アレトゥーサとは? わかりやすく解説

アレトゥーサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/20 21:28 UTC 版)

オーギュスト・ルグラ(Auguste Legras)の1874年の絵画『アレトゥーサ』。トマ=アンリ美術館所蔵。
雲に覆われるアレトゥーサと、追いかけるアルペイオス。
シラクサのアレトゥーサの泉。
アレトゥーサの肖像がデザインされている500リラ紙幣。

アレトゥーサ古希: Ἀρέθουσα, Arethūsa)は、ギリシア神話に登場するニュムペーである。シケリア島シュラクーサイ近くのオルテュギアー島にあるアレトゥーサの泉に変じたことで知られる。

長音を省略してアレトゥサとも表記される。

神話

泉への変身

アレトゥーサはもともとはエーリス地方のニュムペーで、アルテミスに仕えていた。誰もが褒め称える美しい容姿を持っているのに、恋や結婚には関心がなかった。

あるときアレトゥーサは、狩りから帰るとき、疲れを癒そうとアルペイオス川で水浴びをしていた。すると突然、水の中からアレトゥーサを呼ぶ声がした。声の主は河の神アルペイオスで、アレトゥーサの魅力的な肢体に見惚れ、彼女に恋してしまったのだった。アレトゥーサは驚いて向こう岸に上がったが、服は対岸に置いたままだったので、何も着ずにそのまま逃げだした。するとアルペイオスも人の姿になり、アレトゥーサを追いかけた。走り疲れてとうとう追いつかれそうになったアレトゥーサは、捕まる寸前、アルテミスに助けを求めた。途端に、アレトゥーサの美しい肉体はみるみるうちに溶け流れ、地面に薄く広がって、水たまりのようになってしまった。願いを聞き届けたアルテミスが、アレトゥーサの体を水に変えたのだった。アルペイオスは驚き一瞬立ち止まったが、すぐさま水にもどって、アレトゥーサと混ざり合おうとした。するとアルテミスは大地を割って穴を作り、アレトゥーサはその穴に流れ込んで逃げた。地中に流れたアレトゥーサは地下水として海底の下をくぐり、やがてシュラクーサイのオルテュギアー島から泉となって湧き出した。こうして純潔を守り通したアレトゥーサは、元の姿には戻らずにその場に溜まり、アレトゥーサの泉になったといわれる[1]

一説によれば、アレトゥーサとアルペイオスは狩人で、アレトゥーサがアルペイオスを拒んでオルテュギアー島で泉になった後、アルペイオスも川になった[2]。あるいはアルテミスがオルテュギアー島を得たときにニュムペーたちがアルテミスのためにアレトゥーサの泉を湧き出させたともいわれる[3]

泉の伝説

古くからアレトゥーサの泉はエーリス地方のアルペイオス川と通じていて、アルペイオス川の水が海水と混ざらず、海底を通ってアレトゥーサの泉から湧き出ていると信じられていた。ピンダロスは『ネメアー祝勝歌』でこの伝説をうたっており[4]、またウェルギリウスも『牧歌』[5]や『アエネーイス』でこの伝説をうたっている[6]ストラボーンはこの伝説について批判的だが[7]パウサニアースはこの伝説が、アレトゥーサとアルペイオスの物語が生まれた要因だとしている[8]

オウィディウスの『変身物語』では、アレトゥーサはハーデースに連れ去られたペルセポネーの行方をデーメーテールに告げている[9]

その他のアレトゥーサ

脚注

  1. ^ オウィディウス『変身物語』5巻572行-641行。
  2. ^ パウサニアース、5巻7・2。
  3. ^ シケリアのディオドーロス、5巻3・5。
  4. ^ ピンダロス『ネメアー祝勝歌』第1歌1行。
  5. ^ ウェルギリウス『牧歌』第10歌4行-5行。
  6. ^ ウェルギリウス『アエネーイス』3巻692行-696行。
  7. ^ ストラボーン、6巻2・4。
  8. ^ パウサニアース、5巻7・3。
  9. ^ オウィディウス『変身物語』5巻487行-508行。
  10. ^ アポロドーロス、2巻5・11。
  11. ^ ヒュギーヌス、序文。
  12. ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p.24a。
  13. ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p40a。

参考文献


アレトゥーサ(アレサ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/15 13:44 UTC 版)

ヴァルツァーの紋章」の記事における「アレトゥーサ(アレサ)」の解説

指導者3姉妹三女。まだ幼さが残る風貌ながら、長姉シグレア不在時は代行務めていた。戦況厳しくなる中、1000年前魔界長老レーイ・アンセルムスを復活させるために自らの肉体よりしろとして差し出しアレサ人格消滅してしまう。しかし文庫版エピローグで、長老レーイ仕草にどこかアレサ面影残っていることにシグレアは気づいた。

※この「アレトゥーサ(アレサ)」の解説は、「ヴァルツァーの紋章」の解説の一部です。
「アレトゥーサ(アレサ)」を含む「ヴァルツァーの紋章」の記事については、「ヴァルツァーの紋章」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「アレトゥーサ」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「アレトゥーサ」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「アレトゥーサ」の関連用語

アレトゥーサのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



アレトゥーサのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのアレトゥーサ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのヴァルツァーの紋章 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS