宇野内閣とは? わかりやすく解説

宇野内閣

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/12 04:46 UTC 版)

宇野内閣
内閣総理大臣 第75代 宇野宗佑
成立年月日 1989年(平成元年)6月3日
終了年月日 1989年(平成元年)8月10日
与党・支持基盤 自由民主党
施行した選挙 第15回参議院議員通常選挙
内閣閣僚名簿(首相官邸)
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宇野内閣(うのないかく)は、外務大臣衆議院議員及び自由民主党総裁宇野宗佑が第75代内閣総理大臣に任命され、1989年(平成元年)6月3日から1989年(平成元年)8月10日まで続いた日本の内閣

閣僚の顔ぶれ・人事

国務大臣

  • 在職日数69日
職名 氏名 所属 特命事項等 備考
内閣総理大臣 宇野宗佑 衆議院
自由民主党
中曽根派
自由民主党総裁
法務大臣 谷川和穂 衆議院
自由民主党
河本派
再入閣
外務大臣 三塚博 衆議院
自由民主党
安倍派
横滑り
大蔵大臣 村山達雄 衆議院
自由民主党
宮澤派
再任
文部大臣 西岡武夫 衆議院
自由民主党
(宮澤派)
再任
厚生大臣 小泉純一郎 衆議院
自由民主党
(安倍派)
再任
農林水産大臣 堀之内久男 衆議院
自由民主党
(中曽根派)
初入閣
通商産業大臣 梶山静六 衆議院
自由民主党
竹下派
再入閣
運輸大臣 山村新治郎 衆議院
自由民主党
(竹下派)
新東京国際空港問題担当 再入閣
郵政大臣 村岡兼造 衆議院
自由民主党
(竹下派)
初入閣
労働大臣 堀内光雄 衆議院
自由民主党
(宮澤派)
初入閣
建設大臣 野田毅 衆議院
自由民主党
(中曽根派)
土地対策担当 初入閣
自治大臣
国家公安委員会委員長
坂野重信 参議院
自由民主党
(竹下派)
再任
内閣官房長官 塩川正十郎 衆議院
自由民主党
(安倍派)
再入閣
総務庁長官 池田行彦 衆議院
自由民主党
(宮澤派)
初入閣
北海道開発庁長官
沖縄開発庁長官
井上吉夫 参議院
自由民主党
二階堂グループ
初入閣
防衛庁長官 山崎拓 衆議院
自由民主党
(中曽根派)
初入閣
経済企画庁長官 越智通雄 衆議院
自由民主党
(安倍派)
初入閣
科学技術庁長官 中村喜四郎 衆議院
自由民主党
(竹下派)
原子力委員会委員長 初入閣
環境庁長官 山崎竜男 参議院
自由民主党
(宮澤派)
地球環境問題担当 初入閣
国土庁長官 野中英二 衆議院
自由民主党
(竹下派)
花と緑の万博担当
研究学園都市担当
初入閣

内閣官房副長官・内閣法制局長官

職名 氏名 所属 備考
内閣官房副長官 牧野隆守 衆議院/自由民主党(中曽根派)
石原信雄 自治省
内閣法制局長官 味村治 法務省 留任

政務次官

前内閣の政務次官が9名留任した。

職名 氏名 所属 備考
法務政務次官 添田増太郎 参議院自由民主党安倍派 再任
外務政務次官 田中直紀 衆議院/自由民主党(二階堂G
大蔵政務次官 吉村真事 参議院/自由民主党(安倍派) 再任
高村正彦 衆議院/自由民主党(河本派
文部政務次官 町村信孝 衆議院/自由民主党(安倍派)
厚生政務次官 近岡理一郎 衆議院/自由民主党(竹下派
農林水産政務次官 水谷力 参議院/自由民主党(竹下派) 再任
中川昭一 衆議院/自由民主党(安倍派)
通商産業政務次官 出口広光 参議院/自由民主党(宮澤派 再任
甘利明 衆議院/自由民主党(中曽根派
運輸政務次官 森田一 衆議院/自由民主党(宮澤派)
郵政政務次官 月原茂皓 衆議院/自由民主党(安倍派)
労働政務次官 宮島滉 参議院/自由民主党(竹下派) 再任
建設政務次官 木村守男 衆議院/自由民主党(竹下派)
自治政務次官 長野祐也 衆議院/自由民主党(中曽根派)
総務政務次官 若林正俊 衆議院/自由民主党(安倍派)
北海道開発政務次官 工藤万砂美 参議院/自由民主党(宮澤派) 再任
防衛政務次官 鈴木宗男 衆議院/自由民主党(無派閥)
経済企画政務次官 平林鴻三 衆議院/自由民主党(竹下派)
科学技術政務次官 吉川芳男 参議院/自由民主党(二階堂G) 再任
環境政務次官 石井一二 参議院/自由民主党(河本派) 再任
沖縄開発政務次官 寺内弘子 参議院/自由民主党(中曽根派) 再任
国土政務次官 自見庄三郎 衆議院/自由民主党(中曽根派)

勢力早見表

  • 内閣発足当初(前内閣の事務引継は除く)。
  • 太字は自民党総裁並びにいわゆる自民党三役
  • 内閣官房副長官(政務)は政務次官に含む。
名称 勢力 国務大臣 政務次官 その他
たけした竹下派 6 5 衆議院議長幹事長国会対策委員長
みやさわ宮澤派 5 3 総務会長、参議院議員会長
あへ安倍派 4 6 参議院議長政務調査会長
なかそね中曽根派 4 5 総裁
こうもと河本派 1 2
にかいとう二階堂G 1 2
無派閥 0 1
21 24

内閣の動き

リクルート事件の責任を取って竹下登が辞任し、前の竹下改造内閣は退陣した。間近に主要国首脳会議(サミット)を控えて、早急に次期首相自民党総裁を決めなければならない中、自由民主党の有力者が軒並みリクルート事件に絡んでいたため、身動きがとれなくなっていた。そこで、竹下改造内閣の外務大臣で、リクルート事件と関係も薄い宇野宗佑が、急遽自民党総裁に抜擢されて首相に就任し、組まれたのが宇野内閣である。宇野自身は資産家の子弟で、金銭的にはクリーンなイメージがあった。閣僚には、リクルート事件と関係の薄い者を優先的に登用することで、世論のイメージアップも図られた。同内閣は竹下登前首相の後継指名による事実上の第二次竹下内閣[1]、「竹下院政」、「竹下直系」といわれ[2]竹下派小渕恵三小沢一郎が宇野にはかることなく人事を勝手に決めた[2]。当時の新聞も「党三役人事など竹下派幹部から、こう決まった。と一方的に連絡があっただけだ」と安倍派幹部はこぼし、中曽根派櫻内義雄会長は「宇野君は婿養子に行ったようなものだ」とまで語っている(1989年6月19日付日経夕刊)[2]。宇野が世間的には知名度が低いことや選出の経緯から他の自民党議員からは反発も強かったとされ、リクルート事件で疑惑の対象となったのは主に中曽根派で宇野がその中曽根派の番頭格であったことから中曽根亜流との批判もあった[3]

就任わずか3日後に宇野自身に週刊誌報道による女性問題が発覚してしまう。元芸者が愛人となった過去を自ら告白、様々な女性団体から抗議や説明を求める声、さらには退陣要求の署名運動が起こった[4]。この「首相の女性問題」に、先の「リクルート事件」、「消費税導入」の3点セット(ただし、当時のNHKは「女性問題」を「農政」(輸入自由化)に差し替えた)により、同年7月に行われた第15回参議院議員通常選挙で、自由民主党は獲得議席数36議席と過半数を割り込み、結党以来の惨敗を喫した。

この責任を取って参議院選挙投票日翌朝に宇野は退陣を表明[5]。翌月には海部俊樹が後継総裁に選出され、宇野内閣は僅か在任期間69日間の短命内閣に終わった。この在任期間69日は第1次岸田内閣第1次石破内閣東久邇宮内閣第3次桂内閣(第1次と2次を合わせれば、今までの歴代内閣では安倍内閣に次ぐ2番目の長期である)、羽田内閣石橋内閣に次ぐ史上7番目の短命である。また、第3次桂内閣を除いた戦後だと、6番目の短命内閣である。大型国政選挙を経験した内閣としては戦後2番目の短命内閣である。地方選挙ではあるが6月に東京都議会議員選挙も行われ、第2党の日本社会党が肉薄する惨敗となった。

この宇野宗佑内閣時代に起こったトピックスとしては、

が挙げられる。

  • 宇野が中曽根派であったこと、総辞職した竹下内閣で外務大臣を務めていたことから、日本共産党国会議員から「中曽根亜流竹下リモコン内閣」と評された。
  • 辞任会見での「明鏡止水の心境であります」の一節は、当時流行語になった。
  • 宇野内閣から閣僚の親族・妻子を含む資産公開が行われるようになった。これは、リクルート事件に絡み、リクルートコスモスの未公開株の名義が政治家の妻子又は親族となっていた事例が存在したことが影響している。

脚注

  1. ^ 芹川洋一著、平成政権史、日経プレミアシリーズ、2018年、22頁、日本経済新聞出版社
  2. ^ a b c 平成政権史25-26頁
  3. ^ 「長老は竹下の手口に怒った」『朝日新聞』1989年6月8日、朝刊。
  4. ^ 「宇野首相の交際--広がる女性の抗議」『朝日新聞』1989年6月16日、朝刊。
  5. ^ 中日ニュース No.1604_2「自民惨敗、宇野首相退陣 -参院選-」(平成元年8月)”. 中日映画社 (2016年6月26日). 2020年12月8日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク


宇野内閣

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宇野宗佑」の記事における「宇野内閣」の解説

リクルート事件発覚消費税導入により支持率急落した竹下登首相が、1989年平成元年4月25日辞意表明した。しかし、ポスト竹下目されていた安倍晋太郎宮澤喜一渡辺美智雄自民党有力者軒並みリクルート事件関与していたため身動き取れず河本敏夫三光汽船経営危機問題から敬遠され、さらに伊東正義田村元坂田道太後藤田正晴からも断られ後継総理総裁選び難航する。 そこで、主要閣僚の中でリクルート事件との関連性薄く総理総裁任期満了した中曽根派閥ナンバー2であり、サミット近かったこともあり外相であった宇野白羽の矢が立ち、5月26日竹下から打診されて宇野急遽後継総裁擁立されることになった竹下裁定)。 6月2日宇野外相自民党両院議員総会全会一致にできずに異例の「起立多数」で第13代自民党総裁選出される自民党史において、派閥領袖ではない自民党総裁宇野初めであった鈴木善幸首相就任当時こそ派閥領袖ではなかったが、間もなく派閥領袖となっている。 1989年平成元年6月3日、宇野内閣発足。主要閣僚谷川和穂法務相、三塚博外務相村山達雄大蔵相、西岡武夫文部相、小泉純一郎厚生相、堀之内久男農林水産相、梶山静六通商産業相、山村新治郎運輸相村岡兼造郵政大臣堀内光雄労働相野田毅建設相坂野重信自治相兼国公安委員長塩川正十郎内閣官房長官池田行彦総務庁長官井上吉夫北海道開発庁長官沖縄開発庁長官山崎拓防衛庁長官越智通雄経済企画庁長官中村喜四郎科学技術庁長官山崎竜男環境庁長官野中英二国土庁長官党三役経験無く知名度低かった宇野だけに、就任当初メディアで宇野について紹介する特集組まれたこともあった。閣内にはリクルート事件と関係の薄い人物優先的に登用しクリーンな内閣というイメージ作ろう奔走する総理時代には妻子を含む閣僚資産公開開始した。 宇野内閣発足直後同年6月4日中華人民共和国六四天安門事件発生し宇野竹下内閣決定した第三次円借款凍結する一方で外務大臣三塚博と共に中国孤立させない」とサミット主張して他の西側諸国と距離を置き、サミット前に対中制裁反対派慎重派中曽根康弘鈴木善幸竹下登元首相会談した総理退任後1990年5月7日宇野訪中した際にも中国指導者江沢民からこのサミットでの対応に感謝されている。 しかし、この急造内閣宇野自身スキャンダル足をすくわれることとなった宇野首相に就任した3日後、『サンデー毎日』(毎日新聞)が神楽坂芸妓告発掲載し宇野女性スキャンダル表面化当時サンデー毎日編集長鳥越俊太郎だった。 初め国内の他のマスコミ無視したがが、外国メディアに「セックススキャンダル日本宇野直撃」(ワシントン・ポスト)などと掲載されると、それが引用される形で日本話題となった一部マスコミからは宇野ピンクザウルス総理揶揄された。。 女性問題報道に関して妻の千代は「宇野は私を大切にしてくれておりますし、私も宇野をずっと心から信頼してまいりました。もちろん、そんなことはなかったと信じておりますデッチ上げだと思っております」と語っている。 同年7月第15回参議院議員通常選挙従来3点セットリクルート問題消費税問題牛肉オレンジ輸入自由化問題)に加え宇野首相女性問題争点となり、さらにいわゆるマドンナブームがとどめを刺し自民党改選議席69議席大幅に下回る36議席しか獲得できず、特に一人区では3勝23敗と惨敗参議院では結党以来初めての過半数割れとなった。(これ以降2016年に至るまでの間自民党参院選後の単独過半数確保できてなかった。) 投票日翌日7月24日宇野敗北責任取り退陣表明会見での「明鏡止水心境であります」との言葉話題になった同年8月8日には自民党両院議員総会河本派番頭であった海部俊樹が新総裁選出された。宇野総理在任期間はわずか69日、日本政治史4番目の短命内閣終わった

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