その夜
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その夜
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/19 17:21 UTC 版)
何時しか日はとっぷりとくれ、しかも道幅がどんどん狭くなってきた。 「こらぁ野宿やな」「野宿? 参ったなぁ。こんなとこ歩いてて何も出て来ぇへんやろか?」「うーん…『カメ』が出る」「カメ?」「あぁ。頭に『お』の字を付けて、『お』を長ごぉ引っ張って『かめ』と言ぅねん」「お~かめ…、狼やないか!?」「そうなるな」「『ソウナルナ』やないで、ホンマ!」 喜六がパニックになっているのを尻目に、清八がふと上を見ると…明かりがチラチラと見えた! 「ちょっとお頼の申します」 そこは山寺だった。中に入ると尼さんがいて、話をすると快く泊めてくれた。 「何もありませんが、『ベチョタレ雑炊』でもあがりませんか。」 「へえ。腹空いてますねん。ありがとうさんで。・・・」 食べて見るとどうも変な味である。きけば、赤土の出汁に藁が入っているという奇妙な物。 「もう、よろしい。これで、左官入ったら腹ン中壁出来るわ。」と早々に切り上げる。 しばらくして…。 「泊った早々、こんなことお願いして何でございまんねやが、実はちょっとお二人に留守番がお願いしたいんで」 何でも、下の村で高利貸しのおさよ後家という婆さんが亡くなって、死後もお金に執念があるのか化けて出るので成仏させに行くというのだ。 「寺も宵の口は寂しゅございますが、夜が更けると幽霊で賑やかになります」「何の賑やかや!?」 阿弥陀様の前の、お灯明さえ消えなければ幽霊は出ない。そういって尼さんは出かけてしまった。 「おい、もぉ油何ぼも入ってないで」「そらいかん、継ぎ足しぃな!」 喜六が油と間違えて醤油を注いでしまったせいで、とうとう灯は消えてしまった…。
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