ヒュギーヌスとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 外国人名の読み方 > ヒュギーヌスの意味・解説 

ヒュギーヌス

名前 Hyginus

ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌス

(ヒュギーヌス から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/09 06:13 UTC 版)

ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌス
Gāius Iūlius Hygīnus
誕生 紀元前64年
死没 17年
職業 著作家
代表作 『神話集』 (Fabulae)
テンプレートを表示

ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスラテン語: Gāius Iūlius Hygīnus ラテン語発音: [ˈɡäːius ˈi̯uːlʲiʊs̠ hʏˈɡiːnʊs̠], ガーイウス・ユーリウス・ヒュギーヌス)は、ラテン語著作家

生涯

人物については明確ではないが、一説によれば出生はスペインアレクサンドレイアとされる[1]奴隷であったがローマに連れてこられ、アレクサンデル・ポリュヒストールの講義を聴講し、のちに奴隷から解放されたという[1]スエトーニウスによると、皇帝アウグストゥスによってパラティーヌスの図書館長に任命された[1]。詩人のオウィディウスと友誼を結ぶが、やがて皇帝の不興をかい貧窮に陥り、ガイウス・クラウディウス・リキニウス英語版から援助を受けたとある[1]

作品

ヒュギーヌスは多作家であった。ジャンルも地形学から伝記、詩人ヘルウィウス・キンナ英語版ウェルギリウスの詩についての注釈、農業養蜂に関する論文と多岐にわたって著作活動を行なったが、それらの原本はすべて失われている。

ヒュギーヌスの名前で現存するのは『神話集』と『天文詩』[注釈 1]の二つで、これらは、おそらくヒュギーヌスの神話論を略記した学生の覚え書きであると思われる。ただし、作者のヒュギーヌスとガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスは別人だという説もある[3]

神話集(Fabulae)
300程の神話と天界の系譜についてのエピソードが短く、そっけなく、そして粗雑に語られている。当時の編者たちはこの作品の価値を、ギリシア悲劇作家の失われた作品についての「無教養な若さ、半端な知識、愚かさ」(ラテン語: adulescentem imperitum, semidoctum, stultum[4])と評した。両アントニヌス時代(138年 - 180年)[注釈 2]の教育を受けたローマ人なら誰でもギリシア神話を知るべきと期待されていたため、ヒュギーヌス[5]はぞんざいな形式で、最低限のことだけを書いたのかもしれない。ギリシア神話には内容が部分的に異なるバージョンが多く存在していたとされるが、それらの多くが失われている現在、『神話集』は貴重な文献である。

しかし、『神話集』の大半も失われている。900年頃にベネヴェント書体英語版で書かれた写本が1冊だけバイエルン州フライジング英語版の修道院に残っており[6][7]1535年にはその写本を基にして最初の印刷版が作られるが、Jacob Micyllus[注釈 3]は不注意かつ無批判的に書き写した。ちなみに、"Fabulae" という題名をつけたのもMicyllusである。15世紀16世紀、印刷の過程で写本は印刷所でばらばらにされ、生き残ったのはたった2つの断片のみであった。1つは1864年にレーゲンスブルクで、もう1つは1942年にミュンヘンで発見された[8]。両方ともミュンヘンで保存されている[9]。なお、バチカン図書館には15世紀に写された不完全なテキストがある。

ラートドルト版の『天文詩』。木版画はカシオペヤ座アンドロメダ座アメリカ海軍天文台
天文詩Poeticon astronomicon
最初に出版されたのは1482年ヴェネツィアで、出版者はエアハルト・ラートドルト英語版、題名は"Clarissimi uiri Hyginii Poeticon astronomicon opus utilissimum"だった。星座の星々を一覧にしたものであるが、語られる主な事柄は星座にまつわる神話である。エラトステネス作とされる『カタステリスモイ』などを基にしている。

両方の作品とも要約である。文体(スタイル)、ラテン語の能力のレベル、初歩的な間違い(とくにギリシャ語の翻訳)はヒュギヌスのような著名な学者の作品とは思えず、別人説の根拠となっている。

日本語訳

脚注

注釈

  1. ^ 『ギリシャ神話集』では「天文論」と訳している[2]
  2. ^ ローマ皇帝アントニヌス・ピウス(在位138年 - 161年)とマルクス・アウレリウス・アントニヌス(在位161年 - 180年)を指す。
  3. ^ 『ギリシャ神話集』では「ヤコブス・ミキュルス」、ドイツ名「ヤーコプ・モルスハイム/メルツアー」としている[1]

出典

  1. ^ a b c d e 松田 2005, p. 335.
  2. ^ 松田 2005, p. 336.
  3. ^ Edward Fitch, reviewing H. I. Rose,Hygini Fabulae in The American Journal of Philology 56,4 (1935), p 422.
  4. ^ H.I. Rose 1934
  5. ^ Arthur L. Keith, reviewing H. I. Rose Hygini Fabulae 1934 in The Classical Journal 31.1 (October 1935) p. 53。「アイスキュロスの多数の劇、リウィウスの歴史の大部分など値段もつけられない消えてなくなった財宝を与えられた幸運の一方で、この学生の研究は研究者の努力の精神的な糧となるべく存在する」。
  6. ^ A Codex Freisingensis, noted by Fitch, reviewing Rose, Hygini Fabulae 1934:421.
  7. ^ 松田 2005, p. 339.
  8. ^ 松田 2005, pp. 340–341.
  9. ^ M.D. Reeve on Hyginus, Fabulae in L.D. Reynolds, ed., Texts and Transmission (Oxford) 1983, pp 189f.

参考文献

  •  この記事にはアメリカ合衆国内で著作権が消滅した次の百科事典本文を含む:  Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Hyginus, Gaius Julius". Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 14 (11th ed.). Cambridge University Press.
  • P.K. Marshall, ed. Hyginus: Fabulae 1993; corrected ed. 2002.
  • Rose, H. I. Hygini Fabulae (1934) 1963. The standard text, in Latin.
  • ヒュギーヌス 著、松田治・青山照男 訳『ギリシャ神話集』講談社〈講談社学術文庫〉、2005年2月10日。 ISBN 4061596950 
    • 松田治「解説」『ギリシャ神話集』講談社〈講談社学術文庫〉、2005年2月10日、334-347頁。 

外部リンク


ヒュギーヌス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/10 02:37 UTC 版)

アプシュルトス」の記事における「ヒュギーヌス」の解説

ヒュギーヌスによればアプシュルトスアルゴナウタイアドリア海イストリア半島アルキノオス王のところまで追いかけ行って戦おうとしたが、アルキノオス間に立って仲裁しメーデイアイアーソーンの妻と裁定した。しかしアプシュルトスアイエーテース怒り恐れたため、さらにアルゴナウタイアテーナーの島まで追いかけ行き、この島でイアーソーン殺された。アプシュルトスの兵たちはこの地に1市を創建しアプシュルトスにちなんでアプロソスと名づけ住みついた。 また後日談によれば、アプソロスのコルキス人はヘビ害に苦しめられたが、アテーナイ追放されメーデイアコルキス帰る途中立ち寄りヘビたちをアプシュルトスの墓に投げ込んで人々助けたヘビたちはアプシュルトスの墓から出ようとすると死んでしまうので、そこから出て来なかったという。

※この「ヒュギーヌス」の解説は、「アプシュルトス」の解説の一部です。
「ヒュギーヌス」を含む「アプシュルトス」の記事については、「アプシュルトス」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ヒュギーヌス」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ヒュギーヌス」の関連用語

ヒュギーヌスのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ヒュギーヌスのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのガイウス・ユリウス・ヒュギーヌス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのアプシュルトス (改訂履歴)、メガラー (改訂履歴)、ポリュドーロス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS