内閣総理大臣 権限

内閣総理大臣

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/21 12:48 UTC 版)

権限

内閣総理大臣と政府紋章である「五七の桐花紋

日本国憲法およびその他の法令が規定する内閣総理大臣のおもな権限は次の通りである。

憲法・内閣法等

衆議院の解散権は内閣総理大臣の専権事項とされ臨時代理は解散権を持たない[注釈 4][20]
国務大臣の任免権は内閣総理大臣の専権事項とされ臨時代理は任免権を持たない[21][22]
  • 在任中の国務大臣に対する訴追に同意すること(憲法75条)。
  • 内閣を代表して議案を国会に提出すること(憲法72条)。
  • 内閣を代表して一般国務および外交関係について、国会に報告すること(憲法72条)。
  • 内閣を代表して行政各部を指揮監督すること(憲法72条)。
  • 法律および政令への連署をすること(憲法74条、権限であると同時に義務でもある。いわゆる拒否権はない)。
  • 閣議を主宰すること(内閣法4条2項)。
  • 閣議において、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議すること(内閣法4条2項)。
  • 内閣総理大臣および主任の国務大臣の代理を指定すること(内閣法9条10条)。
  • 行政各部の処分または命令を中止せしめ、内閣の処置を待つこと(内閣法8条、「中止権」)。
  • 皇室会議の議長として、これを招集すること(皇室典範29条、33条)。
  • 裁判所による行政処分等の停止に対して異議を申し述べること(行政事件訴訟法27条)。
  • 告訴をすることができる者が天皇皇后太皇太后皇太后または皇嗣であるとき、これらの者に代わって告訴を行うこと(刑法232条2項)。

警察法・自衛隊法等

  • 大規模な災害または騒乱などの緊急事態に際して緊急事態の布告を発し(警察法71条)、一時的に警察を統制すること(72条)。
  • 内閣を代表し、自衛隊最高指揮監督権を有する(自衛隊法7条)。
  • 武力攻撃事態に際して、自衛隊に出動を命ずること(自衛隊法76条、「防衛出動」)。
  • 間接侵略またはその他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては治安維持が不可能な場合に、自衛隊に出動を命ずること(自衛隊法78条、「命令による治安出動」)。
  • 防衛出動または治安出動による自衛隊に対する出動命令があった場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁をその統制下に入れること(自衛隊法80条)。
  • 武力攻撃事態などに際して内閣に設置される「武力攻撃事態対策本部」の対策本部長として、関係する行政機関、地方自治体、指定公共機関が実施する対処措置に関する総合調整を行うこと(武力攻撃事態平和確保法14条)。
  • 武力攻撃から国民の生命、身体または財産を保護するため緊急の必要があると認める場合に、警報を発令すること(国民保護法44条)。
  • 非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済および公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合において、閣議にかけて、災害緊急事態の布告を発すること(災害対策基本法105条)。
  • 防衛大臣に対する海賊対処行動の承認と国会への報告(海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律7条)。
  • 気象庁長官から地震予知情報の報告を受けた場合において、地震防災応急対策を実施する緊急の必要があると認めるときは、閣議にかけて、地震災害に関する警戒宣言を発すること(大規模地震対策特別措置法9条)。
  • 新型インフルエンザなどが国内で発生し、その全国的かつ急速な蔓延により国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼし、またはそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態宣言を発すること、ならびにその旨および当該事項を国会に報告すること(新型インフルエンザ等対策特別措置法32条)。

その他の法律

このほか、内閣府およびその外局金融庁消費者庁など)や内閣に置かれる本部などの主任の大臣として、審議会委員等の任免権や各種許認可権を有する。特に、内閣府の外局のひとつである金融庁に関連する許認可権が多い(銀行法貸金業法金融商品取引法など)。

1991年までは、機関委任事務に従わない都道府県知事について、司法手続きを経て罷免する権限を有していた(地方自治法旧第146条)。2001年には、閣議における内閣総理大臣の発議権が法制化(内閣法第4条の改正)され、各省に対する指揮監督権が強化された。


注釈

  1. ^ 日本国憲法に直接の規定はないが、日本国憲法第70条に「(省略)衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない」とあり、事実上、内閣総理大臣の任期は衆議院議員の任期である1期4年を超えることはない。ただし、通常、内閣総理大臣は与党党首の地位を兼務して与党議員からの信任を得ているため、その政党の内規で党首職に再選制限が設けられている場合、その年限が事実上の任期の上限となることがある。
  2. ^ 例えば、伊東巳代治による大日本帝国憲法の英訳[9]
  3. ^ 実例としては2005年(平成17年)の『郵政解散』の際に小泉純一郎内閣総理大臣が、署名を拒否した島村宜伸農林水産大臣を罷免した例がある。
  4. ^ 衆議院の解散権が内閣総理大臣の専権事項とされていることについては、『内閣の首長』を参照。
  5. ^ ただし、大平正芳は、1980年の衆院選で立候補したものの開票前に死去した。事の顛末は第2次大平内閣も参照されたい。
  6. ^ 政府見解(後述)によれば、憲法66条2項の「文民」とは、次に掲げる者以外の者をいう。
    一 旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者であって、軍国主義的思想に深く染まっていると考えられるもの
    二 自衛官の職に在る者
  7. ^ 1973年(昭和48年)12月19日(72回国会)の衆議院建設委員会において、大村襄治政府委員内閣官房副長官)は「政府といたしましては、憲法第六十六条第二項の文民につきましては、「旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者であって、軍国主義的思想に深く染まっていると考えられるもの」、それから「自衛官の職に在る者」、この二つを判断の基準にいたしているわけでございます。」と答弁している。
  8. ^ なお、投票日が任期満了の日以後になり、更に特別国会の召集が憲法の定める最大限度まで遅れた場合首相の在任期間が4年を超えることも制度上はあり得なくはない。
  9. ^ 「天災その他避けることのできない事故により、投票所において、投票を行うことができないとき、又は更に投票を行う必要があるときは、都道府県の選挙管理委員会(市町村の議会の議員又は長の選挙については、市町村の選挙管理委員会)は、更に期日を定めて投票を行わせなければならない。」との規定である。
  10. ^ 衆議院を解散すれば内閣総辞職をしなくてもいいが、衆議院議員総選挙が行われ、その後に初めて国会の召集があった時には結局、総辞職をすることになる。衆議院議員総選挙によって首相支持勢力が衆議院議席の過半数を獲得したならば、内閣総理大臣指名選挙で再指名されることにより引き続き内閣総理大臣の職にとどまることができるが、首相支持勢力が過半数を割り内閣総理大臣指名選挙で再指名されない場合は内閣総理大臣を続けることができない。
  11. ^ 芦田均細川護熙羽田孜村山富市の4名に関しては首相辞任後もしばらく出身党(およびその後継政党)の党首職に留まったものの、いずれも首相辞任から1年未満の短期間で退任している。日本国憲法下において首相辞任後も一定期間党首職を務めた唯一の例は片山哲で、首相辞任後も日本社会党委員長に1年10か月ほど留まった(なお、自民党総裁に関する特殊事例は自由民主党総裁#総理・総裁分離論も参照のこと)。
  12. ^ 2016年時点では、2005年郵政解散の際に小泉純一郎首相が島村宜伸農水相を罷免したのが唯一の例。
  13. ^ なお、このとき内閣総理大臣臨時代理であった伊東正義内閣官房長官は1位で当選している。また、大平の立候補していた旧香川2区には、娘婿の森田一補充立候補し、これも1位で当選している。
  14. ^ 後に中央工学校を卒業しているが、当時の中央工学校は学制上の学校ではなかった。
  15. ^ 羽田はこの他にも太陽党党首・民政党党首も歴任している。
  16. ^ 内閣総理大臣を退任した者が総裁を除く自由民主党執行部(いわゆる党四役)に就任した事例は2021年現在ないが、谷垣禎一は自民党総裁を退任した後に自民党幹事長に就任している。
  17. ^ 最も若い任命時点の年号を示す。
  18. ^ 退陣理由 の()内の数字は歴代数を示す。
  19. ^ なお、陸軍次官当時、陸軍大臣宇垣一成の病気療養に伴い陸軍大臣代行を務めた。この時は班列として閣員に列しているが、班列は正式な国務大臣ではない。

出典

  1. ^ a b 内閣官房組織等英文名称一覧”. 内閣官房. 2022年7月11日閲覧。
  2. ^ 大辞林 第三版
  3. ^ 百科事典マイペディア『内閣総理大臣』 - コトバンク
  4. ^ a b c d e 世界大百科事典 第2版『内閣総理大臣』 - コトバンク
  5. ^ a b c 日本大百科全書(ニッポニカ)『元首』 - コトバンク
  6. ^ a b ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『元首』 - コトバンク
  7. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ)「宰相」の解説『宰相』 - コトバンク
  8. ^ Prime Minister of Japan and His Cabinet”. 内閣官房内閣広報室. 2022年7月11日閲覧。
  9. ^ The Constitution of the Empire of Japan National Diet Library 2021年10月1日閲覧。
  10. ^ 渡邉譽『日本国憲法』p.198(北樹出版
  11. ^ a b 解散権』 - コトバンク
  12. ^ 樋口陽一・中村睦男・佐藤幸治・浦部法穂著 『注解法律学全集3 憲法Ⅲ(第41条~第75条)』 青林書院、1998年、218頁
  13. ^ a b 七条解散』 - コトバンク
    解散[議会]』 - コトバンク
  14. ^ 法令用語研究会編「有斐閣 法律用語辞典(第3版) 2006, p. 374.
  15. ^ 長野和夫 2006, p. 170.
  16. ^ 渡邉譽『日本国憲法』p.36(北樹出版
  17. ^ 芦部信喜 2016, p. 47.
  18. ^ 衆議院憲法調査会 『衆議院憲法調査会報告書』衆議院事務局、2005年4月15日、293頁。 
  19. ^ 衆議院内閣委員会 『第71回国会 衆議院内閣委員会議録』 第16号、衆議院事務局、1973年4月17日、40-41頁https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=107104889X01619730417&current=11 
  20. ^ 参議院予算委員会 平成12年(2000年)4月25日における津野 修内閣法制局長官の答弁。第147回国会 参議院 予算委員会 第14号 平成12年4月25日
  21. ^ 佐藤功著 『新版 憲法(下)』 有斐閣、1984年、859-860頁
  22. ^ 樋口陽一・中村睦男・佐藤幸治・浦部法穂著 『注解法律学全集3 憲法III(第41条~第75条)』 青林書院、1998年、216-217頁、219頁
  23. ^ 佐藤功著 『新版 憲法(下)』 有斐閣、1984年、826-827頁
  24. ^ 国会法第65条2
  25. ^ s:親任式及び認証官任命式の次第
  26. ^ 国会法第64条
  27. ^ 『尾崎三良自叙略伝』
  28. ^ 安倍前首相 辞任後も私邸に警察官…異例の2億円警備続くワケ”. 琉球新報社. 2022年7月11日閲覧。
  29. ^ “野田元首相 SPゼロにぼやき「ドア開閉の人いない」”. 毎日新聞. (2018年1月18日). https://mainichi.jp/articles/20180118/k00/00e/010/162000c 2022年7月11日閲覧。 
  30. ^ 宮武外骨『明治奇聞』河出文庫、1997年、241頁。ISBN 4-309-47316-4






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