その周辺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 14:23 UTC 版)
ローレンツを親だと覚え込んだ雛は、その後も彼を追いかけ、彼はその雛を同じ寝室で育て、庭で散歩させ、池に入って泳ぎを覚えさせたとのこと。鳥類では子育ての期間がそれなりに長く、その間に飛行や遊泳、餌を取ることなど覚えねばならない上に、それを親が子供に教えるような行動が見られる。それらのすべてに刷り込まれた親がかかわらざるを得ない。 ローレンツは、この現象を、成立すればその後は一生維持されるというように考えていたようだが、必ずしもそうではなく、また、その内容は種によっても異なる。アヒルの場合は、雛に親代わりに人間を覚えさせることはできるが、追尾する行動を引き出すには、人間がしゃがみこむ必要がある。背が高すぎると親とは認識できないらしい。また、別の親代わりのものを提示すれば、それに追随する行動も見せ、案外と覚え直しもできることがわかっている。 他に、鳥類や一部哺乳類において、幼い時に一緒に生活していた動物を性的に成熟した時の相手として選ぶことが知られている。普通は、同種同士が群れでいたりするので、同種を相手に選ぶわけであるが、動物園などで、幼い個体を異なる動物と共に育てたりした場合に、一緒に育った、全く別の種に対して求愛行動を行うようになることが知られている。かつて、ドイツのある動物園で、冬に暖房装置が故障したためクジャクが全滅し、この時1羽だけ生き残った雛をゾウガメの檻に保護したことがあった。そのクジャクは大きくなってから新たにクジャクの群れに入れられたが、クジャクを相手にしようとせず、ゾウガメに向かって尾羽を広げて見せたと言う。 人工繁殖の場合にもこの問題が生じる。最近では、人工飼育の場合に、このようなことが起こらないような配慮がなされるようになって来た。たとえば、どうしても手を出して餌を与えたりしなければならない場合には、鳥の姿の手袋で、まるで親が嘴から餌を渡しているようにするなどの工夫がなされている。
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