ギルガメシュ叙事詩
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『ギルガメシュ叙事詩』(ギルガメシュじょじし)は、古代メソポタミアの文学作品。実在していた可能性のある古代メソポタミアの伝説的な王ギルガメシュを巡る物語。人間の知られている歴史の中で、最も古い作品[1]。
注釈
- ^ ルガルバンダのような祖先神としての意味合いが強い守護神とは別に、個人を守護する「個人神」。古代メソポタミアでは、男児には誕生と同時に個人神があてがわれた。 月本(1996)pp.194,197,注p.18)
- ^ 王の務めである神殿の建設などによい資材は欠かせなかったが、古代の南部メソポタミアでは森が枯渇していた。
- ^ 当時のシュメール・アッカド地方の言葉で「護符」に当たる単語はなく、「アミュレット」と呼ばれていた。アミュレットは幸運をもたらしたり厄を払うとされる、守護力を持ったいわゆる"魔除け"のことである。自然素材や加工品などを用い、置物にしたり身に付けたりするが、アミュレットとは別に権力者であることを示す色石や貴金属なども護身に繋がると信じられ、身を飾ることは身を守ることと同義であった。 月本(2011)pp.16,104
- ^ 目的地は西方となっているが、一説には東方に位置するザグロス山脈にあたる地域でもあるとされている。 岡田・小林(2008)p.239
- ^ または13の風。 月本(1996) p.59
- ^ イシュタルの悪癖が明らかにされる貴重なシーンだが、このときギルガメシュが発した雑言の数々は、ほとんどが推定的な訳となっている。 矢島(1998)p.244
- ^ 讃えられるのはギルガメシュのみであり、それを本人が望んだ、という解釈もあり、そういったことから「友と平等に扱われなかった」としてエンキドゥが嘆く例もあるが(月本 p.p80,86 / pp.332-336)、2人が共に讃えられエンキドゥがギルガメシュに嫉妬するような描写も特に見当たらない書版も多い。
- ^ 普通、シュメールにおける地上の7大神は天神アヌ・風神エンリル・水神エアを筆頭に、月神シン・太陽神シャマシュ・金星神イシュタル・大地母神ニンフルサグを指すが、本件で集まったと確認できるのはアヌ・エンリル・エア・シャマシュの4名のみ。
- ^ 蜜(蜂蜜)はその特性から、古代文明の重要な儀礼で頻繁に使用されたことが知られている。
- ^ これは、大層な埋葬儀礼を施すことで死者が迷わず冥界へ赴けるように、の意。 月本(1996)p.101
- ^ アッカド語の「医術文書」に皮膚変色を患った者が快復した際の儀礼として、これと似たような叙述がある。曰く「患者は包帯を焼却し、太陽神シャマシュに蜜とバターの入った菓子らを供え、シャマシュの前に立ち、そして感謝する」。 月本(2011)p.35
- ^ マシュ(またはマーシュ)はアッカド語で双生児の意。ここではシャマシュが出入りする日の出の山のこと。 矢島(1998)p.192,月本(1996)p.328。
- ^ 2つの山の間は太陽(冥界を巡り日の出と共に現れるシャマシュ)が昇ってくる場所、つまり、マシュ山の麓が冥界に達していることを示している。 月本(1996)p.107
- ^ 樫の一種(月本 1996 p.295)
- ^ この、楽器(太鼓と撥)或いは遊具(フープ・ローリング)とされる(アッシリア学者ベンノ・ランズベルガーによる仮説)、エルラグ(プック)とエキドマ(メックー)は、ギルガメシュが作ったとも言われる。 岡田・小林(2008)p.244(器具名は月本1996 p.295による)
- ^ ギルガメシュは「(ウルクの守護神であり軍神でもある)イシュタルを信頼し、キシュに立ち向かう」ことを決心した。 杉(1978)p.40
- ^ ギルガメシュはかつて庇護を求めてアッガの元へ亡命し、アッガはそれを受け入れたという。 杉(1978)p.42
- ^ 歌の部分は矢島文夫の訳詩(筑摩世界文学大系Ⅰ 古代オリエント集)に、語りの部分は山室静の著書(児童世界文学全集 世界神話物語集)に基づいた作品。
- ^ 1982年に「出発の巻」が、1983年に「帰郷の巻」が、それぞれ関西学院グリークラブにより初演されたが、当時はそれぞれ「前編」「後編」と題されていた。
- ^ 1992年に、合唱/関西学院グリークラブ 指揮/北村協一 ナレーション/青島広志にて、東芝EMIよりCDが発売されている。
出典
- ^ a b c d 矢島(1998)p.10
- ^ 月本(1996)p.3
- ^ “ギルガメシュ叙事詩研究の第一人者に本当のギルガメシュ像について聞いてみた”. Pokke (2019年). 2020年4月12日閲覧。
- ^ Hay, Noelle. "Evolution of a sidekick," SFFWorld.com (2002).
- ^ George (2003). The Babylonian Gilgamesh Epic. Oxford University Press
- ^ a b 月本(1996)p.283
- ^ 矢島(1998)p.145
- ^ 矢島(1998)pp.138-144
- ^ 月本昭男 (1996). ギルガメシュ叙事詩. 岩波書店
- ^ a b c d e f g 岡田・小林(2008)p.224
- ^ A. George, The Babylonian Gilgamesh Epic, 2003
- ^ 矢島(1998)p.63
- ^ 矢島(1998)p.188
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- ^ a b c d e f g 岡田・小林(2008)p.16
- ^ 岡田・小林(2008)p.248
- ^ 三笠宮(2000)p.251
- ^ 月本(1996)pp.21,84
- ^ 矢島(1998)p.117
- ^ 矢島(1998)p.128
- ^ A. George (2014). “Back to the Ceder Forest”. Journal of Cuneiform Studies 66: 69–90.
- ^ 渡辺和子 (2016). “『ギルガメシュ叙事詩』の新文書―フンババの森と人間”. 『死生学年報2016』: 167-180.
- ^ 矢島(1998)p.238
- ^ 矢島(1998)pp.194-195
- ^ 矢島(1998) pp.156,189
- ^ 月本(1996)p.115-116
- ^ 松村(2015)p.233
- ^ 三笠宮(2000)p.248
- ^ 松村(2015)p.217
- ^ 月本(1996)p.35
- ^ 月本(1996)pp.37-40
- ^ 矢島(1998)p.65
- ^ 岡田・小林(2008)p.239
- ^ 月本(1996)p.195/注p.17
- ^ a b 矢島(1998)p.161
- ^ 岡田・小林(2008)p.240
- ^ 月本(1996)p.334
- ^ 月本(1996)p.85
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- ^ 月本(1996)p.156
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- ^ a b c 岡田・小林(2008)pp.243-247
- ^ 岡田・小林(2008)p.252
- ^ 岡田・小林(2008)p.255
- ^ 前田(2003)pp.138-144
- ^ 岡田・小林(2008)pp.iii,259
- ^ 岡田・小林(2008)p.250
- ^ 月本(1996)pp.307-313
- ^ 矢島(1998)p.199
- ^ 金子(1990)p.39
- ^ 前田(2003)p.141
- ^ 月本(1996)p.313
- ^ 矢島(1998)p.198
- ^ 月本(1996)p.324
- ^ 月本(1996)p.332
- ^ a b 月本(1996)pp.338-339
- ^ 月本(2011)p.63
- ^ 岡田・小林(2008)p.iii
ギルガメシュ叙事詩
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「ギルガメシュ叙事詩」も参照 あるときイシュタルは、フンババ征伐から帰ったウルク都城の王ギルガメシュの美しさに目を上げ求婚を迫る。彼女は様々な贈呈品や権力を誇示してギルガメシュを誘惑しようとしたが、ギルガメシュはイシュタルの愛人に選ばれた男たちが不遇の死を遂げていることを知っていたために、その誘いを拒んだ。 屈辱を覚えたイシュタルは、父アヌにギルガメシュに振られたことを訴えたが、アヌもまたイシュタルの気まぐれと愚かな行いの数々を知っていたため、泣きつくイシュタルを取り静めようとする。だが可愛さ余って憎さ百倍とばかりに、イシュタルのギルガメシュへの怒りは収まらなかった。復讐のため、ギルガメシュを殺害し彼が統治するウルクごと破壊しようとしたイシュタルは、アヌにグガランナ(天の雄牛)たる巨大な怪獣を地上に差し向けるよう指示し、冥界から死者を引き連れてくるなどと言ってアヌを脅してグガランナを造らせる。グガランナがイシュタルに導かれウルクに降りると、地面が割れ川の水は干上がり、国を荒らし回って多くの人間の命を奪った。 ギルガメシュは親友のエンキドゥと共にグガランナを仕留めたが、イシュタルは振られた上に雄牛をも退治されたことで更に激情し、ギルガメシュに向かって呪いを吐いた。これを聞いたエンキドゥにグガランナの腿を投げつけられ、「お前を捕まえさえすれば、あれ(天の雄牛)にしたのと同じようにお前もこうしてやりたいところだ!」と言い放たれる。イシュタルは泣く泣く退き、ウルクを後にした。
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ギルガメシュ叙事詩
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詳細は「ギルガメシュ叙事詩」を参照 主な活躍のシーン:主人公ギルガメシュとその親友エンキドゥがフンババの住む森へ行きレバノンスギを持ち帰ると言うので、ギルガメシュに旅の加護を与える。ウルクの長老たちはシャマシュを「(ギルガメシュに対する)あなたの神」と呼んで遠征の無事を祈り、ギルガメシュにはなむけの言葉を掛けて送り出した。ギルガメシュが旅の途中で見た夢には姿を変えて現れ、エンキドゥが言うには、シャマシュがギルガメシュを守ってくれることを表す吉夢だという。予感の通り、シャマシュはフンババ戦でギルガメシュとエンキドゥに励ましの言葉を掛けて後押しし、強い風を起こして援護するなどフンババ征伐に一役買った。 ギルガメシュとエンキドゥが天の雄牛を退治した際、ギルガメシュはシャマシュにその心臓を捧げ礼拝した。後に聖牛退治の件を受け神々がエンキドゥの死を定めると、シャマシュはその採決に最後まで反論するが判決が翻ることはなく、無情にもエンキドゥは死の呪いを受け病床に伏せることとなる。死に恐怖し気持ちが不安定になったエンキドゥに、シャマシュは「野人から人間らしくなれた」ことや「ギルガメシュという友を得た」ことなどを述べ、エンキドゥの心を落ち着かせた。 エンキドゥの死後、シャマシュはギルガメシュと共に手厚く葬儀を執り行う。親友の死に直面したことで精神変化が起き、不死希求の旅に出るというギルガメシュを見て困惑したシャマシュは、「お前は何処まで彷徨うのか」と問い、続けて「お前が求める生命は見つかることがないだろう」と諭した(シャマシュが具体的に描かれる場面は、これを以って最後となる)。 また叙事詩本編から独立した別のエピソードで、ギルガメシュが冥界の穴へ落としてしまった私物(楽器の類)をエンキドゥが取り戻しに向かう、というものがある。冥界へ降りるエンキドゥに、ギルガメシュは「冥界でしてはならぬこと」を教えるが、エンキドゥはそれらを守らなかったために冥界から帰れなくなってしまう。このことでギルガメシュがエアに泣きつくと、シャマシュは冥界の天井に穴を開け無事エンキドゥを救出した。
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ギルガメシュ叙事詩
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紀元前の古代メソポタミア文明の叙事詩。ギルガメシュ王の権限のひとつとして「全ての民の初夜権を有した」と伝えられている。
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ギルガメシュ叙事詩
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詳細は「ギルガメシュ叙事詩」を参照 現存する最古の英雄譚の1つ『ギルガメシュ叙事詩』に登場するエンリルは、理不尽な決定によって主人公ギルガメシュの親友エンキドゥを死に至らしめた。 エンリルが起こした大洪水後のこと。エンリルは人間たちへの脅威として、レバノン杉の森にフンババという自然神を守人として定めた。フンババは全悪と呼ばれる恐ろしい怪物であり、太陽神でありながら正義も司るシャマシュはフンババを良く思っていなかった。そんなあるとき、主人公ギルガメシュはシャマシュの加護を受けエンキドゥと共にフンババ退治に成功する。その後に展開されるイシュタルとギルガメシュの恋沙汰を巡って、エンキドゥはイシュタルを激しく罵倒し挑発的な行動を取ってしまう。この一連の事件を受けてアヌは会議を開催、するとエンリルはエンキドゥを処するべきであると主張した。エンキドゥは神意に逆らえず落命し、ギルガメシュは悲嘆に暮れ長らく死の恐怖に陥った。 この神話でのエンリルはエンキドゥの守護神であるが、守護対象であるエンキドゥに容赦ない制裁を浴びせている。他に確認できる行いはフンババを派遣したこと・ギルガメシュに知恵と王権を授けたことであり、会議のシーン以外ではほとんど発言しない。なお、大洪水伝説ではエアと衝突することの多いエンリルだが、『ギルガメシュ叙事詩』ではシャマシュと対立し口論を展開させている。
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ギルガメシュ叙事詩
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ギルガメシュ叙事詩は、紀元前2600年頃に実在したと考えられている、ウルク第1王朝の王「ギルガメシュ」(シュメール語読みではビルガメシュ(「老人が若者である」の意))の物語。紀元前3千年紀末(ウル第三王朝)にはシュメール語版が成立し、紀元前2千年紀初めにはアッカド語版が成立したと考えられている。1872年に大英博物館のジョージ・スミスが、ニネヴェの「アッシュールバニパル(在位:紀元前668年 - 紀元前627年頃)王宮図書館」跡から発掘されたアッシリア語版(標準アッカド語版、紀元前1300年~前1000年頃)粘土板文書の楔形文字を解読したことから、忘れ去られていた物語が再び世に知られることとなった。物語は11枚(+番外編1枚)の粘土板文書から成る。物語の内容は大きく、第一から第八までの書板(エンキドゥの死まで)と、第九から第十一までの書板(不老不死の探求)に分けられ、その内の第九から第十一までの書板(特に第十一の書板)にかけて、不老不死の賢人「ウトナピシュティム」(シュメール語版では「ジウスドラ」、アッカド神話のアトラ・ハシース叙事詩(紀元前18世紀頃成立)では「アトラ・ハシース」、ギリシア神話では「デウカリオーン」、旧約聖書の創世記(紀元前5世紀頃成立)では「ノア」、インド神話では「マヌ」に相当する)と「大洪水」と「不老不死の草」について言及されている。 ここでは、ギルガメシュ叙事詩が創世記やギリシア神話に先行しており、これらの間に何らかの関係があると考えられるので、比較のために、不要部分を省いて記述することとする。
※この「ギルガメシュ叙事詩」の解説は、「バナナ型神話」の解説の一部です。
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