ペガサス【Pegasus】
ペガサス
分類:ロケット
名称:ペガサス(Pegasus)
打ち上げ国名・機関:アメリカ/アメリカ航空宇宙局(NASA)
開発機関・会社:オービタル・サイエンス社
運用機関・会社:オービタル・サイエンス社
打ち上げ場所:ドライデン飛行研究センター(DFRC)
運用開始年:1990年
ペガサスは、衛星ち打上げを請け負う民間会社・オービタル・サイエンス社によって開発された、有翼の、しかも通常の飛行機に搭載して空中発射するというユニークなロケットです。通常型と、これに4段目をつけたHAR(ヒドラジン)増強型、そして現在の運用の主力となったペガサスXL型があります。
衛星が軌道に乗るために必要なのは、実は地上に対して水平方向の速度だけです。ところが、地上から発射するロケットは、まず垂直に上昇し、大気の抵抗が少ない高度に達してからはじめて、水平方向に向きを変え、必要な速度の獲得にかかります。そこで、通常の第1段として飛行機を用い、高空で発射するというアイデアが生まれました。ペガサスのように高度12kmで発射する場合には、ほぼ水平方向で出発することができるため、翼による揚力も利用することができます。
1950年代から考えられていたアイデアでしたが、飛行機に搭載するため、軌道に運べる重量の制限があり、ペガサスまで実用化にはいたりませんでした。
通常の1段目にあたる航空機(ゼロ段)がくり返し使用できること、高空での発射により同規模のタイプのロケットよりも大型の衛星を打ち上げられること、発射台のような大がかかりな設備を必要としないことから、低コスト打ち上げを目玉とする衛星ビジネスのホープとして注目されています。
1.どんな形をし、どんな性能を持っているか?
ペガサスは空軍のB-52またはロッキード社製の旅客機L-1011を改造した通常の航空機に取り付けられ、航空機を第ゼロ段として利用し、空中発射する、有翼・円筒形の打上げロケットです。通常型は、直径1.27m、全幅6.71m、衛星とこれを保護するフェアリングを含む全長は17.1m、本体の全長は13.68mで発射時の総重量は18.3t、高度200kmの低軌道に375kgの積載物(ペイロード)を運ぶことができます。
L-1011をゼロ段とする3段式で、1〜3段と積載物が一体となった有翼ロケットは、L-1011の胴体下部に取り付けられます。1段目は全長8.88m、翼を含む全幅6.71mで、直径1.27m、推力約4.5t、燃料(酸化剤・推進剤)を含む総重量14t。2段目は全長2.65m、直径1.27m、直径1.27mで、推力は12,053kg、総重量は3370kg、3段目は全長2.08m、直径0.97m、推力3,525kgで、総重量985kgですが、HAPS(ヒドラジン補強推進)という4段目を取り付けたミッションもおこなわれました。この第4段は直径97cm、長さ25cm、推力68kg、全重量は90kgと小型で、搭載した衛星を安定軌道に乗せるためのキック役をはたします。ヒドラジンを燃料(推進剤)とする第4段以外の1〜3段はすべて、固体ロケットを採用しています。
2.打ち上げや飛行の順序はどうなっているの?
L-1011からの空中発射の後、1段ロケットは72秒間噴射、1段目の切り離しののち、2段目が72秒間噴射後分離、同様の手順で3段目が65秒間、HAPS装備の場合はさらに241秒間噴射を続け、搭載の衛星を軌道にのせます。
3.どんなものを打ち上げたの?
1990年、NASAの運用するB-52を使って、科学衛星が打ち上げられ、以後、NASAの科学研究衛星、民間の小型通信衛星の打ち上げに使われています。1996年11月4日にNASAとアルゼンチン共同のSAC(科学応用衛星)-BとMITの天文観測衛星HETEの打ち上げに使われましたが、衛星と3段目の切り離しに失敗、衛星の機能の一部は確保できたものの、打ち上げ計画そのものは失敗に終わりました。
4.どのくらい成功しているの?
1990年4月5日の初打ち上げ以来、1999年3月までに、後継のXL型を含めて26回の衛星打ち上げがおこなわれました。うち、1995年4月に最後のミッションを終えた通常型は、一部に不具合があった1回をのぞけばすべて成功しました。しかし、後継のペガサスXLでは5度も事故とトラブルがつづき、将来の順調な運用が可能か心配されています。
ペーガソス
(ペガサス から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/27 19:53 UTC 版)
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ペーガソス(古希: Πήγασος, Pḗgasos, ラテン語: Pegasus, Pegasos)は、ギリシア神話に登場する伝説の生物である。鳥の翼を持ち、空を飛ぶことができる馬とされる。海神ポセイドーンとメドゥーサの子で、クリューサーオールと兄弟。
ラテン語ではペーガススといい、英語読みペガサス(Pegasus)でも知られる。日本語では長母音を省略してペガソス、ペガススと呼ばれるほか、天馬(てんば、てんま)と訳される。
神話
ポセイドーンの子を身ごもったメドゥーサが英雄ペルセウスによって倒された際、ペーガソスはクリューサーオールと共にメドゥーサの首の傷口から生まれた[1][2]。その後ペルセウスはヘルメースから与えられた翼のあるサンダルで、エチオピアの上空を飛んでいるときに岩に縛り付けられたアンドロメダーを発見した(一説にはペーガソスに跨っていったともされる)。一方のペーガソスは天に上り、ゼウスのもとで雷鳴と雷光を運ぶという名誉ある役割を与えられた[3]。
ベレロポーン
ペーガソスはコリントス出身の英雄ベレロポーンの愛馬になったとも伝えられている。ピンダロスの詩によると、最初ベレロポーンはペイレーネーの泉に現れるペーガソスを捕らえようとして苦労した。すると夢にアテーナーが現れて面繋のついた黄金の轡を授けた。ベレロポーンはこの轡を用いることでようやくペーガソスを捕らえることができた[4]。ペーガソスはポセイドーンからベレロポーンに与えられたともいう[5]。そしてベレロポーンはペーガソスに騎乗して戦うことで、アマゾーンやソリュモイ人の討伐、怪物キマイラを滅ぼすという武勲をたてた[6][7]。
しかしベレロポーンは次第に増長し、ついにはオリュムポスに昇って神々の集会に加わり[8]、神々がどこに自分の座を持っているのかを確かめようとした[9]。しかしベレロポーンはゼウスの怒りに触れ、驚いたペーガソスはベレロポーンを振り落とした[8]。大地に墜落したベレロポーンは足を折り、一人淋しくその生涯を終えた[6]。
ヘリコーン山
文芸の神ムーサイがピーエロスの娘たちと歌を競ったとき、ムーサイの歌を聴いたヘリコーン山(ボイオーティア地方の山)は異常に膨れ上がって天界にも届きそうになった。そこでペーガソスはポセイドーンの命により、ヘリコーン山を蹴って元に戻した[10]。またヘリコーン山にはヒッポクレーネー( Ἱπποκρήνη,「馬の泉」の意 )という泉があり、ペーガソスが蹴った場所に湧いたとされる[11][12][13]。
同じ名前の泉はトロイゼーンにもあり、そこでもペーガソスが地を蹴って泉を湧かせたと伝えられている[14]。
異説
上記とは一部異なる諸説がある。
- オウィディウスはペルセウスがメドゥーサの首を切ったとき、首の切り口から滴った血によってペーガソスとクリューサーオールは生まれたと述べている[15]。あるいは血が大地に滴って生まれたともいわれている(父は同じく海神ポセイドーン)。
- ムーサイがヒッポクレーネーで飼っていた。
- 16世紀の神話研究の大家ナターレ・コンティによると、ゼウスの怒りに触れたベレロポーンは、ゼウスが遣わした虻がペーガソスを刺したために、驚いた天馬から振り落とされた。
- ヒュギーヌスによると、ベレロポーンはオリュムポスに昇ろうとしたが、遠ざかる地面を見て恐怖し、墜死した。しかしペーガソスはそのまま天に昇って星座(ペガスス座)となった[16]。
受容史
ペーガソスを駆るペルセウス
ウィキメディア・コモンズには、ペーガソスとペルセウスが共に描かれている図像に関するカテゴリがあります。

ペルセウスのゴルゴーン退治の神話、またアンドロメダー救出の神話について、古典期の資料では一貫して「ペルセウスは翼のあるサンダルを履いていた」と語られており、ペルセウスがペーガソスに乗っていたとする伝承は残っていない(ペーガソスに乗っていたことで有名なのは上述のベレロポーンであり、また彼が退治したのもキマイラである)。しかしながら、中世以降の絵画や物語では、しばしばペルセウスがゴルゴーンを退治したのちペーガソスに乗って帰った、また帰路の途中で怪物ケートスと戦いアンドロメダーの命を救った際もペーガソスに乗って空から舞い降りた、と描かれていることがある。
14世紀初頭(1317年から1328年の間)にフランスで書かれた『オヴィド・モラリゼ(道徳的なオウィディウス)』は、オウィディウスの『変身物語』を道徳的に翻案したものであり、ルネサンス期の芸術家たちによるギリシア神話の芸術的表現に影響を与えたとされるが、ペルセウスの神話とベレロポーンおよびペーガソスの神話が混同される元になったとされる[17]。またジョヴァンニ・ボッカッチョの『異教の神々の系譜』(1360年頃)の名が挙げられることもある。
1532年のアリオスト『狂えるオルランド』で描かれた、ルッジェーロがヒッポグリフを駆りアンジェリカを救う場面も影響を与えているのではないかとみられている[18]。
中世における「ペーガソスに乗るペルセウス」が描かれた絵画の代表例としては、1602年に描かれたジュゼッペ・チェーザリの『ペルセウスとアンドロメダ』(1593-1594年に描かれた『アンドロメダを救うペルセウス』では翼が描かれていないが、1602年版では描かれている)、1611年のヨアヒム・ウテワールの『アンドロメダを救うペルセウス』などが挙げられる。またピーテル・パウル・ルーベンスの『アンドロメダを救うペルセウス』(1620年)、『ペルセウスとアンドロメダ』(1622年頃)では、ペルセウスをペーガソスに跨らせてはいないものの、ペルセウスとアンドロメダーに添えられる形でペーガソスが描かれている。
1981年の映画『タイタンの戦い』(2010年に同名のリメイク作品あり)では、ペルセウスがペガサスを駆る姿が描かれている。
また現代のプラネタリウムや天体観望の場、あるいは児童向けの図鑑、絵本などで語られる星座神話では、秋の星座としてペガスス座、アンドロメダ座、ペルセウス座、くじら座、カシオペヤ座、ケフェウス座が隣接していることもあり、「ぺガススを駆るペルセウスが通りかかり、化け物くじらに食べられそうになっていたアンドロメダを救った」という形でまとめられていることがある[19]。
シンボリズム
ペーガソスは「霊感」の象徴とも、ローマ時代には「不死」の象徴ともなった。また紋章学上では「教養」や「名声」の象徴である。
系図
出典
- ^ ヘーシオドス、277行-281行。
- ^ アポロドーロス、2巻4・2-4・3。
- ^ ヘーシオドス、284行-286行。
- ^ ピンダロス『オリンピア祝勝歌』13歌63行-86行。
- ^ ヘーシオドス断片69。
- ^ a b 『イーリアス』6巻。
- ^ ピンダロス『オリンピア祝勝歌』13歌87行-90行。
- ^ a b ピンダロス『イストミア祝勝歌』7歌44行-47行。
- ^ エウリーピデース『ベレロポンテース』断片。
- ^ アントーニーヌス・リーベラーリス、第9話。
- ^ アラートス『星辰譜』216行-221行。
- ^ オウィディウス『変身物語』5巻。
- ^ パウサニアス、9巻31・3。
- ^ パウサニアス、2巻31・9。
- ^ オウィディウス『変身物語』4巻785行。
- ^ ヒュギーヌス『天文論』2巻18。
- ^ John M. Steadman (1958). “Perseus upon Pegasus' and Ovid Moralized”. The Review of English Studies (Oxford University Press) 9 (36): 407-410 .
- ^ Salomon Reinach (1923). E. Leroux. ed. Cultes, mythes, et religions. 5, pp. 242-272.
- ^ 事例:藤井旭『新装版 星の神話・伝説図鑑』ポプラ社、2018年 。 4頁。; 『星・星座』学研プラス、2018年 。 7、181頁。; “星座の神話から学ぼう - ベネッセ教育情報サイト”. ベネッセコーポレーション (2014年12月5日). 2024年2月11日閲覧。
参考文献
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- アラトス / ニカンドロス / オッピアノス『ギリシア教訓叙事詩集』伊藤照夫訳、京都大学学術出版会(2007年)
- アントーニーヌス・リーベラーリス『メタモルフォーシス ギリシア変身物語集』安村典子訳、講談社文芸文庫(2006年)
- オウィディウス『変身物語(上)』中村善也訳、岩波文庫(1981年)
- 『ギリシア悲劇全集12 エウリーピデース断片』「ベレロポンテース」安村典子訳、岩波書店(1993年)
- パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
- ピンダロス『祝勝歌集 / 断片選』内田次信訳、京都大学学術出版会(2001年)
- ヘシオドス『神統記』廣川洋一訳、岩波文庫(1984年)
- ホメロス『イリアス(上)』松平千秋訳、岩波文庫(1992年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店、1960年 ISBN 4-00-080013-2
関連項目
- 飛行する馬
- 太陽神ソール・インウィクトゥス、アポローン、ヘーリオス、エーオースの馬
- Phlegon, Aeos, Aethon, Pyrios, Aethiops, Abraxas, Therbeeo, Bronte, Sterope
- ブラーク - イスラムに伝わる頭は人間の女性で翼が生えた馬
- Haizum - イスラムに伝わるジブリールの馬
- 千里馬 - 朝鮮の伝説上の馬
- 風馬(en:Wind Horse。en:Tulpar) - トルコ、チベット、モンゴル(モンゴルの国章に見られヒーモリと呼ばれる)などに伝わる伝説上の馬
- 有翼のユニコーン(アリコーン、ペガコーン、ユニサス等とも呼ばれる)
外部リンク
ペガサス(Pegasus)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 19:42 UTC 版)
「博物誌」の記事における「ペガサス(Pegasus)」の解説
エチオピアに生息する翼の生えた角を持つ馬。(第8巻第30(21)章第72節、第10巻第70(49)章第136節)
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ペガサス
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