ハムサとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ハムサの意味・解説 

ハムサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/26 01:26 UTC 版)

チュニジアのハムサ
ジェルバ島博物館蔵のハムサ

ハムサアラビア語: خمسة‎, khamsa[xamsa])は、主に中東マグリブ地方で使われる、邪視から身を守るための護符である[1]

イスラム社会ではファーティマの手あるいはファーティマの目としても知られ、中東のユダヤ教徒社会(ミズラヒムなど)ではミリアムの手Hand of Miriam)あるいはアイン・ハー=ラーעַיִן הָרָע ‘ayin hāRā‘、悪い目、「邪視」)として知られる。

典型的なハムサは5指のうちの中央の3本が山形を成し、親指と小指が同じ長さの手の形をしたデザインである[1]。中央にダビデの星イクトゥスをあしらったハムサなどがある。 中東では、邪視に対抗するアミュレットとしてイスラム教徒とミズラヒムの社会では、ハムサをなどにかけた。 マグリブ地方では邪視除け以外にも、豊饒のシンボルとして贈答品や奉納品、結婚式や店舗の飾りとして用いられる[1]

語源

ハムサはアラビア語で「5」を意味する数字で、五本のことであり、ヘブライ語のハミッシャー(חֲמִשָּׁה chamiššāh)、ハーメーシュ(חָמֵשׁ chāmēš)に対応するが、今となっては音素が異なってしまっている(ヘブライ文字でアラビア語通りに書くと כַמְשַׂ のようになってしまう)。

ムスリムにとって「5」は、その行動規範である六信五行の5に通じ、1日のうちに行うべき礼拝の回数の5に通じる。また、ユダヤ教徒にとって「5」はモーセ五書に通じ、いずれの宗教にとっても「5」は神の摂理を表す神秘的な数字として扱われる[1]

起源

ハムサが護符として普及した起源は明らかではないが、フェニキアの女神タニトを祀る石碑には手形模様の刻印が見られるものが多く、タニトの化身と称されたカルタゴの創始者ディードーのシンボルともなっている。また、古代ギリシャの神バッカスの祭祀にも同様のシンボルが多く見られることから、ハムサは古代ギリシア・フェニキア時代の地中海文化にその起源があると考えられる[1]。豊饒神であり軍神としての性格を持つタニト信仰は、古代ローマ時代にはユノー信仰へと継承され、手形模様も伝播していった。

邪視とハムサ

中東や南ヨーロッパでは、青いを持つ人間は邪視を持つ、つまり、故意または無意識に人々に呪いをかける力があるとされる。ある人物から見られると、自身やその財産に危害が及んでしまう、という呪術的な信仰とも言われる。

いくつかの文化では、邪視は人々が何気なく目を向けた物に不運を与えるジンクスとされる。 他方ではそれは、「妬みの眼差し」が不運をもたらすと信じられた。

また、イスラム教の偶像否定は像に表すことのできない唯一神の冒涜であるとする教義によるのであるが、民間ではイスラム化以前に作られ、また描かれた聖像、偶像の目が邪視をもたらすからとの解釈が生まれ、偶像破壊に際しては、その目の周囲だけが破壊されることが多かった。

脚注

  1. ^ a b c d e 田村愛理、深沢克己(編)「漂着聖女信仰とユダヤ教徒」『ユーラシア諸宗教の関係史論:他者の受容、他者の排除』 勉誠出版 2010年、ISBN 9784585210047 pp.210-214.

関連項目

外部リンク


「ハムサ」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ハムサ」の関連用語

ハムサのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ハムサのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのハムサ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS