いのち‐ごい〔‐ごひ〕【命乞い】
命乞い
『今昔物語集』巻20-34 上津(かむつ)出雲寺の別当浄覚の夢に、亡父が現れる。亡父は「私は鯰(なまず)に転生した。明日私の姿を見たら、殺さずに桂川へ放生してくれ」と請う。翌日、浄覚は鯰を見つけるが、亡父と知りつつ殺し、ぶつ切りにして鍋で煮て食べる。「普通の鯰より美味だ。父の肉だから、うまいのだろう」と浄覚は喜ぶ。そのうち大きな骨が喉にささり、これを取ることができず、浄覚は死んでしまった。
*神の化身であるウニやウナギを食べて死ぬ→〔禁忌〕9の『金枝篇』(初版)第3章第10節。
『太平広記』巻467所引『宣室志』 柳宗元が駅舎に泊まった夜、黄衣の婦人が命乞いする夢を3度見る。「明日の宴の膳に上る魚かもしれぬ」と柳宗元は考え、役人に問うと、「大きな黄鱗魚の首を切りました」と答える。柳宗元は黄鱗魚の死骸を河に捨てさせるが、その夜の夢に首のない婦人が現れる。
『百物語』(杉浦日向子)其ノ7 虎の御門の御濠さらいの前夜、1人の人足の所に男が訪れ「御濠に住む4尺の大鰻を殺さぬように」と請う。人足は承知し、男に麦飯をふるまって帰す。翌日、人足がさらい場へ行くと、すでに大鰻は打ち殺されたあとで、裂かれた腹からは麦飯が出て来た〔*『耳袋』巻之8「鰻の怪の事」に類話〕。
*「鯉の化身の人が夢に現れた」と嘘を言う→〔禁制〕1の『半七捕物帳』(岡本綺堂)「むらさき鯉」。
★2.蟹が命乞いをする。
『閲微草堂筆記』「姑妄聴之」巻15「蟹の前世」 某役人の夢に、以前死んだ下男下女数十人が現れ、「生前、私たちは徒党を組んで悪事を働いたため、蟹になってしまい(*→〔蟹〕5)、転生するたびに釜茹での苦しみを受けています。明日ご主人様が召し上がる蟹は、私たちの生まれ変わった姿です。どうかお救い下さい」と請う。某役人は料理人に「蟹を水に放せ」と命ずるが、料理人は蟹を茹でてしまった。
★3.亀が命乞いをする。
『和漢三才図会』巻第46・介甲部「水亀」 亀は霊物なので、軽々しく殺してはならない。亀は人間が自分を殺そうとしている心を知って、その人の夢に現れ、折傷(うちみ)薬、糟蒸(かすむし)法を告げて殺されるのを免れた、という類の話は少なくない。
「命乞い」の例文・使い方・用例・文例
- 命乞いする
- 命乞い
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