害虫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/08 06:37 UTC 版)

害虫(がいちゅう)とは、人間(ヒト)や家畜・ペット・農産物・財産などにとって有害な作用をもたらす虫。主に無脊椎動物でもある小動物、特に昆虫類などの節足動物類をいう。日本語では「おじゃま虫[1][2]」(おじゃまむし)とも呼ぶ。
害虫はより広い意味をもつ有害生物(pest)に含まれるとされ、これには他に病原微生物、雑草、害鳥、害獣などが含まれる[3]。このうち害虫と害獣を合わせて害虫獣と呼ぶこともある[4]。
益虫の対義語であるが、同一種であっても見方によって益虫にも害虫にもなることがある[5]。
各種害虫の分類
一般に害虫は加害対象によって、衛生害虫、農業害虫、貯穀害虫、不快害虫、文化財害虫などに分けられる[6]。このうち不快害虫については、媒介害虫や有害害虫とともに広義の衛生害虫に含められことがある[7]。
害虫の区分は文献によって異なる。
- 衛生害虫、農業害虫、貯穀害虫、食品害虫、財産害虫、不快害虫、家畜害虫などに分けるもの[8]。
- 狭義の衛生害虫、ペット・家畜・家禽害虫、農業・園芸・樹木害虫、有害害虫、不快害虫、衣類害虫、木材害虫などに分けるもの[9]。
主な種あるいはグループ | |
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狭義の衛生害虫 | ハエ[9]、カ[9]、ゴキブリ[9]、ノミ[9]、シラミ[9]、トコジラミ[9]、マダニ[9]、屋内塵性ダニ[9]、イエダニ[9]など |
ペット・家畜・家禽害虫 | ハエ[9]、カ[9]、ヌカカ[9]、アブ[9]、サシバエ[9]、ノミ[9]、ハジラミ[9]、マダニ[9]、ワクモ[9]、トリサシダニ[9]など |
農業・園芸・樹木害虫 | ケムシ[9]、イモムシ[9]、アブラムシ[9]、カイガラムシ[9]、コナジラミ[9]、ハバチ[9]、ナメクジ[9]など。またカマキリはミツバチを捕食するため、養蜂場では害虫である[10]。 |
有害害虫 | ハチ[9]、クモ(ゴケグモなど)[9]、アリ(ヒアリなど)[9]、ムカデ[9]、ドクガ[9]、アブ[9]、ブユ[9]、ヤマビル[9]など |
不快害虫 | ユスリカ[9]、チョウバエ[9]、ショウジョウバエ[9]、カメムシ[9]、アリ[9]、チャタテムシ[9]、クモ[9]、ゲジ[9]、ヤスデ[9]、タカラダニ[9]、ナメクジ[9]など |
衣類害虫 | イガ[9]、コイガ[9]、ヒメマルカツオブシムシ[9]、ヒメカツオブシムシ[9]など
→「en:Clothes moth」を参照
|
木材害虫 | シロアリ[9]、ヒラタキクイムシ[9]、ナガシンクイムシ[9]など |
衛生害虫
広義の衛生害虫

人体に何らかの衛生上の害をおよぼす害虫類を広義の衛生害虫といい、媒介害虫、有害害虫、不快害虫の3つに分類されることがある[7]。ただし、衛生害虫を媒介害虫と有害害虫とし、不快害虫を別のグループとする文献もある[4][11]。また、衛生害虫の加害対象は人間であるが家畜を含めることもある[6]。
- 媒介害虫
- 何らかの疾病を媒介するもの[7]。
- (例)カ[11]、ダニ[11]、ツツガムシ[11]など
- 有害害虫
- 肉体的に直接に刺咬や吸血などの実害を与えるもの[7]。
- 吸血害虫(カ、ノミ、ダニなど)、刺咬害虫(ハチ、クモ)、皮膚炎・アレルギーを引き起こす害虫(ダニ、ユスリカなど)に分けられる[11]。
- 不快害虫
- 不快感や不潔感といった心理的・精神的な害を与えるもの[7]。
- (例)ゴキブリ[11]、ハエ[11]、カメムシ[11]など
-
→「虫嫌い」も参照
不快害虫に関しては、街路樹に生息する触らなければ概して無害な虫にまで駆除要請が多く、仙台市の泉区役所には10年で苦情が倍増し過去においてはその時期特有の現象と割り切られていた現象にまで行政に対処が求められてしまい、手一杯の状態になるような状況もみられる[12]。
狭義の衛生害虫
カやハエ、ノミ類、シラミ、ナンキンムシ、ダニ類、ツツガムシ、ゴキブリなど伝染病等を媒介する害虫を狭義の衛生害虫という[13]。
経済害虫
経済上の損失の原因となる害虫を経済害虫という[4]。経済害虫に挙げられるものに、食品害虫[4]、衣類害虫[4]、文化財害虫[4]、家畜害虫[4]などがある。農業害虫や貯穀害虫については、経済害虫に含める場合のほか[14]、経済害虫とは別の一つのグループとする文献もある[4]。
農業害虫
野外農作物を加害対象とする害虫を農業害虫といい、広域には生産地域、狭域には施設園芸などが加害範囲となる[6]。
貯穀害虫
貯蔵農作物を加害対象とする害虫を貯穀害虫といい、貯蔵場所や工場などが加害範囲となる[6]。
等が該当する。
食品害虫
穀物だけでなく加工品も含めた食料品に付く害虫を「食品害虫」と呼ぶことがある[8]。食品昆虫は行動様式により、定住害虫、来訪害虫、迷入害虫に分けられる[15]。ただし、一種の昆虫が複数のグループに区分される場合がある[15]。また、衛生害虫、貯穀害虫、農業害虫と重なるものがある[15]。
- 定住害虫
- 食品を餌にして繁殖するもので、その多くは貯穀害虫と呼ばれるグループと重なる[15]。
- 来訪害虫
- 歩行や飛翔によって食品に到達して食害するもので、ゴキブリやハエなどの衛生害虫のほか、アリやハチなどを含む[15]。
- 迷入害虫
- 食品に偶然迷い込む不特定の昆虫群で様々な農業害虫が含まれる[15]。
財産害虫
建築物や家財道具などに被害をもたらす害虫を「財産害虫」と呼ぶことがある[8]。木材害虫などとして分類されることもある[9]。
文化財害虫
建造物、博物館や美術館などに収蔵される古文書・美術資料などの文化財は多くが紙や布などの有機質材料でできているため、虫害による損傷が発生する。害虫による文化財の損傷は虫損と呼ばれ、文化財への虫損を及ぼす害虫は文化財害虫と呼ばれる。
博物館施設においては文化財に影響を与える照明や湿度、振動や空気質など環境的要因とともに虫害の防止が考慮され、施設内部や収蔵庫は建設の段階から気密性を高くするなど対策がなされ、また定期的に薬剤による燻蒸作業が行われている(一方で、燻蒸薬剤による文化財への影響も考慮される)。薬剤による文化財及び人体や環境への悪影響を避けるため、脱酸素剤または窒素や二酸化炭素などの不活性気体を用いた低酸素濃度殺虫法も利用されている[16]。
古文書は特に発見された段階で虫損が生じていることが多く、損傷状態によっては文書料紙と同質材料を用いての修復が行われる。翻刻にあたっては、前後の文脈から虫損部分の文字を推測し補われることも多い。
家畜害虫
家畜に吸血や病気の媒介、ストレスといった被害をもたらす害虫を「家畜害虫」と呼ぶことがある[8]。多くは吸血性の節足動物であるが、家畜の体表を舐めてストレスを与えるノイエバエやクロイエバエなど、家畜に直接加害はしないが家畜飼養環境で発生するイエバエなどの衛生害虫も含む[17]。
害虫対策
歴史
日本神話で、須佐之男命は須勢理毘売から蛇比礼(へびのひれ)、呉公蜂比礼(むかではちのひれ)というスカーフのような布をもらい。これを振ると蛇、百足、蜂が寄り付かなくなった[18]ように、西洋では動物裁判、日本では虫送り、中国では八蜡を祭るなどの神事・呪術によって害虫などが作物につかないよう願った[19][20]。
- 人力による捕殺
- 日本の古い対策の記録では、捕殺がまず見つかる。西暦929年ごろから瓜畑の虫取人夫を雇った記録が残されている。中国では、飛蝗の大発生で虫に懸賞をかけて買い上げた話がある[19]。また、穴を掘って埋めたり焼いたりも行われたが、漢代から唐代初期には虫を殺すのを忌避する儒家の災異説が幅を利かせて治蝗は進展しなかった[20]。
- 道具を使った対策
- 1600年代の園芸書には、竹べらで書き落とす、敗筆(小さい筆)で払い落とすなど簡単な捕虫具も紹介されている。17世紀の『農業全書』には、チガヤの穂を集め束ねたもので綿毛の中のウリバエ防除ができるとされた。『百姓伝記』には、網やとりもちを使った対策が記述される。石川県能美郡埴田村に所在する天保10年に建立された虫塚には、もめん袋で虫を集めたことが記されている。中国では、羽子板上の手板で挟さみ殺したり、櫛状の蝗取櫛(虫梳)と呼ばれる道具が用いられた[19]。
- 防虫剤、殺虫剤
- 中国などでは漢方薬を用いた対策が行われていたとされるが、日本においては農家の秘伝としてあまり記録に残っていない。神社に権利が譲られた家伝殺蟲散は1600年頃に記録がある。内容として、アサガオの種子(牽牛子)、トリカブト類の根、薫 陸(乳香)、樟脳、明礬などの合剤である。使用法は、虫によって異なり、そのまま散布したり、たいまつに投げ込んで作物を燻煙したり、煎汁にして土に散布などが行われた。現代でも使われるものとして、灰類、石灰、煤、油類(毒のある桐油、芥子油、鯨油、魚油)、アセビ、クララ、センダン、モモの葉、タバコ、ヨモギ、ソバ、バイケイソウなどがある[19]。中国や日本では、ウナギの干物や骨を粉にしたり、燃やされるなども行われた[19]。
害虫防除
害虫防除は、生態的防除、物理的防除、化学的防除、生物的防除に分けられる[21]。
- 生態的防除
- 害虫の発生源除去や侵入防止など[21]。害虫を発生させない環境整備は環境的対策ともいい最も基本的な対策とされる[7]。
- 物理的防除(物理的対策)
- 発生した害虫を駆除したり動きを封じる方法で、網戸、蚊帳、捕虫器、誘殺器などがある[7][21]。効果が直接的に分かることや、害虫に抵抗性が付きにくい利点がある[7]。
- 化学的防除(化学的対策)
- 殺虫剤や忌避剤(防虫剤)などを用いる方法[7][21]。このほかに虫よけチョークなどが使われてきた。導入が比較的容易な方法で様々な場面で適用しやすいのが利点とされる[7]。
- 生物的防除
- 天敵を導入する方法[21]。在来天敵であれば環境に対する負荷が小さいのが利点とされる[7]。生物農薬も参照。
被害の低減
広義の衛生害虫の被害低減策は、感染症の媒介害虫対策(ベクターコントロール)と有害害虫・不快害虫対策(ニューサンスコントロール)に大別される[7]。
害虫よけ
自然界の例
動物では、シマウマなどのような模様で刺す虫を近寄せない効果が確認されている[22][23]。
ネコがマタタビの葉を噛んだり体に擦り付けるのは、傷ついた葉から出る虫よけ効果のためという研究がある[24]。また、トウヨウミツバチは、巣の周りに動物の糞を塗り付けスズメバチが近寄らないようにする[25]。
脚注
出典
- ^ 「都市におけるおじゃま虫たちとの共存」『環動昆』10巻3号、日本環境動物昆虫学会、1999年、120-126頁。doi:10.11257/jjeez.10.120
- ^ 害虫学研究室、鹿児島大学 - 2023年7月13日閲覧。
- ^ “害虫”. ルーラル電子図書館. 2025年7月28日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 大浜 庄司「害虫と衛生動物」『設備と管理 2021年5月号』2021年、64頁。
- ^ “グリーンデータブック いきもの住民台帳 人と甲虫のかかわり 益虫と害虫”. 目黒区. 2025年7月28日閲覧。
- ^ a b c d “殺虫剤研究班のしおり第75号”. 財団法人日本環境衛生センター. 2025年7月28日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l 橋本 知幸「我が国における衛生害虫対策」『ファルマシア』第57巻第5号、公益社団法人日本薬学会、2021年、359-361頁。
- ^ a b c d “「害虫」とはどんな存在?害虫の種類や益虫との違いも解説!”. 一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会. 2025年7月28日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc 武藤 敦彦「衛生害虫に用いる殺虫剤」『ファルマシア』第57巻第5号、公益社団法人日本薬学会、2021年、396-401頁。
- ^ “ミツバチのいる農園より”. 香取市 (2016年4月21日). 2017年7月11日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “衛生害虫等の同定検査について”. トップマイスター. 2025年7月28日閲覧。
- ^ 街路樹の虫に恐々 苦情10年で倍増 仙台・泉区役所(リンク切れ)
- ^ “ねずみ 衛生害虫CONTROL MiNiガイド”. 新潟県. pp. 7-24. 2025年7月28日閲覧。
- ^ “害虫としてのゴキブリの3つの性質「不快害虫」「衛生害虫」「経済害虫」”. トップマイスター. 2025年7月28日閲覧。
- ^ a b c d e f “食品に混入する昆虫たち”. 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構. 2025年7月28日閲覧。
- ^ “書籍の有害生物管理 -IPM(総合的有害生物管理)を中心に-” (PDF). 木川りか(東京文化財研究所保存科学部主任研究官). 2016年6月7日閲覧。
- ^ “家畜害虫”. ルーラル電子図書館. 2025年7月28日閲覧。
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- ^ a b 今井, 秀周; IMAI, Hidenori (2003-03). “中国蝗災対策史 : 蝗は天災か人災か”. 東海女子大学紀要 22: A1–A21. ISSN 0287-0525 .
- ^ a b c d e “パナマ運河開通と総合防除”. 公益社団法人日本木材保存協会. 2025年7月28日閲覧。
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- ^ “黒毛にしま模様、「シマウシ」に虫よけ効果 愛知県”. 日本経済新聞 (2019年12月23日). 2023年7月6日閲覧。
- ^ “「猫にマタタビ」の謎解明、葉をかむことで蚊よけ効果アップ…「身を守るため巧みに進化か」”. 読売新聞オンライン (2022年6月15日). 2023年7月6日閲覧。
- ^ “ミツバチ、動物の糞でスズメバチを撃退、研究”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 2023年7月6日閲覧。
関連項目
- 害虫の一覧
- 農業害虫
- 衛生害虫
- 害獣
- 害鳥
- 建築物環境衛生管理技術者 - 特定建築物における害虫防除及び環境衛生等の監督を行う者
- 検疫
- 森林病害虫等防除法 - 昭和二十五年に成立した樹木又は林業種苗に損害を与える病害虫の駆除を目的に成立した法律。
- アレロケミカル ‐ 動物・植物などの間でやりとりさせる他の種を誘因・忌避させようとする化学物質。植物が害虫を食べる益虫を誘因するなどがある。
外部リンク
害虫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 04:11 UTC 版)
日本全国、世界各国のどこにいても極めて一般的に見られる昆虫ではあるが、衛生害虫、農業害虫の双方の側面で害虫とみなされることが多い。 イエバエ科、クロバエ科、ニクバエ科などの一部の種は人の居住環境に棲むことで、衛生害虫化している。衛生害虫としてのハエの害は、大きく3つに大別される。 (1)汚物の散布, (2)病原体の間接的な媒介 ハエの成虫の多くはエネルギー源として花の蜜や果物、アブラムシの排泄物(甘露)などから糖分を摂取するが、卵巣や精巣の成熟のための蛋白源として種によって様々な食物を摂取する。蛋白源となる食物はヒトや家畜の体液(涙、唾液、傷口からの浸出液など)、死肉や動物の糞、腐敗植物質といった動植物の死骸、花粉などである。 衛生害虫としてのハエの害の1つ目と2つ目はこのハエの摂食習性に起因する。まず、動植物の死骸から好んで蛋白質を摂取するハエの場合、人間の糞便などの汚物または死骸と、肉や魚など食物の双方で摂食を行う場合があり、このときに病原性のある細菌、ウイルス、寄生虫卵などを体の表面を通じて、または食品上で消化管内容物を吐出したり糞便を排泄したりすることによって媒介することとなる。ヒトの居住空間に進出しているハエの一部には、イエバエのように積極的に人家に侵入する性質を持ったものがあり、こうしたハエは特に食物の病原体による汚染を引き起こす可能性が高い。 古くから、ポリオウイルス、赤痢菌、サルモネラ、赤痢アメーバ、回虫卵、鞭虫卵などがハエによって媒介されることが知られ、警戒されていたが、公衆衛生の向上によってこれらの病原体が少なくなった日本ではあまり危険視されなくなっていた。しかし、1990年代後半以降、病原性大腸菌(O157など)やトリインフルエンザウイルスといった感染症病原体がハエによって媒介されていることを強く示唆する研究結果が公表され、再びハエによる病原体媒介が着目されつつある。 (3)直接的な病原体の媒介 上記の病原体媒介は食物を通じた間接的なものであるが、ハエの食性によっては動物やヒトの個体の間で、病原体を直接媒介することが知られている。例えば、ヒトを含めた動物の涙から蛋白質を摂取する小型のハエをメマトイと呼ぶが、こうした食性のハエは目から目に直接寄生虫などの病原体を運ぶことも知られている。日本では線虫の一種、東洋眼虫が、雄がこの性質を示すショウジョウバエ科のマダラメマトイによって媒介されることが知られている。また、ハエの中には吸血性を持ち、健全な皮膚から血液を直接摂取して蛋白源とするものがあり、これも寄生虫などを媒介することがある。日本にもいるイエバエ科のサシバエ類による病原体媒介は、日本では知られていないが、アフリカのツェツェバエ類によって媒介されるトリパノソーマは、アフリカ諸国では深刻な問題となっている。 (4)寄生 こうした2通りの病原体の媒介以外に衛生学上、医学上重要なハエによる害として、蠅蛆症(ようそしょう)あるいはハエ症と呼ぶものがある。これはクロバエ科やニクバエ科といった肉食性のハエの幼虫が人体寄生を引き起こす疾患である。これは、死肉や糞便でも発生する種類のハエによる偶発性蠅蛆症と、脊椎動物専門寄生性のハエによる真性蠅蛆症の二つに分けられる。 偶発性蠅蛆症には、幼虫が傷口や皮膚潰瘍部に寄生する皮膚ハエ症、耳道に寄生する耳ハエ症、幼虫を食物とともに誤飲、あるいは肛門から幼虫が入り込むことによって消化管粘膜が刺激されて腹痛を起こす消化器ハエ症に分けられる。 ヒトに真性蠅蛆症を起こすハエは、どれも皮膚に寄生する種である。アフリカのヒトクイバエやローダインコブバエ、中南米のヒトヒフバエ、ラセンウジバエといった熱帯性のものが知名度が高いが、寒冷な温帯にもユーラシア大陸内陸部に広く分布するヒフヤドリニクバエ類の Wohlfahrtia magnifica、東アジアや南アジアの亜熱帯、熱帯域にはトウヨウラセンウジバエなどがおり、注意を要する。ただし、ヒツジの鼻腔に寄生し、吸血して育つ真性寄生種のヒツジバエが、偶発的にヒトに産卵して一時寄生することが知られている。 (5)不快感 また、こうした深刻な健康被害をもたらさなくとも、ヒト親和性の高いハエは人体や食物に大きな羽音で付きまとい、不快害虫としても大きな地位を占める。日本でもごみ処理場で大発生するイエバエや、鶏舎に群れを成すヒメイエバエは社会問題になることもあり、熱帯や亜熱帯地域では、ヒトの糞便を主な発生源とし、性成熟に必要な蛋白質を主としてヒトの涙や唾液から摂取するフタスジイエバエが、人体の目や口に大挙して群がり、慣れない者には非常な不快感を催させる。 (6)農業被害 農業害虫としてはハナバエ科のタマネギバエやタネバエ、ミバエ科のウリミバエやチチュウカイミバエなどが栽培植物の果実、種子、球根などに寄生し、腐敗させつつ食害するため、農業に深刻な被害を及ぼす。
※この「害虫」の解説は、「ハエ」の解説の一部です。
「害虫」を含む「ハエ」の記事については、「ハエ」の概要を参照ください。
害虫
「害虫」の例文・使い方・用例・文例
- 害虫
- 菜園の害虫
- ブユはマメ科の植物の害虫である。
- アザミウマ類はごく小さい害虫である。
- イヤーワームはトウモロコシの害虫だ。
- 残飯の屑は害虫の住処になる。
- 不潔は病気と害虫を生む.
- 害虫.
- 庭樹についた害虫の除去は大変手間のかかる作業です.
- 害虫を駆除する
- 害虫を除去する活動
- 彼は、病害虫を取り除くために庭にスプレーした
- 多くの病害虫が一般的な殺虫剤への抵抗力をつけた
- 様々な小型害獣動物や害虫
- ネズミと他の害虫から穀類を保護しなければならない
- 彼は害虫がないかどうか子供の頭を調べた
- 村の正念はおそらく害虫を撃っている
- 一般的な食用カタツムリといくつかの害虫を含む陸貝
- 青白いジグザグの模様のある茶色の貝殻を持つ深刻な庭の害虫
害虫と同じ種類の言葉
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