オリンポス‐の‐じゅうにしん〔‐ジフニシン〕【オリンポスの十二神】
オリュンポス十二神
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/05 05:13 UTC 版)
| ギリシア神話 |
|---|
| 主な原典 |
| イーリアス - オデュッセイア 神統記 - 仕事と日 イソップ寓話 - ギリシア悲劇 ビブリオテーケー - 変身物語 |
| 主な内容 |
| ティーターノマキアー ギガントマキアー アルゴナウタイ テーバイ圏 - トロイア圏 |
| オリュンポス十二神 |
| ゼウス - ヘーラー アテーナー - アポローン アプロディーテー - アレース アルテミス - デーメーテール ヘーパイストス - ヘルメース ポセイドーン - ヘスティアー (ディオニューソス) 一覧 |
| その他の神々 |
| カオス - ガイア - エロース ウーラノス - ティーターン ヘカトンケイル - キュクロープス ギガンテス - タルタロス ハーデース - ペルセポネー ヘーラクレース - プロメーテウス ムーサ - アキレウス |
| 主な神殿・史跡 |
| パルテノン神殿 ディオニューソス劇場 エピダウロス古代劇場 アポロ・エピクリオス神殿 |
| |
オリュンポス十二神(オリュンポスじゅうにしん、古代ギリシア語: Δωδεκάθεον[注釈 1][注釈 2])は、ギリシア神話において、オリュンポス山の山頂に住まうと伝えられる12柱の神々。
現代ギリシア語では「オリュンポスの十二神[注釈 3]」と呼称されるが、古典ギリシア語では単に「十二神[注釈 4]」と呼んだ。
概説
十二神の変動
通常、12神の神々は
である。
12柱目にはヘスティアーを入れるのが通常であるが、ディオニューソスを入れる場合もある。これは、十二神に入れないことを嘆く甥ディオニューソスを哀れんで、ヘスティアーがその座を譲ったためとされる。また、ごくまれにポセイドーンやデーメーテールなどが外されることもある。
ほかに十二神と同格の神として、ハーデース(プルートーン)とその妃ペルセポネー(コレー[注釈 7])がいる。通常は十二神には含まれないが、ごくまれに含めることもある。十二神にハーデースが含まれないのは他の神と違って冥界の神であり、属性が異なると考えられていたためである。
神々の世代
オリュンポスの秩序より見た場合、十二の神々は第一世代と第二世代に分けることができる。クロノスとレアーのあいだに生まれた息子と娘に当たる、ゼウス、ポセイドーン、ハーデース、ヘーラー、デーメーテール、ヘスティアーが第一世代の神で、ゼウスの息子と娘に当たる、アテーナー、アポローン、アルテミス、ヘーパイストス、アレース、アプロディーテー、ヘルメース、ディオニューソスが第二世代の神となる。
ただし、これはオリュンポスの秩序での系譜に基づいている。たとえば、アプロディーテーについては、ホメーロスはゼウスとディオーネーのあいだの娘としているが、ヘーシオドスはクロノスが切断したウーラノスの男根の周りの泡より生まれたとしている[4]。ヘーシオドスの説では、アプロディーテーはゼウスよりも古くからある女神となる。ここから、ウーラノスの男根よりの女神を天上の「アプロディーテー・ウーラニアー」、ゼウスとディオーネーの娘の女神を民衆の「アプロディーテー・パンデーモス」として呼び分けることもある。
ローマ神話の十二神
ローマ神話ではコーンセンテース・デイー (Consentes Dei) と呼ばれ(「同意する神々」の意)、主神ユーピテルをはじめとする男女6柱ずつの神々とされる。
十二神の一覧表
ハーデースとペルセポネーは十二神に含まれないが、天体との関係から記載する。
名前と権能
| 神名 | ローマ神話との対応 (英語由来転写) |
性別 | 説明 | 対応する天体 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 古代ギリシア語 | 他のカタカナ転写 慣用名 |
||||
| Ζεύς | ゼウス | ユーピテル (ジュピター) |
男神 | 神々の王、オリュンポスの主神。 雷神、天空神。 多数の神・半神・英雄の父祖。 |
木星 ゼウス(小惑星) |
| Ἥρα | ヘラ | ユーノー (ジュノー) |
女神 | ゼウスの妻、神々の女王。 婚姻の神で、女性の守護神。 嫉妬深い。 |
ユノ(小惑星) ヘラ(小惑星) |
| Ἀθηνᾶ | アテナ アテネ |
ミネルウァ (ミネルヴァ) |
女神 | 知恵・工芸・戦略の神。 戦争の知略を司る。 都市の守護神。 |
ミネルバ(小惑星) パラス(小惑星) |
| Ἀπόλλων | アポロン | アポロー (アポロ) |
男神 | 予言・芸術・音楽・医療の神。 光明神ともされる。ポイボス。 ヘーリオス(太陽)と混同された。 |
太陽 アポロ群 アポロ(小惑星) |
| Ἀφροδίτη アプロディーテー |
アプロディテ アフロディテ アフロディーテ |
ウェヌス (ヴィーナス) |
女神 | 愛と美の神。 エロースの母とされる。 |
金星 アフロディテ(小惑星) |
| Ἄρης | アレス | マールス (マーズ) |
男神 | 軍神。戦争の災厄を司る。 ギリシア神話では知に劣り、人間にも敗れる。対応するローマ神話のマールスは主神ユーピテルと同じ程篤く信仰されていた。 |
火星 |
| Ἄρτεμις | アルテミス | ディアーナ (ダイアナ) |
女神 | 狩猟・森林・純潔の神。 処女神だが、豊穣の神。 セレーネー(ルーナ)と混同された。 |
月 ディアナ(小惑星) アルテミス(小惑星) |
| Δημήτηρ | デメテル | ケレース (セレス) |
女神 | 農耕・大地の神。乙女座に関連。 | ケレス(準惑星) デメテル(小惑星) |
| Ἥφαιστος | ヘパイストス ヘファイストス |
ウゥルカーヌス (バルカン) |
男神 | 火山・炎・鍛冶の神。奇形。 | バルカン ヘファイストス(小惑星) |
| Ἑρμῆς | ヘルメス | メルクリウス (マーキュリー) |
男神 | 伝令神。 旅人たちの守護神。 |
水星 ヘルメス(小惑星) |
| Ποσειδῶν | ポセイドン | ネプトゥーヌス (ネプチューン) |
男神 | 海洋の王。 海・泉・地震・馬・塩の神。 |
海王星 ポセイドン(小惑星) |
| Ἐστία | ヘスティア | ウェスタ (ヴェスタ) |
女神 | かまどの神。家庭生活の守護神。 名は「炉」を意味する。 |
ベスタ(小惑星) ヘスティア(小惑星) |
| Διόνυσος | ディオニュソス | バックス (バッカス) |
男神 | 豊穣・葡萄酒・酩酊の神。 | バックス(小惑星) ディオニスス(小惑星) |
| ᾍδης | ハデス ハーデス |
プルートー (プルート) |
男神 | 冥界の王。 地下(クトニオス)・農耕の神。 |
冥王星(準惑星) オルクス(小惑星) |
| Περσεφόνη | ペルセポネ | プロセルピナ (プロセルピナ) |
女神 | 冥界の王妃。 春・芽吹き・乙女・季節の神。 コレーとも呼ばれる。 |
プロセルピーナ(小惑星) ペルセフォネ(小惑星) |
系譜・血統
| 神名 | 世代 | 両親 | 備考 | 起源[注釈 10][5] | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 古典ギリシア語 | ギリシア文字 ラテン文字 |
父親 | 母親(位格[注釈 11]) | |||
| ゼウス | Ζεύς Zeus |
第一 | クロノス | レアー (ティーターン) |
クロノスの末子。 多数の神や半神、英雄の父祖。 |
固有 |
| ヘーラー | Ἥρα Hēra |
第一 | クロノス | レアー (ティーターン) |
ゼウスの妻・姉。 | 先住 |
| アテーナー | Ἀθηνᾶ Athēnā |
第二 | ゼウス | メーティス (ティーターン) |
ゼウスの娘。 母はオーケアニデスの一柱。 |
先住 |
| アポローン | Ἀπόλλων Apollōn |
第二 | ゼウス | レートー (ティーターン) |
アルテミスの兄弟。 母はコイオスの娘。 |
外来 |
| アプロディーテー | Ἀφροδίτη Aphrodītē |
第二 | ゼウス | ディオーネー (ティーターン) |
本来はオリエントの女神。 エロースの母。 |
東方 |
| アレース | Ἄρης Arēs |
第二 | ゼウス | ヘーラー (オリュンポス) |
本来はトラーキア地方の神。 | 外来 |
| アルテミス | Ἄρτεμις Artemis |
第二 | ゼウス | レートー (ティーターン) |
アポローンの姉妹。 | 先住 |
| デーメーテール | Δημήτηρ Dēmētēr |
第一 | クロノス | レアー (ティーターン) |
ゼウスの姉。 ペルセポネーの母。二柱女神。 |
先住 |
| ヘーパイストス | Ἥφαιστος Hēphaistos |
第二 | ゼウス | ヘーラー (オリュンポス) |
母が単独で生んだともされる。 | 外来 |
| ヘルメース | Ἑρμῆς Hermēs |
第二 | ゼウス | マイア (ティーターン) |
ゼウスの末子。 母はプレイアデスの一柱。 |
先住 |
| ポセイドーン | Ποσειδῶν Poseidōn |
第一 | クロノス | レアー (ティーターン) |
ゼウスの兄。ハーデースの弟。 | 先住 |
| ヘスティアー | Ἑστία Hestiā |
第一 | クロノス | レアー (ティーターン) |
ゼウスの姉。クロノスの長女。 | 固有 |
| ディオニューソス | Διόνυσος Dionȳsos |
第二 | ゼウス | セメレー (人間) |
本来はトラーキアないし小アジアまたはオリエントの神。 母はカドモスの娘で人間。 |
外来ないし東方 |
| ハーデース | Ἅιδης Hādēs |
第一 | クロノス | レアー (ティーターン) |
ゼウスとポセイドーンの兄。 ペルセポネーの夫。 |
固有 |
| ペルセポネー | Περσεφόνη Persephonē |
第二 | ゼウス | デーメーテール (オリュンポス) |
ハーデースの妻。 母と共に秘教の二柱女神。 |
先住 |
十二神ギャラリー
脚注
注釈
- ^ 古代ギリシア語ラテン翻字: Dōdekatheon
- ^ 十二(δώδεκα、古代ギリシア語ラテン翻字: dōdeka) + 神々(古代ギリシア語: θεοί、古代ギリシア語ラテン翻字: theoi)
- ^ 希: Οί Δώδεκα Θεοί του Ολύμπου
- ^ 古代ギリシア語: Δωδεκάθεον
- ^ ヘーラーは本来、古代ギリシア人の女神ではなく、先住民の大女神であった。ギリシアの地に侵攻し先住民を征服した古代ギリシア人が、先住民との宥和を目的に、彼らの主神ゼウスの妃とした。
- ^ アテーナーは元々、先住民の女神と考えられ、豊穣の大女神で都市守護神であった。アテーナーを「処女神」とし、ゼウスの娘とすることで、オリュンポスの秩序が生み出された。
- ^ 「コレー」とは古代ギリシア語で、「娘・少女・乙女」の意味で、デーメーテールの娘であることよりこう呼ばれる。コレーとデーメーテールは、母娘二柱の女神として、エレウシースの秘儀を初めとして、古代ギリシアの秘教において崇拝された二大女神であった。
- ^ アテーネーは、イオーニア方言形で、女神の古い名アテーナーより派生した。アテーナーは、アテーナイアー(ホメーロスではアテーナイエー、つまりアテーナイの女)に由来する。高津『ギリシア・ローマ神話辞典』
- ^ プルートーンとは「富める者」の意味で、ハーデースの別称である。ラテン語の神名プルートーは、この名より派生している。高津『ギリシア・ローマ神話辞典』
- ^ 「固有」は、古代ギリシア人(ヘレネス)固有の神、「先住」はギリシア先住民の神、「外来」は非ギリシア起源の神、「東方」は外来かつオリエント起源の神を指す
- ^ 「ティーターン」は広義の(12柱の兄弟姉妹以外も含む)ティーターン、「オリュンポス」はオリュンポス12神を指す。
出典
- ^ 呉茂一『ギリシア神話』新潮社、1969年。ISBN 9784103071013。48頁。
- ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店、1960年。 ISBN 9784000800136。89頁。
- ^ 『オリンポス十二神』 - コトバンク
- ^ 高津『ギリシア・ローマ神話辞典』p.25。
- ^ これらの判断は、高津『ギリシア・ローマ神話辞典』及び松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年。 ISBN 9784876989256。の各神の項目の記述に従った。
参考文献
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店、1960年。 ISBN 9784000800136。
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出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。
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- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳(改訂版)、岩波書店〈岩波文庫〉、1978年。 ISBN 9784003211014。
関連項目
オリュンポス十二神
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 07:41 UTC 版)
「ギリシア神話の固有名詞一覧」の記事における「オリュンポス十二神」の解説
名前別表記ギリシア語ラテン文字転写性概要アテーナー アテーネー、アタナ、アテーナイエー Ἀθηνᾶ Athēnā 女神 都市の守護、戦い、知恵、芸術等を司る。 アプロディーテー アフロディテ Ἀφροδίτη Aphrodītē 女神 愛と美を司る。 アポローン Ἀπόλλων Apollōn 男神 アルテミスの兄弟。芸術、光明を司る。 アルテミス Ἄρτεμις Artemis 女神 アポローンの姉妹。狩猟、貞潔、豊穣を司る。 アレース Ἄρης Arēs 男神 戦を司る。 ゼウス Ζεύς Zeus 男神 オリュンポスの主神。全宇宙や天候を支配する天空神。 デーメーテール Δημήτηρ Dēmētēr 女神 豊穣を司る。 ヘスティアー Ἑστία Hestiā 女神 竈・炉を司る。 ヘーパイストス ヘファイストス Ἥφαιστος Hēphaistos 男神 炎・鍛冶を司る。 ヘーラー ヘレ Ἥρα Hērā 女神 ゼウスの妻。結婚、母性、貞節を司る。 ヘルメース Ἑρμῆς Hermēs 男神 伝令神。旅人や商人の守護神。 ポセイドーン Ποσειδῶν Poseidōn 男神 海と地震を司る。 ディオニューソス バッコス Διόνυσος Dionȳsos 男神 ヘスティアーの代わりに十二神に数えられることがある。葡萄酒、豊穣、酩酊を司る。 ハーデース プルートーン Ἅιδης Hādēs 男神 冥界の神であるため一般的には十二神には含まれない。 ペルセポネー ペルセフォネ、コレー Περσεφόνη Persephonē 女神 ハーデースの妻。冥界の神であるため一般的には十二神に含まれない。
※この「オリュンポス十二神」の解説は、「ギリシア神話の固有名詞一覧」の解説の一部です。
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