タコ 呼称

タコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/07 20:42 UTC 版)

呼称

英名octopusは、直接的にはラテン語octopus(オクトープースまたはオクトープス)の借用であり、その元は古典ギリシア語の「8本足」ὀκτώπους(oktōpous)から来ている。日本語では、標準和名の他にたこ章魚とも記す。

生物的特徴

主に岩礁や砂地に生息する。海洋棲で、淡水を嫌い、河口などの汽水域には棲息しない。

複数の吸盤がついた8本のを特徴とする。動物学的には足であり、一般には「」と呼ばれるが、物を掴む機能などにより、特に頭足類における足は「」とも表現される(英語でも arm と呼ぶ)。

見た目で頭部に見える丸く大きな部位は実際には胴部であり、本当の頭は腕の基部に位置して口器が集まっている部分である。すなわち、頭から足(腕)が生えているのであり、同じ構造を持つイカの仲間とともに「頭足類」の名で呼ばれる理由がここにある。

イカの仲間との違いは腕の数(タコは4対8本なのに対し、イカは触腕2対を加えた5対10本)のほか、ミミ(鰭)がないことであるが、これらには例外もある(腕が8本のタコイカやミミのあるメンダコなど)[1]。このほか吸盤の構造もイカの仲間とは異なる(後述)。

その柔軟な体のほとんどは筋肉であり、ときには強い力を発揮する。体の中で固い部分は眼球の間に存在する脳を包む軟骨とクチバシのみである[2]。そのため非常に狭い空間を通り抜ける事ができ、水族館で飼育する場合は逃走対策が必要である[2]

比較的高い知能を持っており、一説には最も賢い無脊椎動物であるとされている[3][4]。形を認識することや、問題を学習し解決することができる。例として、密閉されたねじぶた式のガラスびんに入った餌を視覚で認識し、ビンの蓋をねじって餌を取ることができる。また、白い物体に強い興味を示す。身を守るためには、保護色に変色し、地形に合わせて体形を変える、その色や形を2年ほど記憶できることが知られている。また、1998年には、インドネシア近海に棲息するメジロダコ(en。右列に関連する画像あり)が、人間が割って捨てたココナッツの殻を組み合わせて防御に使っていることが確認され[2]2009年12月、「無脊椎動物の中で道具を使っていることが判明した初めての例」として、イギリス科学雑誌『カレント・バイオロジー (Current Biology) 』に掲載された[5][6][7][8]では特集が組まれ、二枚貝貝殻や持ち運び可能な人工物を利用して身を守る様子が詳しく紹介された。動物の道具使用については別項「文化 (動物)」も参照のこと)。

血液中にはヘモシアニンという緑色の色素が含まれており、そのため血液は青く見える。ヘモシアニンは魚類のもつヘモグロビンに比べ酸素運搬能力に劣るため、長距離を高速で移動し続けることができない[9]。さらに、海水のpH濃度にも影響を受けやすく、海水が酸性化すると酸素運搬能力が低下する[10]

外套膜内に格納されており、漏斗のポンプで海水を取り入れて鰓に当てることにより酸素と二酸化炭素の交換をする。漏斗から噴き出す水は遊泳時の主な推進力となるほか、二酸化炭素のみならず排泄物や後述の墨の排出に利用される。

墨を墨汁嚢に蓄えており危険を感じると括約筋を使って漏斗から黒い墨を吐き姿をくらます[1][2]。タコ墨はイカ墨よりアミノ酸や多糖類、脂質が少なくさらさらしている[1]。タコはさらさらの墨を煙幕のように利用しており敵を一時的に麻痺させる成分を含んでいる(イカの場合は墨の塊を出現させ敵から逃げる)[1]。タコ墨が料理にあまり用いられないのは、イカ墨と比べて墨汁嚢が取り出しにくく、さらに一匹から採れる量もごく少量であることが理由である[11]

外敵に襲われた際、捕らえられた腕を切り離して逃げることができ、その後、腕は再生するが、切り口によって2本に分かれて生えることもあり、8本以上の腕を持つタコも存在する。極端なものでは、日本で96本足のあるタコが捕獲されたことがあり、三重県志摩マリンランド標本として展示してある。

マダコでは自分の腕を食べる行動が観察されている。この行動は何らかの病原体によって引き起こされると考えられており、腕を食べ始めたタコは数日以内に死亡する[12]

吸盤

オスは4本の腕の吸盤の大きさが、メスに比べてばらつきがある。タコの吸盤は、たいていのものには吸着できる。切断された腕であってもその活動は約1時間続く。しかし、タコの吸盤は切断されたものであっても、自分の体には吸着することはなく、この原理については判明していない。ただしタコの皮膚を取り除き、同じタコの腕を切断して近づけると、その腕の吸盤は皮膚を除去した部分に吸着する。また皮膚を貼り付けた物体に、切断されたタコの腕を近づけると、その部分にはくっつかず、皮膚のない場所にはくっつくという現象が確認できることから、皮膚に何らかの自己認識機構が存在するという説がある[13]。吸盤には味覚を司る感覚器があるとされる[2]。吸盤の表面は古くなると剥がれて更新される。古い吸盤表面を剥がすために激しく腕をくねらせて互いにこすり合わせることがある。

タコの吸盤は主に筋肉の収縮を利用しており、歯の付いた角質の環を利用することで張り付くイカの吸盤とは構造が異なる[1]

生殖と寿命

8本の触腕のうち1本は交接腕と呼ばれ、先端が生殖器になっている。これがメスの体内に挿入され精莢が受け渡されることで受精が成立する[14]。たいていのタコの雌は、生涯に1回のみ産卵し[2]、卵が孵化したのちに雌は死んでしまう[2]。タコでは平衡石を用いた年齢推定が行えないため、一部の種を除いて、どれくらい生きるのかはわかっていない[15]

食物網における位置

食物網の中でのタコの位置(cf. 生態ピラミッド捕食-被食関係)は、おおむね中間位の捕食者である。タコの天敵として最もよく知られているのはウツボであるが、サメタイの仲間もタコを好む。しかしこの捕食-被食関係も一方的なものではなく、稀にではあるが、大型のタコが小型のサメを捕食することがある。また水族館では、ミズダコが同じ水槽で飼われていたアブラツノザメを攻撃し、死亡させた例もある[16]

他方、タコは甲殻類二枚貝にとっての天敵であり、好んで捕食する傾向が強い。獲物に比して体格で勝るタコであれば、腕が持つ強靭な筋力によって甲殻類の殻を砕き、きつく閉じた二枚貝の殻をこじ開けることができる。

人間もタコの天敵であるが、人間を見たことがない大型のタコは、潜水中の人を威嚇したり、ダイバーレギュレーターen)に腕をからませ、結果としてダイバーの呼吸を阻害することもある。

ほぼ全てのタコは毒を持っているが、人間には無害である[17]。ただし、ヒョウモンダコという種類のタコは例外で、分泌腺内に寄生するバクテリアに由来するテトロドトキシンという(フグ毒としても知られる)猛毒を持っており、人間でも噛まれると命を落とすことがある。解毒剤は見つかっていない。[18][19]


注釈

  1. ^ ここで言う「半夏」は仏教用語の「半夏(はんげ)」。90日にわたる夏安居(げあんご)の中間。45日目のことを言う。

出典

  1. ^ a b c d e vol8.タコ - 南三陸味わい開発室”. 海の自然史研究所. 2019年10月18日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g ナショナルジオグラフィック 2016年11月号
  3. ^ Schweid 2014, p. 44.
  4. ^ Katherine 2014, p. 134.
  5. ^ Julian K. Finn, Tom Tregenza, and Mark D. Norman (2009). “Defensive tool use in a coconut-carrying octopus”. Current Biology 19 (23): 1069-70.  doi:10.1016/j.cub.2009.10.052
  6. ^ Finn, Julian K.; Tregenza, Tom; Norman, Mark D. (2009), "Defensive tool use in a coconut-carrying octopus", Curr. Biol. 19 (23): R1069–R1070 http://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(09)01914-9
  7. ^ Gelineau, Kristen (2009年12月15日). “Aussie scientists find coconut-carrying octopus”. The Associated Press. http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5jfq6qUad8oMqjmm0UKjxvMrFGaaAD9CJIGO80 2009年12月15日閲覧。 
  8. ^ Harmon, Katherine (2009年12月14日). “A tool-wielding octopus? This invertebrate builds armor from coconut halves”. Scientific American. http://www.scientificamerican.com/blog/post.cfm?id=a-tool-wielding-octopus-this-invert-2009-12-14 
  9. ^ Schweid 2014, p. 18.
  10. ^ Katherine 2014, p. 79.
  11. ^ もしもタコ墨パスタを作るなら「1人前7,200円超」 アメーバニュース、2014年2月4日
  12. ^ Budelmann BU (1998). “Autophagy in octopus”. South African Journal of Marine Science 20 (1): 101-108. doi:10.2989/025776198784126502. 
  13. ^ Jane J. Lee (2014年5月16日). “タコの腕はなぜ絡まってしまわないのか”. ナショナルジオグラフィック. https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9241/ 2014年5月17日閲覧。 
  14. ^ Schweid 2014, p. 19.
  15. ^ 奥谷 2013, p. 21.
  16. ^ ナショナルジオグラフィック日本語公式サイト 動画‐動物‐魚類‐衝撃映像 サメVSタコ
  17. ^ Katherine 2014, p. 72.
  18. ^ Schweid 2014, p. 179.
  19. ^ Katherine 2014, p. 225.
  20. ^ Octopoda in WoRMS”. 2014年1月12日閲覧。
  21. ^ 奥谷 2013, p. 179.
  22. ^ a b かがくナビ科学技術振興機構ブログ)
  23. ^ 大阪湾の生き物カタログ マダコ”. 大阪府立環境農林水産総合研究所. 2014年1月12日閲覧。
  24. ^ 秘密のケンミンSHOW』の2015年2月5日放送分より。[出典無効]
  25. ^ 蛸(たこ)のゆで方”. 伯方塩業. 2017年1月6日閲覧。
  26. ^ 魚種別にみる水産資源の現状と問題/タコ WWFジャパン
  27. ^ モーリタニア産、および、アフリカ産の割合については、TBS情報7days ニュースキャスター』 2009年12月26日放送回に基づく。[出典無効]
  28. ^ 北海道の漁業図鑑 たこ漁業 (たこ箱)”. 2014年1月12日閲覧。
  29. ^ (やなぎだこ空釣り縄))”. 2014年1月12日閲覧。
  30. ^ Schweid 2014, p. 103.
  31. ^ Katherine 2014, p. 257.
  32. ^ Katherine 2014, p. 85.
  33. ^ First Octopus Farms Get Growing”. 2015年6月16日閲覧。
  34. ^ マダコの完全養殖の技術構築に成功
  35. ^ 日本水産 マダコの完全養殖成功 事業化目指す
  36. ^ 日本水産、世界で類を見ない「マダコの完全養殖」に成功
  37. ^ 北條令子「海と山の妖怪話」『香川の民俗』通巻44号、香川民俗学会、1985年、 4頁。
  38. ^ Dixon, Roland Burrage (1916). The Mythology of All Races. 9. Marshall Jones. p. 15 
  39. ^ “ram”. 新英和大辞典 (4 ed.). 研究社. (1960). p. 1472. 
  40. ^ “punner”. 新英和大辞典 (4 ed.). 研究社. (1960). p. 1442. 
  41. ^ 初めまして!工藤由愛 - Juice=Juiceオフィシャルブログ(サイバーエージェント) 2019年7月12日


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