ダヌとは? わかりやすく解説

ダヌ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/12/19 07:40 UTC 版)

ダヌまたはダナ (*Danu/*Dana)は、ヨーロッパ大陸系のケルト人地母神の憶測的・復元的な名称である[1]ドナウ川などの地名をよりどころに、そういう汎ケルトの女神がいたという仮説が立てられる[1]

あるいはアイルランド神話の、あくまで仮説的な女神ダーナ(ダヌ/ダナ)を指す[1]。つまり女神ダーナに関する記録は皆無であり[1]、アイルランドのトゥアハ・デ・ダナーン神族の名称が彼女の名前を冠しているという解釈[2]の一点のもとに存在する。

ダナーン→ダーナ(ダヌ/ダナ)という語形の変換については、(属格[注 1] )「~ダナーン」(Dannan)から、主格の「ダヌ/ダナ」(*Danu/*Dana)導かれる。しかし、その復元形には「語学的に無理がある」とも意見される[2]

さらなる仮説では、アイルランド神話に実在するアヌまたはアナ、(Anu/Ana)の名に"d-"を音挿入語頭挿入英語版)した語形ではないか、との考えがある[1]

ダナに関しては、後世の識者による創作に過ぎないと一蹴する意見もあれば、確固たるいくつかの関連材料や類型に裏打ちされると支持する意見もある[3]。たとえば、関連語としてはウェールズの女神ドーン英語版Dôn)がある、と指摘されている[1]

アナはアイルランド神話に実在する母神であり、900年頃成立の『コルマクの語彙集英語版』には、「アナはアイルランドの神々の母」と記されている[4]。しかし、神話上にはこの女神への言及は僅かにしかみられない[3]

ダヌの認知の古さ

ドナウ川 (Danube) (ラテン語:Danuvius)、ドニエストル川 (Dniester) 、ドニプロ川 (Dniepr) 、ドン川 (Don) のような地名の形跡を根拠として、ダヌはおそらくケルト全域で崇拝されていた。実際のところ、インド神話に登場するアスラ神族の「ダヌ」(Danu)という名前を持つ女神がケルト神話のダヌとも関係していることが、この女神が非常に古い時代のインド・ヨーロッパ系神話の起源をもつことを示しているとされている。

また、「dhanu」の名は「swift(迅速さ)」という意味を元来持つと見られる。

脚注

注釈

  1. ^ AnnanがAnaの属格なので[3]、Dannanが属格とは察せられ、また、Carey にその明言がなくとも、"nominative" 主格 を復元するという脈絡から、なんらかの格であることはあきらか。

出典

  1. ^ a b c d e f MacKillop (1998) s.v. "Danu, Dana", p. 128
  2. ^ a b Carey, John [英語版] (2006). “Tuath Dé”. In Koch, John T. [英語版] (ed.). Celtic Culture: A Historical Encyclopedia. ABC-CLIO. pp. 1693–1697. (reprinted in The Celts: History, Life, and Culture, 2012, pp. 751–753)
  3. ^ a b c MacKillop (1998) s.v. "Anu, Ana, Annan (gen.)", p. 18
  4. ^ 渡邉浩司「【第45回大会公開講演】妖精メリュジーヌとケルトの大女神―インド=ヨーロッパ神話の視点から―」〔日本口承文芸学会『口承文芸研究』45号、2022年3月、18頁〕。

参考文献

関連項目


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