トゥアハ・デ・ダナーンとは? わかりやすく解説

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トゥアハ・デ・ダナーン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/06 01:28 UTC 版)

トゥアハ・デ・ダナーン(Tuatha Dé Danann, 現代アイルランド語:トゥーアハ・ディエー・ダナン [t̪ˠuːəhə dʲeː d̪ˠan̪ˠən̪ˠ]古アイルランド語:トゥーアサ・ジェー・ザナン [tuːaθa ðʲeː ðaNaN])またはダーナ神族(ダーナしんぞく)は、ケルト神話で語られるところではの一族とされる一族。トゥアサ・デー・ダナンとも表記される[1]

概要

ケルト神話ではアイルランドに上陸した4番目の種族で、女神ダヌ(ダーナ)を母神とする神族とされる。「トゥアハ・デ」はアイルランド語で「神々の一族」を意味する。

一説によれば、フォモール族に追い出されたネミディア族が、ダナーン族になったと言われている。やがて、5番目の種族であるミレー族との戦いに敗れ、地下の世界に移る。この世界は地上の世界の鏡像のような世界だった[2]。やがて彼らは妖精ディーナ・シー英語版となった。

この神々は、本来アイルランド人の祖先であるケルト民族自らが信仰の対象としていたものである[3]。彼らと同源とされる神々への信仰の痕跡がヨーロッパ大陸やブリテン島にも残されており、またアイルランドの古代の王家の系譜にこの神々の名が記されている[4]事がそれを示している。しかし『アイルランド来寇の書』においては、この神々はアイルランド人の祖先「ミレー族」との戦いに敗れ、衰退していく「トゥアハ・デ・ダナーン」という一族だと描写されている。『来寇の書』を含む一連のトゥアハ・デ・ダナーンの登場する物語群を現実の歴史が反映された物であると捉え、彼らはケルト民族に滅ぼされたアイルランドの先住民、あるいはその先住民が信仰していた神であるとされることがあるが、これは誤りである[5]

四種の神器

彼等はアイルランド上陸時、北方四島の四都市、ファリアス(Falias)、フィンジアス(Findias)、ゴリアス(Gorias)、ムリアス(Murias)より四種の神器、またはThe Hallows of Irelandを持ち込んだ。 これは、リア・ファル、ルーの槍、ヌアザの剣、ダグザの大釜の事であるとされる。

ファリアスよりリア・ファル (Liath Fail、運命の石)がもたらされ、ミース県タラの丘に置かれている、これはアイルランドの王の元で啼くと言う。この都市にはモルフェッサ(Morfessa)という名のドルイドが住んでいる。

ゴリアスよりルーの槍がもたらされた。ゴリアスにはエスラス(Esras)と言う名のドルイドが住んでいる。

フィンジアスよりヌアザの剣がもたらされた。フィンジアスにはウスキアス(Uscias)と言う名のドルイドが住んでいる。

ムリアスよりダグザの大釜がもたらされた。ムリアスにはセミアス(Semias)と言う名のドルイドが住んでいる。

ダーナの主な神々

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ダヌ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ダグザ
 
ヌアザ
 
 
 
 
 
 
 
ディアン・ケヒト
 
ゴヴニュ
 
リル
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ブリギッド
 
ミディール
 
オェングス
 
オグマ
 
エーディン
 
キアン
 
ミアハ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ルー
 

日本神話との比較

日本の神話学吉田敦彦は、トゥアサ・デー・ダナンのアイルランド征服神話と神武東征とを類似性があるとして比較研究している[6]

脚注

  1. ^ 吉田敦彦『ヤマトタケルと大国主 比較神話学の試み3』みすず書房 (1979.1)
  2. ^ グリーン, p. 28.
  3. ^ 田中 1995, p. 69-70.
  4. ^ Westropp 1921, p. 145.
  5. ^ ただし田中 (1995)のようにこの神々がケルト人自身の神である事を示しつつも、アイルランド先史時代の先住民を一種のレトリックとして「ダーナ神族」(トゥアハ・デ・ダナーン)と呼ぶ例もある。
  6. ^ 『ヤマトタケルと大国主 比較神話学の試み3』みすず書房 (1979.1)

参考文献

  • Westropp, Thomas Johnson (1921). “The Promontory Forts and Traditions of the Districts of Beare and Bantry, Co. Cork”. The journal of the royal society of antiquaries of Ireland. 6 (Dublin) 10. 
  • グリーン, ミランダ・J 著、市川裕見子 訳『ケルトの神話』丸善株式会社、1997年。ISBN 4-621-06062-7 

関連項目


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