かん‐い〔クワンヰ〕【官位】
つかさ‐くらい〔‐くらゐ〕【▽官位】
官位
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/25 16:41 UTC 版)
日本における官位(かんい)は、日本史では人が就く官職と、人の貴賤を表す序列である位階の総称、古代朝鮮史(高句麗・百済・新羅)においては人の貴賤の序列として定められた位のことである。ともに中国の影響を受けたものだが、中国史では官位という言葉は用いない。
官職と位階との相当関係を定めたものを官位相当といい、各官職には相当する位階(品階)に叙位している者を任官する制度を官位制(官位制度、官位相当制)という[1]。日本において、官職と位階は律令法(律令制)によって体系的に整備された。位階制度については「位階」の項目を、官職については「日本の官制」を参照のこと。以下、日本における官位制について概説する。
用語
日本の律令には唐の官品令にならった官位令があり、『令義解』は官を大臣以下書吏以上の官職、位を親王一品から少初位までの位階とする[2][1][3]。官位相当における各官職に相当する位階、すなわち相当位のことをいう場合もある[1]。日本では位階だけを指して官位ということはない。位階の前身は冠位である。
朝鮮史学では『三国史記』等の史書に官爵、位、秩、官階、官銜などと記され、日本の冠位・位階にあたる高句麗・百済・新羅の等級を、官位と呼ぶ[4]。よって、朝鮮三国の官位と日本の官位は別物で、朝鮮三国の官位と日本の冠位(あるいは位階)が互いに相同である。
官位制の概要
官位制は中国から他の政治行政制度と共に継受され、日本で独自の発展を遂げた。官吏を序列化する制度は603年(推古天皇11年)の冠位十二階に始まり、その後数度の変遷を経る(冠位・位階制度の変遷)。そして、701年(大宝元年)に成立した大宝令と718年(養老2年)に成立した養老令にはそれぞれ『官位令』という令があり、これにより官位制は確立した。官位令によれば位階は皇族には一品(いっぽん)~四品(しほん)の品位(ほんい)4階があり、諸臣は正一位~少初位下の30階があった。
官位制は位階と官職を関連付けて任命することにより、官職の世襲を排して適材適所の人材登用を進めることを目的とした。しかし高位者の子孫には一定以上の位階に叙位する制度(蔭位の制)を設けるなど、当初からその目的は達成困難なものであった。
官位制自体は、形骸化されつつも明治時代に律令法が廃止されるまで続いた。また、位階制度はその後変遷を重ねながらも栄典制度のひとつとして現在に至るまで存続する。
官位制の内容
官職と位階の対応には、幅がある。また、時代によって官位相当も変化する。
下位の位階の者が官位相当よりも高位の官職に就く場合を守といい、高位の位階の者が官位相当よりも下位の官職に就く場合を行という。また、叙位されたものの官職に就かないことを散位あるいは無官という。
従五位下以上と六位の蔵人は昇殿を許されたために殿上人、太政官のうち従三位以上もしくは参議のことを公卿と呼んだ。五位に昇ることを叙爵、冠(こうぶり)賜るという。
俸給は、原則として位階に対して支給される。そのため、異なる官職に就いていても位階が同じならば同じ俸給であった。平安時代以降には皇族・公卿など高い身分にある者、または上級の官職や博士など官職に対しても俸給が支給されるようになった。その他、国司には俸給の他に国司としての収入があった。
官位制の変化
官職は奈良時代に法文化された当時はその本来の意味を有していたが平安時代に入ると新しく血脈的な尊卑をも表現するようになり、ひいては家格の象徴となり国家的な意味はほとんどなくなってしまう。本来、官職はその国家的仕事に直結し自己の身分を示すのは位階であったが官職が身分や家柄を示すようになったため官位相当という令制以来の原則にも変化が現れ始め、江戸時代末期に至るまで官職と位階は身分や家格を示す標準となり宮廷生活における権威を持っていた。
官位相当表
養老令
官 | 省 | 職 | 寮 | 司 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
神祇官 | 太政官 | 中務省 | 式部省 治部省(a) 民部省 兵部省 刑部省(b) 大蔵省(c) 宮内省 |
中宮職 | 左右京職 摂津職 大膳職(a) |
左右大舎人寮 大学寮(a) 木工寮 雅楽寮(b) 玄蕃寮 主計寮(c) 主税寮(d) 図書寮 左右馬寮(e) 左右兵庫寮 |
内蔵寮(a) 縫殿寮 大炊寮 散位寮 陰陽寮(b) 主殿寮 典薬寮(c) |
兵馬司 造兵司 鼓吹司 贓贖司 囚獄司 典鋳司 正親司 鍛冶司 |
畫工司 内薬司(a) 諸陵司 掃部司 内膳司(b) 造酒司 官奴司 園池司 東西市司 |
内兵庫司 土工司 葬儀司 采女司 主船司 漆部司 縫部司 織部司(a) 隼人司 内礼司 |
主水司 主油司 内掃部司 筥陶司 内染司(a) |
主鷹司 | ||
正一位 従一位 |
太政大臣 | |||||||||||||
正二位 従二位 |
左大臣 右大臣 |
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正三位 | 大納言 | |||||||||||||
従三位 | ||||||||||||||
正四位 | 上 | 卿 | ||||||||||||
下 | 卿 | |||||||||||||
従四位 | 上 | 左右大弁 | ||||||||||||
下 | 伯 | 大夫 | ||||||||||||
正五位 | 上 | 左右中弁 | 大輔 | 大夫 | ||||||||||
下 | 左右少弁 | 大輔 大判事(b) |
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従五位 | 上 | 少輔 | 頭 | |||||||||||
下 | 大副 | 少納言 | 侍従 大監物 |
少輔 | 亮 | 頭 | ||||||||
正六位 | 上 | 少副 | 左右大弁史 | 大内記 | 正 | 正 内膳奉膳(b) |
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下 | 大丞 | 大丞 中判事(b) |
助 大学博士(a) |
内薬侍医(a) | 正 | |||||||||
従六位 | 上 | 大祐 | 少丞 中監物 |
少丞 | 大進 | 〈権助(ごんのすけ)〉 | 助 | 正 | ||||||
下 | 少祐 | 少判事(b) 大蔵大主鑰(c) |
少進 | 大進 | 〈権助(ごんのすけ)〉 | 正 | ||||||||
正七位 | 上 | 大外記 左右少弁史 |
中内記 大録 |
大録 | 少進 | 内蔵大主鑰(a) | ||||||||
下 | 少監物 大主鈴 |
判事大属(b) | 主醤(a) 主菓餅(a) |
大允 大学助教(a) |
医博士(c) 陰陽博士(b) 天文博士(b) |
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従七位 | 上 | 少外記 | 少允 音博士(a) 書博士(a) 算博士(a) |
允 陰陽師(b) 暦博士(b) 咒禁博士(c) |
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下 | 大典鑰 | 刑部大解部(b) 大蔵少主鑰(c) |
医師(c) 漏尅博士(b) 針博士(c) |
祐 | 祐 内膳典膳(b) |
|||||||||
正八位 | 上 | 少内記 少録 少主鈴 |
少録 典革(c) |
内蔵少主鑰(a) 咒禁師(c) 針師(c) 薬園師(c) 典履(a) |
祐 | |||||||||
下 | 大史 | 治部大解部(a) 刑部中解部(b) 判事少属(b) |
大属 | 按摩博士(c) | 祐 | |||||||||
従八位 | 上 | 少史 | 少典鑰 | 少属 | 大属 雅楽諸師(b) 馬医(e) |
按摩師(c) | ||||||||
下 | 治部少解部(a) 刑部少解部(b) |
少属 主計算師(c) 主税算師(d) |
大属 | |||||||||||
大初位 | 上 | 少属 | 大令史 | 令史 | ||||||||||
下 | 少令史 | 令史 挑文師(a) |
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少初位 | 上 | 令史 染師(a) |
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下 | 令史 | |||||||||||||
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坊 | 監 | 署 | 台 | 府 | 大宰府 | 国司 | 家司 | |||||||
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春宮坊 | 舎人監 主膳監 主蔵監 |
主殿署 主書署 主漿署 主工署 主兵署 主馬署 |
弾正台 | 衛門府 左衛士府 右衛士府 |
左兵衛府 右兵衛府 |
大国 | 上国 | 中国 | 下国 | |||||
正一位 従一位 |
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正二位 従二位 |
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正三位 | ||||||||||||||
従三位 | 帥 | |||||||||||||
正四位 | 上 | 東宮傅 | ||||||||||||
下 | 大夫 | |||||||||||||
従四位 | 上 | 尹 | ||||||||||||
下 | ||||||||||||||
正五位 | 上 | 督 | 大弐 | |||||||||||
下 | 弼 | |||||||||||||
従五位 | 上 | 督 | 守 | |||||||||||
下 | 亮 東宮学士 |
佐 | 少弐 | 守 | 一品家令 職事一位家令 |
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正六位 | 上 | 大忠 | 二品家令 | |||||||||||
下 | 少忠 | 佐 | 大監 | 介 | 守 | |||||||||
従六位 | 上 | 大進 | 正 | 少監 | 介 | 一品家扶 三品家令 職事一位家扶 職事二位家令 |
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下 | 少進 | 首 | 大尉 | 大判事 | 守 | |||||||||
正七位 | 上 | 大疏 | 少尉 | 大工 少判事 大典 防人正 |
二品家扶 四品家令 |
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下 | 巡察 | 大尉 | 主神 | 大掾 | ||||||||||
従七位 | 上 | 少尉 | 少掾 | 掾 | 一品家大従 一品文学 三品家扶 職事一位家大従 職事正三位家令 |
|||||||||
下 | 大宰博士 | 一品家少従 二品家従 二品文学 四品家扶 職事一位家少従 職事従三位家令 |
||||||||||||
正八位 | 上 | 少疏 | 少典 陰陽師 医師 少工 算師 防人祐 主船 主厨 |
掾 | ||||||||||
下 | 大属 | 大志 医師 |
三品家従 三品文学 四品文学 職事二位家従 |
|||||||||||
従八位 | 上 | 少属 | 少志 | 大志 医師 |
大目 | 四品家従 | ||||||||
下 | 少志 | 少目 | 目 | 一品家大書吏 | ||||||||||
大初位 | 上 | 判事大令史 | 一品家少書吏 二品家大書吏 職事一位家少書吏 |
|||||||||||
下 | 判事少令史 防人令史 |
目 | 二品家少書吏 | |||||||||||
少初位 | 上 | 目 | 三品家書吏 四品家書吏 職事二位家大書吏 職事二位家少書吏 |
|||||||||||
下 | 職事三位家書吏 | |||||||||||||
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令外官
官・所 | 職 | 寮 | 司 | 府 | 使 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
太政官 | 蔵人所 | 修理職 | 内匠寮 諸陵寮 兵庫寮 斎宮寮(a) 左右馬寮 |
掃部寮 | 斎院司 | 左右 近衛府 |
検非違使 | |||||||
正一位 従一位 |
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正二位 従二位 |
内大臣 | 別当 | ||||||||||||
正三位 | ||||||||||||||
従三位 | 中納言 | 大将 | ||||||||||||
正四位 | 上 | (中納言) | ||||||||||||
下 | ||||||||||||||
従四位 | 上 | 頭 | ||||||||||||
下 | 大夫 | 中将 | 別当 | |||||||||||
正五位 | 上 | 五位蔵人 | ||||||||||||
下 | 少将 | |||||||||||||
従五位 | 上 | 頭 | 佐 | |||||||||||
下 | 亮 | 頭 | 長官 | |||||||||||
正六位 | 上 | 六位蔵人 | 将監 | |||||||||||
下 | 助 | |||||||||||||
従六位 | 上 | 大進 | 助 | 次官 | 大尉 | |||||||||
下 | 少進 | 少尉 | ||||||||||||
正七位 | 上 | |||||||||||||
下 | 大允 主神(a) |
将曹 | ||||||||||||
従七位 | 上 | 少允 | 允 | 判官 | ||||||||||
下 | ||||||||||||||
正八位 | 上 | |||||||||||||
下 | 大属 | 大志 | ||||||||||||
従八位 | 上 | 少属 | 大属 | 少志 | ||||||||||
下 | 少属 | 大属 | 主典 | |||||||||||
大初位 | 上 | 少属 | ||||||||||||
下 | ||||||||||||||
少初位 | 上 | |||||||||||||
下 | ||||||||||||||
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出典
関連項目
官位
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 05:33 UTC 版)
「信長の野望Online」の記事における「官位」の解説
特定の条件をクリアすると官位が与えられ、以下の特典を享受できる。 寄合長からもらえる俸禄が増える。 献策の票数が増える。
※この「官位」の解説は、「信長の野望Online」の解説の一部です。
「官位」を含む「信長の野望Online」の記事については、「信長の野望Online」の概要を参照ください。
「官位」の例文・使い方・用例・文例
- 不正行為をして官位を剥奪された.
- 官位をはがれる
- 官位を剥奪される
- 父或は父祖のお蔭によって官位を受ける子
- 官位が昇進すること
- 官位を望んだり訴訟をする時の嘆願書
- 官位と俸禄
- 検校という盲人に与えられる官位にある人
- 盲目の勾当という官位
- 勾当という官位の盲人
- 上級の官位に任命される
- 上級の官位に任命する
- 官位が高く身分のある人
- 儒者が任ぜられるのを原則とした官位
- 官位や封土はないが多くの財産を有している人
- 死後贈られた官位
- 死後に官位を贈ること
- 死後に贈る官位
- 官位を退く
- 大夫という昔の官位の1つで五位のこと
官位と同じ種類の言葉
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