指数え
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/19 07:32 UTC 版)

概要
現代においてはアラビア数字の影響で衰退気味であるが、かつては様々な文化で異なる体系が発達しており[注釈 1][注釈 2]、今日普通に連想されるような指を折って一つずつ数えるようなものよりも、遙に洗練された方法が存在し教育されていた。狭義では手指(finger)のみで数える方法だが、広義では足趾(toe)も用いて数える方法も含まれる。
また、指数えはコミュニケーションの手段としても用いられ、特に市場に於いては立ち会い取引での売買でハンドジェスチャーが使用される。他にモラと呼ばれる遊戯では指数えが重要な要素である。
通常は、零は手を握った状態で示され、自然数が片手で一から五までが指差して示される例が目立つ。
現在の文化
五以下の数え方
指数えは文化や時代によって多様であり、これを研究する学問(数学文化学)も存在する。数え方の文化的な違いは時にシボレスとしても扱われ、戦時には異なる国の人物を見分ける指標となり、クエンティン・タランティーノ監督の映画『イングロリアス・バスターズ』やジョン・D・バロウの著書『天空のパイ』(Pi in the Sky)ではこれがプロットポイントとなっている。[1][2]
ある人が他の人に数を伝える場合、指を立てることで特定の数を示す。例えば英語圏ではよく人差し指、中指、薬指の順に指を縦に立てて数の三を示す。[3]一方で大陸ヨーロッパの人々にとっては人差し指ではなく親指が数の一を表しており、人差し指から小指が数の二から五を表す。また一般に数えている間は指が広げられる。例えばヨーロッパ人は親指、人差し指、中指、薬指を使って四を広げて四を表し、[3] 北米では人差し指、中指、薬指、小指が使われる。
十進法による六以上の数え方
中国の指数字は、十まで数えるが地域によって差がある。
日本では、指数えが手を開いた状態から始まる。東スラヴ諸国のように、親指が数の一を、小指が五を表すが、数える際指は内側に折られる。親指から始まり完全に閉じた手は五を表す。さらに大きい数ではこの行為を反転し、立てた小指は六、開いた手は十を表す。一方で他人に数を示す場合は英語圏と同様の方式であり、人差し指が一を、親指が五を表す。五を超える数については、開かれた手の上にもう一方の手の指を重ねることで示す。例えば、七は、人差し指と中指を開いた掌に押し当てて表される。[4]また、十は両方の掌を前に向けることで表す。
「三の倍数」進法による数え方

指数えには、「五で桁上がり」の五進法、「九の次で桁上がり」「5+5 = 10」「両手で十まで」の十進法、「5×4 = 10」「両手両足で二十まで」の二十進法といった、「五の倍数」に囚われない数え方も存在する。代表例として、以下に挙げるような「三の倍数」進法に基づく指数えが使用されている。
- 五の次で桁上がり
一つは、「五の次で桁上がり」「5+1 = 10」という六進法の数え方である。この数え方では、片手を一の位、もう片手を六の位として、三十五=五六五=55(6)まで数え、三十六=100(6)は桁溢れになる。十進法ではもう片手で「六、七、八、九、十」と数えるのに対して、六進法ではもう片手で「六、二六、三六、四六、五六」と数える。小数は、片手で六分の一の位、両手で三十六分の一の位が計算可能となる。
両足を含めて数える場合には、片足を三十六=100(6)の位、もう片足を二百十六=1000(6)の位として、千二百九十五=5555(6)まで数え、千二百九十六=10000(6)が桁溢れになる。
- 手指の「指骨」で数える
もう一つは、「九に三を加えて桁上がり」「3×4 = 10」という十二進法の数え方である。これは、「十五に五を加えて桁上がり」「5×4 = 10」という二十進法と対置される数え方である。問題は何を「三」とするかであるが、親指以外の「三つの指骨」である。親指が指標となり、各指の三つの指骨(末節骨 ・中節骨・基節骨)を小指から数えて十二=10(12)まで到達する。
マヤ数字に例えると、横棒が「三」で、横棒三つに点一つ(実際のマヤ数字で十六=G(20))が「十」(=A(12))となる数え方になる。片手を十二=10(12)まで、もう片手を十二の倍数として、百四十四=100(12)まで数える。小数は、片手で十二分の一の位、両手で百四十四分の一の位が計算可能となる。これは、アジア地域の指数え体系で使用されている。
[5][6]
脚注
- ^ ジョルジュ・イフラーは人類は手を用いることで数えることを学んだ記しており、例としてボエティウス(480-524)が指を使って計算している絵を示している。 Ifrah 2000, p. 48.
- ^ ノイゲバウアー 1952, p. 9では紀元前3千年紀のエジプト古王国のピラミッド文章にまで遡るとしている。
出典
- ^ Barrow, John D. (1993). Pi in the Sky. Penguin. pp. 26. ISBN 978-0140231090
- ^ “Dactylonomy”. Laputan Logic (2006年11月16日). 2012年5月12日閲覧。
- ^ a b Pika,Simone; Nicoladis, Elena; and Marentette, Paula (January 2009). “How to Order a Beer: Cultural Differences in the Use of Conventional Gestures for Numbers”. Journal of Cross-Cultural Psychology 40 (1): 70–80. doi:10.1177/0022022108326197 .
- ^ Namiko Abe. “Counting on one's fingers”. About.com. 2012年5月12日閲覧。
- ^ Ifrah, Georges (2000), The Universal History of Numbers: From prehistory to the invention of the computer., John Wiley and Sons, p. 48, ISBN 0-471-39340-1
- ^ Macey, Samuel L. (1989). The Dynamics of Progress: Time, Method, and Measure. Atlanta, Georgia: University of Georgia Press. pp. 92. ISBN 978-0-8203-3796-8
- Neugebauer, Otto E. (1952), The Exact Sciences in Antiquity, Princeton University Press, ISBN 1-56619-269-2; 2nd edition, Brown University Press, 1957; reprint, New York: Dover publications, 1969; reprint, New York: Barnes and Noble Books, 1993.
- Wedell, Moritz (2012). Was zählt. Köln, Weimar, Wien: Böhlau. pp. 15–63. ISBN 978-3-412-20789-2
参考文献
- The Universal History of Numbers, Georges Ifrah
関連項目
外部リンク
この記事の外部リンクはウィキペディアの方針やガイドラインに違反しているおそれがあります。 |
指数え
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 05:37 UTC 版)
六進指数え。32(6)で20(10)、つまり32を「三六二」として数える。小数も0.32で (20/36)10=(5/9)10 を表現できる。 拳を0とすれば、0から5までの六種類の数字を片手で表現できる。六進法の指数えでは、片手(主に右手)を一の位、もう片手(主に左手)を六の位として、「五六五」すなわち、三十五(55(6)=35(10))まで数える。この方法では、右手で0から5まで数えて、「左手が1」すなわち六になったら桁上がりで右手を拳に戻す。 例えば、左手が「1」と右手が「5」なら「六五」すなわち十一(15(6)=11(10))、左手が「3」で右手が「2」なら「三六二」すなわち二十(32(6)=20(10))、左手が「4」で右手が「3」なら「四六三」すなわち二十七(43(6)=27(10))を表す。 二桁で数えるので、(1)「一の位」と「六の位」、(2)「一の位」と「六分の一の位」、(3)「六分の一の位」と「三十六分の一の位」、の三種類が計算可能になり、1.1以降の小数や仮分数も表現できる。小数は0.01(十進分数1/36)から5.5(5と5/6)までをカウントできる。前述の左手が「3」で右手が「2」なら、32(6)で「20(10)」の他に、3.2(6)で「3と1/3」、それに0.32(6)で「5/9」(=十進分数20/36)を表現できる。「75(10)パーセント」すなわち3/4も、3/4=(27/36)10=(43/100)6から、左手が「4」と右手が「3」で0.43(6) として表現できる。 両手で十進法の指数えは、「六五」すなわち十一以降の整数を表現できず、1.1以降の小数も仮分数も表現できず、十分率しか示せないので二分割と五分割しかできず、三分割も四分割も九分割もできない。しかし、両手で六進法の指数えは、「五六五」すなわち三十五までをカウントできる上に、1.1以降の小数も仮分数も表現できて、二分割も三分割も可能になり、両手に拡大すれば四分割と九分割も可能になる。 乗算や除算では、2のp乗、3のp乗、6×mというように段階に分ける。 1.2×3 = 4(十進換算:1と2/6 × 3 = 4) 、12×3 = 40(十進換算:8×3 = 24)左手で「1×3 = 3」を行い、右手から2ずつ加えて左手に1つ加わったら右手を0(拳)に戻す。 100÷13 = 4(十進換算:36÷9 = 4)、1÷13 = 0.04(十進換算:1÷9 = 4/36)「10(6) ÷ 3 = 2」の動作を左手で一回、更に右手でもう一回行なって完了する。 32÷2 = 14(十進換算:20÷2 = 10)初めに左手で「2÷2 = 1」の動作を行い、次いで「12(6)÷2 = 4」の動作を行なって完了する。
※この「指数え」の解説は、「六進法」の解説の一部です。
「指数え」を含む「六進法」の記事については、「六進法」の概要を参照ください。
- 指数えのページへのリンク