汎バビロニア主義とは? わかりやすく解説

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汎バビロニア主義

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/25 03:55 UTC 版)

イシュタルの壷("Ishtar vase": ラルサ, 紀元前2000年, ルーブル美術館 AO 6501)に描かれた、イナンナ/イシュタル
くさび形文字で書かれた、アトラ・ハシース叙事詩(Atra-Hasis Epic)。大英博物館所蔵
シュメール神 Ningizzidaと2頭のグリフォン

汎バビロニア主義(はんバビロニアしゅぎ、Panbabylonism、パンバビロニズム)は、ヘブライ聖書ユダヤ教の起源をバビロニア文化及びバビロニア神話とするアッシリア学宗教学学説19世紀提唱され、アレフレート・イェレミアス(Alfred Jeremias)の貢献もあり20世紀初頭に普及。聖書は、メソポタミア創世神話エヌマ・エリシュ』に由来していると考えられる。

バビロニア神話と『創世記』の比較

  バビロニア神話、『エヌマ・エリシュ』 『創世記』
発生時期 紀元前2100年 紀元前1300-1200年
宇宙観 地球平面説[1]
記述の始まり方 同一。
物語の進行: 異なる
世界創世の期間 『エヌマ・エリシュ』:神々6世代で世界を創世 『創世記』:6日間で世界を創世
 人の創造 神々は、人の創世の前に意見を尋ねる。(6:4) エロヒムは、自分の印象でつくる。"Let us make man in our own image..." (Genesis 1:26)  
 人の創造の時期 マルドゥクは6日目に人を土から創世。 エロヒムは6日目に人を創世
 神の休息 マルドゥクは、人の創世の後、休息。 エロヒムは、人の創世の後、休息。
単一神教  一神教
原初の世界

創造の前にはだけが存在。無形、空。(the tohu wa bohu of Genesis 1:2)  (Genesis 1:6–7, Enûma Eliš 4:137–40)

」「」の誕生 昼と夜が「光」を生み、「時」を司る発光体の誕生を進める (Gen. 1:5, 8, 13, and 14ff.; Enûma Eliš 1:38) (Gen. 1:14; Enûma Eliš 5:12–13).
若さを取り戻す魔法の植物を盗む。→ ギルガメシュは不死を失う。 エデンの園で、エヴァ知恵の樹の実を食べるように勧める。神の警告に反し、蛇は「それを食べても死なず、神のようになる」とイブに話す(Genesis 3:4-5)。→ アダムとエヴァは不死を失う。
純血の喪失 エンキドゥは、自然と調和しながら暮らしている。エンキドゥがシャムハット(Shamhat)と交わる。シャムハットは「エンキドゥが賢く、神のようになった」と言う。シャムハットは、エンキドゥのために服を作り、人間の食べ物を与える。エンキドゥはウルクへ行き文明と出会う。 アダムとエヴァは、自然と調和しながら暮らしているが、知恵の樹の実を食べると自然から独立する。彼らは恥を逃れるために衣服を着る。禁じられたものを食べ、神の罰を受ける。新しく踏み入れる土地には苦難が待っている。
不死の拒否・喪失 アダパAdapa)は、知恵を持ち、天国で不死の食べ物を拒否する[2][3] アダムとエヴァは、知恵の樹の実を食べて不死を失う。
ギルガメシュと「(Jesus)」 ギルガメシュは、神の血統を持つ。2/3 が神の血統。 「主(Jesus)」は神と人間の合わさったもの。

洪水物語の比較

  ギルガメシュ叙事詩(11版 84-85) 創世記(6-9、18-19)
共通点
神の怒り
英雄は大洪水が起こると、前もって神の警告を受ける。
英雄は神から具体的なの作り方の説明を受ける。ウトナピシュティム:「船の床面が正方形」(Tablet XI 24 and 28-30)。(Genesis 14-16)
英雄は自身の家族と動物を乗船させる。
英雄は洪水の具合を確かめるために、長い昼夜、雨の後に3羽の鳥を放つ。(Tablet XI 145-154) (Genesis 7-11)
山の頂上に着地 洪水が引き始めると、船は山の頂上に着地。バビロニア神話;ニシル山。聖書:アララト山
事後 ギルガメシュは洪水後、不死を求める冒険の途上にウトナピシュティム(Utnapishtim)と彼の妻に出会う。
きっかけ エンリル神が人間の騒々しさを静めるために洪水で彼らを破壊することを決めるが、エア神(Ea)は人間が可哀想に思い、ウトナピシュティムと彼の家族を救う。 神が地をきれいにするために洪水を起すことを決める。
物語の結末 ウトナピシュティムと彼の妻は、試練を乗り越えたとして神から不死を授かり、楽園に住む。 ノアは神から二度と洪水を起さないと、虹の契約を受ける。

脚注

  1. ^ a b Seeley 1991, pp. 227–240 and Seeley 1997, pp. 231–55
  2. ^ Adapa: Babylonian mythical figure
  3. ^ Liverani, Mario. Myth and Politics in Ancient Near Eastern Historiography. Cornell University Press (August 30, 2007) (Ch1 Adapa, guest of the Gods pp.21-23) [1]

関連項目

外部リンク


汎バビロニア主義

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/17 05:20 UTC 版)

メソポタミア神話」の記事における「汎バビロニア主義」の解説

19世紀後半発展した理論である汎バビロニア主義ではタナハ多く説話旧約聖書クルアーンは、この地域一帯を数世紀にわたり支配していたメソポタミア神話上の歴史ベースにして、そして影響受けて書かれたと信じられている。特にエヌマ・エリシュ天地創造比較されるエステル物語はアッシリア・バビロニアの時代ルーツ求めることができる。大洪水ノアの方舟ギルガメッシュ叙事詩影響指摘されている。聖書ニムロド物語実在したアッシリアの王トゥクルティ・ニヌルタ1世或いはアッシリア戦争の神ニヌルタ元になっていると考えられている。またリリスアッシリア悪魔リリツ(Lilitu)が、バベルの塔アッシリアバビロニアジッグラト元になっていると考えられている。 ユダヤ教キリスト教イスラム教聖書部分的に異教徒聖典由来するものだという主張に関して議論している。弁証学者は聖書メソポタミア神話との類似性よりも、違いにこそ重要な意味を見出している。彼らは聖書の物語にはメソポタミア文献から直接引用され部分存在しないとしている。すなわち、双方聖典がさらに古い何らかの文献から個別発展した可能性指摘している。例え洪水物語世界中ほとんどすべての文化のなかに見ることができ、そこにはメソポタミア直接かかわりを持たなかった文化含まれる。また別の弁証学によればメソポタミア神話は、シンプルな聖書の物語比べて美しく潤色されている。1968年にはシンプルな聖書の記述に近い創造神話物語記され粘土板エブラEbla)で見つかった当初メディアはペティナト(Pettinato)や他の学者綿密な調査先立って発表した仮説に基づきエブラ粘土板聖書との関係センセーショナルに伝えた。しかしこの仮説は現在全く実態の無い主張であり人々混乱させたとして広く否定されている。聖書の歴史研究におけるエブラ粘土板重要性は低いというのが現在は大ねむ一致した見解である。 ペルシアダリウス1世Darius I)の戦い描いた紀元前520年から519年の碑は一見すると西アジアにおける最初ゾロアスター教痕跡のように見える。碑には翼の生えた日輪とその中に人が配置されシンボル描かれている。これはアッシリアでは国の神アッシュール表していた。一方でアケメネス朝彫刻ではアフラ・マズダを、または王国それ自体、あるいは支配者守護神表わすシンボルであったメソポタミア文献には3つの海運都市描かれている。ペルシア湾ディルムンDilmun)、パキスタンのメルッハ(Meluhha)がすべてアッカドサルゴンによる文献中に触れられている。さらにメソポタミア儀式習慣単一神教という性質には現代ヒンドゥー教との類似性見られる直接結びつけることは大胆に過ぎるが、ポセル(Possehl)をはじめとした学者複雑な古代インド宗教メソポタミア宗教との類似性持っていた可能性指摘している。この場合洪水物語世界3つ分け考え方神々と悪魔のもつ役割深く掘り下げる必要がある

※この「汎バビロニア主義」の解説は、「メソポタミア神話」の解説の一部です。
「汎バビロニア主義」を含む「メソポタミア神話」の記事については、「メソポタミア神話」の概要を参照ください。

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