アメリカミズアブ(成虫)
アメリカミズアブは、体長15~20mm、全体に黒色く光沢を帯び、体型が細長く、触角は比較的長くい。雄には、腹部第2節に1対の白色半透明の斑があるが、雌では1対の三角形の黄褐色紋となる。 前脚の附節と後脚の脛節基部は白色である。 幼虫は体長20mm余りに達し、扁平で、濃茶褐色で、ビロード状に全体に無数の黄色微毛がある。
コウカアブもよく似た色と体型をしているが、触角が遥かに短いことで容易に区別できる。幼虫もよく似ているが、本種の方がよりほっそりしている。
便池や畜舎、堆積した生ゴミ等から多数が発生し、その姿がハチに似るため非常に嫌われる。ハエの仲間で、刺すことはないが、不潔な虫である。屋内に飛来しやすく、食品への混入といった事故も比較的多い。人体内からウジが排泄された事例もある。
アメリカミズアブは、晩夏から秋にかけて成虫が多数認められるようになる。 東京では、8月から10月にかけて普通に見られる。 幼虫は、腐敗した生ゴミ、畜鶏舎に堆積した糞、便池および動物の腐肉などで発育する。
コウカアブもほぼ同様な生態である。家庭用の生ごみコンポストなどから発生する事例も多い。両種とも屋内への侵入性の強い種類であるため、食品等を扱う場所では衛生上問題になる。
アメリカミズアブ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/20 01:10 UTC 版)
アメリカミズアブ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Hermetia illucens (Linnaeus, 1758)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
black soldier fly Phoenix worms Soldier Grub Calci Worm | ||||||||||||||||||||||||||||||
変種 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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アメリカミズアブ(亜米利加水虻、学名: Hermetia illucens)は、ハエ目ミズアブ科の昆虫。アブ(直縫短角群)の一種。幼虫(蛆)は、後述する様々な理由からフェニックスワームと呼ばれる[2]。
形態
成虫
成虫は体長15 - 20 mm。体色は黒色。翅も半透明の黒色である。触角は長い[3]。腹部には2つ白紋がある[3]他、胸部側縁も白い微毛で薄く縁取られる。複眼はメタリックグリーンの地にメタリックパープルの細長い楕円が幾つも並ぶ。
幼虫
体長20 - 28 mm。やや淡い褐色をした蛆虫状の外観で、節々の皺が深い。
生態
分布
人類の大陸間運輸活動に付随して世界各地に分布を拡大している。日本には[1]1950年頃に侵入し[4]、本州、四国、九州、沖縄本島、宮古島、石垣島、西表島、父島で自然繁殖している。
生息環境
幼虫(蛆)は、草や果実、動物の死体や糞などの腐敗有機物を食べるため、家庭の生ごみやコンポストから発生することもある[5]。成虫も繁殖活動のためこれらに集まるが、口がなく餌は食べない。
人間との関わり
日本に水洗式便所が普及するまでは、便所周辺でよく見かけられたため、「便所バチ」と呼ばれていた[4]。 一方、英語圏での「フェニックスワーム」という呼称は、汚物の中から小虫が発生する様が不死鳥を連想すること、本種を研究していた学者が交通事故から生還したことなどから、複合的に取られている[2]。
本種の幼虫は温暖な気候の下での大量養殖が比較的容易で、また含有する栄養が量、バランスともに大変優れている。このため世界的に家禽、養殖魚や実験動物の代替飼料として、またその処理能力の高さから有機廃棄物処理分野でも注目を集めている。一例として、ケニアでは生ごみを食べさせた幼虫を家畜や魚類に与えている[6]。幼虫はペット(魚のほか両生類、爬虫類等)の健全な骨や甲羅を形成するのに重要なカルシウム:リン比率(Calcium:Phosphorous Ratio)がおおよそ1.5:1と理想的と言われる1:1から2:1の中間の値を示し、アメリカでは生き餌や乾燥状態の商品として“Calci worm”、“Phoenix worm”、“Repti worm”、“Soldier Grub”などの名で流通している。
大阪府立環境農林総合研究所は、飼育したアメリカミズアブの幼虫を養鶏や魚の飼料に、排泄物と食べ残しを堆肥に使う技術を確立している[7]。
日本在来種であるコウカアブとよく似ているが、アメリカミズアブの方が触角が長い。
脚注
- ^ a b “日本産昆虫学名和名辞書(DJI)”. 昆虫学データベース KONCHU. 九州大学大学院農学研究院昆虫学教室. 2013年10月20日閲覧。
- ^ a b “WHY ARE THEY CALLED PHOENIX WORMS?”. PHOENIX WORM STORE. 2023年2月21日閲覧。
- ^ a b 『昆虫の図鑑』196頁
- ^ a b c d 『校庭の昆虫』109頁
- ^ 『日本の昆虫1400 2』302頁
- ^ 【高専に任せろ!2022】JICAも頼る技術(上)ケニアで「アブ」効率回収:長岡高専、手作業より10倍速く ドラム回転させごみと分別『日経産業新聞』2022年10月31日3面(2022年11月12日閲覧)
- ^ 「食×技術(フードテック)」広がる/昆虫飼料、「植物肉」…普及に理解不可欠『日本農業新聞』2021年1月3日3面
参考文献
- 田仲義弘、鈴木信夫『校庭の昆虫』全国農村教育協会〈野外観察ハンドブック〉、1999年、109頁。ISBN 4-88137-073-1。
- 福田晴夫ほか『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方 : 野山の宝石たち』(増補改訂版)南方新社、2009年、196頁。ISBN 978-4-86124-168-0。
- 槐真史編 編『日本の昆虫1400 2 トンボ・コウチュウ・ハチ』伊丹市昆虫館監修、文一総合出版〈ポケット図鑑〉、2013年、302頁。ISBN 978-4-8299-8303-4。
関連項目
外部リンク
- "Hermetia illucens (Linnaeus, 1758)" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2013年10月20日閲覧。
- "Hermetia illucens". National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語).
- "Hermetia illucens" - Encyclopedia of Life
- 青木繁伸 (2003年10月1日). “アメリカミズアブ(亜米利加水虻)”. 幼虫図鑑. 群馬大学社会情報学部. 2013年10月20日閲覧。
アメリカミズアブと同じ種類の言葉
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