貴種流離譚とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 貴種流離譚の意味・解説 

きしゅりゅうり‐たん〔キシユリウリ‐〕【貴種流離×譚】

読み方:きしゅりゅうりたん

説話類型の一。若い神や貴人が、漂泊しながら試練克服して、神となった尊い地位得たりするもの。大国主命(おおくにぬしのみこと)や日本武尊(やまとたけるのみこと)の説話など。


貴種流離譚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/12 02:43 UTC 版)

貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)とは、物語の類型の一種であり、折口学の用語の一つ。若い神や英雄が他郷をさまよいながら試練を克服した結果、尊い存在となるとする説話の一類型[1]貴種漂流譚(きしゅひょうりゅうたん)とも。折口信夫が一連の「日本文学の発生」をめぐる論考のなかで、日本における物語文学小説)の原型として論じた概念である。その説くところは時期によって細部が異なるが、基本的には「幼神の流浪」をその中核に据える。折口は『丹後風土記逸文』の竹野郡奈具社の由来を引きつつ、天上の存在が地上(人間界)に下って、試練や流離の果てに再び天上の存在になる一定の筋があることを研究し、貴種流離譚の概念を確立した。

神話学と貴種流離譚

神話学の1つの視点としてモノミスの理論がある。これは、すべての文明に見られる神話にはある種の基底構造があるとする仮説であり、ジョーゼフ・キャンベルは「千の顔を持つ英雄」モデルを提示している。この中でジョーゼフは、全ての神話上の英雄には基本的に同じパターン(ヒーローズ・ジャーニー)が見られるとする。もっとも、このモノミス理論は神話研究の主流派には認められているものではない[2]

神話的英雄の苦難の冒険の物語についてはギルガメシュシヌヘの物語など太古から知られ、ギリシア神話や日本の神話にも例が見られ、地理的に隔絶していたであろうマヤ神話にさえ発見できる(フンアフプーとイシュバランケー)。「高貴の血脈に生まれ、本来ならば王子や王弟などの高い身分にあるべき者が、『忌子として捨てられた双子の弟』『王位継承を望まれない(あるいはできない)王子』などといった不幸の境遇に置かれ、しかし、その恵まれない境遇の中で旅や冒険をしたり巷間で正義を発揮する」という話型を持つものがある。

これら神話をモチーフにしたさまざまな派生・創作作品についても、貴種流離譚と表現することがある。

大塚英志は著書『物語の体操』で、以下のように定義している。

  1. 英雄は、高位の両親、一般には「王や勇者の血筋」に連なる息子である。
  2. その誕生には困難が伴う。
  3. 予言によって、父親が子供の誕生を恐れる。(祖父や長などの場合も多い)
  4. 子供は、箱・かごなどに入れられて川に捨てられる。
  5. 子供は、動物や身分のいやしい人々によって救われて養われる。
  6. 大人になって、子供は貴い血筋の両親を見出す。この再会の方法は、物語によってかなり異なる。
  7. 子供は、生みの父親に復讐する。
  8. 子供は認知され、最高の栄誉を受ける。

事例

脚注

  1. ^ 『大辞林』
  2. ^ (2006年) Myth-Placed Priorities: Religion and the Study of Myth、Religious Studies Review. Northup, Lesley, 5-10.
  3. ^ a b c 杉浦一雄 2009[要ページ番号]
  4. ^ a b 折口信夫 1952[要ページ番号]

参考文献

  • 折口信夫「真間・蘆屋の昔がたり」『國學院雑誌』第53巻第1号、國學院大學出版部、1952年4月、4-18頁、ISSN 02882051NAID 40001283434 
  • 杉浦一雄「源氏物語と貴種流離譚」『千葉商大紀要』第46巻第4号、千葉商科大学、2009年3月、66-48頁、 ISSN 03854566NAID 110007405482 
  • 大塚英志『物語の体操 : みるみる小説が書ける6つのレッスン』朝日新聞社、2000年12月。 ISBN 4022575468 

関連項目

外部リンク


貴種流離譚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 01:37 UTC 版)

水野勝成」の記事における「貴種流離譚」の解説

ここから勝成の流浪生活が再び始まり、その足取りは、さまざまな伝説憶測逸話彩られ諸説紛々としている。最終的に備中国成羽国人三村親成食客となった文禄3年1594年9月月見会の席上作法上の問題茶坊主処置無礼なりとして、これを斬って出奔するが、翌年正月、再び成羽帰り三村家の食客になった。このとき勝成は世話役の娘に手を付け子供をもうける。これが室となる於登久(おとく)であり、この子供が後に福山藩第2代藩主となる勝俊である。

※この「貴種流離譚」の解説は、「水野勝成」の解説の一部です。
「貴種流離譚」を含む「水野勝成」の記事については、「水野勝成」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「貴種流離譚」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「貴種流離譚」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「貴種流離譚」の関連用語

貴種流離譚のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



貴種流離譚のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの貴種流離譚 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの水野勝成 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS