日本の政党とは? わかりやすく解説

日本の政党

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/19 02:31 UTC 版)

日本の政党(にっぽんのせいとう)では、日本における政党および政党制や法制度、歴史などの背景について記述する。

日本の政党の一覧については、「日本の政党一覧」参照。

法律上の要件

現在の日本では、政治資金規正法により政治団体の届出が定められている。同法第8条によれば、政治団体は届出前に寄付を受け、又は支出をすることができないとされている。したがって、秘密結社を設立すること自体は違法にはならないが、秘密のまま団体として寄付を集めたり支出することは違法となる。

このようにして届け出られた政治団体の中から一定の要件を満たすものを政党と呼び各種の保護の対象としている。公職選挙法・政治資金規正法・政党助成法政党法人格付与法の各法で、それぞれ似ているが微妙に異なる要件を定めている。すなわち、「政治団体のうち、所属する国会議員衆議院議員又は参議院議員)を5人以上有するものであるか、近い国政選挙[注釈 1] [1]で全国を通して2 %以上の得票(選挙区比例代表区いずれか)を得たもの」[注釈 2] [注釈 3]を政党と定めている。

以上の法律上の政党の定義に該当しない小政党・地方政党等であっても、広義の政党概念から除外されるわけではないし、政党分析や政党システム分析から除外されるわけでもない。

政党制度の憲法適合性

最高裁判所判例
事件名 選挙無効請求事件
事件番号 平成18(行ツ)176
平成19年6月13日
判例集 民集第61巻4号1617頁
裁判要旨
  1. 衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条のいわゆる1人別枠方式を含む衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りの基準を定める規定は,憲法14条1項に違反するものとはいえず,平成14年法律第95号による公職選挙法の改正により上記基準に従って改定された同法13条1項,別表第1の上記区割りを定める規定は,その改定当時においても,平成17年9月11日施行の衆議院議員選挙当時においても,憲法14条1項に違反していたものということはできない。
  2. 衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に政見放送その他の選挙運動を認める公職選挙法の規定は,候補者届出政党に所属する候補者とこれに所属しない候補者との間に選挙運動の上で差異を生ずるものであるが,その差異が合理性を有するとは考えられない程度に達しているとまで断ずることはできず,憲法14条1項に違反するとはいえない。
最高裁判所大法廷
裁判長 島田仁郎
陪席裁判官 横尾和子 上田豊三 藤田宙靖 甲斐中辰夫 泉徳治 才口千晴 津野修 今井功 中川了滋 堀籠幸男 古田佑紀 那須弘平 涌井紀夫 田原睦夫
意見
多数意見 全員一致(裁判要旨1につき補足意見:才口千晴 津野修 古田佑紀 那須弘平
意見 藤田宙靖 今井功 中川了滋
反対意見 横尾和子 泉徳治 田原睦夫
参照法条
(1,2につき)憲法14条1項
(1につき)公職選挙法13条1項,公職選挙法別表第1,衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条
(2につき)公職選挙法131条1項,141条1項,141条2項,141条6項,141条の2第1項,142条1項,142条2項,142条8項,143条1項,143条3項,144条1項,144条4項,149条1項,150条1項,150条4項,151条の5,161条1項,161条の2
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法律上の政党とその他の政治団体・無所属候補の扱いの差は大きく、主として以下のような相違点がある。

2005年(平成17年)の第44回総選挙後、選挙無効の訴訟が起こされた。この訴訟で原告は、一票の格差の他、公職選挙法における政党候補と非政党候補の格差は憲法14条1項の法の下の平等に反し違憲であると主張した。しかし、東京高裁で原告は全面敗訴。2007年(平成19年)6月13日最高裁判所大法廷島田仁郎裁判長)は12対3で原告の上告棄却し、高裁判決が確定した(2005年衆院選合憲判決[2]。判決では、「政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であって、国民の政治意思を形成する最も有力な媒体である」から、非政党候補との格差は「合理的理由に基づくと認められる差異」の範囲内であるとした。また、衆議院小選挙区における政見放送の非政党候補の締め出しについては、「選挙制度を政策本位、政党本位のものとするという合理性を有する立法目的によるもの」と判断した。

その他、政治資金規正法上の政党に該当すると団体献金が受けられるようになる等の点で差異があり、政党助成法上の政党になれば政党法人格付与法に基づき法人格の取得が可能になり[注釈 6]、国から政党交付金が受けられるようになるなど、ほかの政治団体と異なる扱いがなされている。

一覧

ミニ政党・泡沫政党

当選者数が極端に少ないことから、特に所属国会議員が存在せず、今後も議席を得る見込みのない政治団体を「泡沫政党」(ほうまつせいとう)と総称する。

日本のマスコミは選挙報道などにおいて、政党要件を満たさない政治団体の略称を「諸派」と表記することが多い[3][4]

インターネット発の政党

インターネットの登場により、インターネットやソーシャルメディアを主な媒体として自らの政策を発信し、その政策の実現のために活動している政治団体及び任意団体が登場してきた。一部のメディアから若者が政治参加するための媒体として注目され[5]、日本では天木直人ドクター・中松が主な提唱者であった[6]

これらの特徴は、インターネットやソーシャルメディアを主な媒体にしているということであり、電脳突破党天木直人(外交評論家、元駐レバノン特命全権大使)の新党憲法9条など古くから何度か試みられてきた。2010年代以降、インターネットの普及によってれいわ新選組NHK党参政党などがインターネットを足掛かりに国政議席を獲得した。また既存政党もインターネット宣伝に注力している。

海外にはイタリア五つ星運動のように政権を獲得した政党もある。ミニ政党で後に政党要件を喪失して解散していることも少なくない。泡沫政党で終わったり、そもそも立候補自体を却下された例も存在する[7]

規定

同一政党所属者過半数禁止規定
議会で同意又は指名の対象となっている政府関連役職の一部については、定数の一定数以上が同一政党に所属してはならないとする規定がある。例として以下の役職がある。
  • 国家公務員(定数の半数以上)
人事官国家公安委員会委員、公安審査委員会委員長及び委員、中央更生保護審査会委員、中央労働委員会公益委員、中央選挙管理会委員、政治資金適正化委員会委員、
  • 地方公務員(定数の半数以上)
人事委員会委員、公平委員会委員、教育委員会委員
  • 地方公務員(2人以上)
選挙管理委員、選挙管理補充員
  • その他(定数12人中5人以上)
日本放送協会経営委員
政党役員等禁止規定
公務員等の一部の役職については、政党役員等を兼ねることができないとする規定がある。例として以下の職がある。
  • 「政党の役員、政治的顧問、これらと同様な政治的影響力をもつ政党員(任命前から5年間に就任していた場合を含む)」を禁止規定とする役職
人事官
  • 「政党の役員だった者(任命前から1年間に就任していた場合を含む)」を禁止規定とする役職
日本放送協会経営委員
  • 「政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、これらと同様な役割をもつ構成員」を禁止規定とする役職
裁判官検察官国家公務員一般職国会職員、外務職員、裁判所職員
  • 「政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員」を禁止規定とする役職
自衛隊員(自衛隊法第61条第3項)[注釈 7]
  • 「政党その他の政治団体の役員」を禁止規定とする役職
国地方係争処理委員会委員、中央更生保護審査会委員
  • 「政党その他の政治的団体の役員」を禁止規定とする役職
国家公安委員会委員、会計検査院情報公開・個人情報保護審査会委員、再就職等監視委員会委員、中央労働委員会公益委員、原子力委員会委員、土地鑑定委員会委員、公害等調整委員会委員長及び委員、運輸安全委員会委員長及び委員、公害健康被害補償不服審査会委員、電気通信紛争処理委員会委員、証券取引等監視委員会委員長及び委員、国家公務員倫理審査会会長及び委員、運輸審議会委員、宇宙開発委員会委員長及び委員、情報公開・個人情報保護審査会委員、食品安全委員会委員、公益認定等委員会委員、総合科学技術会議民間議員、特定独立行政法人役員、日本銀行役員、都道府県公害審査会委員、都道府県公安委員会委員、教育委員会委員、特定地方独立行政法人役員、地方公務員一般職、人事委員会委員、公平委員会委員
  • 「政党の役員」を禁止規定とする役職
国家公務員共済組合連合会役員、沖縄振興開発金融公庫役員、外務人事審議会委員

国政政党の政党要件の状況(2025年現在)

政党 党首 国会議員数

(5人以上)

直近の得票率

(2 %以上)

政党要件
前衆院選
(第50回)
前参院選
(第26回)
前々参院選
(第25回)
政治資金規正法
政党法人格付与法
政党助成法 公職選挙法
自由民主党 石破茂総裁 340 38.46% 26.73% 38.7% 34.4% 39.77% 35.37%
公明党 斉藤鉄夫代表 51 1.35% 10.93% 6.7% 11.7% 7.77% 13.05%
立憲民主党 野田佳彦代表 186 29.01% 21.20% 15.3% 12.8% 15.79% 15.81%
日本維新の会 吉村洋文代表[注釈 8] 55 11.15% 9.36% 10.4% 14.8% 7.28% 9.8%
国民民主党 玉木雄一郎代表 36 4.33% 11.32% 3.8% 6.0% 6.47% 6.95%
日本共産党 田村智子委員長 19 6.81% 6.16% 6.8% 6.8% 7.37% 8.95%
れいわ新選組 山本太郎代表 14 0.78% 6.98% 1.8% 4.4% 0.43% 4.55%
参政党 神谷宗幣代表 5 2.50% 3.43% 3.8% 3.3% - -
社会民主党 福島瑞穂党首 3 0.52% 1.71% 0.3% 2.4% 0.38% 2.09%
日本保守党 百田尚樹代表[注釈 9] 3 0.29% 2.10% - - - -
みんなでつくる党 大津綾香党首[注釈 10] 0 0.05% 0.04% 2.08% 2.36% 3.02% 1.97% ×

脚注

注釈

  1. ^ 近い国政選挙とは、 のいずれかを指す。政党要件における国会議員の資格は衆議院解散日から選挙投票日までの前衆議院議員、任期満了後から選挙投票日までの国会議員も含む。
  2. ^ 政党助成法上はさらに国会議員を有することを要件としている。
  3. ^ 日本国憲法の改正手続に関する法律106条2項では、「政党等」を「一人以上の衆議院議員又は参議院議員が所属する政党その他の政治団体であって両議院の議長が協議して定めるところにより国民投票広報協議会に届け出たものをいう。」と定義している。
  4. ^ 政治団体は衆院では定数の10分の2以上、衆院比例単独で立候補は各ブロック定数の5分の1以上(小数点は切り上げ。)、参院では10人以上(選挙区と含めて)候補を立てなければならない。
  5. ^ 政党以外の政治団体は、個人献金のみ受け取ることができる。
  6. ^ 政党助成法上の政党以外の政治団体は基本的には権利能力なき社団であるが、他の法令に基づき法人格を有している例がある(自民党政治資金団体である一般財団法人国民政治協会など)。
  7. ^ 自衛官は自衛隊員の種類の一つ。「自衛隊員」と呼んだ場合は防衛事務次官以下、全ての事務官、防衛大学校学生までも含む。
  8. ^ 非国会議員(現職大阪府知事)。
  9. ^ 非国会議員。
  10. ^ 非国会議員。

出典

外部リンク


日本の政党

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/27 08:03 UTC 版)

国民政党」の記事における「日本の政党」の解説

戦後日本主要政党多くが、国民政党でもある一方で大衆政党でもありなおかつ階級政党的な性格兼ね備えるという形で支持拡大競ってきた。 「大衆政党#日本での現状」および「階級政党#日本での現状」も参照 自由民主党冷戦期日本社会主義化日米安保破棄自衛隊違憲解体による非武装中立目指す日本社会党に対して自由民主主義自衛隊合憲日米安保条約堅持西側陣営支持する政党として極右反共主義者保守強硬派だけではなく自由民主主義自衛隊合憲軽武装アメリカ依存安全保障政策支持するリベラル派有権者取り込んだ国民政党であると有権者多数派見なされる一方でJAJFなど第一次産業団体取り込んだことによって労働者階級からも多く支持獲得するなど大衆政党階級政党として低所得庶民レベルにまで浸透したその結果冷戦期には2:1という国会議席占めて1.5大政党制」という55年体制維持してきた。1955年結党以降補助金分配など成長果実国民諸階層等しく分配し一億総中流状態で世界2位経済大国押し上げたことも要因にある。また、中選挙区制度のために派閥による政権交代など、擬似的政権交代起こっていたことで一定の有権者支持維持し議席3分の2未満過半数以上を占めていた。しかし、中選挙区では選挙自民党議員同一選挙区対立するために金権政治起きていた。金権政治封じる為に衆議院小選挙区制となり、政治資金規正法強化政党交付金創設選挙制度改革が行われた。田中眞紀子選挙制度改革後の自民党について、「自由民主党においては穏健リベラル切り捨てられ多様性失ったモノトーン性格政党となりつつある」と主張している。 「総評政治部」とも左派労働組合政党批判され日本社会党は、安保闘争時に日米安保支持する議員右派労働組合らが離脱して民主社会党結成したことで左派主導の下で階級的大衆政党標榜してきた。しかし1970年代末西欧左派政党と同じ路線支持する党内右派影響力が強まると、マルクス・レーニン主義社会主義放棄して西欧左派政党のように国民政党転換すべきとの声が台頭した日本社会党の新宣言国民政党との用語を使用しないものの、事実上国民政党への転換目指す内容だったが積極支持者支持母体反対以前路線維持し万年野党のまま与党になれなかった。1991年ソ連解体による冷戦集結社会党路線そのままで、社会民主党改名した社会党時代野党1等の座から転落して自民党批判票失ったことで衰退している。社会党離党者含む「現実的な中道路線」を掲げて民主党結成し自民党への批判票から2009年政権交代起きた詳細は「階級的大衆政党#概要」および「日本社会党の新宣言#影響」を参照 しかし民主党旧社会党右派や旧民社党勢力民社協会)の影響もあって労働組合重きを置いていたことで国民政党になれなかったとして、菅直人立憲民主党を「本物国民政党」にすることを訴えている。同様に国民民主党原口一博自党立場を「自民党代わる国民政党だ」と述べている。 詳細は「国民民主党 (日本 2018)#政策」および「立憲民主党 (日本 2017)#綱領」を参照

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