さ‐かん〔‐クワン〕【左官】
しゃ‐かん〔‐クワン〕【▽左官】
読み方:しゃかん
⇒さかん(左官)
左官
左官
概要解説 家屋には必ず壁があります。壁は建物の構造を保つとともに、美しさを表現しています。この壁を塗るのが左官の仕事です。左官仕上げには、湿度・温度を自然の中で調整し人間の健康管理をしていること、火災時に防火性が高く人命と財産を守っていること、塗り壁の素材は無機質材が多いため人体を汚染しないこと、建物の美装性に富んでいることなどといった優れた特徴があります。左官は一人前になるまでは5年から7年の修行が必要とされ、奥義を極めようとすれば10年以上かかるといわれてきました。しかし、現在では技術革新のおかげで仕事の難しさはかなり軽減されてきたようです。その一方で壁の種類が増え、新しい技術が必要になってきています。 必要な能力・資格など 左官になるには、特に学歴や資格は必要ありません。昔は親方に弟子入りして雑用をつとめ、こて磨き、才取り、土こねをやり、それからやっと塗り方になるという段階を経て技術を習得したものですが、現在では入職後、職業訓練校で学んだり、現場で実地に作業をしながら仕事を教わって技能を身に付けていきます。具体的には、中学または高校卒業後、左官の事業所に就職し、見習いになりながら認定高等職業訓練校で修行するというケースが一般的のようです。左官の技能を示す資格として技能検定があり、建設省の定めでは延べ面積3000平方メートル以上の現場には、1級左官技能士の常駐を義務付けているため、検定制度に関する関心は高いといえるでしょう。 関連する職業
左官(漆喰塗)
主名称: | 左官(漆喰塗) |
ふりがな: | さかん(しっくいぬり) |
認定区分: | 個人 |
種別: | 建造物 |
選定年月日: | 1998.06.08(平成10.06.08) |
解除年月日: | |
解説文: | 左官は土壁や漆喰壁を塗る技術で、土壁は下地の上に荒壁塗、中塗と塗り重ね、上塗によって壁表面を仕上げる。漆喰壁は上塗の代表的な例である。左官技術は壁の表面を美しく仕上げることと、いかに耐久性のある壁を造るかが技術上の最重要課題であり、日本の伝統的な建築の意匠上の重要な要素ともなっていて、わが国の文化財建造物の修理に欠くことができない。中世以前は泥工【でいこう】、壁塗り、壁大工等の呼称で呼ばれていたが、近世初頭ころからしだいに左官の名称が使われるようになった。とくに江戸から明治時代にかけて、漆喰塗技術は最盛期を迎える。亀裂や剥落を生じない耐久性のある漆喰壁を造るには、土、石灰、すさ、のり等の材料の吟味や調合方法、塗ったときの水引加減などが関係し、これらの見極めには豊富な経験が必要である。近年、プラスター塗りなどの安価で簡単な施工方法が一般化し、伝統的な漆喰塗の技術は失われつつあり、早急に保護を図る必要がある。 |
左官(古式京壁)
主名称: | 左官(古式京壁) |
ふりがな: | さかん(こしききょうかべ) |
認定区分: | 個人 |
種別: | 建造物 |
選定年月日: | 2001.07.12(平成13.07.12) |
解除年月日: | |
解説文: | 左官は建造物の修理にとって欠くことのできない技術であり、書院建築や茶室に用いられる京壁と、城郭や土蔵に使われる漆喰壁【しつくいかべ】などがある。京壁は、古来より色土を豊富に産する畿内を中心に発展し、様々な建造物に使用されてきた。その仕上げには地域ごとに固有の色土などを用い、色合いや施工方法も多様であることから、様々な技法が発達し、建造物の内外観を特徴づける重要な要素となっている。また、意匠上のみでなく構造的にも重要な部位であり、文化財修理においては、美しくかつ強い壁の製作が常に求められる。そのためには下地となる竹や藁縄【わらなわ】、土壁を構成する土、〓【すき】などといった材料の吟味、施工時においては壁の水引き加減の見極め、鏝【こて】使いなど多彩な技法に応じた技量が必要で、それには豊かな経験に基づいた高度な習熟が不可欠である。 また近年は一般建設業界で湿式工法の需要が減少しているために、伝統的な京壁の左官技術を体得した技能者が激減する傾向にあり、早急に技術の保存と後継者の育成を図る必要がある。 なお、近年、新築工事で多用されつつある薄付け仕上塗材【しあげぬり】材を用いた工法も京壁と呼ばれているので、選定名称については左官(古式京壁)とし、伝統的な工法であることを示す。 |
左官(日本壁)
主名称: | 左官(日本壁) |
ふりがな: | さかん(にほんかべ) |
認定区分: | 団体 |
種別: | 建造物 |
選定年月日: | 2002.07.08(平成14.07.08) |
解除年月日: | |
解説文: | 左官の職名は近世初期には見られ、それ以前には「泥工【でいこう】」「壁塗り」とも称された。わが国の伝統的左官技術には、表面を土で仕上げる古式京壁【きょうかべ】と、漆喰【しっくい】仕上げとする漆喰壁があり、日本壁と総称される。 良質の日本壁を製作するためには、各種素材の吟味から施工まで高度な熟練が必要であり、文化財建造物修理においては、製作された壁の強度や美観が修理工事の良否に大きく影響する。しかし、日本壁製作のような湿式工法には十分な工期と熟練が必要であるため、近年の一般建築においては乾式工法が主流となっている。また湿式工法についても、モルタル下地のうえに合成樹脂系資材で仕上げる工法などが一般化していることから、良質な日本壁を製作できる技術者が激減している。 |
左官
姓 | 読み方 |
---|---|
左官 | さかん |
左官
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/07 04:17 UTC 版)

左官(さかん)とは、建物の壁や床、土塀などを、こてを使って塗り仕上げる仕事、またそれを専門とする職人のこと。「しゃかん」ともいう[1]。 2020年「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」がユネスコ無形文化遺産に登録され、この中に「左官(日本壁)」が含まれている[2]。国家資格として左官技能士があるが、業務独占資格ではないので、左官としての従事に資格等の取得は必須ではない。「官」と付くが公務員ではなく、これは歴史的背景に由来するものである。
概説

石灰や土、砂、自然繊維などを組み合わせた自然素材からなる塗り壁(または吹き付け壁)を左官壁という[3]。左官壁に使う素材を左官材料という。
左官壁の代表例に漆喰壁がある。また、漆喰壁のように仕上げることができるよう鉱物質の粉末と水を練り合わせたプラスターや、生石灰と水を練り合わせた生石灰クリームなどもある[3]。このほか樹脂リシン壁や聚楽壁(じゅらくへき)のように吹き付けを用いながら塗り壁のような風合いに仕上げるものもある[3]。
左官工事には鏝(こて)を使うが、西洋では主に四角形で大型なのに対し、日本では主に剣先タイプのものが使用される[3]。
左官壁の利点としては、多様な仕上げができること(光沢のある磨き仕上げやこて跡を残したラフな仕上げ等)、室内の調湿効果や脱臭効果が期待できることが挙げられる[3]。また、左官材料を塗り重ねることにより断熱効果や保温効果も期待できる[3]。
左官壁の欠点は、施工及びその後の乾燥に手間と時間がかかることや、職人の技術の差が仕上がりに大きく影響することなどがある[3]。気候や建物壁面の下地の状態によっては左官壁に向かない場合もある[3]。
日本建築における左官
日本は雨の多い気候であることから、特に日本建築では湿気の調節のために土壁と漆喰の組み合わせが畳とともに重要な役割を果たしている[3]。
日本家屋の壁は、竹などを格子状に編んだ小舞下地(こまいしたじ)の両面に、藁(わら)を混ぜた土を塗り重ねる土壁、消石灰・麻等の繊維・糊でつくった漆喰が用いられるが、それらの仕上げに欠かせない職種であり、また、かつては土蔵の外壁やこて絵など、技術を芸術的領域にまで昇華させる入江長八などの職人も現れた。
明治以降に洋風建築が登場すると、ラスや煉瓦そしてコンクリートにモルタルを塗って仕上げるようになり、日本建築以外にも活躍の場が広がる。
昭和30年代 - 40年代の高度経済成長期には、鉄筋コンクリート構造(RC構造)の建物が大量に造られ、多くの左官職人が必要とされた。戸建住宅においても、当時の内壁は綿壁や繊維壁の塗り壁仕上げが多かった。またこの頃から浴室のタイル貼りなども行うようになったほか、基礎工事、コンクリートブロック積み、コンクリート打設(打込み)時の床均しなど仕事内容も多様化していった。
しかし、その後、住宅様式の変化や建設工期の短縮化(左官が使う材料である土・漆喰・モルタルは、一般的に乾燥・硬化に時間が掛かる)の流れから、壁の仕上げには塗装やクロス等が増え、サイディングパネルや石膏ボードなど、建材の乾式化が進んだ。また、ビル・マンション工事では、コンクリートにモルタルを厚く塗らない工法に変わったことや、プレキャストコンクリート工法(工場であらかじめコンクリート製品を製作した後、現場へ運搬し設置する工法)の増加 等の要因により、塗り壁や左官工事が急速に減少、職人数も減り続けている[4]。
最近になり、漆喰・珪藻土・土等の天然素材を使用した壁が見直されると共に、手仕事による仕上げの多様性や味わいを持つ、左官仕上げの良さが再認識されてきている。特に「和モダン」と呼ばれる、日本らしさと欧米のモダンスタイルを併せ持つ建築には、多彩な左官仕上げが使われることが多い。
左官を大別すると、戸建住宅や寺社工事を専門とするものと、ビルやマンション工事を得意とするものに分けられる。後者の中からは近年、床仕上げ専門職(床下地のモルタル仕上げや床コンクリート直仕上げ等を行う)も現れている。
仕上げ方法
掻落し(かきおとし)
左官工事の仕上げ方法のひとつ。英語:scratching[5]。モルタル仕上げなどの表面がほぼ硬くなったところを、こて、金串、ブラシなどで表面をむらなく掻き落とし、粗面に仕上げるもの[5]。掻落し粗面仕上げともいう[5]。
歴史

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「左官」の語源は、宮中の営繕を行う職人に、土木部門を司る木工寮の属(さかん、四等官の主典)として出入りを許したことから(『日本国語大辞典』他)というものが巷間に広く知られているが、建久元年(1190年)十月に東大寺の再建大仏殿の棟上のときに大工そのほかの職人が官位を受領しているが、そのとき壁塗が左官となったこと(『玉葉』)に基づいたものとする説(『国史大辞典』)もある。一方で、実際に「左官」として使われだしたのは桃山時代からという説[6]もある。「沙官・沙翫」と表記されていたこともある。建築の「木」に関わる職を「右官」と呼んでいた説もある。
左官専門の職業能力開発校
左官専門の職業訓練を認定職業訓練として行う職業能力開発校の例を以下に示す。その他は左官科、建築関係の認定職業訓練施設一覧を参照。
- 旭川左官高等職業訓練校(北海道旭川市)
- 札幌左官高等職業訓練校(北海道札幌市)
- 有川工業株式会社有川工業訓練校(埼玉県新座市)
- 米田左官技術専修職業訓練校(東京都練馬区)
- 呉西左官高等職業訓練校(富山県高岡市)
- 富山県左官高等職業訓練校(富山県左官事業協同組合)
- 株式会社イスルギ石川県知事認可事業所内職業訓練校
- 愛知県左官高等職業訓練校(愛知県左官業協同組合)
- 福知山左官高等職業訓練校(京都府福知山市)
- 京都府左官技能専修学院(京都府)
- 京都府左官工業協同組合京都左官職業訓練校(京都府)
- 鳥取県左官業協同組合鳥取県左官高等職業訓練校(鳥取県鳥取市)
- 下野工業高等職業訓練校(山口県岩国市)
- 上内工業株式会社上内左官高等職業訓練校(熊本県)
- オオタ左官訓練センター(熊本県)
- 永野工業能力開発研修センター(熊本県)
- 宮崎高等技術専門校(宮崎県宮崎市)
- 大平工務店高等職業訓練校(鹿児島県)
資格
その他
- 『左官職人 こね太郎』:新沼謙治
脚注
- ^ 語源由来辞典
- ^ “「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」のユネスコ無形文化遺産登録(代表一覧表記載)について”. 文化庁 (2020年12月17日). 2021年6月5日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 間宮良行『家を建てる前に読む住まいの仕組み事典』西東社、2013年、149頁
- ^ 「左官職人、30年間で3分の1 工法変化で減少の一途 社寺保存へ後継課題に」『日本経済新聞』2025年2月6日、夕刊、11面。
- ^ a b c 渡辺優『図解インテリア・ワードブック』建築資料研究社、1996年。
- ^ 現代建築職人事典編集委員会「左官」『現代建築職人事典』工業調査会,p131
参考文献
- 浅井賢治 他「左官「超実用」テクニック読本」『月刊「建築知識」』2001年9月号増刊,エクスナレッジ
- 現代建築職人事典編集委員会「左官」『現代建築職人事典』工業調査会,pp131~139,ISBN 4-7693-3061-8
関連項目
外部リンク
「左官」の例文・使い方・用例・文例
左官と同じ種類の言葉
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