臣民
臣民
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/04/16 00:36 UTC 版)
臣民(しんみん、英語: subject、ドイツ語: Untertan)は、君主国において、君主に支配される者としての人民を指す語[1]。
概念
中華
中国文化及び儒学においては、臣と民は全く異なる存在であった。臣とは字義において屈する者を象った文字であり、君に仕える者、君主の「手[2]」であり、民とはやはり字義においては目を潰された者、転じて無知蒙昧な群衆を意味し、統治される大衆であって、臣は統治の側、民は統治される側であり、君(皇帝・王など)は臣の輔弼のもとに民を統治するものとされた[3]。そのため、行動様式も倫理も、臣と民では根本的に異なっており、例えば、国家が滅んだ際、民が新国家の民となるのは普通のことであったが、臣がそれを行うと「弐臣」(二君に仕える、裏表のある臣下)として厳しく批判された。
欧州
ヨーロッパの歴史においては臣民の呼称は封建主義から絶対王政へ移る中での近代国民国家形成の重要な意味を持っている[1]。封建主義時代のヨーロッパは身分制のもとにあって司祭・職人・商人・農民などそれぞれに身分別特権があり、法的にも社会的にも様々な不平等が存在したが、絶対王政期に国王が君主権力の絶対性・無制約性(国家主権)を主張することで各身分の身分別特権は剥奪されていった。これによって君主以外のすべての者が君主に従属する臣民として平等化されていき、身分制が崩れて国民国家への道が開かれた[1]。すなわち臣民とは絶対王政の平準化の所産であり、国民形成の第一段階を成すものだった[1]。
日本
日本は東アジア文化圏に属しており、臣(おみ、大身)と民(たみ、田身)は中国の理解と同様に長く別の存在と理解されてきた。文明開化により西欧の「国王の大権に服する全ての者」としての Subject(Untertan)の概念を移入する際に「臣民」なる語が作出されたが、採用時の検討では和漢の学者からともに違和感を表明されている[4] [5]。明治憲法18条において「日本臣民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル」と定められ、天皇と皇族以外の国民を指す語として使用されるようになった[1]。官吏であれ民衆であれ、等しく天皇に従属する者として「臣民」という名称が用いられた[6]。皇族でも軍人としては「臣民」であるとされ、現役海軍将校だった頃の高松宮宣仁親王が、紀元二千六百年式典の際に「臣・宣仁」と称した例がある。戦後になると、日本国憲法の国民主権の建前からこの表現を公的に使用するのは避けられるようになった[1]。私的に用いられることも極めて稀で、吉田茂が昭和天皇に対し「臣・茂」と称した程度。
英国
イギリスでは「イギリス臣民(英: British subject)」は現在も公的に国民を指す語として使用され続けている表現である。イギリス国民は依然として「王の臣民=王の保護と臣民の忠誠」という概念のもとにある[7]。
米国
ガブリエル・アーモンドとシドニー・ヴァーバによる『現代市民の政治文化』(英: The Civic Culture、1963年)によれば、国民が主体的・能動的であるのに対し、臣民は客体的・受動的であるとされ、臣民的要素が強ければ政治は安定する傾向があり、したがって参加型の政治文化と臣民型の政治文化が混合した社会こそが最も安定した政治を実現できるとしている[1]。
脚注
- 1 2 3 4 5 6 7 『世界大百科事典』1988年版、平凡社。「臣民」の項目
- ↑ 説文解字による。
- ↑ ただし穂積によれば複数の用例は必ずしもこれに従わないものが存在しているという。穂積陳重『続法窓夜話』「臣民」
- ↑ 穂積陳重『続法窓夜話』38頁「臣民」
- ↑ なお、語誌としては道元「正法眼蔵」帰依三法「大師釈奠所説の諸経のなかには、法華経これ大王なり、大師なり、余経余法は、みなこれ法華経の臣民なり、眷属なり」とあるが、用例は少なく、幕末期から政治に関する著述・論文に見られるようになったとする(小学館『精選版日本国語大辞典』「臣民」)。
- ↑ 牧野英一『刑法に於ける重点の変遷 再版』有斐閣、1935年、93頁
- ↑ 神戸史雄 2005, p. 307.
参考文献
- 穂積陳重『続法窓夜話』岩波書店、1936年。
- 神戸史雄『イギリス憲法読本』丸善出版サービスセンター、2005年。ISBN 978-4896301793。
関連項目
臣民
出典:『Wiktionary』 (2021/08/13 07:09 UTC 版)
名詞
関連語
翻訳
- アイスランド語: þegn テンプレート:k, þátttakandi テンプレート:k, aðili テンプレート:k
- アラビア語: رعية (raʕíyya)
- 英語: subject (en)
- エストニア語: alam (et)
- オランダ語: onderdaan 男性, onderdane 女性
- ギリシア語: υποτελής (el) (ipotelís) 男性, υπεξούσιος (el) (ipeksoúsios) 男性
- スペイン語: súbdito (es) 男性
- スワヒリ語: somo (sw)
- チェコ語: poddaný (cs) 男性
- 朝鮮語: 신하 (sinha), 백성 (baekseong)
- デンマーク語: borger 通性
- ドイツ語: Untertan (de) 男性
- フィンランド語: alamainen (fi)
- フランス語: sujet (fr) 男性
- ヘブライ語: נתין (he) (natin) 男性
- ポーランド語: poddany (pl) 男性, poddana (pl) 女性
- ポルトガル語: súdito (pt) 男性
- マケドニア語: поданик (mk) (pódanik) 男性
- ロシア語: подданный (ru) (póddannyj) 男性
脚注
「臣民」の例文・使い方・用例・文例
- 忠実な臣民
- その君主は臣民に対して絶対の支配権を持っていた。
- 外国の臣民.
- 国王とその臣民.
- 爾臣民其れ克く朕が意を体せよ
- 忠良なる臣民
- 朕は忠良なる臣民に俟{ま}つ
- 大日本臣民
- 税金の代わりとして封建君主が臣民に要求した(道路整備のためなどの)無報酬の労働
- 国民が自分の国に(または臣民が君主に)尽くす忠誠
- 宮殿はすべての臣民を拘束する命令を発した
- 君主は臣民に対する義務がある
- 旧憲法において,皇族以外の臣民としての身分
- 皇族が臣民の身分に降下する
- 臣民として守るべき道
- 戸籍上の身分区別において,華族や士族以外の日本臣民
臣民と同じ種類の言葉
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