まつろわぬ神
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 21:11 UTC 版)
太祖(たいそ) 声 - 多羽田有 土蜘蛛一族が復活をもくろむ太古の邪神。
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まつろわぬ神
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 08:36 UTC 版)
アテナ(Athena) 声 - 小倉唯 ギリシア神話の智慧と戦いの女神。エリカに呼び出された護堂がローマで出会った銀の髪と闇色の瞳の少女。戦闘時には17、8歳の乙女の姿をとるほか、下半身のみを蛇に変えた半人半蛇の形態をとることもある。まつろわぬ身となってからかなりの年数がたっているが、眠っていたのか現れたのは最近とのことで、カンピオーネと遭遇したのは数百年から数千年ぶりらしい。 南欧・トルコ・北アフリカの地中海一帯で広く崇拝されたアテナ、メデューサ、メティスの成す三相一体の神。より正確にはリビアのネイトやカナン神話のアナトなどの名前がよく似た様々な神々にも連なる、北アフリカで生まれた「原初のアテナ(オリジナル)」にあたる女神とされ、本来はエジプトのイシスやバビロニアのイシュタルと祖を同一にする、より古い時代の地母神である。かつては「大地の女神」「冥府を支配する闇の神」「天上の叡智を司る智慧の女神」という3つの属性を併せ持つ神々の女王だったが、武力を持つ男に敗北して女権社会が崩壊したことで、アテナは神王ゼウスの娘になり、メティスは王に陵辱されて叡智を奪われ、地母神だったメデューサは魔物にまで堕とされた。 闇の神として最高位の力を有し、闇の領域を広げることで目眩ましやあらゆる光を遮断する障壁とすることができるほか、冥府の主として死神の呪詛を扱い、冥府に吹く絶対零度の雪嵐を呼び、見た物すべてを石化させ仮初めの死をもたらす呪詛『蛇の邪眼』の権能を持つ。その本質が、大地を象徴する『蛇』と異界と現世を行き来するとされる『鳥』を融合させた『翼ある蛇』、すなわちドラゴンであることから、聖と凶の双方のシンボルとされたフクロウをも従え、闇の中から毒蛇やフクロウの群れを召喚するだけでなく、コンクリートや海中の土砂、影から作り出す大蛇を神獣として操り、自らは背中にフクロウの翼を生やして飛翔できる。加えて『蛇』の性質から不死の神性を持つので、たとえ倒されても甦る。大地母神の叡智により、天啓や直感という形で多くの叡智や知識を得て相手の性格や神の力を見抜く。また、時代とともに冥府と戦争が結びついたことで闘神としての神格も獲得しており、死神の鎌や銀弓、大刀も扱い、大地から力を得て無双の強力を振るうほか、長弓や神獣を材料に「ゴルゴンの盾」「神の楯(アイギス)」と呼ばれる長方形の大盾を創造できる。この青銅の楯は『猪』やランスロットの突撃を止められるほど頑丈で、表面に彫り込まれた女妖メドゥサの邪眼により敵を石化させる。「戦場での不死」の性質を持つ《鋼》に対しては鏃に病の神力を籠めた矢で対抗する。さらに、アテナがゴルゴンの首を常にそばに置いていた逸話にちなんで、一時的にアテナとメデューサの神格を分離することもできる。 非常に誇り高い性格をしており、侮られることを嫌う。神殺しとの殺し合いで神々が死ぬことについて問題視はしておらず、むしろ地母神の天敵である鋼の軍神ラーマを庇護者として遣わす《運命》の方に反感を覚えている。 位と齢を取り戻すため、神具ゴルゴネイオンをイタリアから持ち去った護堂を追い5月の東京に現れる。死の呪詛で一度は護堂を死亡させ、東京一帯を闇で覆い光と火を使用不可にしながら虎ノ門へ向かい、裕理からゴルゴネイオンを奪って本来の力を取り戻した。蘇生した護堂と浜離宮恩賜庭園で再戦し、『戦士』と『白馬』で消耗したところでエリカのゴルゴダの言霊を込めた投槍に貫かれ敗れるも、止めは刺されず見逃され、以来彼を宿敵ととらえるようになる。その2ヶ月後、夏休みでサルデーニャ島を訪れていた護堂と再会し、ペルセウス顕現を察知して彼をナポリの戦場に連れ出す。苦戦する彼に知恵を授け借りを作り、戦闘後に気絶した護堂に口移しで治癒の術をかけた(アニメ版では治癒完了後に自らの厚意で、もう一度キスをしていた。その上、最終話では抱きついた状態でメティスを倒すというヒロイン的な行動をしていた)。 9巻では自身の勢力圏内であるトラキアでグィネヴィアの計略を察知し、妨害するために天敵である守護騎士ランスロットと交戦、隕石墜落の一撃で胸を抉られた隙を突かれて『魔導の聖杯』で大地母神の神力を奪われる。苦肉の策で聖杯そのものを自らの肉体に取り込み即死こそ免れたものの、徐々に神力を吸収されて緩慢な死を待つ状態となる。『最後の王』復活を企む彼らを追って来日したが、聖杯の位置を探知できるグィネヴィアを追い詰めきれなかったため、消耗し宿願も果たせず消滅することを危惧して護堂との決着を優先し、彼に宣戦布告する。上陸した川崎一帯で住人含め視界内の町や海など全ての物を石化させて護堂を焦らせる作戦をとり、『戦士』の対策として神格をアテナとメデューサとに分け戦いを有利に進めるも、グィネヴィアが護堂に授けていた言霊に反応して聖杯が作動したため、自らを石化しその働きを食い止めた。その後、護堂の『黄金の剣』で聖杯が一時的に機能停止したことで復活、彼との交渉で一帯の石化を解き、自身の復活を察知して乱入してきたランスロットを護堂と共に木更津で迎え撃ち、エクスカリバーを模倣して編み出した秘術《黒の剱の大法》で退ける。最期は双方満身創痍の状態で護堂との勝負を仕切り直し、闇の盾で『白馬』に耐えきり勝利するも止めは刺さず、「『最後の王』と戦えば必ず死ぬ」と予言を残し、彼に秘法の知識を与えると共に、自身が復活した場合は護堂の側から雪辱を果たしに来ることを約束させて消滅した。聖杯に囚われたアテナの魂は、グィネヴィアの死後に新たな魔女王パラス・アテナとして転生する。 また、最終決戦では、《運命の担い手》によって全盛期の状態で過去から呼び出され、ランスロットを石化の権能で降したが、宿敵としてこの場は場違いであると考え、自らの意思で戦いを放棄し消滅した。 なお、《ユニバース492》にも別のアテナが存在するが、こちらのアテナとは違って徹頭徹尾に六波羅蓮たちの敵として登場し、最初の敵にして最後の敵という形で激突する。 パラス・アテナ グィネヴィアの死後、聖杯から誕生した新たな魔女王。転生する前のアテナと同じ姿をした少女。聖杯を体内に宿しているため、古今東西の神祖の中でも最高の力を持つ。 元闘神としての気質ゆえか、グィネヴィアから受け継いだ遺志である『最後の王』復活を成し遂げるという使命感以上に、まつろわぬ神であった頃の宿敵である護堂に対する強い執着を持っている。竜蛇の封印を解くと、身長5メートル、全長12、3メートルの、蛇の髪を生やす蛇妖メドゥサの姿へと化身することが可能となり、転生前の力(「神の楯」の創造、神格の分離、神罰の青き焰、『蛇の邪眼』など)を発揮できるようになる。 ブルターニュで約3ヶ月の雌伏を経て、2月にモン・ヴァントゥにて『風の王』を招聘する。その後、サルデーニャ島を訪れていた護堂とドニの前に現れ宣戦布告し、南シナ海の小島でキルケーの神力の残滓を集めて全長20メートルの蛇型神獣を7体作り出してから『最後の王』の眠る日本へ向かい、前世からの因縁の地である木更津へ上陸し護堂と対峙する。真の目的は護堂と『最後の王』の両者を倒すことであり、竜蛇の封印を解き護堂と戦いながらも、地上に帰還した『最後の王』を襲撃したが、ラクシュマナの策略により聖杯と一体化した呪力を奪われて致命傷を負う。余命いくばくもない状態となりながら『最後の王』に一矢報いるため護堂に協力した際に、女神であった頃の記憶を取り戻す。その後、転生前の約束を果たさなかった護堂を許す代わりにラーマに対する復讐の場を与えることを要求し、自らの体をエリカとリリアナが鍛えた即席の魔剣と一体化、恵那が剣でラーマを傷つけた瞬間、自らの物であった神力を奪い返すことで護堂の勝利に貢献した。 戦闘後は潔く死を待つつもりであったが幽世での異変を察知し、ラーマへの復讐の一撃を与える最後の機会を得るべく東京湾から生と不死の境界へと旅立ち、魔王内戦では幽世から護堂を援護した。その後は智慧の女王としての見識を評価されてアストラル界の妖精王達の召喚を受け、護堂に《運命》や並行世界についての話をし、妖精王たちと共に《妖精郷の通廊》に細工してカンピオーネたちを別の世界へと追放した。 メティス(Metis) 声 - 石原夏織 ギリシア神話に登場する智慧の女神。アニメ版のオリジナルキャラクターであり、アリスが予言した「星なき夜の予言」に関わる存在。 天空神ゼウスの1人目の妻で、アテナの母にあたる神。だが、実際は蝿に化けたゼウスに強姦されてアテナを身ごもり、ウラノスとガイアから降された「生まれた子が男児であれば、ゼウスを超える神になるだろう」という予言を恐れた夫によって頭から呑み込まれ、殺されて叡智の権能を奪われている。元は陵辱の対象でしかなかったメティスが妻となったのは、ゼウスの非道を隠すために神話が書き換えられた結果である。本作のメティスは夫の裏切りと身勝手から憎悪と復讐心を抱き、ゼウスが治める天を飲み込み地上を闇で閉ざす「星なき夜」を実現しようとした。 アテナの三位一体の1つであり、メデューサの語源でもあることから、娘と同じ蛇の女神にして闇の神としての能力を有しており、「星なき夜」により全てを闇に沈める過程で、全世界的な停電と世界同時皆既日食を引き起こしている。また、鋼の英雄は蛇と女神がいなければ剣を得られないことから、本来は地母神の天敵である英雄たちから逆に剣を奪う「鋼を呑む蛇」と言うべき力を持ち、作中では天叢雲劍を恵那から奪い自身の大鎌に変えて使っている。 東京でアテナが護堂に敗れた際、その一部がゴルゴネイオンに宿り、アテナの原型とも言える母の姿になった。そこからナポリへ向かい、護堂と戦い満身創痍となっていたペルセウスを殺害、全てを飲み込み世界を破滅に導くためにアテナを取り込もうと戦い、勝利して彼女から力と記憶を奪う。再び日本に戻ると、幽世で護堂たちの前に現れて天叢雲を強奪、神の抜け殻となったアテナを完全に取り込もうと襲いかかる。足止めとして留まったエリカ達を倒し、日本最高のパワースポットである霊峰・富士山に逃げ込んだ護堂とアテナを強襲、『駱駝』はおろか闇の神の弱点であるはずの『白馬』すら通用しない圧倒的な力で護堂を退け、娘を吸収して本来の姿を取り戻す。しかし、エリカたちの合流を許して神の知識を護堂が得たことにより、スサノオの風の力までは奪えなかったことから『戦士』で天叢雲を奪い返された上、剣の組み替えで自身の神力を斬り裂かれてアテナを分離させられてしまう。凄まじい執念で『山羊』と『猪』にも耐え、再び力を取り戻そうと足掻くも、記憶と力を取り戻したアテナから智慧の神の祝福を受けた護堂の手により葬られ、アテナの中に還った。 ウルスラグナ(Verethragna) 声 - 皆川純子 古代ペルシアの軍神にしてゾロアスター教の光の神。渦巻く『強風』・みごとな角を持つ屈強な黄金の『雄牛』・光のオーラを放つ輝くような『白馬』・獰猛そうな面構えの『駱駝』・容貌魁偉な漆黒の巨大な『猪』・輝く人間の『少年』・鷹に似た翼ある猛禽『鳳』・美しい黄金の毛並みの『雄羊』・双つの角に黒い毛皮の『山羊』・黄金の剣を持った人間の『戦士』の10の姿に変身してあらゆる障碍を打ち破る者であり、『勝利』を神格化した常勝不敗の神。光明と契約の神ミスラに仕える守護者で、主の荒ぶる魂から生まれたことから戦闘に特化した能力を持つ。インドラ(帝釈天)やヘラクレス、執金剛とも同体をなすとされ、ダハーカの竜を征伐する《鋼》の系譜の混淆神の一柱でもあり、焰の髭と髪を持つアルメニアの竜殺しの軍神ヴァハグンとは兄弟のような関係にある。王権や民衆、戦士を守護し、旅人を守る風の神の側面を持つ。 《十の化身》に変身、あるいは顕身として召喚することが可能で、言霊によって鍛えた神を斬り裂く黄金の剣、竜巻や太陽の焰、雷撃を操る力、支配の言霊、人類最高クラスの武術家をも上回る武芸の技倆、最高レベルの霊視力、風と化して多元世界を渡る能力、死から甦生する再生力、神速飛行、並外れた膂力、救いを求める民の声を地上のどこにいても聞きとる尋常ならざる聴力、流れる風に命じて逃走した敵を捜索するといった多彩な能力を使う。最大の武器である智慧の剣は、一刀両断の決定力には欠くものの、攻防一体かつ柔軟な運用にも耐え、まつろわぬ神やカンピオーネに対して非常に有効であり、護堂の『戦士』と違って死力を尽くせば性質の異なる神の力に同時対応させる二刀流も可能。ただし、2つの化身を同時に使うことはできないという制約がある。変幻自在で多彩な戦法を老練にめまぐるしく駆使して翻弄するのが得意で、力で勝る敵には技巧と叡智で上を行くが、神格を切る言霊の剣を振るう真っ向勝負のときがもっとも厄介といえる。また、主が光の神であるため太陽神としての性質が強く、太陽の出現と共に力が高まる性質がある。鋼の剣神だけあって体は頑丈で、普通なら後頭部が吹き飛ぶほどの一撃を受けても戦闘を続行でき、『強風』に変身すれば物理攻撃を無効化し、富と生命力を象徴する『牡羊』の力で肉体が崩れ去った状態からでも復活する。インドラ神と同等、同質の神格であることを利用し、彼が英雄ラーマに授けた武具を自在に使うことが可能。 身長160センチメートル台前半ほどで、黒髪に象牙色の肌の中性的な15歳の美少年(『少年』の化身)。勝負事を好み、自信家で負けず嫌いな性格。うすよごれたボロ布じみた外套を着ているにもかかわらず、凛々しさと神々しさにあふれ、英雄の覇気をみなぎらせている。東方で顕現した後、まつろわぬ神の性に従い強敵を求めて西へ向かい、護堂がイタリアに着く数日前に神王メルカルトを復活させる。しかしメルカルトとの戦いで相打ちになり、『強風』『少年』『戦士』以外の化身に加えて名前と記憶を失ったため、神獣と化して飛んでいった自分の神力を回収していた。当初は人を引き付ける魅力があり、イタリアで出会った護堂と意気投合するが、神力を取り戻す過程でまつろわぬ神としての性質も取り戻した結果、次第に人間味を失っていき闘争のみを求めるようになる。「プロメテウス秘笈」で盗まれた『白馬』を除く9つの化身を統合しメルカルトとの再戦に向かうが、英雄にふさわしくない行動を友人として止めようとした護堂もメルカルトと共に相手にすることになり、最後まで人間を舐めて本気で戦わなかったことが仇となって、メルカルトとの激戦で満身創痍となっていたところに自らの力であった『白馬』の焰に焼かれ、護堂と相打ちとなる形で最期を迎える。初めての敗北を笑いながら認め、カンピオーネに転生したことで生き延びた護堂に対して「再び会うまで誰にも負けるな」と言い残して消滅した。 最終決戦では《運命の担い手》の権能で召喚されて護堂としばらく戦うが、用意された土俵で因縁の宿敵と戦わされることに我慢できず、自ら運命の糸を断ち切って「黄金の剣」を残し再会を誓って消滅した。それから5年後、並行世界《ユニバース492》の『最後の王』である聖王ミスラから救援要請を受け、命と力を与えられて復活を果たす。再戦が近いことを知らせるため、《ロンギヌスの槍》に関する野暮用でアルメニアのゲハルト修道院を訪れていた護堂を太陽神ミトラを奉じたガルニ神殿へ導き、『鳳』の姿を現した直後に多元世界を超えて旅立ち、《無限時間の神殿》で命が尽きかけたミスラからユニバース492の『最後の王』としての魔王殲滅の使命と「救世の神刀」を託された 。これにより救世の神刀と黄金の剣による剛と柔を結合させた二刀流が可能となる。ただし、受け継いだばかりだったためか、ラーマに比べれば使い慣れておらず、かつて彼が使った毒の武器は使用できなかった。ユニバース492の21世紀に現れたアイーシャを聖域に連れ帰り、アイーシャの封印後、彼女を探しに来た護堂と戦うも、捜索を優先して戦闘を放棄されたため、時の門を超えた彼を追い、ズルワーンから《盟約の大法》を授かって1857年の地上に降り立つ。妊娠したエリカを見舞い、子供が双子であることと、物心つく頃には父母と離れ離れになっていることを予見してそれとなく2人に伝えた後に、《聖杯》を乗っ取って神獣軍団の製造を続けるアイーシャを止めるために護堂と一時共闘。解放した彼女の処遇を巡って護堂と再び戦いになり、『剣』で以前自分から簒奪された《東方の軍神》を封じ、大法の圧倒的な力で勝負を有利に進めるも、《反運命》による大ばくちに出た護堂を見て救世の神刀を捨て、最後の力を振り絞った彼に捕まり、道連れにされて『白馬』に焼かれる。『雄羊』の力で護堂より一足先に復活を遂げると、再戦とミスラへの義理立てを済ませたことで以後は好きにすることにして、護堂にとどめを刺そうとするズルワーンを黄金の剣で始末し、「何が最善か、見極める強さを持て」とリリアナに言伝て何処かへ旅立って行った。 『ロード・オブ・レムルズ』では、草薙護堂を元ネタにアイーシャがでっちあげた非実在キャラである、反運命の戦士《クシャーナギ・ゴードー》としてヒューペルボレアに召喚される。『草薙護堂の代役』として人々を運命の軛から解き放つというアイーシャの望みに応える形で勇者と戦うことになり、10の化身とアレクから譲渡されたラーマの弓と矢筒によって雪希乃と梨於奈を苦しめ、剣神として覚醒した雪希乃に対して智慧の剣を抜いて救世の神刀《建御雷》の刀身を鍔元近くまで断ち切るが、ラーマに託された武具を全て融合させた『究極の一太刀』で袈裟懸けに斬り伏せられて敗北。『牡羊』の力で復活を遂げるも戦意を喪失、アイーシャを封印して面倒事を片づけてくれたことに礼を言い、しばらく英雄界を旅することにする。 メルカルト(Melqarth) 声 - 大友龍三郎 古代フェニキアで神王として崇拝された、地中海最強の神の一柱。真の名をバアルといい、紀元前の古代オリエント(中東)に起源を持つウガリット神族の王で、ユダヤ教とキリスト教の《神》の最大の敵として『旧約聖書』にも名が記されている。「メルカルト」は特にテュロスの街を守護するバアルの尊称で、ギリシアに近い地域では棍棒を持った大男として表現される。カナン人、フェニキア人などのセム語族系の原始遊牧民が崇めた『雨季』の嵐を司る天空神であり、定住農耕民族が崇拝する海や大地の象徴たる竜を倒す竜狩人。匠の神コシャル・ハシスから贈られた1対の神具「ヤグルシ・アイムール」を武具とし、これを用いて竜王にして海神であるヤム・ナハトを討ち取った。他神話の天空神と同じく極めて幅広い職能を持ち、ヘラクレスとも関わりが深いことから闘神としての性質も備え、さらには太陽・海・生命の神でもある。ただし職能の広さから、太陽神としての属性はウルスラグナに比べて薄いものとなっている。 筋骨隆々の、蓬髪と髭面で野性味あふれる、身長200センチメートルを超える壮年の大男の姿をとる。衣装はすりきれたマントとボロ布、皮の胸当てにサンダルという粗末な身なりだが、『王』の威厳も身にまとっている。『嵐』の権能により烈風、大雨、稲妻を操ることができ、武器とする2本の魔法の棍棒は、ヤグルシが疾風を、アイムールが稲妻をまとい、神速にも劣らぬ速さで空を飛ぶ。戦闘時には15メートル近い背丈の巨神と化し、格闘でも護堂の『猪』を圧倒するほどの実力を発揮する。また、豊穣と旱魃の脅威の印である数十万匹ものイナゴを下僕として操ることができる。 護堂が初めてイタリアを訪ねた際、ウルスラグナと戦っていた神。ウルスラグナの強敵を求める意思に刺激されて出現した。まつろわぬ神らしくその性質は歪んでおり、ウルスラグナを打倒した後は自分への信仰を失った地中海の住民を洪水によって島ごと滅ぼそうと企んでいた。ウルスラグナとの戦闘で化身の大半を失わせるが自らも黄金の剣の一撃で痛打を受ける。神力を回復させるべくサルデーニャ島内のヌラーゲに潜んで療養していたが、ウルスラグナに襲撃されたため共闘を申し出た護堂と手を結び辛くも勝利する。ウルスラグナの死後、事前の宣言通り地中海の島々を嵐で海に沈めようとしたため、自身の行動を阻止しようとする護堂とも戦う。初戦では習得したばかりの権能に慣れていなかった護堂を圧倒して瀕死の重傷を負わせ、宣言した通りにソルントの遺跡群を海に沈めるが、再戦を挑まれ双方共に力尽きるという痛み分けに終わり、『白馬』に焼かれて肉体を失い神霊の状態でどこかへと飛び去った。護堂や本人曰く、自身を呼び出したウルスラグナの消滅により精神的に張り合いがなくなり、弱くなっていたとのことである。 最終決戦では《運命の担い手》の権能で召喚されて護堂やラーマと戦うが、護堂との間にはそれほどの逆縁はないと考えていたためモチベーションが低く、運命の糸を『戦士』で断ち切られるとあっさり消滅した。 ペルセウス(Perseus) 声 - 神奈延年 『東方から来た者』の名を持つ神代の英雄で、竜蛇殺しの英雄の典型ともいうべき《鋼》の神の一柱。ドニが破壊したヘライオンからあふれ出た水と大地の精気から竜が生み出されたことより、竜(蛇)殺しとしての性質を刺激されナポリのヴェスヴィオ火山から顕現した。 人を魅了する美貌を持ち、白い服とマントを着た山吹色の巻き毛の青年。陽気で派手好きな性格で、敵や他人にもそれに相応しい立ち居振る舞いを要求するなど見栄えを気にする人物。自前の神話では絶対的な主人公を演じるだけあって極度の目立ちたがりであり、召使い役をこなす意欲と敵性は皆無。 古代ギリシアの英雄としてのペルセウスは、女神アテナの加護を得て蛇妖メドゥサを退治し、怪物との戦いに勝利して、生け贄として求められていたエチオピアの王女アンドロメダを救い出した英雄であり、海獣ティアマトを倒した嵐を司るバビロニア神話の神王マルドゥークにルーツを持つ存在だが、この神は「ギリシア神話のペルセウスそのもの」というわけではない。その正体は、ローマ帝国が未だ多神教だった3世紀初頭に皇帝ヘリオガバルスによって崇められた、『東から来る者』で『太陽神』であるギリシア神話のヘリオス(=ソル)・ペルシアのミトラス(=ミスラ)・ペルセウスという3つの神格を1つにまとめ上げたローマ神話の新興の英雄神である。最高司祭であった皇帝が在位4年で殺害され廃れてしまったために真の名は現代ではヨーロッパでも知名度が低いが、かつて神王の座に近づいた偉大な神であることから「不敗なる太陽(ソル・インヴィクトス)」「ヘリオガバルス」など多くの異名を持つ。「東方から来りし者(ペルセウス)」もその一つに過ぎないが、この名を使い続けているのは現代ではこちらの方が通りがいいため。 弓矢と大刀の扱いを得意とし、無限に矢が収まった矢筒から機械じみた速さと正確さで連射を行い、ミトラスの力を矢に宿して閃光の矢として放ち爆裂させ、ときにメジャーリーガーの豪速球をも超える白豹か白い流星のようなスピードをみせ、刃渡り1メートルを超す反り身で刃の分厚い豪刀を振るい、敵より速く動き速く刀を操るというシンプルな刀術を使う。英雄の神力で人間を支配する言霊を操る能力も持つ。「ペルセウス」の能力としてメドゥサを倒して得た蛇殺しの権能により、あらゆる蛇に関係する神の力を打ち消し封印する言霊を操り、闇を吹き散らすことができるほか、メドゥサの血から生まれた神獣ペガサスを操り天翔る。さらに、太陽神の証である光の輪から放つ後光にはミスラの神力が込められており、この力で主従関係にあるウルスラグナの《東方の軍神》を封じ込めることが出来る。また、「太陽」に由来する不死性として、自らの肉体を光に変え致命的なダメージを回避する能力を持つが、神力の消耗が大きく連発はできない。 護堂との初戦で『猪』『鳳』を一方的に打ち消して心臓を射貫くことで一度は勝利するが、プレビシート広場に舞台を移しての再戦時にはミスラの神力を『戦士』の言霊で封じられ、リリアナの矢で動きを止められた瞬間に空中から召喚された『猪』で広場ごと押し潰されそうになる。すんでのところで『太陽』の神力を使い致命傷を逃れた後、満身創痍ながら再戦へ赴こうとするが、突如現れたサルバトーレ・ドニに挑み斬り殺された(アニメ版ではメティスに殺された)。 死後、『最後の王』の元で三英雄の一柱となり、パラス・アテナの元へ馳せ参じる。プシュパカ・ヴィマーナで護堂を迎え撃つが、リリアナが振るう自身の神格に対応させた「ウルスラグナの聖剣」で斬り裂かれて大量の神力を失い敗走した。その後は雲取山の山中で復活したが突如眼前に開いた『通廊』から現れた神殺し達と遭遇、かつての同僚で護堂の権能となったランスロットと一戦交えることになるも新たに空いた通廊の中に吸い込まれ1万2000年前まで送られてしまい、弱体化のせいで存在を保てなくなって消滅した模様。 最終決戦では《運命の担い手》の権能で『過去』から召喚されて護堂やラーマと戦うが、運命の糸を『戦士』で断ち切られて消滅した。 速須佐之男命(ハヤスサノオノミコト) 古代日本の《鋼》の英雄神。隠居中の元まつろわぬ神。詳細は「#スサノオ」を参照 天叢雲劍(あまのむらくものつるぎ) 声 - 山口太郎 英雄神・速須佐之男命の従属神にあたる、征服神の神格と《鋼》の属性を持つ日本最高峰の神刀。別名「草薙劍(くさなぎのつるぎ)」。 スサノオが妖蛇・八岐大蛇を倒して、屍の尾から入手した愛刀。スサノオの「まつろわす神」としての性質の根幹を成す蛇殺しの鉄剣で、持ち主以上に源流に近い性質を持つ日本国征服のシンボル。スサノオの他にも日本武尊が振るったことで知られる。形状は刃渡り3尺3寸5分の豪刀で、通常時は白銀の刀身を持つ蕨手刀だが、まつろわす力を発揮すると刀身が漆黒に変色した彎刀へと姿を変える。三種の神器として伝わっているものとは別物なので考古学的な意味では偽物だが、神の所有物として見れば限りなく本物に近い宝物。 神が自らのために作り上げた神具とも言える器物だが、高い神性と自分の意思を持つ。古代日本の大和朝廷が剣と軍団で数々の異民族をまつろわせる過程で富・民・技術・知識を奪い取ってきた伝説から、武力と略奪の象徴として主と同じく偸盗の能力を持つ。その他にも、神やカンピオーネ、及び彼らの加護を受けた者以外から呪力を強奪する、権能未満の呪詛や魔術の類の力を破魔の力で打ち破る、神威で魔術を強化するための触媒となる、無数の破片と化して飛散し対象を爆散させる千釼破の神力など、数々の霊験を有する。 本来の所有者である御老公(速須佐之男命)は幽世で隠棲中のため、当初は媛巫女の清秋院恵那に貸与されていた。恵那が幽世での神がかりに失敗したことで、彼女を内部に取り込み背丈20メートルの「刃の巨人」と化して暴走状態に陥るが、現世に転移して暴れ続けていたところを、護堂が『猪』で千鳥ヶ淵ごと破壊して倒したことで彼の第2の権能として所有物となった。ただ、護堂に敗れた後でスサノオや恵那の手を離れるも、彼が「銃刀法違反を犯すつもりはない」という理由から一時的に沙耶宮家に預けていたという特殊な経緯があり、「権能というには妙にお節介で、武器というには自身の内部に入り込みすぎている」と護堂本人が感じているため、天叢雲劍からの提案で「相棒」という関係に収まっている。 一人称は「己(オレ)」で、護堂のことは「王」と呼んでいる。普段は護堂の右腕を「鞘」として眠っており、護堂が意識して話しかけるか闘いにならない限り会話すらしない。派手好きな性格にして、本分である闘いのことしか頭になく、それ以外のことに気を回すつもりがない。 なお、別名が護堂の名字と同じだが全くの無関係で、実際に調査を行った甘粕によると「単なる偶然」に過ぎない。また、《ユニバース492》にも別の《天叢雲劍》が存在するが、こちらの天叢雲劍とは違って異世界の建速須佐之男命の単なる武器でしかなくなっており、機能も異なっている。 『ロード・オブ・レムルズ』では恵那の提案で同系統の剣神が転生した雪希乃に助言を求められ、戦闘以外の雑事に関わらせたことに怒りを見せてぞんざいな態度を取るが、結果として彼女に剣神としての覚醒を促すこととなった。 斉天大聖・孫悟空(せいてんたいせい・そんごくう、Sun Wukong) 明代に成立した『西遊記』の主役にして、三蔵法師のお供を務めたことでも知られる中華の大英雄。金色の体毛と火眼金睛が特徴の猿神で、普段の身長は160センチメートル。京劇の『靠』や革の鎧を身にまとう。石より生まれし神猴で、若かりし頃は猿たちの王として花果山水簾洞で遊び、のちに霊台方寸山に20年こもって修行三昧の日々を送り仙道を学ぶ。 『西遊記』は孫悟空を主人公とする戯曲、小説本、民間伝承をつなぎ合わせて誕生した「孫悟空神話」の集大成ともいうべきもので、『西遊記』の成立過程で仏教、道教、中国シャーマニズム、さまざまな宗教・民間信仰の神霊、スキタイの伝説にみえるコーカサスの英雄バトラズに酷似した出自などのさまざまな要素を取り込んでいる、漢人と遊牧民の伝承が融合したことで成立した最高峰の混淆神。それゆえに複雑な神格を持ち、鋼の英雄神であると同時に、神仙術の極意を得た神通無限の魔術神でもある。強大な《鋼》の神の一柱として、神殺しを倒すために世界の力を借りる《盟約の大法》を不完全ながらも発動し、増加した神力で「従神顕現の大法」を発動し2柱の義弟を従属神として召喚している。《鋼》としての不死性は蟠桃と仙丹を喰らい、八卦炉で焼かれたことで得た「鉄頭銅身(=鋼鉄の肉体)」。単純な戦闘能力だけでも護堂が相手取ったまつろわぬ神の中では上位に位置しており、心眼で神速を見切り、自らも黄金の雲を使って神速で飛行しながら、神珍鉄を鍛えた伸縮自在、重量1万3千5百斤の如意金箍棒で疾風迅雷の棍法を繰り出す。ただし、いきなりトップスピードにはなれず、段階的に加速していく必要がある。さらに、作中では風と焰と毒を操る巨猿型の神獣を召喚し、巨大化をはじめとする変身術や奇門遁甲、身外身の術など様々な魔術を使いこなした。 混淆神の複雑な性格ゆえに、まつろわぬ神としては珍しくひょうきんだが、人間を困らせることが大好きであり、人のいない幽世を嫌って封印が解ければ即座に地上に飛び出し悪さを働こうとする。加えて虚栄心が強く見栄っ張りで目立ちたがり、とにかく派手好きで小悪党に見られることを嫌い、ハッタリ以外には特に意味のない巨大化を使ったりする。自前の神話では絶対的な主人公を演じるだけあって極度の目立ちたがりであり、長く高僧の護衛をつとめていたとはいえ召使い役をこなす意欲と敵性は皆無。ちなみに「斉天大聖」「美猴王」といった派手な名乗りも自称でしかなく、そのことをペルセウスからは皮肉られている。一時的に利用していたひかりの肉体から分離できなくなったときもそのうちなんとかなるだろうと放っておくなど、楽観的かつ脳天気な性格で、護堂はドニと互角の「アホ」と評している。なお、『ラーマーヤナ』の逸話から「尊き聖者と供をする猿」という要素を受け継いでいることからハヌマーンとは兄弟のような間柄ともいえるため、彼が素性を明らかにしていないうちからそれとなく本性に気づいていた。 東洋における竜と馬の関連性、猿が馬を守護する伝承より、ぶん殴って子分にした竜蛇を庇護する性質を持つことから、日本に眠る『最後の王』の覚醒を妨げるための竜蛇避けとして、地上にいた頃の黒衣の僧正を中心とした古老たちの手で、東照大権現の神力をもって日光東照宮神厩舎奥に隠された「西天宮」に封じられた。幽世の中では弼馬温(ひつばおん)の位で猿猴神君の名で呼ばれ、身の丈は80センチメートルほどまで縮むが、ひょうきんな性格は変わらず、幽世の中で禍祓いの媛巫女といろいろ遊んでいたらしい。弼馬温は呪いの名称でもあり、その効力は日本に蛇神・龍神の類が現れ、暴れた場合に禍祓いの媛巫女の力を借りて元のまつろわぬ神に戻り、蛇神・竜神の類を倒すというもの。竜蛇が死ねばしばらくして呪いの効力が戻り再び封印される。封印後は3度解放されており、100年ほど前に封印が解かれたときには媛巫女ごと西天宮を吹き飛ばしている。この時は東京に出現した地竜を倒し、余った時間で羅濠と戦ったが制限時間が来て不完全燃焼のまま引き分けた。なお、護堂がアテナを倒せなかった場合には封印が解かれる予定だった。 日光に出現したまつろわぬレヴィアタンの気配を感じ取り、禍祓いの媛巫女であるひかりの肉体を乗っ取って復活し地上に顕現、《盟約の大法》を利用した「石山巌窟の秘法」で東照宮、二荒山神社、輪王寺の一帯を「石牢」に変え、羅濠教主を一旦その中に封じた。弼馬温の術を破るために猪剛鬣と深沙神を召喚し、男体山の霊気を集めて自分の神気を高め《鋼》の一柱・不動明王の佩刀倶利伽羅剣で弼馬温の術を破り、日光一帯にかつての花果山水簾洞のような王道楽土を築くことを目論んで日光中の一般市民を術で猿化させて自らの軍勢とし、馴染みすぎていたひかりの肉体から分離できるようになってからも、彼女を人質として手中に残すことで護堂を戦闘に引きずり出した。戦場ヶ原での最終決戦では、神速で如意棒を叩き込み護堂を苦しめたが、猿に変えられた一般市民も『白馬』と『戦士』を融合させた光速の剣によって無力化され、自身も腹を剣で裂かれて体内に隠していたひかりの身柄も奪還されてしまう。アーシェラを喰らい竜蛇の神力で回復し、集まってきたカンピオーネたちに対抗するため《盟約の大法》で義弟を召喚したものの、自身は護堂の電磁砲で宇宙まで吹き飛ばされてしまう。最終手段で身長15メートルまで巨大化、義弟たちと合力することで強大な力を得るが、羅濠教主の仁王尊と護堂が天叢雲で作った鋼の「緊箍児」で動きを封じられ、スミスの『殲滅の焰』で義弟共々その身を焼き滅ぼされる。 死後、『最後の王』の元で三英雄の一柱となってパラス・アテナの元へ馳せ参じ、魔術の神としての本領を発揮しラーマを復活させた。プシュパカ・ヴィマーナで護堂を迎え撃つが、エリカが振るう自身の神格に対応させた「ウルスラグナの聖剣」で斬り裂かれて大量の神力を失い敗走した。その後は雲取山の山中で復活したが突如眼前に開いた『通廊』から現れた神殺し達と遭遇、アレクと戦っていたが新たに空いた通廊の中に吸い込まれて1万2000年前まで送られてしまい、弱体化のせいで存在を保てなくなって消滅した模様。 最終決戦では《運命の担い手》の権能で『過去』から召喚されて護堂やラーマと戦うが、運命の糸を『戦士』で断ち切られて消滅した。 猪剛鬣(ちょごうりょう) 斉天大聖の義理の二弟で、猪八戒もしくは猪悟能として知られる妖神。道教世界に出自を持ちながら、仏法にも帰依した混沌たる神格。もともとは隋から宋の時代に広く民の間で最も信仰が隆盛した僻邪の神で、北極紫微大帝に仕える天蓬元帥でもある武神。野猪(猪)より出て家猪(豚)に変じた神格で、猪の顔を持ち、黒毛で恰幅のよい体格をしており、武器は九歯のまぐわ。戦闘時には身長15メートルの三面六臂の巨人に変化してそれぞれの腕で剣・戟・斧・棍棒・弓矢を操り、円をえがくような歩法から残像が見える超高速の攻撃を繰り出す。黒い雲に乗って空を飛ぶ術を使う。かなりの女好きで、顕現するや歓楽街へと繰り出そうとし、義兄が依り代にしているひかりにまで欲情するほど。 「盟約の大法」を使った斉天大聖の従属神として顕現。わずかな顕現時間で弼馬温の解呪やスミスの追跡などを行い、決戦では羅濠と相対するが仁王の掌打により全身の骨を砕かれながら宇宙に吹き飛ばされ敗北。後に大聖と三位一体になり、義兄の騎獣(猪)になる。 深沙神(じんしゃしん) 斉天大聖の義理の三弟で、沙悟浄として知られる妖神。道教世界に出自を持ちながら、仏法にも帰依した混沌たる神格。沙門に修行の道案内をする導者だが、もともとは殺生戒を犯す罪人の神にして捲廉大将の位を持つ水軍神。赤髪を逆立て、9つの髑髏を首飾りとした痩せこけた青黒い肌の悪鬼の姿をとる。武器は鋼を芯に入れた宝杖。道教の天界で水軍神が詰める水部の神として四海竜王を率いたこともあるため、穢れを清める神力を宿した水を自在に操り、呪法を跳ね返す氷の鏡や竜を生み出す権能を持つ。義兄達に比べると多少は常識的。 「盟約の大法」を使った斉天大聖の従属神として、深沙大将の伝承が残る大谷川から顕現。わずかな顕現時間で弼馬温の解呪やスミスの追跡などを行い、決戦ではスミスと空中戦を繰り広げるが魔銃で胸を撃たれ敗北。後に大聖と三位一体になり、水竜となって義兄が羽衣のように纏う。 ヌアダ 古代のケルト人に崇拝された、不敗の剣を振るうダーナ神族(トゥアハ・デ・ダナーン)の王。アイルランドに攻め込んだ際に右腕を失ったことで王位を失い、医術の神に銀の腕を与えられ、さらにその後に腕を再生させ王座に返り咲いた逸話を持つ。 4年前、ゲオルギウスの槍に宿る神霊に体を乗っ取られ、アイルランドから妖精境を経由してアストラル界へとやってきたカンピオーネになる前のドニと交戦する。ゲオルギウスの霊体を滅ぼしたが、己の武器である輝く光の剣を奪い取ったドニに敗れた。 ミノス クレタ伝説の神王にして、ポセイドンともゆかりのある大地と迷宮の神。生贄を捧げる祭司でもあり、ギリシア神話にはクレタ島の君主「ミノス王」として登場し、后と『牛』との姦通で生まれた牛頭人身の怪物ミノタウロスの父と伝えられる。 ミノタウロスともいうべき身の丈30メートルはある牛頭の巨人の姿と、小山のような巨軀の猛牛の姿を持つ。迷宮を作り出す権能を有し、牛に化身することで圧倒的なパワーと神速を利用したすさまじい突進力を振るう。また、魔術破りの心得も持つ。 8年前にクレタ島に顕現してラシッティ高原に大迷宮を創るが、たまたま「蚩尤や牛頭天王のような『牛』の属性を持つ《鋼》の軍神は大地の神の発展形なのか」をクレタ島まで調べに来ていたアレクを迷宮内に取り込んでしまい、交戦の末地上への再臨を果たすことなく討たれる。数日後、グィネヴィアの手で作られた「神の贋作」がサルデーニャ島オロセイ湾に顕現したが、パワーとスピード以外は再現できていない従属神以下の存在だったためあっけなく滅ぼされた。 10巻でも、アレクが作り出した魔の海域を打ち破るため再び召喚され、ランスロットの助力で力を最大限に発揮し、自分の体を崩壊させながらも権能を打ち破った。 ランスロット・デュ・ラック(Lancelot Dulac) 『湖の騎士』を名乗る雷鳴と霧を呼ぶ騎士の神であり、円卓の騎士の中でも最高にして最強の騎士と称されたアーサー王物語の登場人物の原型となった槍の軍神。白き甲冑の上から戦闘用上衣(サーコート)をまとい、逆棘状の槍と菱形の楯、両刃の長剣で武装し、白き神馬に乗って天翔ける。 1500年以上前に顕現し、かつては『戦いの王』と崇められ、『槍(ランシア)の神』と名乗るまつろわぬ神であったが、『白き女神』グェンフィファルから『最後の王』の噂を聞きブリテンの地に渡った際に彼と出会い、激烈たる死闘を求め、5世紀の終わり頃から麾下に入り数十年間共に戦ってきた。『白き女神』がかけた守護者の呪法により、地上にとどまり続けてグィネヴィアとその係累を庇護することができるが、その代償で彼女が危機に瀕したときのみ短時間だけしか顕現できないようになった。8年前にサルデーニャ島にてアレクからグィネヴィアを助けに現れ去っていったことから、その存在が確認されることとなる。 作中では最源流の《鋼》の軍神であり、天地の位を極めた魔女の守護者にして、神祖を庇護する軍神とされている。その正体は欧州本土でサルマタイの民に信仰された、軍神アーレスの娘にあたる女戦士族アマゾネスの女王に由来する《鋼》の女神という極めて稀な女騎士。鎧兜の下には、蜂蜜色の短髪と豊満な女性の肉体を備えている。ただ、自らを崇めたサルマタイが民族としての体裁を失ったためにかつての自分の名前も失ったこと、「ランスロット」として伝説に名が登場するのは12世紀以降であり、ケイ卿・ガウェイン卿・ベディヴィエール卿のようなケルト神話の神々に由来する他の円卓の騎士とは違ってルーツも判然としないこと、《鋼》の要素を湖の乙女に養育されること程度しか持たないことなどから、一般的には《鋼》ではないただの軍神として認知されている。 極めて源流に近い《鋼》だけあって、多彩な権能を持たず、騎士らしく突撃することのみに特化した存在。神速を見切る武芸者で、迅速果敢な戦いを好み、呼び寄せた雷雲の中で稲妻の精気を吸収することで神速を使い、球雷を操る。槍突撃(ランスチャージ)の他にも、スキュタイとアマゾンの流れを汲む剣術も使う。愛馬は神獣としては小柄だが、蹄の一撃でカンピオーネの頑丈な体でも砕けるほどの力を持ち、軌道が直線的ではあるものの高速飛行も可能。さらに「隕石落とし(メテオストライク)」と呼ばれる巨大な隕石の墜落と同等の破壊力がある最強の竜蛇殺しの秘技を有し、高高度から“白き稲妻”と化して神速の一騎駆けで急降下し、穂先から雷電のエネルギーと熱、衝撃を放つことで大地を崩壊させ、直径15、6キロメートルもの巨大クレーターを穿つ。《鋼》としての不死性は大祖母である水のニンフから借り受けた霧に変じて物理攻撃を無効化する権能と、武器と鎧を利用して眷属の『鈍色の騎士団』を復活させる権能。霧化中は姿を捉えることも困難であるものの、源流に近いことから不意打ちなどは不得手で、微弱な神力を感知できるため奇襲には使えない。また、元は狂える武人であったことから、理性や品格を捨てさせ心に眠る欲望を満たせとそそのかし暴走させるという『狂奔』の呪縛による精神操作の権能を持ち、自身の力と記憶を封じる、対象に能力の制約を超えた力を発揮させる、消耗した自らの神力を条件付きで回復する、といった呪縛を施す能力を有する。 純血の《鋼》ゆえに剛直な武人としてまっすぐ進むことしか知らず、野を駆け槍を振るい、女人を愛し、守ることのみを本懐とする。しかし、その性格のため、かつて肩を並べた『最後の王』が眠る地のことも知らず、グィネヴィアの探索を難航させていた。 9巻では2代目グィネヴィアの頼みで、魔女たちの守護神から本来の姿である狂奔と激情を本地とするまつろわぬ《鋼》の軍神に戻ったが、『正しき神』でも『まつろわぬ神』でもない“神の影”という半端な在り方を長く続けたために長期戦ができなくなっており、ほどけそうになる肉体を地上に留めるために雷を浴び続けて神力を回復させていた。グィネヴィアがアテナに襲撃を受けた際、初代グィネヴィアが残した「救世の神刀」から作られた「神槍エクスカリバー」を振るい、アテナの命を『魔導の聖杯』で奪う。グィネヴィアとともに来日し、木更津でアテナと護堂と戦ったが、グィネヴィアがエリカに敗れ、自身の神力も切れたことで停戦する。この戦いで護堂を愚直な戦いを挑める相手と認め、彼を「我が運命」と見定める。アレクが浮島を浮上させたことを知ると『最後の王』復活のために自ら記憶と神力を封じて町をさまよい、遭遇した護堂の一瞬の隙をついて彼に呪縛をかけ、一時的に同盟関係を作る。その後、アレクの迷宮を打ち破るために消耗した力を回復させ、浮島にて正気に戻った護堂と死闘を演じる。『戦士』を眷属復活の権能で相殺するも、彼の仲間たちにエクスカリバーを使用不能にされ、天叢雲によって神刀化した『猪』とのぶつかり合いで馬を先に倒されたことで空中に投げ出され、最期はそのまま猪に跳ね飛ばされて死亡。しかし、グィネヴィアの介入で『鏃の円盤』に封じられたため、この時は護堂の権能にはならなかった。 長い年月の中で自身の神話そのものが変質しすぎたことで、次に地上に顕現しても全く別の男の軍神が顕現すると予測されていたが、『最後の王』の元で三英雄の一柱となり、パラス・アテナの元へ馳せ参じる。本心では戦いを倦む王の命に従い自らも神殺したちと戦うのが本当に正しいのかということと、正々堂々の勝負で勝利を得た護堂の力になれなかったこととで悩んでいたが、彼がラーマの宿命をたたき壊すと宣言したことで迷いを吹っ切り、2つの望みを同時に叶えるために『最後の王』をあえて裏切り、護堂を新たな主と定めてプシュパカ・ヴィマーナを破壊する。力を使い果たした後は護堂の権能《白き騎士の突撃》となることを決め、記憶を保ったまま守護騎士(守護霊)として仕える道を選び、ペルセウス戦、ヴォバン戦、ハヌマーン戦で一騎当千の活躍を見せる。 しかし、5年後に『ユニバース492の1857年』を訪れた際、護堂の子供たちが《聖杯》の神官に成らざるを得ない状況になったことで、兄妹と結社《カンピオーネス》を守護するために並行世界に残留することを決め、《聖杯》の石片を呑みこむことで、これまで護堂から供給されていた呪力をバレンシアの地脈と聖杯で代替する契約を結ぶ。当初の計画では護堂たちが元の世界に帰還してから3年後より、《白き女王》を名乗って《カンピオーネス》の2代目総帥に就任するはずだったが、護堂の不在は影響が大きいということで計画を変更、以後、モニカに跡目を譲るまで20年近く影武者を演じ、総帥の地位を譲ってからもブランデッリ一族の守護霊を務めてきた。なお、結社の者たちからは「ブランデッリ家の祖先が守護霊として帰ってきた存在」だと認識されていた。 160年後の21世紀にはジュリオの守護者をしており、主な役目としてバレンシア郊外の洋館にある《破滅予知の時計》の見張りを任され、招かれざる客を追い払うよう頼まれている。魔術の仕掛けも進化したことで、《聖杯》にプールした絶大な規模の呪力を利用することで実体を取り戻し、長槍を天翔る雷として投擲する儀式魔術『雷の秘儀』により、《聖杯》の節約のために力を制限した状態であっても神殺しの眷属を瞬殺し、全力を出したならば従属神クラスを一撃で屠ることができる。ただ、神力が尽きると《聖杯》から呪力を汲み取りにバレンシアまで戻らなければならず、その間はジュリオの護衛ができなくなる。 のちに、異世界のアテナによる地球崩壊計画という地脈へのダメージよりはるかに重大な危機が迫ったことで、大地と聖杯の切り離しが行われ、砕け散った聖杯の破片を吸収しスタンドアローンで活動できるようになる。世界滅亡の時は《終末の器》から出現した1000匹の竜と繰り返し戦い、押し寄せる大火と洪水から逃げ回ったことで激しく消耗してしまい、力を温存するため長槍に姿を変えて眠りについたが、《救世の神刀》と長槍を融合させ《救世の神槍》を得て復活を果たす。そして、暴走した『獣の槍』さながらの活躍で《終末の器》から出現した『獣』を始末していき、蓮とアイーシャが《終末の器》を《パンドラの空箱》で無力化するまでの間、限界まで戦って足止めした。 グウェンフィファル 『白き女神』あるいは『智慧の女王』と呼ばれ、サルマタイの民に崇拝された大地母神。『最後の王』のために『魔導の聖杯』を生み出し、神祖グィネヴィアとして転生する。詳細は「#グィネヴィア」を参照 サトゥルヌス ローマ神話の大地に属する豊穣と農耕の神にして、祝祭を司る神。狂気に冒されたために主神ユピテルによって神殿に囚われ、1年のうち一度、太陽の復活を祝う冬至節の7日間だけ解放されることから、太陽神の従属神としての性質も持つ。 サトゥルナリアの冠という神具によって生み出され、そこから力を得て何度でも再生することができる。奴隷と主人の身分を反転させる祭りに由来して、身分を逆転させ秩序を乱す群衆操作の権能を持つ。また巨大な蔓、爆発する黒い果実、黄色い毒の粉を操り、手にした音叉状の木杖からは破裂すると衝撃波を放つ緑色の光球を発射する。 かつてローマ帝国の版図であったアナトリア半島にて138年前に顕現し、トルコで「住民に狂宴を永遠に続けさせる」という大混乱を引き起こすが、羅濠教主によって倒される。12巻にてかつての主人である神霊『灰色の者』と共に来日し、ヤドリギ状の神木という不完全な形で葛西臨海公園沖に顕現。神霊の協力を受けて冬至の完全復活に向け力を蓄えるが、復活目前で完全に解呪した護堂達に戦いを挑まれ、身長30メートルの木人形型の半神半木状態で「棺」から生み出され彼らを迎え撃つ。夜が明ければ完全に蘇るはずだったが、かつての悪行を日本で再び起こさせるわけにはいかないと神になる前に倒されることになり、一時的にとはいえ仲間たちと疎遠にされたために苛立っていた護堂に神霊の懇願を無視され、『戦士』で神具を封じられたうえで『白馬』の権能により大観覧車ごと焼き尽くされて蒸発した。 キルケー(Circe) 太陽神ヘリオスの娘であり、『暁の魔女』の異名を持つ古代ギリシアの魔女神。スミレ色の瞳を持つ銀髪の美少女の姿をとる。自分が住むアイアイエ島にやって来た人間を魔術で動物に変えていた逸話で知られ、魔力と美貌で英雄を虜にして彼らの目的を妨害する性質を持つ。英雄オデュッセウスの愛人で、彼をたぶらかして1年の間篭絡した。 女神の愛を受けるにふさわしい勇士を見初め愛する性分があり、一度相手を愛すると一途な想いを見せる。しかし、まつろわぬ神らしくその歪んだ言動は偏愛の域にあり、たとえ拒まれてもストーカーのように執拗に求愛し、言動とは裏腹に手足をもいで自分の愛蔵品にしようとする。 斉天大聖に比肩するほどの魔術の使い手であり、大海蛇・神鵰・キュクロプスといった多様な神獣の使役と強化、鴆毒の呪詛、植物の生成、灼熱の業火や稲妻、『白馬』に匹敵する威力を持つ黄金色の太陽フレア、といった多彩な攻撃手段を持つ。さらに、英雄を捕らえて虜にすることにより、その権能を奪い取って力を削ぐ権能『英雄拘束』を有し、例としてオデュッセウスから奪った力を神霊「弓の御霊」として操る。この権能は相手が偉大な英雄であるほど影響を受けやすいという特徴があり、護堂は英雄ウルスラグナの力を7割も奪われてしまった。奪った力を行使する際にはキルケー自身が扱いやすいよう変化するのか、ウルスラグナの化身は神獣として使役された。また、太陽神なので不死性も持ち、後述のアレク戦で深手を負っても生き延びられたのはこの性質によるものである。 今まで護堂が出会った剛直な神々と違い、自らは前線に出ずに神獣を使役したり、祐理をかばうことを見越して毒で護堂に攻撃をしたりなど、「女」であることを強調した戦術で護堂から「これまでで一番難しい敵」と呼ばれた。なお、アレクの目的を承知していながら一緒にいる間はそのことを黙っており、護堂もそのしたたかさに彼女の恐ろしさを再認識したほど。 3年前、『最後の王』の正体を調査するアレクの手によって休眠から復活、彼に渡された『天之逆鉾』の亜種に当たる神具を使ってコタキナバル沖に島を生み出した。自らを復活させたアレクを初めに見初めるも、その求愛に耐えかねたアレクによって戦闘の末に迷宮の権能に閉じ込められ逃げられてしまう。その際に深手を負い、両腕と腰から下の下半身は真鍮の義体で補っている。 それから3年間は自分たちが作った島で暮らしていたが、日本で護堂が繰り広げた数々の戦いの気配を察知して興味を抱き、東京タワーのアンテナを「弓の御霊」に射抜かせて宣戦布告、配下の神獣たちを犬吠埼へ差し向け護堂と戦わせた結果、彼を勇士として愛するようになり自らの虜にしようとする。自身の本拠地へと向かう護堂一行をアレクと作った島へ誘拐し、『英雄拘束』の権能で護堂から奪ったウルスラグナの化身で苦しめたが暴走する《黒の剱》で魔境の島を消滅させられ一時撤退する。漂流した護堂と祐里を自身の聖域である小島へ連れ去り最終決戦に臨み、自らの命を呪縛して呼び出したオデュッセウスを切り札として戦ったが、力及ばず敗北して致命傷を負う。その後は女神の矜持から幽世で生きながらえることを拒み、死の間際にアレクへの意趣返しと護堂への愛の証として『最後の王』の名のヒントを伝える。最期に護堂が将来《白き騎士の突撃》を得ることを霊視し、愛した男の甘さを心配して護堂の力になることを望んでパンドラに頼み込み、もともと糧とする命がアレクにより半分程になっていたために権能というには些細なものとなったが、《黒の剱》を運用するための叡智《暁の秘録》を残して息絶えた。 最終決戦では《運命の担い手》の権能により召喚され、護堂やラーマと戦い『戦士』を奪い取るが、アテナの説得でかつての自分が護堂と紡いだ縁を思い出し、化身を返還して自ら消滅していった。 オデュッセウス ギリシア神話の叙事詩『オデュッセイア』の主人公。大神ゼウスを祖先に持つイタカの王にして、トロヤを攻め滅ぼしたアカイア軍の武将。 弓矢で武勇を示し、流浪の定めを背負う膂力無双にして機略縦横の英雄であり、流浪の旅の末に妻が待つ故郷に帰還して狼藉をはたらくかつての部下たちを皆殺しにした逸話を持つ。また、船旅の途中で立ち寄ったアイアイエ島で、キルケーの魔術によって獣に変えらえるのを防いだ後、1年の間だけ彼女の愛人をしていたこともある。日本の昔話に登場する九州・筑紫の国司『百合若大臣』との共通点が非常に多く、近世日本に伝わった『オデュッセイア』を元に百合若大臣の伝説が生み出されたという説を明治時代の文豪・坪内逍遙が提唱したこともあり、学術的には無理があると後世で否定されたものの、過去に「まつろわぬオデュッセウス(ないしはその関係者)」が日本にたどり着いて神話を伝えた可能性までは否定できない。 《鋼》の属性を持たないため不死ではないが、不撓不屈の性質を持つためかなりタフで、護堂と交戦した際には肉体の大部分を失いながらも立ちあがって見せた。身長5メートル程で、青銅の鎧兜と鉄弓、鉄箭で武装した戦士の姿で顕現する。青白い光の箭を流星雨のように降り注がせたり、手の指から直接鉄箭を放つことができるほか、鉄弓からは青白い光線をレーザーのように照射する。 キルケーとは対等な関係性であるが、オデュッセウス自身の似姿である神霊「弓の御霊」を核として、キルケーが命を対価にする呪法を使用したことで彼女に従う従属神(同盟神)の形で召喚された。キルケーの盾となり弾幕を張って護堂と裕理を苦しめたがエリカ達の合流を許してしまい、攻撃を防がれている間に護堂の『白馬』の焰と恵那の「風の劍」で両腕を失う。それでもなお戦意を見せていたものの、自身の左肩ごと焔で穿たれたキルケーが致命傷を負ってしまったことで存在を維持しきれなくなり、死ぬことなく肉体が薄れて消え去った。 「弓箭を持つ高貴なる流浪の英雄」であることから、アレクからは『最後の王』候補の一人とされたものの、調査中にキルケ-と諍いを起こしたために検証が不十分なまま終了してしまい(確率としては35%)、以来それ以上の確証を得ることができずにいたが、後に顕現した際にその可能性は否定されることとなった。 『神域のカンピオーネス』にも別のオデュッセウスが登場するが、神話世界トロイアのギリシア連合軍で活躍する英雄であり、まつろわぬ神ではない。 アルティオ ヨーロッパ中部(現代のスイス周辺)に住んでいたケルト人・ヘルヴェチカ族に崇拝された、ケルト神話の大地母神にして戦いの女神。その名は『アルトス(アーサー)』の語源であると共に、大地のトーテムにしてヨーロッパの森で最強の獣である『熊』を意味する。熊の毛皮をまとった女性の姿で西暦406年のガリアに顕現した。毒の霧や呪いを操り、眷属として体長2〜5メートルの大型熊の群れや、ミミズクと熊を合体させたような「アニメに出てきた森の主」によく似た外見をした体長30メートルの巨大な神獣を複数体使役する。 フランク人に滅ぼされたガリア人の呪いによって呼び出され、フランク人達を殲滅しようとしたがこの時代に漂流したドニと遭遇し深手を負う。息子である英雄神アルトスを招聘して再戦を挑もうとしていたが、時を超え神殺しが6人集まったことを知ると予定を変更し、ライン河畔にて『最後の王』を召喚することを決める。召喚には成功したが命の一部しか捧げなかったせいで顕現が不完全なものとなり、全力を発揮できなかった王が護堂に敗れたのを見て、自らの命をすべて神刀に捧げることにより神刀の力を引き出し暴走させ、なおも魔王殲滅を狙う。肉体が消滅し霊体のみの存在になるが、暴走を止めるため神刀に特攻し神力の爆発を至近距離で受け仮死状態となっていたドニの肉体を乗っ取り、再びフランク人を攻め立てる。その後、護堂やアイーシャと戦い劣勢になるも、意識を取り戻したドニと共闘し、彼が護堂を、神刀が発する「雷の蛇」がアイーシャの顕身を足止めしているうちに戦場一帯の大地の力を吸い取り、それを利用して再び『最後の王』を呼び出して消滅した。 ラーマ(Rāma) 叙事詩『ラーマーヤナ』で主人公として描かれる古代インドの大英雄。身長185センチメートルほどの長身で、青白い髪の気品がある白皙の少年の姿で現れる。グィネヴィアが転生を繰り返し、捜し続けてきた最強の《鋼》。別名ラーマチャンドラ。コーサラ国の王子として生を受けた最高神ヴィシュヌの転生体にして、「魔王殲滅の運命」を託され様々な神の加護を受けた英雄神。1つの時代に幾人ものカンピオーネが出現し「この世の最後」のような世情となると、この世に顕現して全てのカンピオーネを抹殺し、再びカンピオーネが現れるまで眠り続ける。眠りについた場所には、朽ちた救世の神刀が竜骨として残される。作中においてアーサー王の直接のモデルとなった存在。 その真名は禁忌として神々の手で厳重に秘匿されており、「虚空の記憶」にも封印がかけられているほか、カンピオーネの味方であるパンドラでもその名を話すことは許されていない。そのため、5世紀頃には『勇者(アルトス)』を名乗って顕現し、「この世の最後に顕れる王」という伝承を持つことから現代では『最後の王』と呼ばれている。 日本での知名度は低いが、東洋アジアにおいては至高の英雄として非常に有名。『全てに恵まれた者』とされ、美貌であり、智慧にすぐれ、徳と温厚さから人々に慕われた、最強の武人として描かれる。コーサラ国のダシャラタ王の第1王子として生まれながら、異母弟を王に据えようとする陰謀によって14年も国から追放された悲運の王子という、非常に古い貴種流離譚の主人公であり、神々を苦しめる魔王ラーヴァナを討つ運命の担い手であり、『菩薩の化身』と言われるほど徳に満ちた王者であり、偉大な英雄で、絶大な人気ゆえに時代が下るにつれて最高神ヴィシュヌと深く結びつけられた。追放後は妻シーターと弟のラクシュマナ王子だけを供にダンダカの森に隠棲するも、悪行を重ねる羅刹たちと戦い続けることとなり、魔王ラーヴァナに誘拐された妻を取り戻すため、羅刹王の城を目指して再び旅立ち、長い旅と戦いの果てに宿敵を打ち倒す。そして母国に帰り王位を継承したものの、国民がシーターの貞節を疑ったために王の責務として純潔を証明するよう命じ、そのせいで彼女が地底の冥界に帰ってしまい、結果的に妻を捨てることになる。 『鋼の軍神』『弓を持つ流浪の貴公子』『魔王を退治する英雄』という性質を併せ持つ混淆神であり、“常に配下をしたがえる”英雄という特徴を持つ。休眠から目覚めると流浪の旅を経て大地から力を得て完全覚醒を遂げるという性質を持つため、復活と旅を重ねるたびにその力を増す。海賊・侵略行為を神話化した「海を超える征服者」という特性は、時に倒す対象を魔王から鬼、竜、魔物などへと変化させながら、まず汎ユーラシア的な英雄譚として民族移動や交易の流れに乗って大陸の東西に伝播、さらに仏教説話という形でアジア諸国の教養人が知ることになり、微修正を施されつつ流布していった。キルケーが語った「(ギリシア神話でいう)アルゴー号の系譜に属する」という事実、ルクレチアの霊視による「むかしむかし、あるところに」という日本語の言葉から示唆されるおとぎ話に登場する英雄の代表格である桃太郎、13巻にてアレクが予測した「オデュッセウスの系譜の前後に関わりを持ち」「各地を流浪し、時に弓矢で武勇を示す汎ユーラシア的な英雄で鋼の属性を併せ持つ混交種(ハイブリッド)な人物」、玻璃の媛が夢で護堂に伝え、後に裕理も霊視した「昔、海に邪竜あり。王は乃ち弓箭を放ち、まさに竜の胸を破る。」という仏典『六度集経』にある徳の高い竜殺しの王の伝説、といった事柄は前述の特性に影響を受けたものである。 「神にも羅刹にも殺されない」ラーヴァナを倒すために「人間として地上に誕生する英雄」であるため、まつろわぬ神としての精神的な歪みは非常に少なく、それでも生じてしまうわずかな歪みも弟が引き受けていることから『真なる神』に極めて近い高潔な人格を保ち続けている。純粋に「人間性」だけを見た場合、すこし誠実すぎると評される性格で、『まつろわぬ神』としては破格の温厚さを持つ。コミュニケーション能力も高く、普通のまつろわぬ神なら一顧だにしない一般市民とも楽しげに語らい、魅了の権能だけでなく「人間的」な魅力もあって容易に人々の輪に溶け込む。はるか昔には、神殺しを斃すため人間の王のもとで軍を率いたこともあった。 一方で大地を傷つける《鋼》の中でも、その性質を最も強く体現する者であることから、完全覚醒すると神刀を使う度に自分の周囲に溶鉱炉か火事場にいるような熱波を放出、近くにいるだけで草木も土も水分を失って乾き切り、空気が乾燥して紙などは自然発火する。加えて火と風の霊気が高まって海と大地を熱するために強風と大規模な地球温暖化が発生、火山活動も世界各地で活発化して、まさしく「世界の終り」のごとき様相を呈するようになり、さらに大地と縁の深い神祖の血を濃く受け継ぐ者たちの体調にも悪影響を与える。これらの破滅的な影響力は自分自身ではコントロールすることができない。 王の力、『救世の神刀』の力の源は大地の精気であり、最も望ましいのは母なる大地の女神が宿す命と『最後の王』自らの命である。そして多くの地母神の命を吸い上げ、同時に多くの神祖を生み出してきた。大地から搾取する権能に関しては他の軍神を凌駕していたといわれ、完全覚醒後に大地に与える影響も他の軍神とは遙かに甚大なものとなる。加えて、女神や神祖の居場所を察知する能力を持つ。完全覚醒前は保有する権能の多くを使うことができないが、剣術・格闘技・弓矢の技だけでも十分なほどの実力を持ち、神速を見切る心眼も備える。古式ムエタイの開祖とする説も存在する。体術・武術の根幹を誠実に磨き抜いた正道、王道、正攻法による正面突破を試みる『王者の戦い方』を旨として、剣術は『火の構え』とも言われる防御を捨てた上段からの斬撃を得意とし、烈火のように激しいながらも洗練の極地にある流麗かつ豪壮な斬撃をいかなるときも繰り出してみせ、体術は蹴り、拳打、組み技など、その局面で最も効果的であろう多彩な技を流れるように仕掛けてくる。また、あらゆる窮地を切り抜けるべく数多の護身の法を学んでおり、山川草木に宿る精霊たちに加護を祈念し、神々に比べれば貧相な霊力でも数千を結集させて簡単な奇跡を起こすことができる。 カンピオーネとの戦いで数的不利に陥ると、『剣神の宿星』に祈願し魔王を滅し世界を救済する力を天地と星々から引き出す《盟約の大法》という神力増大の権能を行使することができ、これを使った時の力は(世界中に存在するカンピオーネの数にもよるが)全ての平行世界を合わせても最上位クラスであると言われている。ただし、完全覚醒する前にこの権能を発動できるのは、盟約を批准した神々が神殺しの手で殺害された場合に限られる。 羅刹王ラーヴァナを倒すために授けられた武器の集合体である『救世の神刀』を最大の武器とし、これが発生させる《神刀の曼荼羅》から電光の無差別爆撃を行うと共に、その稲妻のエネルギーを変換して最強の武器である“弓と矢筒”の封印を解くことができる。また、死した神を従属神として復活させる神具《鏃の円盤》を使った剣神招来の権能も持つ。さらに、ラーヴァナ討伐の報酬として富と財宝の神クベーラから授かった直径15、6キロメートルはあろうかという都市型巨大空中船プシュパカ・ヴィマーナを召喚でき、天の戦車(ヴィマーナ)に乗って空を駆ける。地上では被害が大きすぎて本気では戦えないので、全力を出す場合はプシュパカの上を戦場とする。なお、全てのヴィマーナには強力な武装が搭載されているが、ラーマ自身の権能の方がはるかに強力であるため使用されない。 《鋼》の不死性は「『救世の神刀』が無事である限り何度でも復活を遂げられる」というもので、神刀が朽ちていてもしかるべき手順を経れば再復活が可能。この権能により、たとえ敗北しても地上に魔王がいる限り数年のうちに復活することができ、《盟約の大法》を使用した後なら速やかに力を取り戻せるようになり、十分な大地の精気さえあれば1ヶ月も経たずに蘇る。また、命の危機に抗おうとすると自然と電撃体となり、痛打を浴びた瞬間に電撃で敵を押し返し、無傷でしのぐ能力も持つ。 剣を捧げた《運命の担い手》のことは「庇護者」と認識しているが、護堂には「体良くどさ回りさせられているだけ」「ブラック企業」と指摘されている。世界の真理と同等の重みと強靭さを持ち、神具と同じく不朽不滅である『救世主の運命』に捕らわれており、自然や人民が傷つくことを嫌っているにもかかわらず、全力で戦う度に大きな被害を出し自らを慕う者たちの命までをも奪ってしまうために、剣神でありながら神殺しや《運命》といった自らを戦いに駆り立てる全ての事象を倦み、逆縁もない相手と殺し合うことに疑問を持っているが、《運命》に選ばれた戦士であるが故に与えられた魔王殲滅の宿命に抗えない。自分でも1000年間抵抗して眠り続けていたが、結局目醒めさせられて戦わなければならなくなったことで諦念に捕らわれている。そのためありとあらゆる障害を乗り越え《運命》にさえ抗ってみせる神殺し達に対しては、羨望と敬意の念を抱いている。 本人の性格に反して所有する権能のほとんどが攻撃的なものであるため攻勢に回っているうちはほぼ無敵であるが、防御に回るとわずかだが隙が出るという弱点がある。そのため「最強」とされてはいるものの決して「無敵」や「不敗」の存在というわけではなく、歴史上何度か敗れていることが確認されている。ただし神刀が破壊されたことはないため、太古に顕現して以来一度も完全な死を迎えたことはない。 西暦458年にガリアで顕現し、その後に幾人もの魔王を殺害しブリテンの地で眠りについたと語られている。唐代には当時の神殺しを追って日本列島に渡ったことが確認されており、1000年前から東京湾の真上の静止軌道上に浮かぶ島に「刃渡り100センチメートルほどの両刃の剛剣」という形で封印され続けている。その影響により己の存在と健在をひっそり示すための異変として、木更津付近には媛巫女の強力な記憶操作によって改竄しているにもかかわらず、数十年周期で「弟橘比売が入水した際に抱いた太刀が、陸でも海でもない浮島に流れ着いた」という旨の伝承が突如として伝えられるようになる。また、魔王内戦の後には「救世の神刀を持つ魔王殺しの勇者が復活する」という内容のスパムメールが日本中の携帯電話に届くようになった。 14巻で『通廊』により3人の神殺しが過去に飛んだことで、本来の歴史よりも50年ほど早い西暦406年にアルティオの嘆願を受け、彼女の息子の名代として顕現する。不完全な顕現だったために自分が持つ力のほとんどを十分に振るうことができなかったにも関わらず、卓越した剣術と神刀の力だけで護堂を追い詰めていったが、天叢雲に神刀の力を模倣されたことに驚いた隙に彼の起死回生の反撃を受けて敗北する。その後、アルティオの死に際して再度顕現、今回も不完全でありながら一度だけ魔王殲滅の力を使うことができる状態だったが、護堂との壮絶な打ち合いの末に敗北し、また眠りについた。その後は元の歴史と同じく50年後に復活して当時の魔王全員を殲滅し、再び長い眠りにつく。 17巻で最後の顕現から1000年の時を経て復活、南房総の伊予ヶ岳付近の山地に降り立ち、実に1500年以上ぶりに護堂と再会する。復活直後にパラス・アテナの呪力を得て完全覚醒を果たしており、護堂に「自分より1000倍強い」と言わしめるほどの実力を発揮、地上の被害を考慮して全力を出せなかったにも関わらず、羅濠教主を交えての魔王2人を相手にした戦いでも圧倒し一時は敗走させる。その後は戦闘で生じた熱を冷ますためしばらくさまよいながら護堂のいる東京を目指し、その途中で市原市のサーキット場にて護堂の帰還まで羅濠と交戦する。自らの真名を解き明かした護堂との戦いでは、ハヌマーンと分断され《神刀の曼荼羅》をウルスラグナの聖剣で切り刻まれたにも関わらず戦局を有利に進めていたが、三英雄のうち2柱が敗走し、ランスロットの裏切りによって部下が時間を稼いでいる間に作り直した《神刀の曼荼羅》ごとプシュパカ・ヴィマーナを撃沈され、太平洋上に墜落する。“弓と矢筒”を失ってなお雷撃と剣技だけで護堂に致命傷を与えるが、恵那が手にしたアテナを宿す魔剣により神力を奪い返され、強制的に覚醒状態を解除されて弱体化したところに護堂の必殺の一撃を喰らい、3度目の敗北を喫した。 肉体を失い空気に溶けこんだ魂は清浄の気に導かれて霊峰・富士山にたどり着き、魔王内戦の終結後、ハヌマーンが集めた大地の霊気を得てごく短期間で再復活し、『運命神の領域』における最終決戦で内戦を勝ち抜いた護堂に5度目の戦いを挑む。他のカンピオーネを並行世界へ追放していたことで《盟約の大法》が使えず敗北するも、一戦交えたことで彼からの和解を受け入れて友人となり、その決断を良しとしない《運命の担い手》と権能で召喚される神々を2人で迎え撃った。その後、護堂の《反運命の戦士》でユニバース235の救世主としての宿命から解放され、友に別れを告げて弟ラクシュマナと共に何処かへと旅立った。 5年後にユニバース492で護堂がズルワーンとウルスラグナに苦戦していた時には、異世界で《反運命》が使われたことを察知して力を貸し、ズルワーンが生み出す救世の雷を次元を超えて黄色い矢で撃ち落とすという神業を見せた。 『ロード・オブ・レルムズ』では運命の御子が現れるユニバース966にたどり着き、まつろわぬ者とならぬよう神の力を大幅に封印して「護堂 桃太郎(ごどう ももたろう)」を名乗り、霞ヶ浦の湖畔で暮らしていた。2年ほど前から雪希乃に武術を教えており、彼女が勇者としてヒューペルボレアに旅立つ際には魔王殲滅の武具を一部貸し出した。 ハヌマーン(Hanumān) 古代インドの天翔る白猿神。『ラーマーヤナ』では『最後の王』ラーマの盟友にして副将格であり、忠実な知恵者として描かれる。その姿は白い体毛に包まれた身長180センチメートル程の大猿で、知的で分別くさい顔つきをしていて、慇懃な口調で話す。 風神ヴァーユの息子であり、風の権能と《鋼》の軍神としての力を併せ持ったハイブリッドの神格で、風を自在に操り、風そのものに化身し、風に乗って神速で飛行できる。神々から自分の死ぬ時を自分で決める権利を与えられたこともあって非常にしぶとく、《鋼》の不死性として鋼鉄の肉体を持つだけでなく、自分の体を真っ二つにされても生存し、上半身と下半身が分断されたままでも戦闘を続行できる。先述の風化による攻撃無効化も不死性の一つにあたる。大刀や分銅がついた鋼鉄の棍棒を使うこともあるが、山を引っこ抜くほどの剛力と鋼の五体を使った、ジャンプと跳び技を繰り返す猿らしい奇矯さと迅速さにあふれる古代インド由来の拳法を最も得意とする。神通力にも長け、巨大化能力も持っている。ラーマの盟友であると同時に猿王スグリーヴァに仕える将軍でもあるため、18メートルほどの巨大な曼荼羅を展開して1000匹もの猿の軍勢を召喚する能力も有する。ラーヴァナにさらわれたシーターを見つけ出した伝説から、探索能力にも秀でていると言われている。 きまじめで忠義一途、かつ慎重な性格で、自分が原因で『最後の王』の正体が明らかにならないように、初登場時から1600年近く白い布と革鎧、紅い仮面で体を包み、無言を貫き、得意の拳法を封じ武器として大刀を振るっていた。そのことから17巻まで『風の王』という仮称で呼ばれていた。なお猿神である斉天大聖と同類とされることは好まず、自身の逸話の要素を受け継いだ未熟な原型に由来するおそろしく遠い親戚でしかないと見ており、「単細胞どの」などと呼んで嫌悪を示している。ちなみに孫悟空以外にも、桃太郎の犬・サル・キジといった“姿形が人間ではない”お供の存在にも影響を与えている。 アルティオに呼ばれて西暦406年のガリアに現れ、ドニと激しい戦闘を繰り広げるが、王が敗れると姿をくらました。再び顕現した王と戦う護堂の前に現れるが、『アルテミスの矢』の一撃を受け妨害に失敗する。 現代において、パラス・アテナの招聘を受けその姿を現すと、日本では彼女に護堂の相手を任せて『最後の王』が眠る浮島に到達し、王を1000年ぶりに復活させる。主の正体が明かされると同時に自らの素性も暴かれ、羽田の埠頭で羅濠教主と激しい肉弾戦を繰り広げるが、主の敗北を悟ると撤退し、遺された「救世の神刀」を回収した。その後は雲取山の山中で待機していたが、突如眼前に開いた『通廊』から現れた神殺し達と遭遇、巨大化して魔鳥と化したスミスと戦うことになるも、新たに開いた天空通廊の中に吸い込まれ1万2000年前へと送られてしまい、過酷な時間の旅に耐え抜いて何とか現代へと帰還を果たす。ラクシュマナが宿った救世の神刀を背負ってアストラル界で魔王内戦の勝者となった護堂の前に現れ交戦するが、アリスの助けで護堂が転移したために取り逃がした。その後、自分がラーマの戦いに横槍を入れないで済むようにあえて先に護堂に戦いを挑み、実体化したランスロットを竜巻の中に閉じ込めたが、彼女と『猪』の突撃で体に穴を開けられたまま月まで吹き飛ばされ、消滅した。護堂は超古代への時間旅行を休眠して耐えたことでアイデンティティと闘争心が摩耗しており、そのために大きく弱体化して最後の粘りが出来なかったのが敗因ではないかと考えている。 ラクシュマナ(Lakṣmaṇa) コーサラ国の王子の1人で、ラーマの次弟。流浪の旅を続けるラーマに唯一生涯付き添ったとされる存在。ラーマを影ながら護衛する分身にして従属神である《鋼の軍神》。兄の代わりにまつろわぬ神としての歪みと狂気を一身に引き受けているため、褐色の肌と白銀の髪以外の容姿は兄と瓜二つでありながら、その表情は悪意に歪んでいる。 《神刀の曼荼羅》をはじめとする兄の武具や《盟約の大法》を使用できるが、その力はあくまで従属神の域を出ず、《運命》に選ばれた兄のような絶大な力はない。しかし、《鋼》の不死性として灰となった肉体から復活する能力を持つほか、アイーシャと同じく修正力を利用した攻撃の無効化も可能なため、かなりしぶとい。また、神速で動く相手をも捕らえる分銅付きの縄『蛇の縛縄(ナーガバーシャ)』を使い、敵を地中の結界に閉じこめる力も持つ。 兄に使命を全うさせるため、その意に沿わぬ行動をとることがある。かつては『十個の命を持つ魔王』にかくまわれていた兄嫁シーターを殺害しており、現代でも反旗を翻したパラス・アテナとの尋常な勝負を望む兄の意向を無視して完全覚醒を優先させ、聖杯を強制的に起動することにより彼女に致命傷を与えている。ラーマが護堂に敗れてからは救世の神刀と一体化し、突如現れた神殺し達の相手を配下に任せて雲取山の地中に消えた。魔王内戦中も、機を見て最も消耗していた護堂を地中へ引きずり込んで封印しようとしたが失敗、そのまま反撃に転じられたため撤退する。しばらくして護堂とスミスに再び襲いかかったが、駆けつけた恵那により痛打を浴びせられてまたしても撤退に追い込まれ、ハヌマーンが手にした「救世の神刀」に宿り兄の復活を待つ。 最終決戦では、護堂を引きずり出すために江東区豊洲の新市場で霊薬調合を行っていたエリカ達を襲い、兄から借りた灼熱の矢と凍土の矢で瀕死の重傷を負わせるが、『強風』を使って駆けつけた護堂の『白馬』に焼かれて重傷を負い敗走する。その後、兄ラーマが《運命の担い手》から解放されると同時に自身も歪みから解放され、兄を救った護堂に感謝の言葉を告げて兄弟2人でどこかへと旅立った。5年後に並行世界で護堂が苦戦しているのを感じ取った際には、兄とともに力を貸している。 『ロード・オブ・レルムズ』では兄と同じく力を封じてユニバース966で生活しており、「護堂 次郎(ごどう じろう)」を名乗っている。 シーター 『ラーマーヤナ』のヒロインで、ラーマ王子の妻に当たる大地母神。遥か昔、現世に招聘された際に義弟ラクシュマナに殺害され、『玻璃の媛君』と呼ばれる神祖として転生する。詳細は「#玻璃の媛君」を参照 ニアヴ ケルト神話に登場する常若の国の妖精女王。恋人であるフィアナ騎士団のオシーンを常若の国へ連れてくるために時間を旅させる権能を使ったことで知られる。 150年ほど前までアストラル界を統べる妖精王の一柱として君臨していた。大英帝国にあったヴォバン邸にて3人の神殺しが激突した余波により、ヴォバン侯爵の従僕による実験台として拘束されていた邪悪な黒小人たちが解放されたことが遠因となり、彼らによって上司への生贄として連れられてきたアイーシャと戦うも敗北し死亡した。 アル・シャイターン 中東にルーツを持つ魔神族の王にして12柱の妖精王の盟主。尖り耳と真っ赤な肌が特徴的で、皇帝(スルタン)の衣装に身を包んだ屈強な大男の姿を取る。太陽が照りつける白い砂漠を己の聖域とし、そこに魔神宮を構えている。 魔王内戦ではスミスに連れられて評議場にやって来た護堂に対してアストラル界に隠棲する者たちの総意を伝え、彼がラーマとできうる限り対等な条件で戦えるよう他のカンピオーネ達を《運命の担い手》の権能が及ばない並行世界へ追放する手助けをし、自らの肉体から作り上げた宝珠を《妖精郷の通廊》内部に設置させて権能を暴走させた。 《運命の担い手》 本作の黒幕で、時間、永遠、運命をコントロールするために最強の軍神ラーマチャンドラを遣わす女神。「人は大いなる神や大自然の前になすすべなく翻弄されるべし。宇宙のはじまりから終わりまで、あるべきように物事が進み、つつがなく歴史の糸が紡がれるべし」という意思を持ち、神々をも操っている。外見は7、8歳程度の金髪の少女。 その正体は古代インドに起源を持ち、超古代の印欧語族によって発明・拡散された、世界中に散見される時間と運命を『織物』に喩える神話に登場し『過去・現在・未来』を司る『運命の三女神』という概念の原型となった、『運命そのもの』と『時間』を司る最源流の運命神と言うべき存在。具体的には、ギリシア神話の運命の三女神モイライ(『創造』を意味し、運命の糸を紡ぎ、現在を司る長女クローソー・『維持』を意味し、運命の糸の長さと人間たちの寿命を決め、過去を司る次女ラキシス・『破壊』を意味し、運命の糸を断ち切り、未来を司る三女アトロポス)、あるいはより古い時代の単独の運命神モイラ、ローマ神話におけるノナ・デキマ・モルタ、北欧神話におけるウルド・ベルダンディー・スクルド、ケルト神話におけるモリガン・ヴァハ・バズヴ、さらにはインド神話で『時間』を司る最高神シヴァの3柱の妻パールヴァティー・カーリー・ドゥルガーといった神々の原典であるとされる。 普段は『運命神の領域』で『運命の糸』を紡いで、織物を仕立てている。『あの世とこの世の均衡』を守ることを最優先とし、神々にも『不死の領域』にしかない知識を定命の人間に与えることを禁じている。この世界の理に抗って定命の人間でありながら神々を殺害し、均衡を崩すとびきりのイレギュラーである神殺したちの存在を決して認めず、彼らを排除するため「魔王殲滅の運命」を託した戦士として英雄ラーマを遣わしている。神殺しのみならず幾柱かの神々もこの存在に対して反感を持っており、アストラル界に隠棲した者たちの多くは《運命》の意思に異を唱えるはぐれ者たちであるが、それでも最低限のしがらみがあるため、表だって刃向かうことは出来ないという。 「修正力」を初めとした強大で無慈悲な権能を持つが、自らの手で神殺しを直接殺すことは出来ないなど決して全知全能の存在ではなく、その力はあくまで「この世界の時間軸」にのみ作用する物であるため、異なる時間軸の並行世界へと移動した者までは影響下に置けない。巨大な運命を管轄することに特化しているため、直接の戦闘力は運命の糸を裁つための刃物を無数に投げつけるか柄の長い大鎌で斬りつける程度だが、時間を支配する権能によって相手に逆縁を持つ神を最盛期の状態で呼び寄せ、織物から生やした運命の糸を結び付けて使役するという能力を持つ。ただし、運命の糸を「智慧の剣」で切断されると神は消滅してしまう上に、召喚対象に協力を拒否されることもある。さらに、敵の戦意を削ぐためか、起こりうる未来の光景をまったく違和感なく相手に見せる能力も持つ。 最終決戦にてラーマが自分を裏切ったことで自ら戦いの場に現れ、7柱もの神々を召喚して護堂とラーマを倒そうとする。しかし、護堂が逆縁だけでなく順縁をも結ぶという特殊な神殺しであったことや、『戦士』との相性の悪さから計画は失敗し、『白馬』によってこれまで織り上げてきた『運命』を概念化した織物ごと焼き尽くされて消滅した。 なお、『運命』という概念自体は《担い手》の誕生以前から存在し、運命の糸を紡ぐ《担い手》であっても創り手ではないため、運命の糸そのものを生み出しているわけではなく、死後も糸の生産は続いている。今後はあまたいる運命神の中から新たな《担い手》が現れると予想され、これまでと素材は同じなので以降の「作風」も大きくは変わらないと考えられている。 ラーヴァナ 叙情詩『ラーマーヤナ』に登場する最後の敵で、最強の羅刹王。10の頭と20本の腕の異形の巨人の姿を持ち、剣、槍、弓、矢、宝輪、棍棒、宝塔、楯、刺股、といった20種類の武器を操り、黄金の鎧を纏う。顔は悪鬼の形相というべきいかめしさで、後頭部と、左右の耳の側に4つづつ鬼面が連結しているという、過剰とさえ言えるほどの異形だが、同時に威風堂々たる王者の覇気をもまとっている。長い苦行の末に得た「神にも羅刹にも殺されない特権」により神々を苦しめ、シーターの美貌に目を付けて誘拐したが、人間であるラーマ王子が放った「梵天の矢」により討たれた。 最終決戦においてラーマに逆縁を持つ相手として《運命の担い手》により召喚され、ラーマと戦いを繰り広げたが、護堂がウルスラグナの遺した「黄金の剣」で運命の糸を断ち切ったことで消滅した。 たたり神 40年ほど前、能登に出現した神。当時は現地の人々を半年で20人弱も呪い殺すという事件を起こすが、旅行中の一朗たちに同行していた日本留学時代のルクレチアの尽力で神具「プロメテウス秘笈」に神力を封印される。幽鬼や怨霊に近い比較的弱い神格だったおかげでなんとか倒すことはできたものの、それでも1日がかりで神と話し込み隙を見つけなければならなかったほどにしぶとい相手だった。 その後、最終決戦の2年半後に復活し、自身を封印したプロメテウス秘笈を破壊しようと行動を起こす。霊視を得たルクレチアの情報提供で一時的に秘笈の保管場所だった草薙家を襲うことが予測されたため、正史編纂委員会が警護に当たることになる。そして、包囲を破ってまだ近所にいた静花のことを狙うが、京都から「強風」で駆けつけた護堂と天叢雲の力によって撃破された。
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まつろわぬ神
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 08:36 UTC 版)
人の紡いだ神話に背いて自侭に流離い、その先々で人々に災いをもたらす神々。神そのものだけでなく、神話において神と同義とされる神代の王や女王、伝承で語られる偉大な英雄に加え、天使に魔獣といった存在が顕現した場合も同様の呼称が使われる。
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