるが意地の悪い回答をされる。本性を現し始めたイブラヒムは神聖ローマ帝国の血筋(皇帝カール5世の従弟)であるフリードリヒにも尋問中に行き過ぎた暴行をふるう。愛人を疑うヒュッレムはスンビュルを詰問するが口を割らないことからスレイマン直々の命令と察しを付ける。イブラヒムに留守中を任されたニギャールは笑顔を見せてハティジェと赤子を守ることを約束する。 12疑心アナトリアの反乱は3万の規模に拡大していた。イスラム教の一派の長でトルクメン(現在のイランの北東部)人でありカリスマ性の高い人物が率いているからだった。べフラムの他にカラマンとアレッポ(現在のシリア北部)の軍政官も参戦したが敵わなかったとのことで尊師と呼ばれ大変に慕われている様子。勢力は熱心なイスラム教信者のみで構成されている。更にかつて皇帝家の婿フェルハト宰相が赴任して搾取の限りを尽くしたこともあり同じ皇帝家の婿かつ改宗者でもあるイブラヒムに不信感を抱いている。対するイブラヒムは強制徴用(デブシルメ)でイスラム教に改宗した奴隷兵士で構成される歩兵常備軍(イェニチェリ)五千で多勢に無勢。その上いずれにしてもイスラム同胞同士の戦いとなるので血を流すのは最小限にしなければならない。イブラヒムは対抗勢力を内部から崩そうと部族ごとに話を持ち掛けてまわる。マルコチョールはアルミンの父の両替商の店でアルミンへの贈り物を購入し、アルミンが贈り物を身に付けたところを父に見られるよう策をこらす。贈り物を見た父は激怒し、アルミンを家から出さないと言う。我慢が効かなくなったヒュッレムは密かに狩りの館に足を運び、スレイマンとイザベラの様子を観察する。 31 13燃え上がる炎アルミンが待ち合わせに来なかったためマトラークチュが内密で両替商を訪ね、マルコチョールの身分はスメデレボ軍政官バリ・ベイの息子で将来を約束された高官だと明かす(なお史実では第8代皇帝バヤジト2世の娘ヒューマ皇女との子で、ヒューマ皇女は第10代皇帝スレイマン1世の叔母であることから従弟にあたる)。イスラム教では利息を取る高利貸しは禁忌(ハラム)であるためユダヤ教の者が営むのだがアルミンの家もユダヤ教だった(イスラム教はキリスト、ユダヤ、イスラムのいずれかの信仰者であれば結婚可能だが、ユダヤ教は異教徒との結婚を禁じている)。イザベラの美しさを目の当たりにしたヒュッレムはスンビュルを再度尋問してカスティーリャ王女であると突き止める。イザベラのほうでは囚われた婚約者を案ずるあまり自棄になっていた。狩りの館に火を放ち自殺を謀る。スレイマンは王女を大宰相邸に送り欧州には火事で死んだと連絡が行くよう指示する。反乱勢力の縮小化に成功したイブラヒムは3日以内にペルシャ方面に立ち去るよう尊師に求めるが、命だけは許すという言葉に宗教的な傲慢さを感じ取った尊師は最後まで抵抗する。内情を知るハティジェはわざとヒュッレムとイザベラが遭遇するよう手配する。 14皇帝の計略ハティジェさえついに共謀に加わったとヒュッレムはミフリマーフにこぼす。なりふり構わなくなったヒュッレムはニギャールに大宰相邸の情報提供を命じる。反乱勢力の各部族長を懐柔で説得してまわり五百勢力まで減らしたイブラヒムは制圧に成功し、帝都イスタンブルに戻る。従弟フリードリヒを投獄されたオーストリア大公フェルディナントはバチカンへ開戦を奏上する。バチカンは大公の兄、神聖ローマ帝国カール5世の支持を取り付けられるのであれば開戦理由になるが、重ねてルターのプロテスタント派であるハンガリーの傀儡王サポヤイが変わらない限り厳しいという。アナトリアから戻ったイブラヒムはギリシャ彫像を不吉として覆いをかけていたハティジェに詰め寄る。目前では初めての喧嘩でニギャールは心中をひた隠しにする。イブラヒムが無事に戻ったことで母后とスレイマンは和解する。母后はオスマン帝国の皇位継承者の兄弟殺しの慣習を心配していた。アナトリア制圧の褒美にイブラヒムの俸給年額は120万銀貨(アクチェ)から200万銀貨に引き上げられた。慢心したイブラヒムは詩人フィガーニーを告発する。イザベラは修復の済んだ狩りの館に連れ戻されるが、スレイマンは火事で死亡を伝え広めたことと開戦理由にもならなかったことからとうとう王女に手を出す。 32 15危険な一手スンビュルに頼まれて王女の狩りの館への護送を手伝ったニギャールは、スレイマンが王女に口づけしたことをヒュッレムに報告すべきか思案する。いまは帝都にいるマルコチョールがいずれ高官として地方赴任するまで消息不明にするため、アルミンの父の両替商は家に軟禁していた娘を身内の家に移送するために連れ出したところをふいをつかれて娘を奪われてしまう。マルコチョールはマトラークチュの家にアルミンを匿ってくれるよう頼みこむ。ヒュッレムはイブラヒムが隠蔽しているレオの件を探し出すよう命じるが、ニギャールは狩りの館でのスレイマンの振る舞いを、王女がスレイマンに口づけをしたと事実とは逆のあべこべにして伝える。逆上したヒュッレムはイザベラに宣戦布告する。気の強いイザベラはヒュッレムの挑発に乗ってスレイマンが私に興味を持っているのだと言い返す。スレイマンは大宰相邸の夕食会でレオの名を持ち出す。 16王女の告解欧州風の暮らしのイブラヒムを高く評価するイザベラが馴れ馴れしくて不愉快だとハティジェはこぼす。一方でイブラヒムは教会で告解をしたいという王女の頼みを聞いて教会へ連れて行く。スレイマンに口づけされたことから(婚約中のイザベラは婚前交渉、婚外恋愛ともに罪になる)悩みを抱えているのも本当のことではあるが、神父に2人きりの告解室で身分を明かし密かに助けを求める意図を持っていた。またイブラヒムは思いがけず教会で磔の十字架を見かけて己の宗教を鑑み直す。教会の神父はグリッティを呼び出してイザベラの生存を聞く。マトラークチュの家に匿われているアルミンはマルコチョールへの恋心を自覚し始め、結婚するための改宗をも視野に入れ始める。ヒュッレムは散策に出かけた庭園で蛇を見かける。イブラヒムと2人で内密に町へ出たことを知ったハティジェは気持ちに整頓が付かない。イブラヒムが告解へ連れて行ったことを知ったスレイマンは王女を狩りの館に戻し、自ら制作したルビーとエメラルドのネックレスを贈る。アルミンの行方を捜して半狂乱になる両替商はマトラークチュを問いただし、マトラークチュから知ったイブラヒムはマルコチョールを尋問する。製作中だったはずのネックレスが消えたことに気付いたヒュッレムはイザベラの首を飾っているのに気づき不敵な笑みを浮かべる。大宰相邸ではイブラヒムが高熱を出し、ニギャールが甲斐甲斐しく介抱する。ニギャールはヒュッレムがレオの秘密の捜索願いをしてきたと報告をする。 33 17特別な贈り物民間療法を知るニギャールはイブラヒムに吸い玉を施す。親密な行為を見たハティジェはニギャールを宮殿付きに戻す。快復したイブラヒムはマルコチョールに両替商ジョシュアの娘アルミンをいちど父のもとに帰して懐柔するよう命令する。解放されたフリードリヒは神聖ローマ帝国のウィーン宮殿に戻りグリッティと連絡を取る。狩りの館では、神父からの報告を受け生存を知ったグリッティが伝書鳩を使って届けた手紙を侍女カルミナが見つけて喜ぶ。決意を固めたヒュッレムは王女に贈る衣装の製作を早め、庭で見た蛇を贈り物の箱に密かに入れさせる。マヒデブランからカスティーリャ王女の話を聞いた母后はイザベラに興味を持ち、ひとめ見るため宴を開くが狩りの館から断りもなく連れ出したことをスレイマンに知られる。スレイマンとイザベラがテラスに出ている姿を見たヒュッレムはイブラヒムにさえも助けを求める。 18後宮の宣戦布告スレイマンは母后に「私の判断は帝国のため。王女を後宮の駆け引きに使うな」というが、母后は「国の問題が女人への関心や贈り物で解決するはずはない」と言い返す。両替商の家を訪ねたマルコチョールは、一家がすでに家を引き払っていたことを知る。母后とハティジェに再びイザベラと引き合わされた怒り心頭で、ヒュッレムは母后とハティジェとマヒデブランとギュルフェムの集う茶会(サロン)に勢いに任せ参上し、「ご皇孫を4人も産んで差し上げました。私の誇りを踏みにじって面白いですか?私は不敬者ではありません。私の罪は何ですか?母后の御子スレイマン様を愛したことですか?あとどのくらい罰を受ければいいのでしょう」「私は母后さまも皇女さまも敬愛していました。でもお2人は私を愛してはくれなかった。嫌がらせばかりなさった。マヒデブランの肩を持ってばかりでも敬意を払いました。でも無駄でした。いまだに私は邪魔者のようです」と言い放つ。母后は「千年の伝統の後宮では、いかなる女人も皇帝の支配者や絶対的な伴侶にはなれぬ。さもなくば秩序が崩れ、後宮は保てぬ」と言い返すが、ヒュッレムは「このままのご対応を続けるのでしたら、私は自分と皇子たちを守らねばなりません」とついに宣戦布告をする。翌日、母后はスンビュル、ギュル、ニギャールを呼びつけ職務を再確認させ、ヒュッレムからテラス付きの部屋を取り上げる。ヒュッレムは4人の子供と再び側室の個室に戻る。体調を崩していたイブラヒムは再び高熱に浮かされ、スレイマンはハンガリー遠征から連れ帰ったユダヤ人の侍医ヤセフを呼び寄せる。イザベラはヒュッレムが贈り物の箱に仕込んだ蛇に噛まれる。 34 19毒牙スレイマンはイザベラに応急処置をする。ヤセフ師はイブラヒムの容態を見抜いてレスボス島でだけ取れる土を処方し、毒を吸着させ助けた。毒と知ったイブラヒムはヤセフ師に口止めする。母后はヒュッレムから取り上げた部屋をムスタファ皇子に与える。イブラヒムの看病に疲れて授乳したまま寝入ってしまったハティジェは翌朝、冷たくなった我が子を発見する。窒息死させてしまったのだった。ハティジェの絶叫を聞いたニギャールは駆けつけて状況を知り、医女とイブラヒムを呼ぶ。イブラヒムは「私に毒を盛り、息子を殺したのはお前だな」と言うが、ヒュッレムは「自分が命を救った子を殺すわけがない」と言う。血が上ったイブラヒムはレオの日記を持ち出して脅迫する。目を覚ましたハティジェは窒息させてしまったのは自分だと告白する。 20最後の切り札ハティジェは夢と現実の間をさまよいながら、夢でニギャールが赤子を抱いているところを見て「もしやイブラヒムに懸想を抱いているから殺したのか」と、ニギャールを責める。イブラヒムを殺しそこねたヒュッレムは占星術師ヤクップを呼び出して叱責する。イザベラは脱出の手引きを密かに整え、スレイマンに「心に決めたことがあって許可をもらいに教会に行きたい」と頼む。スレイマンは今回はイブラヒムではなくマルコチョールに命じて教会に付き添わせる。イザベラは告解室で神父に扮した男から船の用意があると算段を説明されるが、逃亡後に責任を取らされるマルコチョールの身を案じ、決行を思いとどまる。後宮でニギャールに遭遇したヒュッレムは、レオの日記を真剣に探しているのか、と改めて聞き直す。だがイブラヒムに毒が原因だったと知らされたニギャールは筆記帳に思い当たり、ヒュッレムが復讐に燃えているから気を付けるよう警告する。決心したイブラヒムはレオの日記帳を持ってスレイマンの前に奏上しに来る。 35 21失ったものロシア語の日記を読むようスレイマンに命じられたヒュッレムはなるべく当たり障りのない箇所を選んでのろのろと読み上げる。時間稼ぎをしているうちにハティジェが浴場で自殺未遂を起こした知らせがもたらされる。駆けつけるスレイマンとイブラヒム。日記と取り残されたヒュッレムは皇帝の自室から物を持ち出せして小姓たちの前を通れるはずもなく、テラスから中庭に向かって日記を投げる。自室に戻る途中、ニリュフェルに中庭の日記を回収するよう命じるが、すでに日記は誰かに持ち去られた後だった。血眼になって辺りを探しているニリュフェルを見かけたギュルシャーは問いただすが、ニリュフェルは口を割らない。実は日記はギュルシャーが拾っていたが、ロシア語で書かれているため読めないでいた。ハティジェを案じたスレイマンは母后とエディルネ宮へ行って気晴らしをしてくるよう提案する。ヒュッレムはハティジェのもとに現れたイザベラに国外逃亡の手引きを申し出るが、イザベラは迷う。部下にアルミン捜索をさせていたマルコチョールは両替商の家を訪れ、意外にも家に通された。中には寝台に臥せったアルミンの姿があり、娘は悲しみに沈んで病気になってしまった、マルコチョールが最後の頼みの綱だと言われる。マヒデブランはロシア語のできるニギャールを呼び出し、レオの日記を翻訳させようとするが、ニギャールは側女が後宮に辿りつくまでの日記だと嘘をつく。トランシルヴァニアから大使が派遣されてハンガリーのサポヤイがカトリックの王を望む欧州に煩わされていると訴える。 22死の病神聖ローマ帝王カール5世はオーストリア大公フェルディナントにハンガリー王になるよう密書を送る。マルコチョールの思い人アルミンは黒死病(ペスト)だった。稀代の名医ヤセフ師でも治せないという。余命いくばくもない感染症だがマルコチョールは一晩付き添う。ヒュッレムはイザベラ逃亡の計画をギュルに命じる。イブラヒムはニギャールにレオの日記の探索を命じる。翌日マヒデブランの部屋に忍び込み、日記を発見したニギャールはイブラヒムにもヒュッレムにも献上せず庭に埋めてしまう。イブラヒムにはマヒデブランではなくヒュッレムの部屋を探索したと嘘をつく。夜中ハティジェがエディルネ宮に療養しているのをいいことに、ニギャールはイブラヒムの部屋に忍び込み、上掛けをかけ直す振りをしてイブラヒムを誘惑する。一方、トプカプ宮殿にも黒死病患者が出始めていた。ギュルの手引きで小船に乗り沖合に出たイザベラだったが、海上の船で待っていたのはイブラヒムの姿だった。 36 23夢物語イザベラはイブラヒムに連れ戻される馬車の中でかくも強大な至高の帝国の世界皇帝の妃になりたくはないかと示唆される。またイブラヒムは関係を持ったことから、隠ぺいのためニギャールを宮殿付きに戻す。黒死病にかかったアルミンとマルコチョールは残り時間が少ないことを思い、結婚することを決意するが、イスラム法による結婚の翌朝にはアルミンは息を引き取っていた。イブラヒムはイザベラ王女の逃亡にギュルが関与したことを理由に責め、ヒュッレムを探るよう二重間諜(スパイ)を命じる。イブラヒムの言葉をひとり反芻するイザベラはスレイマンに祖国カスティーリャに送還させると言われても浮かない顔をする。ニギャールはイブラヒムに送り返された後宮で泣いてばかりで仕事をしなくなったことを理由に良縁を見つけて追放するよう言われる。ハティジェはエディルネへの転地療法から大宰相邸に戻る。 24奪い合う愛ニギャールはイブラヒムに大宰相邸での仕事から遠ざけられても後宮から追放して結婚を命じるのだけはご勘弁くださいと懇願する。レオの日記を探すギュルシャーはニギャールの部屋で見つかり騒動となる。ハティジェは寝台のそばで女人の持ち物を発見する。イザベラが逃亡に成功したと思い込み、宴を開いていたヒュッレムは母后から叱責を受ける。ダイェはニギャールが何に悩んでいるのか見当がつかずスンビュルに聞くが、スンビュルも理由が分からない。だがダイェは必死にニギャールには失態もないと庇う。ハティジェはニギャールに落とし物を渡して疑惑の目で見つめる。ギュルから相談されたヒュッレムはニギャールを問いただす。イザベラの残留を知ったヒュッレムは再びイザベラを脅すが、勝気なイザベラは逆にヒュッレムに宣戦布告し、後宮に入ることを決意してしまう。 37 25邪視ヒュッレムは母后からイザベラの後宮入りを宣言される。ヒュッレムはスレイマン自身の言質をもとに問いただすが、スレイマンは適切と見なしたとの一言で終わらせる。スレイマンと暮らすと放言し、改宗もしないイザベラに、自分自身、身分の違い、男女の差に悩むニギャールは一笑に付す。身分も宗教も男女の格差の違いも、身の危険さえも超えてニギャールもヒュッレムも愛する人を求めて来たのだった。ニギャールを呼んだヒュッレムは、旧宮殿(エスキサライ)行きを阻止したことを理由にイザベラの排斥に関わるよう命じるが、ニギャールはイザベラの夜伽の準備を遂行する。ミフリマーフに「お母様も王女?」と聞かれたヒュッレムは、母后、マヒデブラン、ダイェの前で皇子や皇女を産んでも奴隷は奴隷のままと答える。「勝つのは私。1人1人、排斥してやる」と言い残す。ニギャールがイザベラを黄金の道へ誘うのを見たヒュッレムは、心配するニギャールに「触るな」と言い放ち、自室でスレイマンの恋文を燃やす。アルミンを失ったマルコチョールはスメデレボ(セルビア)に一時帰郷する。グリッティはサポヤイにはハンガリー王の重責が務まらないと奏上する。ニリュフェルはヒュッレムに命令され、イザベラの馬のあぶみの調整を変え、王女は落馬する。イブラヒムに呼び出されたニギャールは王女の排除を手伝い、ヒュッレムが王女を傷つけた証拠にするよう命じられる。証拠が上がらないよう、黒死病の患者の血を吸った包帯をイザベラの落馬の傷跡に使うよう、ニギャールはヒュッレムに入れ知恵する。 26狙われた王女愛児を失う運命を共にしたとハティジェはギュルフェムに言う。また占星術師ヤクップに会いたいとこぼすハティジェを押しとどめようとするが、ハティジェはヤクップに会いたいとこぼす。故郷に帰ったマルコチョールは幼馴染のサーリハから思いを寄せられるが、マルコチョールは応えることができない。ニギャールは庭でイブラヒムから毒薬を渡される。マトラークチュは「スレイマン帝紀」をしたためていたが、それを知ったイブラヒムは「イブラヒム一代記」も記述するよう命じる。イザベラ排除の決行日、ニリュフェルとギュルの手筈はすでに整っていたが、ニギャールはひとりで筋書きを変え、包帯を燃やす。スンビュルはギュルに命じられた側女フィダンが対策を講じていた。ニギャールの様子を伺っていたギュルはニギャールが包帯を燃やす様子を目撃する。ニギャールはイザベラの食事に毒を盛るが、死んだのは侍女カルミナだった。ギュルから報告を受けたヒュッレムはニギャールがイブラヒムと共謀したと責め、毒はニギャールの独断、カルミラとイザベラはお前の責任で始末しろという。ギュルはニギャールを問い詰める、切り捨てられるのはイブラヒムに付いたとしてもヒュッレムに付いたとしても、ニギャールだったと。それでもお前を守ったのはヒュッレム皇帝妃だったと。イブラヒムに消される可能性はなかったのかと。カルミナが死んでいることに気付いたイザベラは即座にニギャールとギュルに捉えられ、洗濯室に連れていかれる。ニリュフェルはスンビュルの足止めをする。ダイェに見咎められるが、うまく言いのける。 38 27尽きぬ野望ニギャールからイザベラの生存を知らされたヒュッレムは選択室に赴く。翌朝イザベラの機嫌伺いに現れたスレイマンは姿がないことに気付く。スンビュルやイブラヒムに行方を尋ねるが杳として知れない。ギュルシャーから洗濯室が怪しいと知らされたダイェはニギャールとギュルを伴い、洗濯室の扉を開けようとする。イブラヒムに呼び出されたニギャールは毒殺をヒュッレムに責められたと報告する。イブラヒムはお前のせいで台無しになったと叱りつける。母后がその様子を見ていたとは知らずに、ヒュッレムはミフリマーフに「あいつらは私に挑んだ。苛められたお母様は何をしたでしょう。スレイマンとの間に割り込む者は排除する。イザベラは消えた。次はイブラヒム。そのあとは母后さまよ。マヒデブラン、ムスタファ、全員消えたら私たちの王朝、お前と私とお兄様たちの王朝。宮殿の真の支配者は私たちなの」と言う。母后は「お前があの女を増長させた」と皇帝スレイマンに直接抗議するが取り合われない。スレイマンに呼び出されたヒュッレムは身の程を知らしめられながらも愛と慈悲をも際限なく降り注がれる。ヒュッレムは葬式菓子ヘルバを皆に賄う。それを知った母后は決意を固めた。ニリュフェルもエスマも荷物をまとめ大部屋に戻り、ヒュッレム付きの任を解かれる。イザベラの婚約者フリードリヒはハンガリー王サポヤイの王冠を盗み出し、オーストリア大公フェルディナントのもとに献上する。サポヤイはグリッティを大使に選出する。ギュルを呼び出したハティジェはヤクップに会う手筈を命じる。イザベラはベネチア船でウィーン近くの修道院に向かっていた。帝都イスタンブルに戻ったマルコチョールは小姓頭に任じられる。 28近づく嵐ニリュフェルとエスマが任を解かれたことを知ったヒュッレムは母后に子供たちへの嫌がらせだと抗議する。帝都に戻ったマルコチョールはアルミンの墓を訪ね、酒場女のエレニカに通って憂さを晴らす。イブラヒムがアルミンを引き離す真似をしなければアルミンは死ななかったのだった。ギュルシャーはニリュフェルに口論をふっかけるが、2人を見咎めたダイェはヒュッレムから渡されたニリュフェルの短刀を取り上げる。ヒュッレムは愛馬アシュクに餌をやる。その様子を見た母后はダイェに何事かをささやく。ヤクップに会ったハティジェは権力を握れば握るほどイブラヒムの死が近づくと言われる。周りに味方がいないヒュッレムは更に愛馬アシュクを殺されてしまう。嘆き悲しんだヒュッレムは母后のもとにアシュクの命を奪った血塗れた短剣を片手に押しかける。 39 29憎しみの連鎖「同じ宮殿にいるのはもはや無理」とヒュッレムは母后に短剣を渡す。母后はなおも「奴隷に愛などなく幻想でしかない。お前は皇族に仕え、我々の慈悲と愛にすがる側女に過ぎぬ」と身をわきまえるよう諭す。ヒュッレムは私がただの奴隷であれば躊躇なく命を奪えばいい、皇帝スレイマンからの咎めもないと公算があるのなら――と賭けに出たのだ。間一髪ハティジェが母后の居室に踏み込む。一方スレイマンは近々西欧に進軍する旨を御前会議で告げ、遠征中の帝都の責任者にチョバン宰相、総司令官にはイブラヒムを任じ、書記官ジェラールザーデに任命勅令を記させた。居室に戻ったヒュッレムはニリュフェルとエスマを呼び戻す。泣き腫らした顔をミフリマーフに問われても、憎しみをよすがにマヒデブランがムスタファに恨み言を吹き込んで育てたようになってはいけないと、二度とヒュッレムは娘である皇女に愚痴をこぼさぬよう決心する。ヒュッレムは「もはや睡眠は禁忌(ハラム)。母皇に殺されてしまう」とニリュフェルに漏らす。愛馬が殺されたことを知らされたスレイマンはマルコチョールに犯人捜査を命じる。マルコチョールはスンビュル、ギュル、ニギャールから事情聴取をし、ダイェから凶器である短刀を”鞘付き”で手渡され、ニリュフェルが短刀を持っていたと証言する。ハティジェに余計なことを吹聴したとしてイブラヒムはヤクップを殺害してしまう。ニリュフェルの自白からダイェと母后が裏で糸を引いていたことを知ったマルコチョールは母后から事情を聞きただす。 30ウィーン進軍母皇ハフサ・アイシェの言い分に気圧されたマルコチョールはニリュフェルの単独犯行であると皇帝スレイマンに報告してしまう。聡いスレイマンは母后と会話を持つが、母后は先回りして「ヒュッレムが私に濡れ衣を着せようとしたと言う。スレイマンは「後宮の平穏が保たれないのなら私が介入する」と牽制する。ニリュフェルは縛り首に処された。母后はメフメトとミフリマーフのもとを訪れるが、誰よりも本質を見抜いていたミフリマーフに「私たちが嫌い? お母様や私達が。私もあんたが嫌いよ」と言う。その頃ヒュッレムは愛憎を共にしたニリュフェルと対面していた。ハティジェはイブラヒムの得意なバイオリンの練習を続けている。ヒュッレムはついに罪をなすりつけ人を殺めた母后に「まだ犠牲が必要ですか? 私を殺せば怨嗟は終わりますか?」と問う。母后は質問には答えず「ミフリマーフをお前は洗脳している」となじるが、その実ヒュッレムはマヒデブランのように恨み言を吹き込んではいないのだった。腹立ちのあまり「子を取り上げ二度と会えないようにしてやる」と言い残して去る。1529年5月、スレイマンはブダとウィーンを主眼に遠征に赴く。ヒュッレムは孤立無援、敵にとっては排斥する千載一遇の好機であることを見抜いていたスレイマンは、遠征の別れの挨拶時に「後宮をお願いする。特にヒュッレムを」と母后に言い残す。ハンガリーはブダ王宮ではオーストリア大公フェルディナントに戴冠式が行われる。8月モハーチ平原にてオスマン帝国は大勝をあげる。神聖ローマ帝国ウィーンではフェルディナントの従兄弟フリードリヒが援軍要請を受理していた。その代わりにルター派(プロテスタント)への態度の軟化を要求する。ヒュッレムはマヒデブランが善行を積み、犠牲祭にて臣民に施しを行い、感謝の祈りが捧げられていることを知る。ヒュッレムも一番の善行であるメッカやカーバ神殿への祈りを母后に願い出るが、神殿のイスラム神官から奴隷が善行を積むなどと却下されてしまう。イブラヒムとニギャールの関係を知らぬハティジェはニギャールを大宰相邸付きへ戻す。マヒデブランは「ヒュッレムの子と仲良くしないで」とムスタファを諌める。ニギャールは異動前にレオの手記を掘り起こすが、ギュルシャーに奪われ、母后の手に渡り、ヒュッレムは詰問される。 40 31包囲ヒュッレムはイブラヒムがレオを毒殺した事実を伝える。何よりも常にハティジェを心配をする母后は呼吸が荒くなり、ついには倒れてしまう。スレイマンはウィーンを包囲する。ハティジェはヒュッレムにとうとう「母上に何かあったら容赦しないから」と宣戦布告するが、自らの行く末の心配ばかりしているマヒデブランを目の当たりにして辟易もする。ヒュッレムは考えを巡らせ、ダイェにスレイマンから下賜された農場の取引を持ちかける。昏睡状態だった母后はムスタファを前に目を覚まし、ヒュッレムを呼び寄せる。再び直接対決となったが、ヒュッレムは「至高の存在であるスレイマン皇帝の公正さと良心と愛に頼る」と返答する。一方ダイェに問われたニギャールは「お妃様に数々の所業はあれど、すべての行動は陛下への愛ゆえです。あれほどの愛と情熱が裏切りになるでしょうか。私は目撃者であり生き証人。コーラン(キリスト教の経典)に誓って無実です」と回答する。母后の居室に戻ったダイェはヒュッレム追放を命じられる。 32後宮の反乱マヒデブランは回復した母后のもとに入り浸りである。お互いに子を守るために、と主張するマヒデブランとヒュッレムだが、「皇子たちを何から守ると言うの? 皇統は私の家族なのよ、母たるお前が守る必要なんてない」と主張するハティジェとは裏腹に、母后はマヒデブランに「お前たち親子を見捨てはせぬ」と言質を与える。宮殿を去る前に母后と2人きりで会話する機会を得たヒュッレムは、ダイェとの取引に成功し、手帳を入手していた。勝ち誇ったように母后の前で燃やして見せる。皇帝スレイマンは冬季のウィーン包囲から帰郷を決心する。ニギャールは帝都に戻ったイブラヒムとハティジェの幸せを目の当たりにした上、イブラヒムから「一夜のあだ情けなど忘れてしまえ」と言われる。ヒュッレムは皇帝不在中にメッカやメディナに慈善事業を施そうとしたが長老イブニ・ケマルに拒絶された話をする。聖なる使命のためとしてスレイマンはヒュッレムの身分解放を宣言する。母后から身分解放を反対されヒュッレムを悪し様に言うのを耳にしたスレイマンは、「私の4人の子の母親だ」と突っぱねる。ヒュッレムは後宮に祝いの菓子を配る。イブラヒムは開いた口が塞がらない。ニギャールは自殺を図る。ヒュッレムは夜伽に応じず、もはや奴隷の身ではないので婚姻関係にない男性と寝ることはできず、「結婚しないと同衾できない。でないと不義の大罪になるから」とイスラムの掟を持ち出す。 41 33賭けイブラヒムはハティジェにニギャールの自殺未遂時の遺書を見せないよう奮闘する。母后はヒュッレムに「正当で適切な振る舞いです。立派だわ」と言いながら、ヒュッレムの再度の追放を決定した。行き先はベイコズで離宮ですらなく、皇子メフメトはトプカプ宮殿に留め置き、皇帝になる可能性のない皇女ミフリマーフのみ連行を許す、と。ヒュッレムはスレイマンに直談判するも「私の忍耐を試すな」と言われてしまう。マヒデブランが夜伽に指名されたと知ったヒュッレムは、皇帝の指輪を返上して手紙をマルコチョールに託す。帰り道に夜伽に上がるマヒデブランとかち合ったヒュッレムは何事かを耳元に囁く。泣き叫ぶ幼い皇子たちを後にヒュッレムはミフリマーフと旅立つ。 34戦う理由ハティジェは懐妊する。マルコチョールはエレニカの酒場にマトラ―クチュと共に訪れる。ミフリマーフが冷えから熱を出し、スレイマンが見舞いに来る。「私は公正でありたい。無垢な子の小さな心を傷つけたくない。己と家族にどこまで公正でいられるか?」と逡巡しながらも館を発つ。皇族の正式な結婚が成立すれば百年来の伝統を破ることになるためだ。一方、阻止するため母后はイブラヒムに共謀を持ちかける。イブラヒムはマトラークチュの酒場通いを注意し、ニギャールと結婚して身を固めるよう命令する。真夜中に宮殿へ戻るよう伝え聞いたヒュッレムは喜び勇んで馬車へ乗り込むが、森の中で襲撃に遭う。母后にヒュッレム殺害の罪を着せたくないダイェの機転により、事前にマルコチョールを動かしており、間一髪、ヒュッレムは難を逃れる。ダイェは後宮に着いた日にニギャールから聞いた「皇帝に寵愛されて子を産めば世界すら支配できる」と聞いたというヒュッレムの決心を知り、もはや後宮だけではない先を見据えるヒュッレムの愛と覚悟を知っていたのだった。 42 35暗殺知らせを聞いて現場に駆けつけたスレイマンは「我が家族の話だぞ。妃を見つけろ! さもなくば全員処刑だ!」と激怒する。スンビュルが母后に経過報告をするが、母后は命を下していないダイェの行動を知る。マルコチョールは鬼気迫る表情で襲撃者の残党の尋問に当たる。ヒュッレム死亡の誤報を聞いたギュルは卒倒する。イブラヒムは暗殺失敗の報を受けて動転しながらも「山賊のしわざ」「谷があるのでお妃様はもう…」とスレイマンに吹き込むが取り合われない。夜を徹しての捜索の末、スレイマンはヒュッレムを発見する。後宮に運び込まれたヒュッレムの姿を見て、イブラヒム、母后、マヒデブラン、ハティジェは運命を悟ったかのような表情を浮かべる。イブラヒムは共謀の痕跡を消す事後処理に奔走する。疑念が芽生え始めたスレイマンはイブラヒムにも内密にアヤス宰相に真相解明を命じる。一連の騒動を受けてスレイマンはある決心をする。 36祝典1530年6月、ムスタファとメフメトの割礼式が大々的に祝われる。母后はスレイマンの寝所に側女を送り込むが送り返される。ヒュッレムは祝典中に斧槍持ちのペルチェムを通して弓兵がイブラヒムを狙うように画策するが、ハティジェの身内を失う嘆きを目の当たりにし、寸でのところで中止させる。イブラヒムによって左遷された元アナトリア軍政官ベフラム宰相はアヤス宰相に「割礼にしては盛大すぎる」と漏らす。スレイマンはイスラムの長老イブニ・ケマルに何事かを相談し、名代にイブラヒムを据えて祝典を抜け出し、ヒュッレムを呼び出す。スレイマンに誘われて着いた部屋の中には長老がおり、スンビュルを代理人とし、婚姻の儀式を執り行っていた。 43 37回りゆく毒割礼式のために母后の居室に集まっていた皇族一同にむかってスレイマンはヒュッレムとの婚姻を報告する。「お前は私を殺す気か」となじり、母后は気を失う。祝典の中イブラヒムは矢を背中に射られる。ヒュッレムが斧槍持ちペルチェムを通して雇った傭兵ではなく、その残していった所有者不明の弓を使って別の者がが兵に扮して企てたものだった。イブラヒムにはヒュッレム以外にも政敵の存在することが明白になる。またイブラヒムは庭に偶像崇拝となる彫像を置き、西洋風の暮らしをしている悪評が市中にも知れ渡っているため犯人探しは容易にはいかないだろうと踏み、懐妊中のハティジェの心痛を思い、事件を知る皆に口止めをする。ミフリマーフは母が花嫁になったことを知り、自分もマルコチョールと結婚したいと幼い頼みを口にする。気を取り戻した母后は「もはや安眠は禁忌(ハラム)となった」と嘆く。マヒデブランもまた嘆き悲しみのあまりギュルフェムに失言するが、ギュルフェムは「私の苦しみは神のみご存知よ」と言い残して去る。母后とダイェとスンビュルのやり取りにより、スンビュルは故意に陛下の命として結婚式の証人代理人になることを事前に母后に知らせなかったことが分かる。「私だって命が惜しい、風向きが変わったのでヒュッレム妃との関係を保たなければ」と言う。スレイマンとヒュッレムが初夜を迎える一方、イブラヒムは矢に塗られていた毒が全身にまわり混濁状態となる。 38深まる溝自分が嫌疑をかけられると悟ったヒュッレムはダイェを呼び、「母后の仕業ではないの? 私に疑いをかけるために」という発言をわざと聞かせ、「権力も地位もほしいままの大宰相イブラヒムには味方と同じくらい敵の数もあるでしょう」と言わしめる。着想を得たヒュッレムは何事かを考え込む。アヤス宰相はベフラム宰相と後で密談するよう合意を取り付けていたが、マルコチョールの手前だったため追い返される。港から脱出しようと企てていた兄弟が捉えられ、マルコチョールの尋問を受け、アヤス宰相の名で命を狙ったことを自白する。スレイマンは医師長ヤセフに地下洞窟にあるという万病に効く温泉でイブラヒムを静養させることを提案する。マルコチョールはスレイマンにアヤス宰相の命であったことを報告するが、罪を着せるための計略かもしれないとの進言もする。イブラヒムに次ぐ地位に就くアヤス宰相はイブラヒム自身が抜擢して据えた者だからだ。スレイマンが自ら尋問に向かうと既に牢獄の中で射手は双方とも絶命していた。衛兵を問いただすと、上官である伝令長が受け取った封蝋印のあるスレイマンの勅令のためだという。アヤス宰相に鎌をかけるが乗って来ない。ヒュッレムはダイェに聖地の慈善事業について意見を求め、水路の建設がいいとの返答を得る。母后の祖国クリミア・ハンから書簡が届き、跡目争いが始まったことが奏上される。母后は姪にあたるアイビゲが巻き添えを食わぬよう後宮へ呼び寄せる。ニギャールは保養地でイブラヒムの懸命な介護を続ける。ヒュッレムは妃の位に相応しい冠を注文する。心労が極限に達した母后はレオに関する重大な告発を証拠なしにスレイマンに奏し始める。 44 39死の淵(ふち)よりスンビュルはニギャールが懸命にイブラヒムを看病する様子から特別な想いを抱いていると悟る。母后の居室に罠とも知らず呼び寄せられたヒュッレムだったが、蝋燭台の反射により物陰にスレイマンが立って傍聴していることに気付く。尋問から逃れダイェと話してダイェが必死に目配せしていたことを知る。「何という憎悪を。孫の母親に無実の罪を着せようとは母上らしくもない」と、母后は窮地に立たされる。必死の思いでイブラヒムが証人であると名を上げるが、もはや母后とイブラヒムの旗色が鮮明になるばかりだった。心痛のあまり発狂しかけているハティジェは庭の彫像に関する恐ろしい夢を見る。スレイマンはアヤス宰相に問いただすが、次に謁見したベフラム宰相に疑いを抱き始め、マルコチョールに調査を命じる。動かない彫像のようになったハティジェにヒュッレムは声をかける。愛する者を失った自分が生きる力を取り戻したのは子を腕に抱いたときであり、懐妊中のハティジェももうすぐ母になるのだからしっかりしなさい、と。その様子を見たスレイマンと母后は思わず踏み込むことに躊躇いを見せる。一方ニギャールは「私の絶望的な愛をご存知ないのね。離れるのは死よりつらい」とイブラヒムにつぶやいていた。それを聞き、次第に活力を取り戻す。スンビュルからニギャールの恋の報告を受けたダイェは胸に秘める。ニギャールの結婚が急かれる中、母后は結婚後も通いの教育係としての職を約束する。ベフラム宰相がエレニカの酒場に通っていることを知ったマルコチョールは秘密調査を依頼する。 40妃の冠マルコチョールはアイビゲの登殿のため迎えに行く。山伏の一族の生まれで山賊のようなマルコチョールとまるで女海賊のようなアイビゲの邂逅はいたずらに満ちたものだった。ニギャールの結婚前夜、スンビュル、ギュル、料理長シェケルは連れ立ってエレニカの酒場へ繰り出す。混み合う中でマルコチョールと来ていたマトラークチュの姿を発見し、あわやのところをスンビュルが取りなす。祝賀ムードに誘われて茶目っ気を出したアイビゲは宴の隅に押しやられていたヒュッレムに自ら近づき興味を引かれたように殊更親しげに挨拶を交わす。そこへ赤い婚礼衣装のニギャールが到着し、手のひらに染め粉ヘナを塗り金貨を握らせる儀式が始まる。アヤスとベフラムを伴い、当日の朝イブラヒムは市中の繁華街を練り歩き、敵味方に健在であることを知らしめていた。ロクム売りが威勢よく声をかけて味見を願い出るが実は毒の混ぜられたロクムをまずは自ら口にするべきとベフラムが主張する。結果ロクム売りは罪人と露見するのだが最初の手筈ではベフラムが雇った男だったのだが、恩を売り被疑を避けようとしたベフラムの画策なのだった。結婚を嫌がるニギャールにダイェは「家族を持ち、子を胸に抱くのよ。ここに残っても人生の無駄。若さと美貌がどれだけ貴重か。私のように孤独な年寄りになりたい?」と自らの胸中を露呈させるがごとく諭す。結婚行列の前に居並ぶ一同。ヒュッレムは居丈高に冠を被って現れるが、まるで女性版のトルコ帽のように大きく高く薄張りの絹で作らせたものだった。順列もハティジェの次と決め込んで割り込む。ヒュッレムは「私を公正な正義の目で見てください。それさえあれば満足です。過去は水に流します」と母后にひざまずくが顧みられない。夜マトラークチュの家に着いたニギャールは驚きの展開を迎える。 45 41マヒデブランの決断マヒデブランは母后に手を打ってくださらないなら自分でヒュッレムとのことを解決すると啖呵を切る。ハティジェのお産が始まったがイブラヒムは不在である。マトラークチュに頼んで初夜を迎える前にニギャールを離縁するよう手を回していたのだ。結婚当日の夜もエレニカの酒場に通っている姿が多数目撃される。ハティジェの子は双子だった。アザーン(イスラム礼拝を呼びかける放送)と共に朝が明けスレイマンが名付けに来る。ベフラムは何やら高位の男と内緒話をしている。いわく「御前会議に潜り込め」との命令が下される。既にイブラヒムの秘密の恋を弱みとして握っているベフラムは請け合う。怒り心頭のマヒデブランはスレイマンの寝所に規則を無視して上がり込み、身分を解放するよう懇願する却下される。泣き腫らすマヒデブランを見たムスタファは制止も聞かず単身スレイマンの前に躍り出て、母とエディルネ宮殿へ行く意志を伝える。もはや風向きが変わったことをダイェ同様に認めつつあるスンビュルが経過をヒュッレムに報告する。立派に成長したムスタファにむしろ誇らし気なスレイマンだった。 42暗闘皇帝の寵に関しては誰の目にも勝敗が明らかだった。後継者争いに関してはこれから戦いが始まったばかり。時が来たら必ず呼び戻す、と母后がマヒデブランに言葉を下賜し、有力な後継者と見做されている第一皇子ムスタファと共にエディルネ宮へと発った。アイビゲとマルコチョールは中庭で乗馬をする。赤ひげ(バルバロス)の異名を持つフズル・ハイレッディンから要所を落とし要塞を築き上げ領海を順調に広げている旨の書簡が届く。一方その頃神聖ローマ帝国のカール5世はキリスト教世界の存続のため聖ヨハネ騎士団への応援要請をし、アンドレア・ドリア提督を以って制すべく指揮を取る。イブラヒムとニギャールは隠れ家を見つけてマトラークチュの家から出る。夜ごと帰って来ないイブラヒムをハティジェは待っている。ベフラムは通っているエレニカの前でイブラヒムを狙ったことをよって口走ってしまう。マヒデブランが去って元のハティジェの部屋を自由に使えるようになったヒュッレムは夜のバルコニーでアイビゲのマルコチョールに対する想いを知る。エレニカは伝言してほしいとギュルにベフラムの正体を教えてしまう。ギュルは即ヒュッレムに伝えるが、ヒュッレムは事もあろうにイブラヒム本人に真実を話す。イブラヒムがベフラムと接触した瞬間、ベフラムはニギャールとのことをスレイマンに奏上すると先手を取り、既に隠れ家の登記簿も手紙も手中に収めていた。イブラヒムがベフラムを切って捨てようと剣を抜きお付きの者共も剣を抜くが、エレニカの酒場にいた周囲の客も一斉に剣を抜く。ベフラムの背後の黒幕の巧妙な罠なのだった。アイビゲはエレニカとマルコチョールの仲を知る。母后とヒュッレムは夕食を共にする。ベフラムは口封じに殺されたと見せかけて翌朝元気な姿を見せる。 46 43派閥争いベフラムはスレイマンに奏上する直前でイブラヒムに邪魔される。しかし機転を利かせ奏上しない代わりの条件を飲んだものとして発言を変え望み通り御前会議に参加する資格を得る。イブラヒムは犯人を知るマルコチョールにもスレイマンと同様に今はまだベフラムを泳がせて黒幕を引きずり出そうとしているだけだと辛くも説明し、ニギャールの件で脅迫されたことを伏せる。ヒュッレムはダイェを呼び、母后の意図を聞き出す。母后はファトマとスンビュルを使い、ヒュッレム派を除いた側女の月額50アクチェ昇給を決行する。フィダンを筆頭に俸給が足りないことに不満を持つ側女たちはヒュッレムに直談判するが、派閥の対立構造が明白になっていく。イブラヒムは隠れ家の登記簿を取り返しベフラムを殺害する。大宰相職の罷免になりかねないスキャンダルを阻止するべく大胆な一手に出たイブラヒムの形相は一変しており、自らの手を血に染め自己中心的にまみれた権力欲と残虐性を次第に顕にしていく。イスラム教ではニギャールとの不義密通のような人徳を失った振る舞いは大変不名誉なことである。エレニカの酒場は死屍累々の有様だった。給料日当日、約束された50アクチェの昇給はなかった。母后は一度約束したにも関わらず翻したのだが、ファトマが扇動する側女たちはヒュッレムが邪魔したのだと不満を持つ。もはやヒュッレム憎しのため側女たちによる騒動を諌めもせず後宮の安寧を脅かした張本人となった母后をダイェは複雑な顔で眺めやる。マルコチョールから報告を受けたスレイマンは即座にイブラヒムを呼びつけるが、イブラヒムは黒幕に消されたのだと主張する。グリッティからアヤス宰相へとブダが包囲された旨の報告があり緊急会議となる。ヒュッレムは味方分に昇給分の補填を進み出る。母后以上の良心と規則の塊であるダイェは「本来であれば後宮追放相当の厳罰よ」と側女たちに言い含める。 44入隊式1532年3月、スレイマンは前回の冬季のウィーン包囲の反省から春を待ちブダ奪還の遠征を決行すべく、また今回の遠征にはムスタファを伴うため入隊式の手筈を整えていた。ヒュッレムは第五子ジハンギル皇子を出産する。側女たちは相変わらず母后派とヒュッレム派に分かれている。マヒデブランがギュルシャーと共にエディルネ宮からトプカプ後宮に戻ってくるが、側女たちは成長したムスタファに浮足立ち色めき立つ。皇帝スレイマンに顧みられる見込みがなくムスタファがこれから持つである後宮に移動して寵愛される一縷の望みを持ち白羽の矢を立てているためだ。吹きすさぶ逆風の中、見事に第一皇子に相応しい成人男子となったムスタファにイェニチェリからの信望と士気も高まる。スレイマンもいまやイブラヒムに任せている御前会議への出席を許可する。翌日、側女選出となるがマヒデブランは注意深くヒュッレム派の側女を避け容色より若く従順で黒髪の側女を選び出す。マルコチョールとアイビゲは遠征による別離の前に共に中庭を散策し2人きりで語らう時間を持つ。母后は砂を使う女性占い師を招く。ムスタファ皇子と皇族の未来を聞くが、占い師は「見知らぬ土地、広がる領土、だが宮殿に巣食う竜がもたらす、青い海に赤い血、死が見える。1人1人排斥する」と言う。 47 45頂上対決疑心暗鬼になったヒュッレムは竜の夢を見る。後宮は母后派、マヒデブランの後宮派、ヒュッレム派に分かれていた。ヒュッレムは子守のエスマとナズル、大部屋のヒュッレム派を掌握するフィダンの他に、ギュルに命じて身辺警護に当たらせる側女を増やして警戒する。新入りのノラのような娘たちに「奉仕よりも忠誠を求める」と言い渡し組織する。スレイマンは再三和平交渉の使節を受けるがことごとく無視し、提案は戦場で吟味するものとする。母后は自分側につくようフィダンに命ずる。ヒュッレムは大部屋で側女の1人ラーレザールと言い争いになり「舌を引っこ抜くわよ」と言うが、その夜ラーレザールはフィダンから呼び出され舌を切られてしまう。だが話せないために犯人を伝えられることはなく、伝えたとしてもフィダンが元ヒュッレム派の側女であることは周知の事実なのだった。たまたま登殿していたニギャールやスンビュルも不可解な顔をする。ハティジェは側女の制圧のために「お前たちの前にいるのは皇帝の正妻で皇子たちの母よ。生意気を言うなら全員追放する」と叱責する。遠征中はスレイマンの介入もなく見せかけの和解をかなぐり捨ててついに母后とヒュッレムは直接舌戦を繰り広げる。もとより心配性のハティジェを煩わせることもないが、もはや母后は計略にダイェを通すことはない。思い余ったダイェは口を開きかけるが母后はフィダンへの処罰を命じた。腹心の側女を失ったヒュッレムは片翼をもがれた形となる。 46増悪の炎包囲戦を展開し20ばかりの城を次々と陥落させていくオスマン帝国軍に対し、モハーチ平原の戦いの苦渋からカール5世は正面衝突を避けようとする。もはや和平交渉は望めないのだった。後宮も同様に対立が深まっていく。クリミア・ハン位を巡り実兄と係争していたカザン・ハンの国王でありアイビゲの父サーヒブからのタタール兵3万の援軍を得て勢いを増す。ヒュッレムは命の危険を感じて自室に閉じこもっている。怯えながら毒見役を務めるナズルをニギャールもノラも複雑な顔で見やる。フィダンを失い、大部屋での求心力を失ったヒュッレム派の残りの側女たちが50アクチェの昇給分の盗難に遭う。母后派に詰め寄ったところでダイェが盗まれた給金の捜査に当たる。ニギャールもダイェにヒュッレムを陥れる計略であることを忠告する。果たして給金はムスタファの夜伽を務めたエリフの寝具から発見され追放処分が言い渡された。ギュルは洗濯室に閉じ込められる。ニギャールはマヒデブランの部屋に引き止められる。ヒュッレムの子供たちは母后の居室に呼ばれる。様子がおかしいことを察知したアイビゲはダイェに助けを求める。エリフが焼身自殺を図るとファトマが先導し騒ぎが大きくなっていく。斧槍持ちを呼びに行ったダイェは宮殿の外に足止めされる。アイビゲもついに数で押され捉えられてしまう。ヒュッレムの部屋の前で最後の攻防がなされるが、ノラはヒュッレムを振り返って不思議な笑みを浮かべる。ファトマは容赦なく燃え盛るトーチをヒュッレムの顔に近づけた。 48 47傷痕ヒュッレムは辛くも難を逃れハティジェの大宰相邸に匿ってもらう。戦場のスレイマンにダイェの連名で手紙を認めるもイブラヒムに握り潰される。顔に大火傷を負いニギャールに手当てを受けるが回復を待たずエスマとナズルを連れ子供たちを案じ後宮へと舞い戻り「私は回復するごとに強くなる」と宣言する。ダイェの裏切りを詰問する母后だが、ダイェは「後宮の平和と秩序を保つのが私の職務。ヒュッレム妃は陛下の正妻。今回の残虐さに沈黙はできません」と返答する。母后が公正さを失ったことから少しずつ乖離が始まっていたのだ。ヒュッレムはフィダンに裏切られたことを忘れられずノラに関与の疑いを持ち叱責する。風見鶏のスンビュルはダイェの降格により昇進を期待するが、母后付き女官長兼後宮出納官はマヒデブランの腹心ギュルシャーに任命され落胆しアラビア語で何事かをつぶやく。ギュルシャーはヒュッレム派から袂を分かったノラに近づく。季節が巡りスレイマンが帰還した。出迎えの挨拶にヒュッレムの姿がない。気丈な筈のヒュッレムは輝くばかりの美貌に傷をつけられてスレイマンの目前で泣き落として見せる。スレイマンは母后に不興も顕に40年来の腹心ダイェからとの関係も失ったと言及し、ムスタファはマヒデブランに陰謀に加担せぬよう諭す。戦勝の花火が上がる中アイビゲはムスタファと会話を交わす。 48皇子の宴ノラはムスタファの部屋の掃除を命じられたと言い繕ってエリフを失った心に入り込む。戦場で負傷したムスタファのためにマヒデブランは宴を開く。次第に無能で理不尽で横柄なギュルシャーの振る舞いが目立ち始める。スレイマンはイブラヒムに対し「私に隠し事を持っても強くなれぬ。お前はむしろ臆病になる。何の権限で私に隠した?目的は事実の隠蔽か?」ときつく叱責する。形ばかりでも歩み寄りを見せることが得策と母后の説得に当たり、晩餐会が開かれるが母后は態度を隠さない。スレイマンは静かに「決して変わらない強い意志を持つ人間もいる。変えようとすればややこしくなるだけだ」と諦念を表す。ノラはムスタファに見初められる。夜半過ぎ人目に付かない廊下でヒュッレムはノラに命令する。火事による叱責から疎遠になったものと見せかけてムスタファの懐に送り込んでいたのだった。ダイェはギュルシャーから辛い目に遭わされる。理由はしかも業突張りで利己的なものだった。ニギャールは思わず「恥知らずな。母親程もの年齢の女性を」と声を荒らげる。ニギャールを突き飛ばしたギュルシャーを思わずダイェは平手打ちしてしまう。追放の罪を言い渡される。処遇を聞いたヒュッレムはギュルシャーに「ネズミのような顔」と暴言を吐き、マヒデブランに「いつかムスタファの足枷せになるのはお前自身」と挑発する。頭に血が上り手を上げたところをスレイマンに制止され、ヒュッレムに謝罪するよう言い渡される。スレイマンは後宮に自ら介入すると請け合う。 49 49反抗泣いて自室に戻ったマヒデブランを見てムスタファはスレイマンのところへ押しかけ詰め寄る。ほとんどスレイマン自身への侮辱とも取れるヒュッレムへの不当な言及に「世界帝国は女の涙などで統治はされぬ」とスレイマンは激高するが、ムスタファは反抗の態度を崩さない。マヒデブランにも釈明せず1人自室に戻るが寝台にはヒュッレムの差し向けたノラが純真無垢な眠りを貪っていた。スレイマンは約束を違えずダイェを元の役職へ戻し、追放の命令を下した母后の決定を覆す。ギュルシャーは母后付き専従に留め置かれた。ムスタファはノラと朝まで過ごし大切なイスラム教の金曜礼拝にも欠席する意を示す。金曜礼拝は皆でモスクに行き全イスラムの民が同時刻同方向(聖地の方角)へ向かって祈りを捧げる合同礼拝であり、欠席は必ず皇族や御前会議の居並ぶ閣僚の面々など皆の知るところになる。それを父親への抗議から欠席するなどと唯一神アッラーへの不敬の態度を恐れ多くも盾にした上で父親への反発を表す方法で紛うことなき神と皇帝への不遜であり、あってはならないことなのだった。マヒデブランは母后、イブラヒム、ハティジェに相談し、イブラヒムはスレイマンに対してムスタファを擁護する。アイビゲとマルコチョールは夜更けに2人きりで話す。 50角が生えた男マトラークチュはニギャールとの偽装結婚の夜から連日酒場で目撃されている。ハティジェもイブラヒムに連日帰りが遅い理由を問う。ノラはムスタファに毎夜召される。ヒュッレムの信仰告白の勧めにより改宗の意があることをムスタファに伝えムスリムの名をエフスンと賜る。マルコチョールはマトラークチュの秘密に勘付き始める。朝になり一刻の猶予もないイブラヒムはムスタファの自室に乗り込み、ノラと共に御寝しているところに踏み込み諭す。チョバン宰相とアヤス宰相が噂する中、イブラヒムに伴われたムスタファが到着する。マトラークチュは自宅の軒先に水牛の角が吊るされているのを発見する。寝取られ男と不義密通女が住む家を意味する象徴だった。後宮出納官の地位に返り咲いたダイェは大部屋にファトマとフィダンが戻っていることを発見する。皇帝妃に火を架けた罪で斬首及びラーレザールの舌を切った罪で追放の厳罰を受けて本来では決して戻れない筈なのだった。ファトマはマヒデブラン付き、フィダンはニギャールに変わる女官となる。アイビゲの帰国が決定する。アイビゲはマルコチョールとの別れの夜に初めて美しく女らしく装った姿を見せる。底なしの優しさと激情ゆえにエフスンという一介の1人の奴隷女に入れあげる姿を目の当たりにしたマヒデブランは母后と相談してアイビゲをムスタファの正妻として迎える意を固める。 50 51良縁マルコチョールと想いが通じ合ったのもつかの間、アイビゲは母后からムスタファとの結婚を言い渡される。ムスタファも同様に乗り気ではない様子。イブラヒムが痛みの進む異教の神々の彫像を修復させていたかと思えば今度は自分の彫像を作らせるという。ハティジェはイスラム大帝国の皇女として生まれた矜持を賭してイブラヒムに抗議して口論となる。アイビゲから相談されたヒュッレムはムスタファにクリミア・ハン国の血縁を作ってはならないとしてアイビゲとマルコチョールの恋心に訴えかけ、エフスンがムスタファの心を捉え続けるよう援護する。市中の噂の的となり忍耐の尽きたマトラークチュからハティジェはニギャールが離縁されていたことを聞き、ダイェに事情を尋ねる。おませに成長したミフリマーフはマルコチョールとの結婚を夢見るようになる。母后はエフスンを旧宮殿(エスキサライ)に異動するよう命じる。ダイェはあらゆる苦悩や悲しみに効くという宝石メノウをニギャールに握らせる。ムスタファの縁組について聞き及んだスレイマンは久々に母后を訪れて祝福する。母后も久々に気を良くしてスレイマンにムスタファの年齢頃に起こったことを思い起こさせる。実の息子に毒殺用の長衣(カフタン)を送ったことを。スレイマンは「アイビゲとムスタファの同意がなくば結婚を許可しない」と言い残して去る。 52政略結婚マヒデブランとファトマが連れ立っているところにヒュッレムは「その女は私を殺そうとした。残念な方ね。あんたが黒幕だと思われかねないわよ」と嫌味を言う。ノラを追放したマヒデブランはファトマに夜伽の準備をさせるが、エフスンを呼んだつもりのムスタファは取り合わず、エフスンがエスキサライに追放されたことを知るとマヒデブランの自室に乗り込み、連れ戻すよう命令して取り戻す。ヒュッレムから庭の彫像の件を聞いたスレイマンは大宰相邸を訪れる。離縁されたニギャールの一人住まいを訪ねたダイェはイブラヒムとの密会現場を見てしまう。エフスンが第二のヒュッレムのようにムスタファの心を捉え縁談を断るのではないかと心配したマヒデブランはイブラヒムに相談するが、男女の仲の理の無さを自身も知るイブラヒムは複雑な表情を浮かべる。斧槍持ちペルチェムはヒュッレムの命でフィダンとファトマを人気のない部屋に閉じ込め顔を火で焼く。マルコチョールがエレニカの酒場へ行っていたことを知ったアイビゲは敬意を見せろと言い勢い余ってムスタファとの婚約を承諾してしまう。イブラヒムがムスタファと会っているところをバルコニーから見やったスレイマンは、かつてイブラヒムが彫像に向かい「帝都の海を抱く7つの丘で、3つの大陸で、臣民は我が彫像の前に跪く」と一人ごちていた日のことを思い返していた。ダイェは翌朝参内してきたニギャールを破廉恥と叱責する。スレイマンはイブラヒムを呼びつけ運ばせた彫像の首を前に激怒する。 51 53イブラヒムの首イブラヒムは国璽(こくじ)を返上し約束は全て辞す覚悟を見せる。イブラヒムはニギャールに一言も漏らさず大宰相邸を後にする。御前会議はしばらくアヤス宰相が預かることとなった。ハティジェは気も狂わんばかりとなる。自室に戻ったマヒデブランは暗がりの中に顔を焼け爛れさせた異形のファトマの姿を見つける。同様のフィダンを発見したダイェは問い質すが「火遊びがどれほど危険か身に沁みたはず」と突き放す。不義密通の事情を知ったダイェは更にニギャールを宮殿詰めに戻し自宅へ帰らせない措置とした。ハティジェはスレイマンがイブラヒムの首を取る夢を見るが正夢に近く彫像の首が切り取られているのだった。夢うつつの境が分からなくなったハティジェはスレイマンのもとに押しかけて騒動を起こす。一連の騒ぎを見ていたスンビュルはイブラヒムが斬首刑に処されたと勘違いして側女の大部屋で一同を前に発表してしまい、ニギャールは卒倒する。イブラヒムは人質同然にオスマン帝国内に邸宅を与えられて生活している双子の兄ニコと父のいるゲイックリ館に到着する。 54婚約式イブラヒムの帝都不在に反体制側は動き出す。アヤス宰相に接触してかつてベフラム宰相の黒幕として暗躍した人物だ。アヤス宰相は慎重に返答する。ハティジェはスレイマンから明日の婚約式に出席しなければイブラヒムの首が本当に危ないことを聞きつけると必死の形相でムスタファに捜索を依頼する。ムスタファの身辺情報を探るため潜り込ませているエフスンからヒュッレムは報告を受ける。ミフリマーフは妃の王冠を身に着けて遊戯に興じて落として壊してしまうが、隠し事を持つ才覚のあるところを見せる。ハティジェは有力な皇位継承者であるムスタファを勝手に1人で派遣したことで初めて母后とマヒデブランから叱責を受けるがイブラヒムの命が最優先と言ってのける。マトラークチュと館に到着したムスタファはイブラヒムを連れ戻すと宣言する。ミフリマーフは罪をナズルに被せる。ムスタファの夜伽を務める寸前でエフスンに出し抜かれヒュッレムに顔を焼かれて復讐の憎悪に身を焦がすファトマはエフスンがギュルの指示を仰いでいるところを目撃する。 52 55大勝負イブラヒムがムスタファの婚約式を途中退席したことを知ったスレイマンは斧槍持ちに命じて地下牢に連行する。ファトマはフィダンを通してマヒデブランを探すが直後ギュルに捕らえられる。危機一髪ギュルはファトマの口止めに成功する。スレイマンはかつて斬首刑に処した婿を持つ、血を分けた実妹ベイハンの言葉を思い返していた。母后に相談するも「お前がイブラヒムもヒュッレムも作り出したの。一介の小姓を大宰相に抜擢して、奴隷の側女を皇帝妃に」と言われる。地下牢の中でイブラヒムは叶わぬ夢を見るが結末は絞殺というものだった。「お前を地獄へ誘う墓は森の中ではない。私の手の中にある。これは報奨であり罰である」とスレイマンは告げる。手のひらの上には返却した筈の国璽が鎮座していた。イブラヒムの帰宅を安堵と悲哀のない混ぜになった表情で迎える一同。母后は顔色が冴えない。王冠の真実を知るメフメトは罰を受けているナズルを同情の目で見つめる。ミフリマーフは機智を働かせてマルコチョールと中庭を散策する機会を得る。ヒュッレムをも出し抜く才覚を見せるミフリマーフ。「いい子ね。いつも兄弟を守ってね」と褒める言葉までもらう。口止めされ困り果てたファトマはニギャールを頼る。偶然浴場に来たギュルシャーとまたも嫌味の応酬といった因縁のやり合いが始まり「お前なんか男に手も握られない。ミイラ化した処女として死んでいく」と侮蔑する。ヒュッレムに再度凄まれたファトマは懲りずについにギュルシャーに告げ口を決意する。 56皇帝の天秤ギュルシャーから聞いたマヒデブランは激怒してエフスンをムスタファの部屋から引きずり出し、ヒュッレムに突き出す。ギュルはファトマに更なる脅迫で牽制する。ヒュッレムはミフリマーフの中庭散歩にアイビゲが同行するよう差し向ける。そこにはマルコチョールがいるのだった。マヒデブランからエフスンの正体を聞いてもムスタファはにわかに信じない。ムスタファはエフスンとマヒデブランを信じるが、告げ口をしたファトマに嘘があるとする。食い下がるマヒデブランだったが聞き入れられない。イスラムの宗派に理解がない筈のイブラヒムは不在時にアヤス宰相が決裁した決定事項を覆した上に事もあろうに愚弄する。一度与えた助成金を取り上げれば不満も出る。反イブラヒム派の黒幕が代わって助成金を渡す。アヤスはスレイマンに確認を求めたところをイブラヒムに見咎められ叱責を受ける。イブラヒムを取り戻したハティジェだったが他に愛する女の影があることを感じ取っている。マヒデブランの表立って無礼な中傷に堪忍袋の尾が切れたヒュッレムは怒号を上げてしまうが、ムスタファが聞き咎めていて割って入る。「私の少年時代は母の涙の中にありました。母から離れてください。私を敵にまわしたいですか?」「私は世界皇帝の長男。この部屋の誰よりも高位かつ高貴な者です」とヒュッレムに宣戦布告してしまう。屈辱に目の縁を赤らめるヒュッレムだったが、おとなしく従う。ミフリマーフはいまだ幼少の過渡期でありながら生来の賢さ鋭さと女の勘でアイビゲの想い人がマルコチョールであることを見抜く。庭先に彫像を置いた大宰相亭の前に助成金の決定の転覆の説明を求めてムスリムが詰め掛ける。ヒュッレムから事情を聞いたスレイマンはムスタファを呼びつけ言い分を聞くがヒュッレムに謝罪を要求する。取り込み中にエフスンはマヒデブランに捕らえられる。 53 57新たな対立もはやマヒデブランが相手ではなくムスタファとの対立構造となっている。有力な後継者候補だけに表立っては行動できないことを踏みにじられた威厳と誇りにかけて肝に銘じる。本音を隠しスレイマンに「一介の門兵から大宰相に至るまで皇子の待遇には差別がある。スレイマンあなただけは違うと思っていた。私は5人のあなたの子供の母親。でもムスタファだけは別格なのよね。ただの子供に頭を下げさせるなんて。あなたへの愛と忠誠ゆえにしたことよ。ただの子供であるなら、私はその子供5人の母なのに」と涙を流しながら言い残して立ち去る。マヒデブランへの命乞いに何でもすると言ってのけたエフスンはヒュッレムの弱みを調べるよう命じられる。エフスンはヒュッレムがマルコチョールとアイビゲの恋を取り持っているという秘密を話して難を逃れる。イブラヒムは熱心なムスリムの対応に手を焼かされる。容赦なく牢に入れても市井に躍り出てイブラヒムの悪評を広めるばかりで、マトラークチュにも同胞の投獄は間違っていると言われて針のむしろ状態だ。スレイマンからは怒りに任せた采配だから付け込まれるとなじられる。アヤスにも影響が出ているほど既に反乱分子の勢力が大きくなっていた。先祖代々イスラム教徒であるマトラークチュからは思わぬ反論を受け、うまくいかない苛立ちから腹いせに牙を剥き声を荒らげる様を御前会議の一同に目撃される。マヒデブランは中庭でアイビゲとマルコチョールとムスタファとヒュッレムを発見する。ダイェは後宮の帳簿の仕事に滞りを発見してギュルシャーを出し抜く。ニギャールは再婚させられそうになる。 58皇子の災難尊師と呼ばれる反イブラヒム派の長はアヤス宰相にマトラークチュに近づくよう指示する。エフスンの命を助けた見返りにヒュッレムは毒薬を手渡す。夜伽の際にムスタファの食事に混ぜるよう命が下った。ジハンギルは夜半すぎにむずがって大泣きする。スレイマンは歩み寄りのためヒュッレムに首飾りをプレゼントされるが返されてしまう。スレイマンは気も無さげにマヒデブランに下賜するが、久々の贈り物を有難がって付けて練り歩くマヒデブランの胸に光る首飾りをヒュッレムは目ざとく見つける。ムスタファとエフスンは中庭を散策する。ニギャールはギュルと一芝居打って再婚を退ける。ジハンギルの病変を知らされたスレイマンは医師長ヤセフを呼びよせ診察させる。ヤセフの見立てでは脊椎の1つ1つの椎骨に異常があり背中が曲がるというものだった。ムスタファ毒殺決行の夜、エフスンは見事な首飾りをプレゼントされる。皇子と共に食事を始めるが迷いがよぎる。 54 59運命と罪ムスタファは夜中に高熱を出す。実は一口つけた後、エフスンが故意に盆をひっくり返して食事を中断させたのだった。ジハンギルの許から病床のムスタファへと駆けつける姿を見送った上、泣いて取り乱すマヒデブランを抱き止めるスレイマンの様子をヒュッレムは目の当たりにする。イブラヒムは一度は追放し、マトラークチュが幼少を過ごした教団に戻る遠因を作ったにも関わらず呼び戻す。ヒュッレムはジハンギルの病状は負担を伴う方法しか打つ手立てがないことを知る。アイビゲの一時帰国にマルコチョールが同行することになったがマヒデブランは不服だ。ムスタファは誠意を見せてアイビゲが祖国クリミア・ハンに留まれるよう手を尽くすつもりだと言う。エフスンはムスタファと寛ぐひとときに突然吐き気に襲われる。なかなか暗殺任務に応じないエフスンに業を煮やしたヒュッレムは呼びつけるが、既にエフスンは皇子ムスタファを愛するようになっており傷つけられなくなっていることを知り、あることをギュルシャーの耳にささやく決意する。 60愛の行方尊師は教団指導者サーリエにイブラヒムの首をあげるよう命ずる。イブラヒムは悪びれず朝帰りをするようになり、ハティジェの詰問に弱り果てた調子で言い訳を繰り返す。エフスンは倒れてスンビュルの監視のもと医女の診察を受けるが妊娠していた。スレイマンは哀しくも決然とした様子で負担の大きい処置を拒否するヒュッレムの腕からジハンギルを受け取る。血に染まった戦勝を幾度も上げ自らも子を成してきたスレイマン、イブラヒム、ムスタファ、威風堂々のオスマン帝国の男たちも、ジハンギルに用意された医務室に足を踏み入れて形相を変えた。曲がった背骨を伸ばすために手足を四つ裂きに拘束し、滑車に力を込めて引き伸ばすための装置が置かれている。口が戦慄き祈りの言葉をつぶやかずにはいられない。目を背けたくなる光景だ。起死回生の手に出ざるを得ないヒュッレムはエフスンを使ってギュルシャーに「アイビゲとマルコチョールは駆け落ちでクリミアに向かわず帝国にももう戻らない」と信じ込ませることに成功する。スンビュルはムスタファに真っ先に側女の妊娠を伝える。後宮では皇統を正しく保つために皇帝スレイマン下の後宮においては皇子のお手付きによる子種は中絶の措置を取るのが習わしだった。ムスタファは他言一切無用の箝口令の意をスンビュルに示す。ムスタファはエフスンに夏のマニサ赴任まで秘密にして何とか産めるよう尽力すると約束する。イブラヒムとハティジェは家族旅行に出かけるが何者かに襲撃される。マトラークチュは教団に幽閉される。ジハンギルの容態を見に廊下に出たスレイマンは倒れてしまう。 55 61不例昏倒したスレイマンは父帝セリムの夢を見る。知らせを受けた後宮は静まり返る。代替わりがあれば側女は全員追放処遇になるためだ。マヒデブランはマニサ宮殿でのスレイマン皇子との若き日を回想する。海上のアイビゲとマルコチョールは船が係留され、マヒデブランから奏上されたスレイマンの追捕(ついぶ)に引っ捕らえられていた。ジハンギルの看病明けに大部屋に出たヒュッレムは異変に気づきファトマに問い質す。スレイマン卒倒を知ると重い足取りでご寝所まで赴くが気絶してしまう。マトラークチュは尊師の正体に感づいた可能性のため斬首の刑に処される直前でイブラヒムの奪還に救われる。ヒュッレムはスレイマンのムヒッビーの詩を回想する。バルコニーからあわや半身を投げ出す寸前に母后に引き止められた。イブラヒムもまた回想していた。故郷パルガからオスマン帝国に拉致されて後、12歳でエーゲ海はサルハンの牧場に奉公に出てスレイマンの目に留まったこと。マヒデブランは先走って次の玉座に就く準備をムスタファに進言し、「ヒュッレムと皇子たちに同情や慈悲は無用だ」と凄むが、ムスタファから「復讐しか見えぬか?」「彼らは私の弟たちです」と非難される。母后は密やかにイブラヒムと談話を持ち、万が一の際には”平和に”継承されるよう強く確認する。大部屋で側女たちに次代の寵姫ね、とからかわれたエフスンはつい大きな夢を語り出し、聞き咎めたヒュッレムに皆の前で叱責を受ける。イブラヒムとの談話の内容を伝えようとマヒデブランの部屋に立ち寄った母后はマヒデブランの本音を立ち聞いてしまう。「ムスタファを唯一の後継者とすべく介入暗殺する。ヒュッレムも母后ももはや関係ない。私の時代が始まるの。私が母后となり後宮を支配するのよ」 62死を迎える時恨みと怒りの権化となったマヒデブランは血迷い、自らを母后と称し、イブラヒムに帝座の道が開けた感謝と今後も補佐してほしい旨を伝える。イブラヒムに時期尚早と窘められるが「回復は”私達の”利にならぬ」と言う自己中心ぶりを印象づける。憔悴しきりながらもヒュッレムはハティジェの屋敷へ子供たちの安全護送を申し出を受けるが信じず噛み付きそうな剣幕で追い返す。母后から協力を要請されたハティジェがヒュッレムを説得にかかる。後ろに控えるダイェのかすかな頷きを見たヒュッレムは子供たちを預けることには同意するが、自分はスレイマンの暗殺を恐れて避難しないものと言い張る。イブラヒムはグリッティから皇帝崩御の噂の問い合わせを受ける。アヤスは尊師からイブラヒムの権力の展開図を説明される。マヒデブランは病床のスレイマンの枕元で「ヒュッレムお前はまだ殺さない。皇子たちの運命を見届けるまで」と脅迫する。アイビゲが後宮のマヒデブランのもとに連行されて来た。告発を続けるマヒデブランの前に母后が立ちはだかる。マヒデブランはもはや引かず、私の息子の婚約者だから私が追求すると主張する。母后は「いつか私に聞いたわね。ヒュッレムとお前との違いを。あの者は己の頭で行動する。でもお前にはそれが欠けている」と言い残して去る。マルコチョールは幽閉されイブラヒムの尋問を受ける。大宰相邸で顔を合わせ図らずも肩を並べてイブラヒムとヒュッレムは胸中を開いて会話する。「お前はマヒデブランの同類なの?よもや陛下の死後は自分が大帝国を支配するつもり?」と聞き、「お妃様おやめください。私は臣下でハティジェ皇女の夫であるだけでなく、最も近しい友であり同志。我が心痛を知るのは神と己のみ」と述懐する。ただし万が一の際の皇子たちの命に関する約束には承服しかねる様子であることからヒュッレムは背を向ける。イブラヒムは早朝からスレイマンのもとに馳せ参じ、目を開けた最初の証人となる。もはや母后がマヒデブランにかつてと同じ目を向けることはない。勝利の笑みを浮かべて後宮を練り歩きながらヒュッレムは参じる。 56 63忠誠と裏切り休息を取らないスレイマンを案じながらも、万が一の際にはスレイマンの死を追って自害する覚悟を決めていたヒュッレムだけに、愛が戻った喜びはひとしお深い。皆の前でマヒデブランから暴言を受けて口論となるが、母后は初めてヒュッレムの肩を持ちマヒデブランを沈黙させる。スレイマンは「我が力が及ばぬこともある。神がそれを思い出させてくれた」とイブラヒムに漏らす。ムスタファを呼びマルコチョールへの処罰を自分で決めさせる。アイビゲはムスタファのお気に入りの側女のエフスンがマヒデブランに進言したことを聞き及び、「破談になれば皇子は自分のものになると仕組んだのか?」と激高する。エフスンは「皇子の名誉を考えました。あなた様は軽率です」とやり返す。ギュルシャーはヒュッレムが元凶だと矛先を変える。マルコチョールの申し開きは「私ごときがアイビゲ様の心に応えましたがご婚約の日にアイビゲ様も私も心をしまいました。これ以上は何もありません。あろう筈があり得ません。それでもわずかな疑念でも残る場合は首をお取りください」と見事なものだった。地下牢を訪れたマトラークチュに「陛下の目に己の末路が見えた。神に願うのは戦場で散ることだけだった」と清廉潔白の身で命を落とす無念を訴える。イブラヒムは教団の祖サーリムを捉えるが既に口封じのため舌と口が切り取られていた。スレイマンが死の淵から戻り、正義公正の目で曇りなく後宮を平定できるまでに改めた母后は、老齢と憤怒で正誤の判断を間違えていたと詫びて久方ぶりにダイェと坦懐なく語らう。後宮の平和と秩序と安寧の保全のために共に向かう意思を再確認する。イブラヒムがニギャールに睦言を与える。「皇族の家族では安らげない。無条件で愛してくれる子供と家族が欲しい」と心から真実をささやく一方で、連日の朝帰りを訝しむハティジェはついに尾行を決心する。ムスタファはマルコチョールを斬首する意を伝える。エフスンの妊娠に感づいたファトマは夜伽を邪魔された過去の因縁もありギュルシャーに告げ口する。サーリムは公開処刑なされる。ヒュッレムは自室に孫を見に来た母后に礼を述べる。 64残酷な規則スンビュルが機転を利かせてムスタファに奏上する。ムスタファは間一髪マヒデブランの中絶処置を制止する。出産までエディルネ宮殿で匿い、マニサ赴任の際に同行させる手配とする。ダイェの返り咲きが面白くないギュルシャーはニギャールとの話を立ち聞きして、ダイェが土地の登記簿を持っていることを知るや否や家探しして目的のものを発見する。マルコチョールの斬首執行の手筈が整った。あわや一閃のところでムスタファは衛兵を止め、恩赦を与える寛容性を見せる。「マルコチョール・バリ・ベイは長年、帝国と皇族に仕えた誉れ高き軍人である。罪の代償は死に非ず。なぜなら悪意があって犯した罪ではない。よって命を助ける」と。ムスタファは帝位に相応しい判断力と勇気を持つ器であることを証明する。慈悲を受けたマルコチョールはスレイマンのもとへ騒動の謝罪に赴く。イブラヒムの目の前で潔く身分を返却し帰郷を許される姿はあたかもイブラヒムには叶わぬ夢のようだった。居室の前で小さな訪問者を受ける。幼い恋心を燃やすミフリマーフに美しい別れを告げてマルコチョールは帝都を去る。死を目前に回避した経験からスレイマンはイブラヒムに、あの日ヒュッレムが求めるもイブラヒムが応えることのできなかった望みを託す。「その日が来たら皇子たちに正しい道を示せ。あの子達の手を血で流してはならぬ」と。イブラヒムもまた「私が先に天に召されたら我が子たちをお頼み申し上げます」と。スンビュルと医女の話を立ち聞きしたギュルはヒュッレムに指示を仰ぐ。ムスタファはスレイマンと変装して市中へ赴き、親密なムードの中でマニサ赴任を早めてもらうよう頼む。ギュルシャーはダイェの裏切りの証拠である登記簿を母后に突きつけるが、逆に不興を買い女官長の職を剥奪されニギャールを逆恨みする。エフスンの旅支度が整った直後にダイェに出くわして母后に妊娠話が伝わってしまう。マヒデブランが独断でエフスンをエディルネに送る手配をしていたことを叱責し、母后は「何年も同情して損したわ。自業自得ね」と言い放つ。エフスンは厳格な規則通り中絶処置された。 57 65魔女「ヒュッレムは危険。あなたに毒を盛ろうとしていた。でもできなかったの。愛していました。私を忘れないで」と言い残してエフスンは絶命する。激高したムスタファはヒュッレムに、マヒデブランはスレイマンに詰め寄るがはっきりした証拠はない。嘆き悲しむムスタファにスレイマンは「男が泣いてよい状況は2つだけだ。愛を失ったときと死ぬ前だ。だから抑えるな。泣いてよい」と肩を貸す。窮地に立たされたヒュッレムはスレイマンに釈明するが毒を飲むよう言い渡される。死にゆく者が残す言葉を聞く中でスレイマンはヒュッレムの本心を確かめる。またマヒデブランとイブラヒムが敵であるとはっきり言ったことも聞く。エフスンの葬儀が執り行われる。ニギャールは自宅に医女を呼び妊娠を知る。ギュルフェムは母后にハティジェがイブラヒムの不貞を疑っていることを話す。母后はハティジェの雇った尾行係の密偵イドリスを呼び出して今後はハティジェより自分に報告するよう言いつける。エフスンを処置した医女が追放されるところを見てギュルシャーは計略を持ちかける。イブラヒムが自宅へ運んだ金の獅子を象った玉座を見てハティジェは顔色を変える。妊娠したニギャールはダイェに相談するがダイェを見張っていた医女の知るところとなる。 66去り行く者大宰相とニギャールの子を理由に脅迫する医女を平手打ちしたダイェは事故死させてしまう。各人との厳粛な別れと威厳を持って宮殿を去る。ムスタファはヒュッレムの一番の弱点を狙うため兄弟の情と絆を確かなものにしようとする。イブラヒムは西欧風に屋敷を設えさせて神聖ローマ帝国カール5世の使節を迎えている。エルサレムの王はカール5世ではなくスレイマン皇帝のみ、と言いながら、自らの指にはめた指輪の宝石は300万アクチェ(銀貨)の俸給をもらう自分が6万ドゥカ(金貨)でキリスト法王から買い取ったもの、ルビーはフランス王から戦果として得たもの、などという。書記官ジェラールザーデは遺憾な面持ちで見やっている。スレイマンは倒れた日に父帝セリムと夢の中で会った浜辺を散策している。また別の日にイブラヒムと海辺に出て地中海を掌握する構想を話し合ったときのことを思い返している。スレイマンの感傷とは大局的に、その頃イブラヒムは使節に向かって「尊きオスマン帝国は私が支配している」と出過ぎた発言をする。ジェラールザーデも書記しながら思わずイブラヒムを見返してしまう。「私がすることは何であれ不滅である。すべての権力が私の手中にあるからだ。尊き陛下の命令さえ、私の承認がなければ適用されることはない」と言いながら、とうとう皇族のみに許される手の甲への接吻の挨拶を強要する。己自身の権力欲が行動理由となるのではなく帝国と皇統の未来のためかどうかなのだがイブラヒムには根本的かつ決定的に間違えているところがあるのだった。ダイェの後任の出納官にニギャールが推挙される。ニギャールを憎悪の目で見つめるギュルシャー。まずは東の制圧に向かうため、スレイマンはオーストリア使節との会談の結果、協定に背かぬ限りは恒久的平和を保証すると宣言する。ダイェは宮殿から運び出した財産を山賊に襲われて失ってしまう。ニギャールの家に逃げ込む。母后は尾行していた密偵イドリスからイブラヒムの不貞相手がニギャールであることを聞かされる。 58 67悲劇の前触れイブラヒムとニギャールの不義密通を知った母后は気が気でない。天地をも揺るがす悪行にイブラヒムの罷免がもしあればハティジェの繊細な神経では耐えられそうにもないからだ。ダイェも失ったばかりの母后の心臓に負担がかかる。母后付き女官長兼後宮出納官ニギャールが母后の居室に足を踏み入れるや否や鬼の形相で平手打ちを食らわすが、更に腹に子がいることに気付く。報告にはなかったことだ。頭がよく逃げ道を探すのも言い訳も上手いニギャールは昇進に妬んだ者の中傷だと言い張る。懐で蛇を育てていた悔しさから思わず倒れそうになるもスンビュルに命じてニギャールを牢屋に閉じ込める。一方スレイマンとムスタファ、ヒュッレムと皇子たちは郊外の狩りの館に剣術訓練に出かけている。ムスタファが息子たちに親しく振舞う度にヒュッレムは歯噛みしそうになるが「私はあなたとは違う。手を血で汚しはしない。弟なら尚更だ」と言われる。ニギャールの拘束を知ったマヒデブランに詰問を受けるが、ニギャールはダイェの襲撃事件を話して難なく交わす。やはりギュルシャーの仕業だった。アゼルバイジャン軍政官からペルシャに圧されたとの報告がある。西から東への政局の転換期に財務長官イスケンデル・チェレビーもブルサ宮から政権の中央に戻ってきている。トプカプ宮殿に戻ったヒュッレムはマヒデブランに「ムスタファを争いに巻き込むの? 私は子供たちに憎悪の種を植え付けなかった。父スレイマンのような公正であって欲しいからよ」と弱点を突く。ムスタファは一見すると完璧で頼り甲斐があるように思えるが、反面、皇子を私怨で動かさせる行動を非難しているのだった。息子の欠点を指摘されて顔を歪めるマヒデブラン。スレイマンに報告しようとした矢先、母后が倒れる。夢の中で先帝セリムから毒殺用の長衣(カフタン)が届いた日のことを回想していた。 68祈る思いニギャールとマトラークチュの話からダイェは母后がニギャールのせいで倒れたことを知る。ギュルシャーは斧槍持ちメフトゥンからダイェ襲撃の分前を受け取る。怖いもの知らずのファトマは立ち聞きで事情を知る。西欧遠征中に反乱を起こした東の制圧にすぐにでも立たなければならない政局の中、イブラヒムは財務長官イスケンデルに予算を請求するが半額しか許可されず、腹立ち紛れに「身銭を切って賄え。土地財産など幾らでもできよう。お前は帝国一の金持ちだろ」と侮蔑の命令をする。罪を問われ財産を全て失っても母后に一目会いたいダイェはスンビュルとニギャールの手引で宮殿に潜入するがマヒデブランに見つかって追い出されてしまう。一方ヒュッレムはダイェ復帰のためハティジェとスレイマンに訴えかける。イブラヒムはマトラークチュからイドリスが密告者であることを知る。スレイマンはムスタファに「あの瞳こそ我が鏡であり良心。比類なきご両眼を拝する度、己と我が父の姿を見る」と述懐する。母后と生きてきた年月はあまりにも長く今は母后の他に誰も若き日の父帝の有り様を知る者はない。一方マヒデブランはファトマから聞き及び、「長年同じ間違いを繰り返してきて尻拭いはこの私がしてきた」とギュルシャーを激しく叱責して解任する。イブラヒムは密偵イドリスの口を封じる。ニギャールは匿うと言われるが母后の雲隠れの可能性を考え宮殿に出納官として戻る。 59 69権力の行使母后の意識が戻った。ニギャールは顔色を変えるが、母后は身体の筋肉が一切動かせない状態となっており口が利けなくなっていた。イブラヒムはアゼルバイジャンに赴き不在。イスケンデルはオーストリア使節との会談の記録を見て顔色を変える。スレイマンは後宮をマヒデブランに、恩赦を与えられたダイェには母后の世話に専念する意を示す。マヒデブランはギュルシャーを遠ざけたため出納官は引き続きニギャールを任命する。ファトマはムスタファのお気に入りになってみせると豪語する。早速後宮改革に乗り出したマヒデブランは側女を一新するため全員エスキサライ(旧宮殿)に送り、ギュルを監禁し、ヒュッレムの子守エスマを治療院付きに配置換えすると発表するが、ハティジェが介入して越権行為だと叱責する。イスケンデルはイブラヒムの不遜な発言「尊きオスマン帝国は私が支配している」との記録をスレイマンに奏上する。ヒュッレムはイスケンデルの訴えを立ち聞きして何事かを考えながら去る。ギュルはマヒデブランに取引を持ちかけられる。 70駆け引きヒュッレムはマヒデブランと接触したギュルの目を矯めつ眇めつ見る。マヒデブランの条件はヒュッレムの動向を毎日知らせることだった。ニギャールの腹が膨らみ始める。ヒュッレムは現状の打開策としてマニサ赴任を早める着想を得てヒュッレムは離宮にイスケンデルを呼び寄せる。後宮の中には通常の男性は入れないからだ。マヒデブランは側女たちに高級な贈り物を重ねる。反乱の首領シェリフ・ハンの首をあげてイブラヒムが戻る。残るはタフマースブのみ。権限は共有できても絶対帝政の唯一の象徴である玉座は共有できない。イスケンデルの報告した件についてイブラヒムの説明をスレイマンは受けるが、王朝を脅かす不遜な振舞いを決して長く忘れることはないのだった。イスケンデルとヒュッレムが政局について密談を交わす中で、マヒデブランが天井知らずの浪費をしている件を財務長官として介入するよう頼むことも忘れない。一方イブラヒムは書紀の写しを持ってスレイマンに密告した者がイスケンデルであることを突き止める。ファトマは側女たちの前でギュルシャーを殴り倒す。喧嘩はファトマの圧勝で頭に来たギュルシャーは斧槍持ちメルトゥンにファトマの暗殺を依頼するが失敗し、逆にマヒデブランに呼び出され罵倒され、罰としてメルトゥンとの結婚追放を命じられる。残虐で金に汚く一夫多妻制では幸せになりようもなくギュルシャーは思わず死んだほうがましと嘆く。ギュルは泣いているギュルシャーを発見する。ムスタファのマニサ赴任が決まるがマヒデブランは同行しないと高らかに宣言する。ギュルシャーはファトマの他にも宿敵であるニギャールの後をつけてイブラヒムへの妊娠報告を立ち聞きする。 60 71地獄への道マヒデブランに見限られ、宿敵ファトマとニギャールへの憎悪と無念を胸に起死回生の情報を得たギュルシャーは差し出せるものがあれば庇護するとのヒュッレムの発言を思い出す。ヒュッレムはイスケンデルと再び密談を持つ。ギュルがマヒデブランに進言して、ギュルシャーは即座にエスキサライ(旧宮殿)に送られる手筈となり、スンビュルがギュルシャーを拘束している前で、宿敵のファトマとニギャールに嘲笑される。ギュルがギュルシャーが至急ヒュッレムの面会を求めていたことを伝えなかった一方で、少しずつ大人の真似事をして頭角を現しつつあるミフリマーフがヒュッレムにメフメト専用の部屋を用意するよう助言する。スンビュルが閉じ込めたのは治療院だったため、ギュルシャーは医女を通して伝言を頼む。ギュルは愚かにもニギャールに医女が使者に発ったことを伝えてしまう。ニギャールはイブラヒムに走り書きを渡らせ、ギュルシャーを誘拐させる。イブラヒムはイスケンデルに横領で財をなしたと暴言する。イスケンデルは「蓄財は役職に依るものではなく家系に由来するもの。禁忌(ハラム)は犯さない。私は先祖代々のイスラム教徒です」と言い返すが、イブラヒムは度を失って皆の前でイスケンデルを締め上げて「地獄への道は歩きやすい」と脅迫する。なお天国と地獄はキリスト教独特の概念でありイスラム教には存在しない。マヒデブランはメフメトの部屋を封鎖し、反対したニギャールに横領の罪を告発して解雇する。チョバン宰相がスレイマンにイスケンデルの解雇が決定した旨を報告する。 72どんでん返し母后の部屋に一同が会する中、マヒデブランは母后が崩御したら後宮の支配者は自分だと発言する。メフメトの部屋の取り上げに抗議するヒュッレムの訴えを聞いたハティジェはメフメトの部屋を用意したと機転を利かせて発言する。皇統の皇子に何よりも敬意を払っているためである。密かに好意を抱いているニギャールの濡れ衣の追放を決定したマヒデブランに反感を持ったギュルは情報の横流しをやめてマヒデブラン排斥を懇願する。夜伽に差し出された娘の誘導役をフィダンから取り上げたファトマは階段から転がして落とす。ギュルは情報の横流しで得た信頼で偽話をフィダンに信じ込ませ、母后の部屋まで案内する。ヒュッレムの部屋にハティジェとダイェが呼び寄せられるが、ヒュッレムは呼んだ覚えがないと主張し、母后が1人御寝されていることが気になり皆で急いで戻ることになる。そこには見張りの娘を殴り倒して絞殺用の長い紐を手にしたフィダンの姿があったのだった。激高するハティジェはフィダンを牢屋に閉じ込める。頭を冷やすにつれムスタファを考えマヒデブランをマニサ同行に同意させる。だが同行をスレイマンに奏上させる直前でマヒデブランが発言を変えてダイェを再任すると言う。実はニギャールから事情を聞いたイブラヒムが手を回したのだった。ニギャールの所業にあんまりだとギュルは訴えるがあなたのためだと言い返す。イブラヒムはヒュッレムに「手下は総入替えしたほうがいい足並みが揃っていない」と謎の言葉を残して去る。ニギャールがイブラヒムの手駒であることに気がついたヒュッレムは「私は”一度裏切れば何度でもやる”と言った。お前は否定した。でもまた裏切ったのね。裏切りの代償は払わせるから覚悟して」とニギャールに詰め寄る。その夜ヒュッレムは行商人を装った女から伝言を受け取る。翌朝、斧槍持ちのペルチェムに確認して離宮に向かう。そこには行方不明になっていたギュルシャーの暴行されて変わり果てた姿が待っていた。 61 73暴かれる秘密イブラヒムとニギャールに半殺しの目に遭いながらも一命を取り留めたギュルシャーは宮殿でヒュッレム付きになることを引き換えにイブラヒムの首が飛ぶ重大な情報を渡すという。マヒデブランの厄介者で疫病神のような女官で、浅薄で威張るだけが取り柄だが忠誠心には疑いようもないギュルシャー。しかしこのような姿で現れたことは明白に罠であるべくもない。ヒュッレムはニギャールの子の父がイブラヒムであるという重大な情報を得る。一方イブラヒムはイスケンデルを私怨から排除したくてたまらないことをスレイマンに見透かされる。ギュルフェムはマヒデブランの浪費に忠告する。ファトマはムスタファのお手付きになかなかなれないことを悩んでいる。ハティジェはニギャールとイブラヒムによって暴かれた母后を巻き込んだ計略に怒ってヒュッレムとは口も利かない。マヒデブランはスレイマンの夜伽に新しく入ったロシア人の側女を選ぶ。スンビュルはこれまでうまく立ち回りヒュッレムの決定的な敵にはならず褒め言葉は口にするがギュルのような手足に成り代わるような働きはしなて来なかった。だがムスタファの出立を控えてか珍しくヒュッレムにすり寄ってくる。ヒュッレムは「お前は私の味方か? 敵か?」と率直に尋ねるが、「私ごときがお妃様の敵などと」と当たり障りのない返答だ。スンビュルの望みが後宮に長く留まり願わくば高い権力を振るうことと見抜いたヒュッレムは「私と共に後宮の未来の一部になるか?」と訊き、ついにスンビュルを配下に置くことに成功する。ヒュッレムがニギャールの尾行のために雇った男は確かにイブラヒムとニギャールが密会しているところを目撃する。後宮の騒ぎが収まらずマヒデブランの浪費が続くことからスレイマンは誰に対しても公正で心優しいギュルフェムを任命する。スレイマンは市中に暮らしている乳兄弟のヤフヤを尋ねる。 74偉大なる母后東方遠征で節約が必要なときに一皇子の赴任に年間予算を遥かに超える浪費をするとはとギュルフェムはマヒデブランに苦言を呈すが、身の程を知れ、余計な口を挟むなと高飛車な態度を取られる。スレイマンはヤフヤに母后の夢の見立てを頼みに来たのだが思わしくないものだった。帰りがけに困窮した市民を助けて礼としてメノウを受け取る。悩みや苦痛を取り去る宝石だ。ヒュッレムはニギャールの家を訪ね、旅支度をしているのを目撃する。かつてヒュッレムの顔を火で焼き、暴力的で怖いもの知らずのファトマはいつか皇帝妃になる夢を抱き、ムスタファに用意した側女を治療院送りにしているが自身は顧みられず焦眉の急で画策している。早くお手付きにならなければマニサ赴任に側女として参加できないからだ。ニギャールは出産する家に移動する途中で何者かに襲撃される。ギュルフェムに頼めないマヒデブランは財務長官イスケンデルを呼び出すが追加予算は承認されない。イブラヒムの名を出し食い下がるが手元に資金そのものがないという。ヒュッレムから依頼されているイスケンデルは巧妙にユダヤ人両替商への借金を勧める。イブラヒムは市中の自分の悪評を口にしている詩人フィガーニーを拘束するが、信仰告白を迫られる。軟禁されたニギャールは思わぬ人物との対面に向き合っていた。自分の告げ口により闇に葬り去ったはずのギュルシャーだった。全てを知ったヒュッレムは身体を動かせない母后を前に、実は母后はとうに知っているとも知らず、イブラヒムとハティジェの不貞関係を吹き込む。スレイマンが手に握らせていたメノウは母后の手のひらの中で漆黒に染まっていく。 62 75新たな秩序ヒュッレムがハティジェに真実を直接伝えようと大宰相邸を訪れたところでイブラヒム本人が割り込み、母后が亡くなったと告げる。宮殿中が黒い喪服で染まり、荘厳な葬式が営まれた。ギュルフェムがマヒデブランに代理職としての後宮の全権をそのまま引き継ぐようにと賜ったスレイマンの下命を伝える。マヒデブランは相変わらずの贅沢三昧である。ダイェはスレイマンの引き止めにも関わらず、ギュルシャーにより土地財産を失っていても、宮殿の外のとある農場の片隅で重労働をしている。市中でスンビュルと会うが威厳を持って理由を話したがらない。ファトマはムスタファの寝所に連夜通っている。ニギャールは元の自分の家に監禁されている。アヤス宰相はフィガーニーを訪れて尊師の名を割るように勧める。ニギャールは逃亡を図るが失敗する。マヒデブランは母后の部屋に移住する準備をする。 76自責の念イブラヒムはフィガーニーが名を出した尊師への仲介者セイフィなる男を追う。ヒュッレムはギュルフェムにマヒデブランの母后への部屋への移動は尊き母后の思い出を汚す不敬行為だと印象づける。ファトマはマニサ宮へムスタファを1人で赴任させればヒュッレムがまた毒殺を仕掛けるやもしれないとマヒデブランに進言して自分を一行に加えるよう示唆するが、手放すつもりのなかったフィダンを出納官として行かせると言われる。ダイェは母后の形見の見事なルビーとダイアモンドのネックレスを農場の下女に奪われるが取り返す。マヒデブランは皆に知られぬよう真夜中にユダヤ人両替商のラケルを自室に迎えている。だが実はヒュッレムがイスケンデルを通して紹介した女商人なのだった。ダイェは夢の中で母后崩御の元凶であるニギャールの顔を見る。ヒュッレムはスレイマンにメフメトの部屋を何ヶ月も待たされているのに何故自分はすぐに母后の部屋に移るのだとこぼす。フィガーニーは見せしめとして市中の広場で公開絞首刑となる。イブラヒムはマトラークチュから尊師の場所が判明したとの報告を受ける。スンビュルはダイェを農場に訪ねるが「母后様の死は自分のせいだ、お力になれなかった」との無念を口にするばかり。全財産を喜捨しており進み望んでいた暮らしをしているのだった。母后の葬式に帝都を訪問中のハティジェの姉ベイハンはスレイマンにフェルハト宰相を処刑されたときのことを回想する。ヒュッレムと共に大宰相邸を訪れたスレイマンと話し、日にち薬で少しは楽になったが心に刻まれたことは消えないと訴える。ヒュッレムはナズルに命じてハティジェの宝石箱に書き付けの手紙を忍ばせる。マヒデブランは母后の部屋を上階の隅まで全て大掛かりに改変することに夢中になっている。主権建築官に伝えて専用の浴場の制作も命ずる。ハティジェは一同の談話の間を抜け出し、自室に戻り投書に気づき読む。不貞関係にある女の家の住所が記されていた。ダイェはスンビュルと会った夜更けに縊死を図る。最後の貴重品である母后の首飾りは農場の下女に取られぬよう、市中の物乞いに与えていた。 63 77懐の蛇朝になりハティジェは記されていた住所を訪ねる。そこには追放されたはずのニギャールが大きな腹をして立っていた。ギュルフェムはスレイマンの意向により母后の居室の改修の停止を命じる。スレイマンはムスタファと棒術の対戦をしながら父帝セリムの「もはや無邪気ではいられぬ」という言葉を思い返していた。イブラヒムとマトラークチュは尊師のいるという教団の一角に向かっていた。そこには前大宰相ピリー・メフメトの息子アラウディンが鎮座していた。イブラヒムと対峙するがアラウディンは自決を選ぶ。その頃アヤスはイスケンデルと話している。尊師と思われていたアラウディンは実は尊師の存在を秘すために犠牲となった者で、真の尊師とはイスケンデルのことなのだった。ヒュッレムはスンビュルを通してイスケンデルからユダヤ人両替商ラケルに接触を取ってもらう。マニサ赴任を翌日に控えた前日の夜、ファトマはムスタファと過ごす。当日の朝マヒデブランはイブラヒムを訪ね金の無心をする。とうとう後宮の年間運営予算の数倍に膨れ上がっていた。イスラム金融では金の貸付に利息を取ってはいけないことがコーランで決まっているので金を借りることはできず、その分ユダヤ教徒の営む金融は利息が高いのだった。イブラヒムは数日中に女を消すので待つように言い渡す。 78愛が壊れる時ハティジェはイブラヒムとともに尊師討伐から戻ったマトラ―クチュを捕まえて詰問する。マトラークチュは自分が父親だと主張するが、もし嘘なのであればお前も共謀者ね、とハティジェに言われる。イブラヒムはグリッティーがハンガリー玉座を目指して拘束され殺害された旨をスレイマンに伝えるが、スレイマンは「王位に執着した者の末路だな。己の出自を忘れ王朝を夢見た者の行末は戒めにせねば。イブラヒム宰相(パシャ)」と言う。スレイマンは常であればパルガ人と呼ぶ。明らかに当てこすりなのだった。イブラヒムは腹いせに「大宰相に口を出す者、暗殺を企てる者は震え上がるがいい」とイスケンデルに言う。後宮ではムスタファの出立の挨拶が行われる。ヒュッレムを呼び出したハティジェは真相を求める。ヒュッレムは証人としてギュルシャーを招聘する。スレイマンはムスタファとの別れに「貧困は最大の豊かさだ。最も恐ろしいものはおごりである。最も尊いものは高潔な人格だ」「愚か者やケチな者を仲間にするな。彼らは助けが必要なときに傍観するだけだ。利口でも悪人を仲間にするな。彼らは多少のものと引き換えに簡単に裏切る。嘘つき者を仲間にするな。彼らは蜃気楼のように言葉で遠くのものを近くに見せて操ってくる」と言って送り出す。マトラークチュはイブラヒムにハティジェに露見したことを伝える。鉢合わせたヒュッレムに「手下は総入れ替えするべきね」とやり返される。ユダヤ人両替商ラケルはマヒデブランに追い返される。つまみ出されそうになったラケルはギュルフェムの名を連呼する。追い詰められたマヒデブランはギュルフェムの妨害をファトマに命ずる。同じく追い詰められたイブラヒムはハティジェの前でニギャールとの不貞を告白する。 79最後の勝者「あなたの職務は我が家族への奉仕。私こそ至高の帝国よ」と言われたときに愛は壊れたのだとイブラヒムは述懐する。ハティジェは姉ベイハンに支えられながら泣き通す。スンビュルがギュルフェムの救助に間に合い医務室に運ぶ。スレイマンは誰何(すいか)するがギュルフェムは答えない。「何様のつもりでマヒデブランを脅迫するか」と言われたと事実のみを答える。スレイマンはマヒデブランを呼び「お前に後宮を任せたとき予感はあったが機会を一度だけ与えたかったのだ」と後宮の全権者解任を言い渡す。意気消沈して廊下に出たところでイブラヒムを見つけ取りなしを頼もうとするが、こちらも気もそぞろの様子で頼りにならない。「長年のお世話に疲れました」と言われてしまう。自分の不貞の露見にも、手駒であるはずのマヒデブランの度重なる失態にも、辟易していたのだった。ヒュッレムには「何年も前に話した。私がお前を蹴落とすと。お前はやれるものならやってみろと言った。今もお前は奴隷。だが私は自由な女」と言われる。元はと言えばイブラヒムが奴隷市場で買い求め皇帝に献上した女がヒュッレムなのだった。とうとう後宮の全権を掌握して勝利の笑みを浮かべるヒュッレム。皇帝の正妻、絶世の美女、押しも押されもせぬ5人の皇統の母、かつて自分と子供たちに誓った通り、屈服させられひざまずかされ、隷属の証に裾に接吻させられた者をついに皆ひれ伏せさせたのだ。「後宮が何だ。私は世界を支配するのだ」
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