田中冬二とは? わかりやすく解説

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田中冬二

田中冬二の俳句

われも老い妻も老いけり桜餅
フライパンに秋の灯のはねてゐる
古利根のとある宿屋のつくし飯
富士の水ここに湧き居りまんじゆさげ
提灯の苗代水に映りゆく
早乙女の休んで居れり水車
早乙女の足袋脱いでゐる寺の縁
機関車の蒸気すて居り夕ざくら
竃の火囲炉裡に移し苗代寒
苗代寒かこちつ豆腐買うてゐる
雪女郎の銀の簪拾ひたる
雪女郎遠き町の灯あつまれる
飛騨平湯苗代田毎に温泉をひけり
鱈売り女雪女郎となりにけり
黒姫も妙高も見えず苗代寒
 

田中冬二

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/23 04:10 UTC 版)

田中 冬二(たなか ふゆじ、1894年明治27年)10月13日 - 1980年昭和55年)4月9日)は、日本詩人である。本名は吉之助。

銀行員として働きつつ、郷愁をテーマに多くの詩作を行う。専ら旅を題材とした詩を作り、山国や北国の自然、日常生活を初々しい感覚で表現した叙情詩集「青い夜道」(昭和4年)を発刊。多作ではなくマイナーポエットとも評されるが、一貫して日本の自然や生活に根ざした詩を作り続け、吉行淳之介は象徴的に「青い夜道の詩人」と評している。詩作のほか散文俳句も手がけている。堀口大學らと交友関係があった。

略歴

叔父の安田善助 明治商業銀行頭取

銀行員だった父吉次郎と、母やゑの長男として福島県福島市栄町に生まれた。1901年(明治34年)に父が、1906年(明治39年)には母が相次いで亡くなったため、上京して叔父・安田善助のもとで養育される[1]。両国小学校、東華尋常小学校を経て、1908年(明治41年)に立教中学へ入学。この頃から文学に興味を持ち、友人と回覧雑誌を作り、吉江喬松の詩『高原』に影響を受けたという。また、投稿文芸雑誌『文章世界』や歌誌『アララギ』へも投稿。1912年(明治45年)に『文章世界』へ投稿した短文が特選(田山花袋選)となり、この時にはじめて「田中冬二」のペンネームを使用している。

1913年(大正2年)に中学を卒業すると、第三銀行(安田銀行、現みずほ銀行)へ就職。就職後も投稿活動を続け、1922年(大正11年)に詩誌『詩聖』へ投稿した作品が編集長長谷川巳之吉に評価される。1923年(大正12年)9月1日の関東大震災では被災している。1925年(大正14年)に結婚。1929年(昭和4年)には第一詩集『青い夜道』を刊行する。

1939年(昭和14年)には長野支店長として長野県長野市妻科へ転勤。信州の土地柄を愛し、上諏訪支店長時代と合わせて「最も快適な時代」と語り、多くの詩作をしている。

戦後は1946年(昭和21年)、転勤に伴い上京。東京都南多摩郡日野町豊田(現在・日野市)に居を構える。当時日野に住んでた伊藤整や、相模原にいた八幡城太郎らと交流している。伊藤整とは『椎の木』や『セルバン』を通じて戦前から交流があったと推定されている。

1949年(昭和24年)には銀行を定年退職し、新太陽社の専務取締役となる。1971年、日本現代詩人会会長に就任。紫綬褒章受章。1980年に死去。85歳。

著作

  • 青い夜道 詩集 第一書房 1929
  • 海の見える石段 今日の詩人叢書第5 詩集 第一書房 1930
  • 山鴫 詩集 第一書房、1935
  • 花冷え 詩集 昭森社、1936
  • 故園の歌 詩集 アオイ書房 1940
  • 橡の黄葉 詩集 臼井書房 1943
  • 菽麦集 新詩叢書 詩集 湯川弘文社 1944
  • 行人 句集 ちまた書房 1946
  • 山の祭 詩集 笛発行所 1947
  • 春愁 詩集 岩谷書店 1947
  • 山国詩抄 詩集 青園荘 1947
  • 三国峠の大蠟燭を偸まうとする 散文集 岩谷書店 1947
  • 高原と峠をゆく 随筆集 中央公論社 1955
  • 晩春の日に 詩集 昭森社 1961
  • 牡丹の寺 詩集 青園荘 1964
  • 麦ほこり 句集 大雅洞 1964
  • 葡萄の女 詩集 昭森社 1966
  • 青い夜道 稀覯詩集複刻叢書 詩集 名著刊行会 1970
  • つつじの花 詩集 鶏肋書屋 1970
  • 失われた簪 詩集 中央公論社 1972
  • サングラスの蕪村 詩集 中央公論社 1976
  • 織女 詩集 潮流社 1978
  • 八十八夜 詩集 しなの豆本の会 1979
  • 田中冬二全集全3巻 筑摩書房 1984-1985

脚注

  1. ^ 母方の叔父で安田銀行創始者・安田善次郎の甥の安田善助。母やゑの母つねが善次郎の実妹。父吉次郎は黒部市生地の出身で善次郎と同郷。

参考文献

関連項目




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