プロパガンダ プロパガンダの種類

プロパガンダ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/04 23:50 UTC 版)

プロパガンダの種類

プロパガンダには大別して以下の分類が存在する。

ホワイトプロパガンダ
情報の発信元がはっきりしており、事実に基づく情報で構成されたプロパガンダ[1]
ブラックプロパガンダ英語版
情報の発信元を偽ったり、虚偽や誇張が含まれるプロパガンダ[1]
グレープロパガンダ
発信元が曖昧であったり、真実かどうか不明なプロパガンダ[1]
コーポレートプロパガンダ
企業が自らの利益のためにおこなうプロパガンダ。
カウンタープロパガンダ
敵のプロパガンダに対抗するためのプロパガンダ[1]

プロパガンダ技術

アメリカ合衆国宣伝分析研究所英語版は、プロパガンダ技術を分析し、次の7手法をあげている[7]

  1.  ネーム・コーリング - レッテル貼り。攻撃対象をネガティブなイメージと結びつける(恐怖に訴える論証)。
  2.  カードスタッキング - 自らの主張に都合のいい事柄を強調し、都合の悪い事柄を隠蔽、または捏造だと強調する。
  3.  バンドワゴン - その事柄が世の中の趨勢であるように宣伝する。人間は本能的に集団から疎外されることを恐れる性質があり、自らの主張が世の中の趨勢であると錯覚させることで引きつけることが出来る。(衆人に訴える論証
  4.  証言利用 - 「信憑性がある」とされる人に語らせることで、自らの主張に説得性を高めようとする(権威に訴える論証)。
  5.  平凡化 - その考えのメリットを、民衆のメリットと結びつける。
  6.  転移 - 何かの威信や非難を別のものに持ち込む。たとえば愛国心を表彰する感情的な転移として国旗を掲げる。
  7.  華麗な言葉による普遍化 - 対象となるものを、普遍的や道徳的と考えられている言葉と結びつける。

また、ロバート・チャルディーニ英語版は、人がなぜ動かされるかと言うことを分析し、6つの説得のポイントをあげている。これは、プロパガンダの発信者が対象に対して利用すると、大きな効果を発する[8]

  1.  返報性 - 人は利益が得られるという意見に従いやすい。
  2.  コミットメントと一貫性 - 人は自らの意見を明確に発言すると、その意見に合致した要請に同意しやすくなる。また意見の一貫性を保つことで、社会的信用を得られると考えるようになる。
  3.  社会的証明 - 自らの意見が曖昧な時は、人は他の人々の行動に目を向ける。
  4.  好意 - 人は自分が好意を持っている人物の要請には「YES」という可能性が高まる(ハロー効果
  5.  権威 - 人は対象者の「肩書き、服装、装飾品」などの権威に服従しやすい傾向がある。
  6.  希少性 - 人は機会を失いかけると、その機会を価値のあるものであるとみなしがちになる。

ウィスコンシン大学広告学部で初代学部長を務めたW・D・スコットは、次の6つの広告原則をあげている[9]

  1.  訴求力の強さは、その対象が存在しないほうが高い。キャッチコピーはできるだけ簡単で衝撃的なものにするべきである。
  2.  訴求力の強さは、呼び起こされた感覚の強さに比例する。動いているもののほうが静止しているものより強烈な印象を与える。
  3.  注目度の高さは、その前後に来るものとの対比によって変わる。
  4.  対象を絞り、その対象にわかりやすくする。
  5.  注目度の高さは、目に触れる回数や反復数によって影響される。
  6.  注目度の高さは、呼び起こされた感情の強さに比例する。

J.A.C.Brownによれば、宣伝の第一段階は「注意を引く」ことである。具体的には、激しい情緒にとらわれた人間が暗示を受けやすくなることを利用し、欲望を喚起した上、その欲望を満足させ得るものは自分だけであることを暗示する方法をとる[10]。またL.Lowenthal,N.Gutermanは、煽動者は不快感にひきつけられるとしている[11]

アドルフ・ヒトラーは、宣伝手法について「宣伝効果のほとんどは人々の感情に訴えかけるべきであり、いわゆる知性に対して訴えかける部分は最小にしなければならない」「宣伝を効果的にするには、要点を絞り、大衆の最後の一人がスローガンの意味するところを理解できるまで、そのスローガンを繰り返し続けることが必要である。」と、感情に訴えることの重要性を挙げている[12]。また「大衆は小さな嘘より大きな嘘の犠牲になりやすい。とりわけそれが何度も繰り返されたならば」(=嘘も百回繰り返されれば真実となる)とも述べた。

杉野定嘉は、「説得的コミュニケーションによる説得の達成」「リアリティの形成」「情報環境形成」という三つの概念を提唱している。また敵対勢力へのプロパガンダの要諦は、「絶妙の情報発信によって、相手方の認知的不協和を促進する」事である、としている[12]

歴史

有史以来、政治のあるところにプロパガンダは存在した。ローマ帝国では皇帝の名を記した多くの建造物が造られ、皇帝の権威を市民に見せつけた。フランス革命時にはマリー・アントワネットが「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」と語ったとしたものや、首飾り事件に関するパンフレットがばらまかれ、反王家の気運が高まった。

プロパガンダの体系的な分析は、アテネで紀元前6世紀頃、修辞学の研究として開始されたと言われる。自分の論法の説得力を増し、反対者への逆宣伝を計画し、デマゴーグを看破する技術として、修辞学は古代ギリシャ古代ローマにおいて大いに広まった。修辞学において代表的な人物はアリストテレスプラトンキケロらがあげられる。古代民主政治では、これらの技術は必要不可欠であったが、中世になるとこれらの技術は廃れて行った。

テレビインターネットに代表される情報社会化は、プロパガンダを一層容易で、効果的なものとした。わずかな費用で多数の人々に自らの主張を伝えられるからである。現代ではあらゆる勢力のプロパガンダに触れずに生活することは困難なものとなった。

国家運営におけるプロパガンダの歴史

プロパガンダは独裁国家のみならず民主主義国家でも頻繁に行われる。写真は第二次世界大戦中にドイツ・日本の枢軸軍を「自由の女神を破壊する悪魔」として描き、戦争の大義を説こうとするアメリカ合衆国のポスター。「どうにも止まらないこの怪物を止めろ……限界まで生産せよ! これはあなたの戦争だ!」と呼びかけている。

国家による大規模なプロパガンダの宣伝手法は、第一次世界大戦期のアメリカ合衆国における広報委員会が嚆矢とされるが、ロシア革命直後のソ連[13] で急速に発達した。 レーニンは論文[14] でプロパガンダは「教育を受けた人に教義を吹き込むために歴史と科学の論法を筋道だてて使うこと」と、扇動を「教育を受けていない人の不平不満を利用するための宣伝するもの」と定義した。レーニンは宣伝と扇動を政治闘争に不可欠なものとし、「宣伝扇動」(agitprop)という名でそれを表した。十月革命後、ボリシェヴィキ政権(ソビエト連邦)は人民に対する宣伝機関を設置し、第二次世界大戦後には社会主義国に同様の機関が設置された[15]。またヨシフ・スターリンの統治体制はアブドゥルアハマン・アフトルハーノフ英語版によって「テロルとプロパガンダ」の両輪によって立っていると評された[16]

1930年代にドイツの政権を握った国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)は、政権を握る前から宣伝を重視し、ヨーゼフ・ゲッベルスが創刊した「デア・アングリフ」紙や、フェルキッシャー・ベオバハター紙による激しい言論活動を行った。また膨大な量のビラやポスターを貼る手法や、突撃隊の行進などはナチス党が上り調子の政党であると国民に強く印象づけた。

ナチ党に対抗した宣伝活動を行ったドイツ共産党ヴィリー・ミュンツェンベルクドイツ語版は、著書『武器としての宣伝(Propaganda als Waffe)』において「秘密兵器としての宣伝がヒトラーの手元にあれば、戦争の危機を増大させるが、武器としての宣伝が広範な反ファシズム大衆の手にあれば、戦争の危険を弱め、平和を作り出すであろう」と述べている[17]

ナチス党が政権を握ると、指導者であるアドルフ・ヒトラーは特にプロパガンダを重視し、ゲッベルスを大臣とする国民啓蒙・宣伝省を設置した。宣伝省は放送出版絵画彫刻映画オリンピックといったあらゆるものをプロパガンダに用い、ナチス党によるドイツとその勢力圏における独裁体制を維持し続けることに貢献した。

第二次世界大戦中は国家の総動員態勢を維持するために、日本やドイツ、イタリアなどの枢軸国イギリスアメリカ、ソ連などの連合国を問わず、戦争参加国でプロパガンダは特に重視された。終戦後は東西両陣営の冷戦が始まり、両陣営はプロパガンダを通して冷たい戦争を戦った。特に宇宙開発競争は、陣営の優秀さを喧伝する代表的なものである。

1950年代、中華民国政府(台湾政府)が反共文芸を推奨し、趣旨に共鳴した「中華文芸奨金委員会中国語版」が活躍していた。

プロパガンダポスター


  1. ^ a b c d e f g h 松井一洋 2011, pp. 25.
  2. ^ 石井貫太郎 2004, pp. 40.
  3. ^ 今井仙一 1954, pp. 35.
  4. ^ 今井仙一 1954, pp. 40-41.
  5. ^ 今井仙一 1954, pp. 49.
  6. ^ 市民的及び政治的権利に関する国際規約第20条
  7. ^ 松井一洋 2011, pp. 29.
  8. ^ 松井一洋 2011, pp. 29-30.
  9. ^ 松井一洋 2011, pp. 30-31.
  10. ^ The techniques of persuasion 1963
  11. ^ Prophets of deceit 1949
  12. ^ a b 松井一洋 2011, pp. 28.
  13. ^ en:Peter KenezのThe Birth of the Propaganda State;Soviet Methods of Mass Mobilization 1985
  14. ^ 「何をなすべきか」 1902年
  15. ^ 亀田真澄 2011, pp. 71.
  16. ^ 今井仙一 1954, pp. 24.
  17. ^ a b 石井貫太郎 2004, pp. 41.
  18. ^ a b ブログ:間近で見た北朝鮮の軍事パレード - ロイター
  19. ^ ポンソンビー「戦時の嘘 ―戦争プロパガンダが始まった―」(東晃社、1941年)。Arthur Ponsonby"Falsehood in Wartime: Propaganda Lies of the First World War"(Allen and Unwin Pub., 1928),(Paoerback,Legion for the Survival of Freedom, 1991, ISBN 978-0-939484-39-3)ウィキクオート版
  20. ^ 意外だが、宣伝相ゲッベルスの言葉ではない
  21. ^ British think tank funded by Japan pushing anti-China campaign into mainstream UK media The Drum 2017年1月29日
  22. ^ 英媒:日本资助英国智库展开反华公关宣传 BBC(中国語)
  23. ^ NHKニュース7に見られる北朝鮮関連報道が特徴的
  24. ^ 「首相官邸前異状なし、報告すべき件なし」―テレビ報道の劣化 水島朝穂・早稲田大学教授 公式ウェブサイト内「今週の直言」2012年7月2日
  25. ^ 瀬川裕司 「ナチ娯楽映画の世界」 平凡社 ISBN 978-4-582-28238-2
  26. ^ 愛国ブログ記事が1本800円でクラウドワークスに発注されていたことが判明 「天皇制は男系であるべき」という記事も
  27. ^ ネット中傷:民主党“標的”10万件 都知事選と参院補選 毎日新聞 2007年4月27日
  28. ^ NHK総合テレビ特報首都圏「ネットの“祭り”が暴走する」、2007年7月6日放送分
  29. ^ イリーナ・メーリニコワ「ソヴェート映画に見るモスクワ神話」『言語文化』第2巻第1号(1999年7月)





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