挨拶
「挨拶」とは、人と会った時や別れ際などの節目に礼儀を示す意味で取り交わされる言葉や行動などのことである。あるいは、集会や式典において皆の前で祝辞や弔辞を述べることも「挨拶」という。
「挨拶」という漢字は、常用漢字表に記載されているが、「挨」も「拶」も「挨拶」以外の言葉で用いられる機会は少ない。「挨拶」も「あいさつ」とひらがな表記されることが多い。
「挨拶」の基本的な意味
日本語の「挨拶」の代表例としては、出会った人には「おはよう」「こんにちは」、これから別れる人には「さようなら」「じゃあね」といった表現が主に用いられる。迎える際にお辞儀をする、別れ際に手を振る、といった動作も挨拶の一環といえる。挨拶は、相手に対して親愛や尊敬などの気持ちを示すための振る舞いである。その場面に適した挨拶・礼にかなった挨拶は、相手と良好な関係を築くきっかけにもなり、人間関係を円滑にするための手がかりにもなる。挨拶は社会のあらゆる場面において基本的な礼儀・マナーとして重んじられる。
式典などで主催者や賓客が改まって祝意などを述べることも「挨拶」というが、これも友好的な態度を示す礼にかなった振る舞いという意味では「おはよう」等の挨拶に通底するといえる。
「挨拶」に関する名言
「挨拶」に関連する名言の例としては、デール・カーネギーの「人に好感を持たれたいなら、誰に対しても挨拶をすることだ。挨拶ほど簡単でたやすいコミュニケーションの方法はない。」という言葉が挙げられる。デール・カーネギー(1888年〜1955年)は、「人を動かす」の著者として有名である。「挨拶」の語源・由来
「挨拶」の「挨」の字は「押す」という意味があり、同じく「拶」は「迫る」という意味がある。「挨拶」という言葉は、もともとは禅語である。その語源は宋代に成立した仏教書(禅宗の指南書)である「碧巌録」に記載されている「一挨一拶(いちあいいっさつ)」とされる。
禅宗では、師匠が弟子に声をかけ、弟子の返答によって修行の度合いや悟りの深さを見極める。これが「人と儀礼的に交わす言葉」という今日の用法に転じたわけである。
「挨拶」を含む様々な用語の解説
挨拶文
「挨拶文」とは、祝意などを「挨拶」として述べるために用意された文章のこと、もしくは、手紙などで冒頭の書き出しにしたためる時候の挨拶などの文言のことである。相手へのお礼の気持ちを伝えたり近況を報告したりするために送られる書状は、一般的に「挨拶状」と呼ばれる。
挨拶状ドットコム
「挨拶状ドットコム」は、挨拶状の印刷を専門に手がけるウェブサイトの名称である。株式会社グリーティングワークスが運営している。年間およそ十数万件の利用実績を誇る、「挨拶状印刷」の分野の最大手の一角である。「挨拶 - 原爆の写真によせて」
「挨拶 - 原爆の写真によせて」は、石垣りんが1950年代に作った詩のタイトル、または、後年刊行された詩集のタイトルである。中学国語の教科書に掲載されるなどして、多くの人が知る詩である。石垣りんは銀行の事務員として働きながら、詩の創作を続けていた。鋭い洞察を変哲のない言葉でつづった作風が高く評価されている。
「挨拶」の使い方・例文
時候の挨拶
「時候の挨拶」とは、季節や気候に関する話題に触れる形式の挨拶のことである。季節の移り変わりに関する感慨を相手と共有したり、相手を気遣ったりする意義がある、手紙や挨拶状の定番の書き出しである。時候の挨拶として用いられる表現や叙述形式はある程度パターン化されている。時季に応じた表現は、一般的には二十四節季を顧慮して選ぶ必要がある。
たとえば、「新年」の「時候の挨拶」の具体例としては、次のような表現が挙げられる。
・新春の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
・初春の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
・喜びに満ちたお正月をお過ごしのことと存じます。
引っ越しの挨拶
引っ越しの挨拶は、引っ越しに伴い関係者に行う挨拶もしくは関係者に送る挨拶状のことである。旧居に関係する人への挨拶では、「これまでお世話になった」という感謝の気持ちが伝えられる。
【例】いつもお世話になっております。〜(住所)に住んでおります〜(名前)です。- 月 - 日に引っ越すこととなりましたので、挨拶に参りました。旧居時はお世話になり、ありがとうございました。(引っ越し日にはご迷惑をおかけしてしまうこともあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。)
新居に関係する人への挨拶では「これからよろしくお願いします」という関係構築の手がかりとしての言葉が伝えられる。円満な近所づきあいを期するために重要な挨拶である。
【例】はじめまして。このたび、〜に引っ越して参りました〜と申します。先日は引っ越し作業により、多大なるご迷惑をおかけいたしました。これからお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。
あい‐さつ【挨拶】
あいさつ 【挨拶】
挨拶
- 東京地方にて、芸妓が一寸客席に出て、一時間以内に引退くことをいふ。一寸挨拶をする程度であるからいつたものである。「御挨拶」ともいふ。又大阪にては「お盃」ともいふ。〔花柳語〕
- 之は一寸顔を出して間もなく引き下る事で、ホンの挨拶だけといふ意味、京阪では「お盃」といつてゐる、馴染の客が来た場合には芸者が他の席へ呼ばれてゐても、一寸でも顔を出さねばならぬ事になつてゐる。
- 東京地方にて、芸妓が一寸客席に出て、一時間以内に引退くことをいふ。一寸挨拶をする程度であるからいつたものである。「御挨拶」ともいふ。又大阪にては「お盃」ともいう。
- 〔俗〕東京地方にて芸妓が一寸客席に出て一時間以内に引退くこと。大阪地方では「お盃」といふ。ごあいさつともいふ。
- 東京を主としてその周辺地区で芸妓が一寸客席に出て、一時間以内におひまをもらって、ほかの座敷へ行くことをいう。一寸あいさつをする程度だからである。「ごあいさつ」ともいう。大阪方面では「お盃」という。〔花柳界〕
- 〔花〕関東で使う言葉で芸妓が一寸客席に出て、一時間以内に暇をもらって他の座敷へゆくことをいう。「ごあいさつ」ともいう。大阪方面では「お盃」ともいう。
挨拶
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受け答えを形式化することで、誤解なく意思表示ができるため、日常生活などでの不和を避ける働きを期待できる。他方、極端に形式化された受け答えは、官僚制と同じように冷たさや無関心さを帯びて行く。
概説
人間同士が、何らかの目的で顔を合わせる場合、すぐにその目的に関する話題を始めることはまずない。最初に互いの姿を確認した際、言葉や身振り、あるいはその両方で互いに相手の存在を認めたとわかる行動をする(目を合わせ、手を挙げる、「やあ」と言うなど)。さらに接近して話し始める際も、特定の動作や言葉で互いに話し始める。これらの一連の行動が挨拶である。また、本題に入る前に互いに関する情報や天候や前後の無関係なやり取りなどをするのが普通で、これも挨拶に含めることもある。
話題が終わって別れる場合にも一定の決まったやり取りが行われ、これも挨拶である。普通は別れの挨拶の方が短い。動作がともなう場合、出会いの挨拶と同じものが使われることがよくあるが、異なった挨拶も見られる。
さらに、ひとつの状態に入る前や終わった段階で、歓迎の言葉やこれからの心がけなどについて話すことも挨拶と言うことがある。卒業式や入社式などに行う挨拶はこの例である。
語義
日本語の「挨拶」は、元々禅宗の用語であった〈一挨一拶〉。修行者が互いの修行の成果を質問し合う事によって悟りや知識見識等の深さ浅さを、確認する行為を指す。そこから民間へと広まり、人と会った時にとりかわす儀礼的な動作や言葉・応対などを言うようになった。なお、江戸時代には裁判や科刑などの問題に疑義があるときに各藩が江戸幕府に問い合わせることを挨拶といった[1]。
中国語では「挨拶」という字は手を木片で挟む拷問を意味するため、「問候」が中国語の挨拶に該当する。
社会的な位置づけ
多くの社会で、人間関係を円滑にする上で使用されている。
地方自治体や町内会等で「挨拶運動」が行われている場合もある[2][3]。
挨拶の種類
大別すると、言葉による挨拶と身振りによる挨拶の2種類がある。両方を同時に行う挨拶も存在する。
言葉による挨拶
どのような言葉が挨拶に用いられるかは、その文化圏の言語習慣に依存する。文化圏ごとに決まった「挨拶の言葉」の言葉があり、その中でも更に地域、集団、職業、年代などによってそれぞれ異なる挨拶の言葉が存在する。
挨拶の言葉は、TPOに応じて使い分けられる。特に時間によって使い分けられる言葉と、いつでも通用する言葉がある。親しい関係では後者が使われやすい。相手と自分の関係によって敬語表現が用いられる文化もある。また、フランス語のように、「次に会うまでの時間」によって別れの言葉を変える例もある。また、同じ挨拶の言葉でも複数の状況で使えるケースもあり、これもやはり文化ごとに違いがある。
挨拶の言葉は、往々にして天候に言及するものである。多分同じ時間と場所にいる万人に共通して興味のある話題だからであろう。また、それに続くちょっとしたやりとりにも、天候に関するものがよく持ち出され、それも挨拶の一部と見なされる。大村益次郎は村医者であった頃、「暑いですね」に「夏は暑いのが当たり前です」と返すようなやり取りをするので煙たがられたという。
挨拶の言及内容としては、天気についての意見、現在の状況における同情的な意見、子どもやペットを認める言葉、服装や外観について認める言葉、買い物途中なら買い物について、調子を尋ねるなどがある[4]。
外国語教育においては、ほぼ例外なく初期の段階でその国の「挨拶の言葉」を学ぶ。
身振りによる挨拶
挨拶には一定の行動をともなうのが普通であり、往々に身体的接触をともなう。しかし、見ず知らずの間での身体的接触を好ましくないとする地域もあり、性別による問題もある。いずれにせよ、その形は文化ごとに異なる。また、同一文化圏であっても、挨拶する両者の関係の違いによっても大きな差がある。代表的なものを挙げる。
- 挙手:手を挙げる。遠くから見つけてもらう。さらに左右に振ることもある。
- 握手:互いに手を握りあう。しばしばそれを揺する。
- ハグ(抱擁):互いに腕で抱きしめあう。
- 接吻:唇を相手の体に触れさせる。場所によって意味が異なる。顔であれば抱擁の上で行われる。
- お辞儀:離れた位置で、頭を前方下に傾けたり、上半身を前に傾ける。傾け方で敬意の差を示す。
- 拱手:中国での敬礼。胸の前で手を合わせる。
- 顔の接触:額や頬、鼻などを合わせる[5]。
- 警察や軍隊では「敬礼」と呼ばれる特殊な挨拶が存在する。片方の腕の肘から先を真っ直ぐ伸ばした状態で手の部分を顔の高さに上げる動作が一般的であるが、各組織によって肘の角度にそれぞれ異なる規定が存在する例もある。中にはナチス式敬礼(真っ直ぐ伸ばした右手を体前方の斜め上に上げる動作)のように、人々から忌避され処罰の対象となる「挨拶」も存在する。その他にも、特定の集団が身内だけの挨拶の型を持つ例は多い。
- 事情により言葉を話せない者のための“身振りによる言語”「手話」というものもある。当然、この中にも挨拶の動作がある。
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やや離れた場所にいる大勢の人々に挨拶を行う時に用いる、手を挙げ左右に振る挨拶(hand-waving)。ステージ上から客席にいる人々に挨拶するのには、しばしばこの方法が選ばれる。
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テニスの試合後の握手。
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卒業式でハグし合う学生たち
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身分の高い人物に対して(へりくだって)行う、手への接吻(hand-kissing)。かつて王に対して臣下が、貴婦人に対して騎士が、教皇に対して人々が、さかんにこうした挨拶をした。ヨーロッパの貴族の伝統や宮廷文化をほうふつとさせ、優雅さを感じさせる挨拶である。現代でも、非常に深い尊敬を表現したり、「うやうやしさ」を表現したり、女性に喜んでもらうために、あえてこの挨拶がされることがある。
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インドやネパールで交わされる挨拶、ナマステ。合掌して「ナマステ」と言う。
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カンボジアのSampeahという、尊敬の念を込めた挨拶方法。互いに合掌し、おじぎをしつつ、「チョムリアップ・スオ」と言う。
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日本のお辞儀の様々な角度とそれぞれの意味合い。
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拱手。中国での敬礼。
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敬礼と答礼を行う、海上自衛隊と米国海軍のメンバーたち。
それ以外の形
言葉や動作以外に、物品を渡して贈り物をする場合もある。その際にも定型的なやり取りが付随する。
文章における挨拶
手紙においても、「挨拶」には独自の作法がある。主に、冒頭や末尾で決まった挨拶を記す。簡潔に済ませるだけの文化もあれば、日本語のようにかなり詳細な体系が出来上がっている文化もある。会話の際の挨拶を使うことも可能であるが、手紙特有の挨拶の語がある例も多い。文章語としての歴史によるものと思われる。
紙製の手紙より手軽にやり取り出来る事を特長とする電子メールにおいては、省略される傾向が強い。
例えば観光地では、町中に横断幕などで観光客への挨拶を提示していることもある(その地方の方言の場合も)。
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米沢さよぐござったなし
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ようきんさった。
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おかえりなさいませ。
動物における挨拶
配偶時の雌雄、育児期の親子、あるいは集団生活を営む種など動物が同じ種の仲間と出会う際に、相手の攻撃を避け有効的関係を形成・維持するためにとる行動。種類に応じてさまざまな方法が見られるが、その基本は友好的態度を表すか、攻撃性を隠すかのいずれかである。挨拶行動はいくつかのもとになる行動がしだいに儀式化することによって挨拶としての機能をもつようになり、種社会の中に定着したと考えられている。
脚注
- ^ “名古屋大学附属図書館2006年春季特別展「地獄物語」の世界〜江戸時代の法と刑罰〜図録ガイド”. 名古屋大学附属図書館. 2021年1月7日閲覧。
- ^ “アスリートがあいさつ運動を応援”. 東京都. 2010年8月15日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “「あいさつ運動」における教育委員会の取組み”. 神奈川県. 2013年11月6日閲覧。
- ^ デヴィッド・A・クラーク『気分改善ツールキット』金剛出版。
- ^ 山田仁史「鼻の挨拶について」『台湾原住民研究』第5号、風響社、2000年、pp. 163-172、NAID 40005130004。
関連項目
- 名称に挨拶を含む記事
- おはよう - 「おはよう」で始まるページの一覧
- こんにちは - 「こんにちは」で始まるページの一覧
- こんばんは - 「こんばんは」で始まるページの一覧
- もしもし (曖昧さ回避) - 「もしもし」で始まるページの一覧
- その他
挨拶
出典:『Wiktionary』 (2021/10/23 00:27 UTC 版)
名詞
挨拶(あいさつ)
翻訳
- ドイツ語: Gruß (de)
- 英語: greeting (en)
- エストニア語: tervitus (et)
- スペイン語: saludo (es)
- フィンランド語: tervehdys (fi)
- フランス語: salutation (fr)
- 朝鮮語: 인사 (ko) (insa)
- オランダ語: groet (nl)
- ノルウェー語: honnør (no)
- ポーランド語: powitanie (pl)
- ポルトガル語: cumprimento (pt)
動詞
活用
「挨拶」の例文・使い方・用例・文例
- 彼は満面に笑みを浮かべて私に挨拶した
- 決まりきった挨拶
- 子供たちの代表が親や祖父母の人たちにお礼の挨拶をした
- 着工前に必ずご挨拶に伺います
- 彼が海外の人と初めて挨拶を交わした
- 〜と彼がファンに挨拶した
- 彼女は別れの挨拶に手を振った。
- 私たちは入口で挨拶する人達に迎えられた。
- 新年の挨拶
- 毎朝出社時の挨拶
- とんだご挨拶だ
- 挨拶しに来てくれて本当にありがとう。
- あなたは真心こめて挨拶しますか?
- 挨拶状を覚えていますか?
- 私は今まで見た中で一番すばらしい笑顔で挨拶をしてきた少女に会った。
- 挨拶をするために、寄りました。
- あなたからの挨拶ひとつで私は1日幸せになれた。
- 副市長の私、山田が市長の鈴木に代わりまして歓迎のご挨拶を申し上げます。
- 私のために彼らに挨拶をしておいて。
- また近いうちにご挨拶にうかがいます。
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