かん‐なり【▽雷鳴】
らい‐めい【雷鳴】
雷鳴
雷鳴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/26 07:56 UTC 版)
雷鳴(Thunder)は、雷によって稲妻の後に発生する音である[1][2][3]。雷からの距離や雷の性質により、その音は長く低いうなり声から、突然の大きな破裂音までさまざまである。雷によって温度が急激に上昇し、それにより圧力も急上昇するため、落雷の進路上の空気が一気に熱膨張する。この空気の膨張が衝撃波を作り出し、轟音を発生させる。雷を科学的に研究する学問は大気電気学、雷に対する非合理的な恐怖(恐怖症)は、雷恐怖症と呼ばれる。
語源
近代英語では、thunderという言葉は初期古英語のþunorという言葉に由来する。綴りの5文字目のsは音挿入であり、近代オランダ語のdonder等でも見られる。なお、中期オランダ語のdonre、古ノルド語のþorr、古フリジア語のþuner、古高ドイツ語のdonar等の言葉は、全て究極的には、ゲルマン祖語の*þunrazに由来する。ラテン語では、tonareと書かれる。北欧神話の神トールは、古ノルド語で雷を意味した言葉に由来する[4]。インド・ヨーロッパ祖語で共通する*tón-rまたは*tar-は、ガリア語のTaranisでも見られる[5]。
発生原因
雷鳴の原因は長年にわたって議論されてきた[6]。古代には、神々によるものと考えられていたが、古代ギリシャの哲学者たちは自然現象とし、アナクシマンドロスやアリストテレスは風と雲の衝突によるもの、デモクリトスは雲内の空気の動きによるものと考えた[7]。 ルクレティウスは雲中の雹の衝突音であると主張した。19世紀中盤には雷が真空を生じ、その崩壊が雷鳴を生むという説が有力だった[6]。
20世紀以降は、落雷の経路に沿ってプラズマが急激に熱膨張し、それにより空気中に衝撃波が発生する事実が共通の理解となった[8][7]。分光法で測定される雷内部の温度は、存在する50マイクロ秒の間に変化し、当初の約20,000 Kから約30,000 Kに急激に上昇し、約10,000 Kまで徐々に下がる。平均は、約20,400 Kである[9]。この加熱により、急速に外側に膨張し、周囲の冷たい空気と超音速で衝突する。この外側へのパルス的な動きは衝撃波であり[10]、爆発や超音速航空機で作られる衝撃波と似た原理である。発生源の近くでは、音圧レベルは通常165 - 180 dBであるが、200 dBを超える場合もある[11]。
シミュレーション実験では、このモデルとかなり一致する結果が得られたが、この過程の正確な物理的メカニズムについて、議論が続けられた[12][8]。他の発生原因として、雷のプラズマに作用する巨大な電流の電気力学的効果によるものとする説も提案された[13]。
影響
雷鳴の衝撃波は、近くの建物を破壊したり[6]、近くの人に内部挫傷等の怪我を負わせたり[14]するのに十分な強さを持つ。また、雷鳴により、近くの人の鼓膜が破裂し、その結果、一時的または一生にわたる難聴になることもある[6]。
種類
雷鳴の音は、音の大きさや継続時間、音高により分類できる[6]。
- クラップ(Clap): 短く鋭い(0.2~2秒)、高音を含む音
- ピール(Peal): 音量や高さが変化する音
- ロール(Roll)・不規則な音の混合
- ランブル(Rumble):低音で長く続く(30秒以上)
逆転層雷鳴は、逆転層において、雲と地面の間で落雷が発生した時に起こる。雷の音は、同じ距離で発生した通常の雷よりもかなり大きくなる。逆転層の中では、地面近くの空気は高層の空気よりも冷たい。暖かく湿った空気が寒冷前線の上を通過する時に、逆転層が良く発生する。逆転層では、音エネルギーの垂直方向への拡散が妨げられ、地表近くの層に集中する[15]。
認知
落雷の際は、雷鳴が聞こえるより前に稲妻が見える。これは、光速が音速よりずっと速いためである。20℃の乾燥空気中での音速は、約343 m/sである[16]。この速度では1kmを3秒で進むので、稲妻が見えてから雷鳴が聞こえるまでの秒数を数えることで、落雷地点までの距離を推測できる。
非常に明るい稲妻とほぼ同時に鋭い破裂音が聞こえた場合、非常に近くに落雷があったことを示す[6]。
関連項目
出典
- ^ “Severe Weather 101: Lightning Basics”. nssl.noaa.gov. 2019年10月23日閲覧。
- ^ “Thunder Facts”. factsjustforkids.com. 2019年10月23日閲覧。
- ^ “The Sound of Thunder”. weather.gov. 2019年10月23日閲覧。
- ^ “thunder”. Oxford English Dictionary (2 ed.). Oxford, England: Oxford University Press. (1989)
- ^ Matasovic, Ranko. Etymological Dictionary of Proto Celtic. Leiden, The Netherlands: Brill. 2009. p. 384. ISBN 978-90-04-17336-1
- ^ a b c d e f “Section 6.1.8: The Science of Thunder”. National Lightning Safety Institute (2006年7月17日). 2006年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月11日閲覧。
- ^ a b Heidorn, Keith C. (1999年). “Thunder: Voice of the heavens”. 1999年10月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年8月26日閲覧。
- ^ a b Rakov, Vladimir A.; Uman, Martin A. (2007). Lightning: Physics and Effects. Cambridge, England: Cambridge University Press. p. 378. ISBN 978-0-521-03541-5,
- ^ Cooray, Vernon (2003). The lightning flash. London: Institution of Electrical Engineers. pp. 163–164. ISBN 978-0-85296-780-5
- ^ “Thunder”. Encyclopædia Britannica. 2008年6月7日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2008年9月12日閲覧.
- ^ “Ultimate Sound Pressure Level Decibel Table”. 2020年12月13日閲覧。
- ^ MacGorman, Donald R.; Rust, W. David (1998). The Electrical Nature of Storms. Oxford University Press. pp. 102–104. ISBN 978-0195073379. オリジナルの2014-06-28時点におけるアーカイブ。 2012年9月6日閲覧。
- ^ P Graneau (1989). “The cause of thunder”. J. Phys. D: Appl. Phys. 22 (8): 1083–1094. Bibcode: 1989JPhD...22.1083G. doi:10.1088/0022-3727/22/8/012.
- ^ Fish, Raymond M (2021). “Thermal and mechanical shock wave injury”. In Nabours, Robert E. Electrical injuries: engineering, medical, and legal aspects. Tucson, AZ: Lawyers & Judges Publishing. p. 220. ISBN 978-1-930056-71-8
- ^ Dean A. Pollet and Micheal M. Kordich (2013年4月8日). “User's guide for the Sound Intensity Prediction System (SIPS) as installed at the Naval Explosive Ordnance Disposal Technology Division (Naveodtechdiv)”. Systems Department February 2000. dtic.mil. 2013年4月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年8月26日閲覧。
- ^ Handbook of Chemistry and Physics, 72nd edition, special student edition. Boca Raton: The Chemical Rubber Co.. (1991). p. 14.36. ISBN 978-0-8493-0486-6
外部リンク
- The Science of Thunder Archived 2007-10-15 at the Wayback Machine.—National Lightning Safety Institute
- Thunder: A Child of Lightning by Keith C. Heidorn, PhD, ACM
- Storm: Thunder sounds in binaural audio
雷鳴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 10:18 UTC 版)
雷鳴 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。 放電現象が発生したときに生じる音である。雷が地面に落下したときの衝撃音ではなく、放電の際に放たれる熱量(主雷撃が始まって1マイクロ秒後には、放電路にあたる大気の温度は局所的に2 - 3万℃という高温に達する)によって雷周辺の空気が急速に膨張し、音速を超えた時の衝撃波である。 稲妻の放つ光は光速で伝わるため、ほぼ瞬間に到達する。これに対して、雷鳴は音速で伝わるため、音が伝わってくる時間の分だけ、稲妻より遅れて到達する。そのため、雷の発生した場所が遠いほど、稲妻から雷鳴までの時間が長くなり、その時間を計ればおおよその距離も分かる。 発現地点までの距離(自分を中心とした半径)を P(キロメートル)、稲妻が光ってから(もしくはラジオにパルス雑音[出典無効]が入ってから)雷鳴が聞こえる瞬間までの時間を S(秒) とすると、次のように表される。定数0.34は気温を15℃としたときのキロメートル毎秒で表す音速。 P = 0.34 S {\displaystyle P=\,0.34S} 雷鳴が聞こえる距離は通常で約10 - 15kmだが、雷雲外への放電がある場合などは、雷雲から30km以上離れていても雷鳴が聞こえることがある。
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雷鳴
「雷鳴」の例文・使い方・用例・文例
- 雷鳴
- とどろく雷鳴
- 雷鳴がとどろいた
- 昨日の夕方もまた、突然雷鳴が轟き、激しい雨が降りました。
- 雷鳴を聞いて動物たちは怖がった。
- 雷鳴が聞こえるよりも先に稲光が見えるのは、光が音よりも早く伝わるからである。
- 雷鳴が空に轟いた。
- 雷鳴がとどろいた。
- 雷鳴がさらに大きくなった。
- 突然のおおきな雷鳴が聞こえた。
- 私は雷鳴にぎょっとした。
- 私たちは雷鳴を聞いた。
- 昨夜雷鳴と稲妻があった。
- 激しい雷鳴がした。
- 稲妻は雷鳴より先にくる。
- 稲妻は普通、雷鳴の前に光る。
- 低い騒音が突然荒々しい雷鳴となってとどろきだした.
- 雷鳴.
雷鳴と同じ種類の言葉
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