衣蛸とは? わかりやすく解説

衣蛸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/28 01:05 UTC 版)

衣蛸[1](ころもだこ)は、京都府丹後半島(与謝半島)北端袖志日本海や、与謝郡の岬(若狭湾内の入江)にいると伝わる妖怪。体を大きく広げて船や人を襲うと言われる。

概要

京都府与謝郡の海(伊根湾[注 1]

その名前が示すようにタコの妖怪。外観は小さなタコと変わりないが、船が近づくと体を衣のように大きく広げ、人間も船も海の中へ沈めてしまうとされ、人々に恐れられているという[2][3]

体を広げたときの大きさは6畳ほどともいう。また、普段は貝殻の中に入って[3]多田克己の脚色では、ふだんは、海の上を漂っており、自分を捕らえようとする漁師をこのように襲うという[4]

ある資料(大藤時彦 1949)では、京都下字川村袖志(現:丹後町袖志)の伝承としており[5]、すなわちこれは丹後半島北端に位置する。あるいは与謝郡の岬周辺に伝わるとされるが[2][3]荒俣宏は若狭湾に出現するものだとまとめている[8]

この妖怪と比較される実在のタコが、日本海に棲息するムラサキダコであり、足と足の間に膜を持ち、広げると体の十倍にもなるという。実物はひじょうに小さい[8]兵庫県竹野町の海岸などでは、地元民に「衣ダコ」の俗名で知られている[9]

類型

似たような海の妖怪としては、愛知県佐久島伝承のフトンカブセがおり、これは「ふわっと来て、すっと被せて窒息させる」と語り継がれる[5]

大衆文化

ジュリー・カガワ英語版の小説『Night of the Dragon』(2020年)に、コロモダコ、牛鬼(うしおに)、海坊主には海ではめぐり合いたくないというセリフがある[10]

脚注

注釈

  1. ^ 現今の与謝郡は、内陸の与謝野と伊根とが飛び地になっており、「岬」といえば「伊根岬」やその東の「鷲岬」などの候補が消去法で残るであろう。ただ、旧与謝郡は、宮津市の大部分を含み、それだと田井漁港方面の岬なども範疇に入る

出典

  1. ^ a b 大島建彦 編「ころもだこ【衣蛸】」『日本の神仏の辞典』大修館書店、2001年、532頁。ISBN 9784469012682https://books.google.com/books?id=nDwQAQAAMAAJ&q=ころもだこ 
  2. ^ a b 『宮城県史』(1973年版)[6]、『綜合日本民俗語彙』を典拠にあげる。同1957年版、および同1987年版[7]
  3. ^ a b c 『綜合日本民俗語彙』(永田典子)、『日本の神仏の辞典』「衣蛸」の項[1]所引。
  4. ^ 多田克己『幻想世界の住人たち』 IV、新紀元社Truth In Fantasy〉、1990年、155-156頁。 ISBN 978-4-915146-44-2 
  5. ^ a b 大藤時彥 著「一七. 海の怪異」、柳田国男 編『海村生活の研究』日本民俗学会、1949年、319頁。NDLJP:954404https://books.google.com/books?id=krsnAQAAIAAJ&q=コロモダコ 
  6. ^ 茂木徳郎 著「妖怪変化・幽霊」、宮城県史編纂委員会 編『宮城県史』《第21巻 (民俗 3)》宮城県史刊行会、1973年、448頁。NDLJP:2992711https://books.google.com/books?id=O4oNAQAAMAAJ&q=衣蛸 
  7. ^ 茂木徳郎 著「妖怪変化」、渡辺波光、岩間初郎会 編『宮城県史』 21巻、ぎょうせい、1987年、448頁。 NCID BN00973317 
  8. ^ a b 荒俣宏; 應矢泰紀 (2021). “アッコロカムイ”. アラマタヒロシの日本全国妖怪マップ. 秀和システム. p. 12. ISBN 9784798065076. https://books.google.com/books?id=ZtRMEAAAQBAJ&pg=PA12 
  9. ^ 本庄四郎『生きもの探訪記』北星社、2004年、48頁。 ISBN 978-4-939145-04-9https://books.google.com/books?id=BaMfN6iNcugC&pg=PA48 
  10. ^ Kagawa, Julie (2020). “Chapter 6. In the Crow's Nest”. Night of the Dragon. Harlequin. ISBN 9781488056611. https://books.google.com/books?id=0I-QDwAAQBAJ&pg=PT76 

関連項目


衣蛸(ころもだこ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/20 20:27 UTC 版)

トキワ来たれり!!」の記事における「衣蛸(ころもだこ)」の解説

巨大なの姿をした妖異皮膚触れたころから人間シン吸収する知能はあまり高くないようで、使忍であるはずのかがりにも襲いかかっていた。

※この「衣蛸(ころもだこ)」の解説は、「トキワ来たれり!!」の解説の一部です。
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