防衛出動とは? わかりやすく解説

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ぼうえい‐しゅつどう〔バウヱイ‐〕【防衛出動】

読み方:ぼうえいしゅつどう

外部からの武力攻撃やそのおそれのある場合に、内閣総理大臣命令により、自衛隊防衛のために出動すること。国会の承認が必要。→治安出動


防衛出動(ぼうえいしゅつどう)

自衛隊法に基づき自衛隊出動させること

日本対す武力攻撃があったとき、内閣総理大臣首相)は、自衛隊防衛のための出動命令することができる。外部からの侵略といった事態対処するための行動のこと。

内閣総理大臣が防衛出動を命令するときは、国会の承認を得る必要がある。しかし、一般に急迫不正武力攻撃対処するには、国民生命財産保護という観点から緊急性要するので、さきに防衛出動を命令し国会の承認事後まわしてもよいとされる

防衛出動が発令されると、自衛隊は、日本の防衛のために必要な武力の行使ができるようになる。ただし、合理的に必要だ判断される限度での武器の使用限られ国際法において認められ自衛権範囲超えてならない

戦後の日本で防衛出動が実際に発令されことはないが、将来有事備え手続き明確化する関連法案審議進んでいる。現在は自衛隊法規定となっている国会承認の手続きを、有事関連法案で一本化する方向調整されている。

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(2002.04.11更新


【防衛出動】(ぼうえいしゅつどう)

自衛隊法定められた、自衛隊の行動に関する規定のひとつ。

外部からの武力攻撃、または武力攻撃発生する明白な危険が切迫していると判断された際、日本国独立防衛するために、内閣総理大臣命令基づいて自衛隊一部または全て出動すること。
内閣総理大臣は防衛出動を命じるに当たり、事前に安全保障会議閣議開催し答申得た上で国会の承認を得なければならない
ただし、緊急の場合は国会の承認事後に得ることを条件として、自衛隊出動命じることができる。

この規定が「武力攻撃」として想定しているケースは、主に「他国正規軍による軍事行動空爆・ミサイル攻撃艦砲射撃もしくは地上部隊の着上陸侵攻)」であると見られゲリラテロリスト特殊部隊による不正規戦については「国民保護出動」により対応されるものと見られる
これは、非正規戦主体となった現代において、敵が明らかに所属分かる正規軍なければ出動できない法律不備として指摘されることもしばしばある。

防衛出動が発令されれば、自衛官定年任用期間を延長され予備自衛官防衛招集を受ける。
さらに自衛隊任務遂行必要がある場合には、他の官公庁インフラ維持関わる民間企業に対して物資収用業務従事命令等が発せられ、出動した部隊自衛官自衛隊法88に基づき我が国防衛するため、必要な武力行使」として武器使用することができる。
防衛出動発令下での自衛官の離隊・抗命などは、自衛隊法により7年以下の懲役または禁錮の刑に処せられる。

2013年現在に至るまで自衛隊に防衛出動が発令されことはない。


防衛出動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/08 00:49 UTC 版)

防衛出動(ぼうえいしゅつどう)とは、日本国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に際して、日本を防衛するため必要があると認める場合に、内閣総理大臣の命令により、自衛隊の一部または全部が出動すること。自衛隊法第6章「自衛隊の行動」のうち第76条に規定されている。

概要

防衛出動は、自衛権行使の一態様であり、2022年(令和4年)現在の法律上、最高水準の防衛行動とされる。防衛出動には国会の承認が求められるなど、様々な制約がある反面、武力攻撃を排除するため、自衛権に基づき必要な「武力の行使」が認められ、多くの権限が定められるなど、内閣総理大臣の指揮監督の下、自衛隊の幅広い活動を可能にする。自衛隊創設以来、過去に防衛出動が行われたことは一度もない。

自衛隊法には、「第6章:自衛隊の行動」として、この他、治安出動警護出動海上警備行動破壊措置命令災害派遣地震防災派遣原子力災害派遣などが第76条から第82条にかけて定められている。

これら、防衛出動以外の自衛隊の行動と防衛出動の大きな違いは、「武力の行使」にある。防衛出動時には、自衛隊法88条に基づき、自衛隊は「わが国を防衛するため、必要な武力を行使」することができる。これは平時及び防衛出動以外の行動における武器の使用とは大きく異なるものであり、正当防衛緊急避難の要件を満たさずとも、「国際の法規及び慣例」及び「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」の枠内で実力行使が可能である[1][2][注釈 1]

2003年(平成15年)有事法制を巡る議論の中で、防衛出動が命ぜられた職員には防衛出動手当を支給することが定められたが、その額面は定められていない[3][4]

防衛出動の特徴

  • 武力攻撃事態又は存立危機事態の認定
①我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態、②我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態(武力攻撃事態)又は、③我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態(存立危機事態)が発生した場合においては、政府は、武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(事態対処法)第9条の規定に基づき、対処基本方針を定めて、武力攻撃事態又は存立危機事態の認定を行う。同条第4項の規定により、自衛隊に防衛出動を命じることの承認を国会に求めるとき、又は国会の承認を事後として防衛出動を命じる場合は、その旨を対処基本方針に明記する。
対処基本方針は、事態対処法第9条第7項に基づき、閣議の承認を得たのち、国会の承認を得なければならない。
  • 国会の承認
内閣総理大臣が防衛出動を命じるに当たっては、事態対処法9条に基づき、国会の承認を得なければならない(この承認は対処基本方針の承認とは別個のものである)。この国会の承認は、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合を除き、事前に得なければならない。承認の議決が得られた場合は、対処基本方針を変更して、その旨を記載する必要がある。また、対処基本方針について不承認の議決があったとき又は国会が対処措置を終了すべきことを議決したとき、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるときは、内閣総理大臣は、対処措置を終了することを閣議にかけ、防衛出動を命じた自衛隊に撤収を命じなければならない[5]
  • 武力の行使
防衛出動を命ぜられた自衛隊は、日本国を防衛するため、必要な武力を行使することができる[6]。なお、その際、国際の法規及び慣例によるべき場合にあってはこれを遵守し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとされている[2]
  • 公共の秩序の維持
防衛出動を命ぜられた自衛隊は、自衛隊法88条の規定により武力を行使するほか、必要に応じ、公共の秩序を維持するため行動することができる[7]。この公共の秩序の維持に当たっては、警察官職務執行法準用されるほか、治安出動を命ぜられた場合と同等の権限も付与される。
  • 物資の収用等
防衛出動時における物資の収用など、任務遂行するために必要な権限については、自衛隊法(103条以下)に詳細に定められる。具体的には次の区分に分けられる。
  • 自衛隊の活動区域内では、都道府県知事(事態に照らし緊急を要する場合は、防衛大臣又は政令で定める者[8])は、防衛大臣又は政令で定める者[8]の要請に基づき、①病院、診療所その他政令で定める施設[9]を管理し、②土地、家屋若しくは物資を使用し(この際、やむを得ない場合は家屋の形状を変更することができる。)、③物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対してその取り扱う物資の保管を命令、又はこれらの物資を収用することができる[10]
  • 自衛隊の活動区域外でも、防衛大臣が定めた区域では、都道府県知事は、防衛大臣又は政令で定める者[8]の要請に基づき、①病院、診療所その他政令で定める施設[9]の管理、土地、家屋若しくは物資の使用若しくは物資の収用を行い、②取扱物資の保管命令を発し、③当該地域内にある医療、土木建築工事又は輸送を業とする者に対してその者が行う事務への従事命令を出すことができる[11]
  • 海上保安庁の統制
内閣総理大臣は、防衛出動を命じた場合、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部をその統制下に入れることができる[12]。このとき、統制下に入れた海上保安庁は、防衛大臣に指揮させるが[13]、防衛大臣の海上保安庁の全部又は一部に対する指揮は、海上保安庁長官に対して行うものとされている[14]
  • アメリカ軍への役務の提供
防衛出動を命ぜられた自衛隊は、日米安全保障条約に従って行動するアメリカ軍に対し、行動関連措置としての役務の提供を実施することができる[15]
  • 緊急通行
防衛出動を命ぜられた自衛官は、当該自衛隊の行動に係る地域内を緊急に移動する場合において、通行に支障がある場所をう回するため必要があるときは、一般交通の用に供しない通路又は公共の用に供しない空地若しくは水面を通行することができる[16]
  • 捕虜等の取り扱い
防衛出動下令時における捕虜等の取り扱いは、武力攻撃事態及び存立危機事態における捕虜等の取扱いに関する法律に基づき、ジュネーヴ条約に則って行われる。
防衛出動を命ぜられた自衛隊の自衛官(出動自衛官)は、武力攻撃が発生した事態又は存立危機事態において、服装、所持品の形状、周囲の状況その他の事情に照らし、抑留対象者に該当すると疑うに足りる相当の理由がある者があるときは、これを拘束することができる[17]
  • 特定公共施設等利用法などの関連法律に基づく措置
武力攻撃事態・存立危機事態及び武力攻撃予測事態においては、武力攻撃事態への対処(自衛隊の防衛出動に伴う措置に限らず、住民の避難といった国民の保護や経済統制などにも適用される。)のため、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律(特定公共施設利用法)に基づき、下のことができる。
  • 内閣総理大臣による港湾施設の優先利用の要請[18]・指示。この指示に従わない場合は、国土交通大臣に港湾施設の利用許可の取り消しなどの処分をさせることができる[19]
  • 内閣総理大臣による飛行場施設の優先利用の要請[18]・指示。この指示に従わない場合は、国土交通大臣に飛行場施設の利用許可の取り消しなどの処分をさせることができる[20]
  • 海上保安庁長官による海域の航行制限。違反した場合は3月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処される[21]
  • 総務大臣による、防衛出動した自衛隊による無線通信を優先的に行えるようにするための、無線局へ付与した免許の条件の変更[22]
このほかにも、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)に基づき、市町村長(緊急の場合は都道府県知事によって代行することができるほか、警察官海上保安官自衛官も限られた場合においてこの処置を行うことができる。)による警戒区域の設定と住民の立ち退き、生活関連等施設の立ち入り制限や、航空法第80条などに基づき、飛行の禁止区域なども設定できる。これらの処置には罰則が付与されることも多い。


本項に掲げた他にも、防衛出動時に自衛隊などに認められる権限は多々ある。

防衛出動待機命令・防御陣地構築の措置

  • 防衛大臣は、事態が緊迫し、防衛出動命令が発せられることが予測される場合において、これに対処するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の全部又は一部に対し出動待機命令を発することができる[23]
  • また、防衛大臣は、防衛出動を命ぜられた自衛隊の部隊を展開させることが見込まれ、かつ、防備をあらかじめ強化しておく必要があると認める地域(展開予定地域)があるときは、内閣総理大臣の承認を得た上、その範囲を定めて、自衛隊の部隊等に当該展開予定地域内において陣地その他の防御のための施設(防御施設)を構築する措置を命ずることができる[24]。この際、都道府県知事は、防衛大臣又は政令で定める者[8]の要請に基づき、土地を使用することができる。[25]防御陣地の構築の際には、自衛隊は、当該職務を行うに際し、自己又は自己と共に当該職務に従事する隊員の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、正当防衛又は緊急避難に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない[26]

脚注

  1. ^ 衆議院議員森清君提出憲法第九条の解釈に関する質問に対する答弁書:衆議院
  2. ^ a b 自衛隊法第88条(防衛出動時の武力行使):防衛省
  3. ^ 防衛省の職員の給与等に関する法律 第十五条”. e-Gov 法令検索. 2025年2月21日閲覧。
  4. ^ (株)扶桑社 出版 小笠原理恵 著 自衛隊員は基地のトイレットペーパーを自腹で買う77頁
  5. ^ 事態対処法第9条第11項・第14項
  6. ^ 自衛隊法88条1項。
  7. ^ 自衛隊法92条1項。
  8. ^ a b c d 自衛隊法施行令第127条。具体的には防衛出動を命ぜられている陸上総隊司令官方面総監師団長旅団長自衛艦隊司令官航空集団司令官地方総監航空総隊司令官航空支援集団司令官航空方面隊司令官補給統制本部長及び補給本部長
  9. ^ a b 自衛隊法施行令第129条に規定があり、具体的には、自動車整備工場、造船所(ドック又は引揚船台に限る。)、港湾施設(係留施設及びこれに附帯する荷さばき施設に限る。)、航空機又は航空機用機器を整備するための施設(飛行場にあるもの又は飛行場に隣接するものに限る。)、自動車、船舶又は航空機に給油するための施設。
  10. ^ 自衛隊法第103条第1項
  11. ^ 自衛隊法第103条第2項
  12. ^ 自衛隊法80条1項
  13. ^ 自衛隊法80条2項
  14. ^ 自衛隊法施行令第103条
  15. ^ 武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律10条2項。
  16. ^ 自衛隊法第92条の2
  17. ^ 武力攻撃事態及び存立危機事態における捕虜等の取扱いに関する法律4条。
  18. ^ a b 要請に関しては、厳密には事態対処法第10条に基づき政府に置かれる政府対策本部の本部長(内閣総理大臣が兼任)。
  19. ^ 特定公共施設利用法第9条など
  20. ^ 特定公共施設利用法第11条など
  21. ^ 特定公共施設利用法第14条など
  22. ^ 特定公共施設利用法第18条など
  23. ^ 自衛隊法77条。
  24. ^ 自衛隊法78条。
  25. ^ 自衛隊法第103条の2
  26. ^ 自衛隊法第92条の4

注釈

  1. ^ 例外として、後述の公共の秩序の維持のように、防衛出動下でも平時や防衛出動以外の行動と同様の要件が求められる場面も存在する。

関連項目


防衛出動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 17:33 UTC 版)

自衛隊」の記事における「防衛出動」の解説

詳細は「防衛出動」を参照 自衛隊の防衛出動は自衛隊法76条によって定められており、他国からの武力攻撃発生した事態又は武力攻撃発生する明白な危険が切迫していると認められる至った事態、及び、我が国密接な関係にある他国対す武力攻撃発生し、これにより我が国存立脅かされ国民生命、自由及び幸福追求権利根底から覆される明白な危険がある事態に際して内閣総理大臣自衛隊出動命じるものである出動にあたって原則として事前国会承認要する出動命じられ部隊は、日本防衛するため、必要な武力行使することができる(自衛隊法第88条)。実際に武力の行使を行うか否か判断は、自衛隊の最高指揮監督権有する内閣総理大臣が行うものと解されている。これまでに防衛出動が命じられことはない。

※この「防衛出動」の解説は、「自衛隊」の解説の一部です。
「防衛出動」を含む「自衛隊」の記事については、「自衛隊」の概要を参照ください。

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