ちくま文庫とは? わかりやすく解説

ちくま文庫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/28 05:48 UTC 版)

ちくま文庫(ちくまぶんこ)は、株式会社筑摩書房が発行している文庫レーベル。1985年昭和60年)12月より刊行が開始された。フォーマットならびに基本的な装幀は安野光雅がデザインした。

特徴

ちくま文庫の柱は4本あり、「新教養」「古典」「ヤングアダルト」「全集」である[1]。文庫名を「筑摩文庫」でなく、敢えて平仮名で「ちくま文庫」と命名したのは、元々の筑摩書房のイメージから離れ、「ゆるやかな枠組みで作品を選んでいこう」という想い[2]に基づいている。

文庫レーベルは2種類に分けられ、「翻訳、古典、シリーズ」を扱うマークと「現代日本の小説、エッセイ、評論、ノンフイクションほか」を扱う太陽マークが扉ページに描かれている。個人全集を多数出した版元として、文庫サイズでの個人全集(夏目漱石芥川龍之介森鷗外太宰治宮沢賢治など多数)が充実[注 1]しているのも特色である。

当初は、自社刊行物の囲い込み(自社自身での再刊)の意識が強かったが、1992年平成4年)のちくま学芸文庫発足以降は、一般書籍の比重が高くなった(両レーベル共に、他社初版の再刊も多い)。創刊から25年以上を経過したため、品切れになった著名作品(チェーホフ全集、岡本かの子全集、坂口安吾全集など)も多く、初版のみで品切となった書目も多い。読者アンケートなどをもとに、不定期で復刊も行っている。

また、古典文芸作品では、マルセル・プルースト失われた時を求めて』を1990年代前半に文庫化し重版、小説では、三島由紀夫三島由紀夫レター教室[注 2]ガルシア=マルケス『エレンディラ』など多くの再刊をしている。

一方で、赤瀬川原平『老人力』のような話題作や、都築響一による『珍日本紀行』や『TOKYO STYLE』、『賃貸宇宙』といった写真集や、なぎら健壱藤木TDC今柊二他多数の「食・酒場めぐり案内」など、硬軟両面の特徴をあわせ持っている。

2006年(平成18年)には、ちくま学芸文庫数学物理学科学史などを扱う科学部門の「Math&Science」シリーズが発足した。

2015年(平成27年)には創刊30周年記念として、月のノオトという自由に書き込めるノートを全国にまわし、何冊もどってくるかという企画が催された。

2023年9月、晩聲社から出ていたが絶版になっていた茶本繁正の「原理運動の研究」を復刊。

著名な刊行書目(上記以外)

脚注

注釈

  1. ^ 一部を除き、全巻分売されるので、読者は好きな巻だけを買うことができ、宮沢賢治の場合は童話の収録された巻の売れ行きがよく、詩集の収録された巻は弱い。ただし、常備は難しいので品切の巻も多い[3]
  2. ^ ミュージシャンの小沢健二がテレビで紹介したところ、火がついたように重版され、小沢のお気に入り本との紹介コピー入った帯が新たに付き、小沢自身も喜んだという[4]。女性向けファッション雑誌『Olive』1992年9月号の「私が文を学んだ本」というコーナーで紹介したことがきっかけという説もある[5]
  3. ^ 品切後は、講談社学術文庫(全4巻)で改訂再刊。
  4. ^ 元版は「中国古典文学大系」で、講談社文庫(全8巻)版を再刊
  5. ^ 前者は単行判全6巻と同時刊行、後者は文庫オリジナルでの全集判

出典

  1. ^ 岡崎 2000, p. 232.
  2. ^ 岡崎 2000, p. 231文庫編集部員だった金井ゆり子の回想より。
  3. ^ 岡崎 2000, p. 233.
  4. ^ 岡崎 2000, pp. 234–235.
  5. ^ 小沢健二×三島由紀夫のコラボが実現。小沢健二、「三島由紀夫レター教室」特別帯をデザイン”. 2020年10月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月25日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク


ちくま文庫(筑摩書房)

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三島由紀夫」の記事における「ちくま文庫(筑摩書房)」の解説

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