バイエルン州
バイエルン州
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/11 22:46 UTC 版)
6月30日に入ったばかりの深夜、ヒトラーはヨーゼフ・ゲッベルスやヴィクトール・ルッツェSA大将(レームの後任の突撃隊幕僚長にすることが内定していた人物)を伴って総統機でベルリンをたち、バイエルン州ミュンヘン郊外のオーバーヴィーゼンフェルトへ向けて飛んだ。着陸後ヒトラーは直ちにバイエルン内務省へ移動した。ここで自らヴィルヘルム・シュミットSA中将 (:de:Wilhelm Schmid) とアウグスト・シュナイトフーバーSA大将を逮捕した。更にヒトラーは午前5時半ごろにレーム達が滞在しているバート・ヴィースゼーの保養クラブ「ハンゼルバウアー」へ向かった。ディートリヒの大部隊はまだ到着しておらず、ヒトラーは待たずに手勢の親衛隊員たちを率いてこのクラブハウスへ突入。レームの部屋に押し入った。ヒトラーはビックリして飛び起きたレームに拳銃を突きつけて「裏切り者」と言い放った。レームは即座に否定したが、ヒトラーは「逮捕するから着替えろ」と命じて後を部下に任せて部屋から出ていった。つづいてヒトラーはエドムント・ハイネスSA大将の部屋に押し入った。ハイネスは同性愛中であったという。ハイネスをルッツェに任せてヒトラーは次の部屋へ、次の部屋へと押し入っていった。ハイネスはルッツェに「ルッツェ。おれは何もしていない!助けてくれ!!」と叫んだが、ルッツェは「おれは何もしてやれない…。おれには何もできない…。」と返したという。逮捕に抵抗する突撃隊幹部は一人もおらず、逮捕された突撃隊員たちはシュターデルハイム刑務所 (:de:Justizvollzugsanstalt München in der Stadelheimer Straße) へと移送された。「陰謀の本拠地」はあっさりと片付いた。この後、連絡を受けてミュンヘンから到着したレームを守る幕僚長護衛部隊がこの保養クラブに到着して一時緊迫したが、ヒトラーの鶴の一声で幕僚長護衛部隊はミュンヘンへ帰隊していった。 ミュンヘンへの帰途、ヒトラーは不審な突撃隊の対向車を停止させ、搭乗していたペーター・フォン・ハイデブレックSA中将を逮捕している。ヒトラーは午前10時頃、国軍が非常線を張るナチ党本部「褐色の家」に到着。ゲッベルスにベルリンにいるヘルマン・ゲーリングに対して「ハチドリ」(作戦開始)の合図を送らせた。 バイエルン州国家弁務官フランツ・フォン・エップは、レームのかつての上官であったこともあり、エップはレームを軍法会議にかけるべきだとヒトラーに訴え出たが、ヒトラーは却下した。バイエルン州法相ハンス・フランクも裁判も無しでレームを銃殺することには反対する意志をベルリンから招集されていた副総統ルドルフ・ヘスに伝えたが、ヘスにより却下された。ヘスはレームの粛清にはやけに熱心で「総統、レームの射殺は私にお任せください」などと名乗り出る始末だった。 12時半になってようやくヨーゼフ・ディートリヒが褐色の家のヒトラーの前に姿を現した。ヒトラーは到着の遅れを叱責しつつ、すぐに部隊のうち二個中隊をピオニアー兵舎へ移動せよとディートリヒに命じた。ディートリヒは命令を果たして午後2時半頃に「褐色の家」に戻ってきたが、この後、3時間ほどヒトラーの部屋の隣室で待たされた。ヒトラーは引き連れてきた側近たちから誰を射殺するべきか聞いて考慮中であった。このときにヒトラーはルッツェにも話を振ったが、ルッツェは「自分は誰が批判されるべきかも、誰がレームの共犯かもわかりません」とだけ答えて誰の名前も出さずに静かに部屋を退出していったという。午後5時頃、マルティン・ボルマンが部屋から出てきて隣室で待機中だったディートリヒを部屋に招き入れた。ヒトラーはディートリヒに「兵舎へ戻って将校1名と兵6名を選び、シュターデルハイム刑務所にいる次のSA将校たちを銃殺せよ」と命じた。ボルマンから手渡されたリストには、SA大将エドムント・ハイネス、SA大将アウグスト・シュナイトフーバー、ハンス・ペーター・フォン・ハイデブレック、SA中将ヴィルヘルム・シュミット、SA中将ハンス・ハイン (de:Hans Hayn) 、SA大佐ハンス・フォン・シュプレーティ=ヴァイルバッハ伯爵の六名の名前があった。この時点ではヒトラーはレームの処刑は見送っている。ヒトラーはこの後、すぐさまミュンヘンをたってベルリンへ戻っていった。ヒトラーはミュンヘンを立つ際に「レームはその功績に免じて許した」と述べたという。 一方ディートリヒは、命令を受けた後、ただちに副官のヨシアス・ツー・ヴァルデック=ピルモントSS中将をシュターデルハイム刑務所へ派遣して刑場の準備を始めさせ、さらに6時頃には自らシュターデルハイム刑務所を訪れた。六人の突撃隊員が独房から引きずり出されて中庭の刑場へ連れ出された。シュナイトフーバーはディートリヒの姿を見つけると「ゼップ(ディートリヒの愛称)、一体どうしたというのだ!? 我々は無罪だ!」と叫んだが、ディートリヒは「総統兼首相は、貴官らに死刑を宣告された。ハイル・ヒトラー!」と返すだけだった。一人ずつ刑場へ連れて行かれて、そのたびに親衛隊将校が「総統兼首相は貴官に死刑を宣告された。刑はただちに執行される」と宣告した。ディートリヒはシュナイトフーバーの番が来る前に退散したという。ディートリヒは「もうたくさんだった」と語っている。 またバイエルン州でも突撃隊以外の人々も殺されている。ミュンヘン一揆の「裏切り者」である元バイエルン総督グスタフ・フォン・カールもその一人である。カールは親衛隊員により斧で斬殺されてその遺体はダッハウ強制収容所の近くの沼地に捨てられた。
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