ロージー・ザ・リベッターとは? わかりやすく解説

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ロージー・ザ・リベッター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/27 15:52 UTC 版)

テネシー州 ナッシュビルA-31の生産に従事する"ロージー"(1943年)

ロージー・ザ・リベッター、あるいは、リベット打ちのロージーは、アメリカ合衆国文化的アイコンで、第二次世界大戦期に工場や造船所で働く女性全般を表すものである。 事実、戦争中のアメリカではこうした女性たちが弾薬や軍事物資の生産を行っていた。 [1][2]

それまでの男性労働者たちが戦争で出兵している間、こうした女性たちがそれまでは女性が行うものとは思われていなかったような仕事も含めて産業を担っていた。このロージーのモチーフはその後、フェミニズムと女性の経済的自立と結びつき、そのシンボルとしても認知される。[3] なお、第二次大戦中には類似した女性労働者のイメージがイギリスオーストラリアでも見られる。

これらの女性労働者のイメージは、女性が自発的に軍事物資等の生産に従事するよう促すために、政府によるポスターなどの当時の様々なメディアを介して広まっていった。[4] ロージー・ザ・リベッターという名前あるいはそうしたイメージは、第二次大戦中に、歌やハリウッド映画のモチーフとしても取り上げられた。

本項では主に、アイコンやイメージとしての側面を扱う。歴史的背景などはWe Can Do It!のページを参照。

由来

「ロージー・ザ・リベッター」という名前が最初に使われたのは1942年レッド・エバンスとジョン・ジェイコブ・ローブによる楽曲であるとされる。この楽曲は、当時人気のあったケイ・カイザー率いるビッグバンドなど、複数のアーティストによって録音され、全国的なヒット曲となった。[5] この楽曲で歌われるロージーという女性は、疲れ知らずの組み立て作業のライン工で、その働きによってProduction E(戦時中のアメリカで企業の貢献を称える賞)を会社にもたらす、というものである。[6] この、ロージー・ザ・リベッター(リベット打ちのロージー)という呼び名は元々、カリフォルニア州サンディエゴコンベア社の工場で働いていたロージー・ボナビタという女性のあだ名であったという。[7][8][9]

一方、ロージーのモチーフは、カナダの女性労働者のポスターに登場したヴェロニカ・フォスターという実在の女性との類似も指摘される。このポスターは1941年に製作された [10]

第二次世界大戦中に作られたプロパガンダポスターに見える女性兵站労働者(Women Ordnance Workers, WOW)はしばしば赤地に白の水玉模様スカーフを頭にかぶっているが、これは実際には水玉ではなく、米国兵站部のロゴである爆発する大砲の弾がデザインされている[11]

ノーマン・ロックウェルによるロージー

1943年5月29日の『サタデ―・イブニング・ポスト』戦没将兵追悼記念日版の表紙として掲載されたノーマン・ロックウェルによる「ロージー・ザ・リベッター」はすぐさまよく知られたものになった。(画像)ロックウェル版のロージーは茶髪の女性で、星条旗を背景に、リベット打ちの機械を膝にのせながら左手にハム・サンドイッチを持って悠然と昼食の休憩をとっている。そして、ペニーローファーを履いた足でアドルフ・ヒトラーの『我が闘争』を踏みつけている。抱えられたランチボックスには「ロージー」と書かれており、この描かれた人物が1942年の楽曲『ロージー・ザ・リベッター』のロージーであることを示している。[12]

ロックウェルはこの絵を描くにあたり、ロージーのポーズをシスティーナ礼拝堂ミケランジェロ・ブオナローティによる預言者イザヤ参照して描いている。このロージーが身に付けたブルーのオーバーオールには複数のバッジ、勲章で飾られている。 優れた軍事物資生産企業に贈られるArmy-Navy E Service production award、アメリカ合衆国陸軍省が市民に贈るDepartment of the Army Civilian Awardsのブロンズの勲章が2つ、そしてこのロージー自身の個人的なアイデンティティを示すバッジといった内訳である。.[13] この絵のモデルは、本物のリベッターではなく、バーモント州のロックウェルの近所で電話のオペレーターとして働いていた19歳のマリー・ドイルである。ロックウェルの絵ではモデルであるマリーよりも随分と体格の良い女性に描かれており、後日彼は電話で謝罪したという。[13]後のインタビューでモデルになったマリーが答えところによると、マリーは実際にサンドウィッチとリベット打ち機(ただし本物ではない)を持ってモデルをした。白いハンカチも実際にポケットに入れていた。しかし、その時にはヒトラーの『我が闘争』は無かったという。[14]当時この絵の知名度はとても高く、アメリカ合衆国財務省による戦時中の軍事公債の募集運動のためにも貸し出された。[15]

しかし、第二次世界大戦が終わるとロックウェルのロージーは次第に露出を減らすようになった。ロックウェルの財団が作品の著作権に関して厳格な態度をとったのがその要因である。2002年にはこの絵のオリジナルがサザビーズでオークションにかけられ500万ドルの値で落札された。[15] 2009年、アーカンソー州ベントンビルにあるクリスタル・ブリッジーズ・アメリカン・アート美術館(Crystal Bridges Museum of American Art)がこの絵を個人の所有者から手に入れて常設展示に加えている。

「ロージー・ザ・リベッター」に関する誤解

"We Can Do It!!" J・ハワード・ミラーによるポスター。現在「ロージー・ザ・リベッター」として知られるこのポスターは、元は労働者の意欲向上を目的に製作された。

今日「ロージー・ザ・リベッター」を描いたものとして、おそらく最も有名なJ・ハワード・ミラー作のポスター『We Can Do It!』は、第二次大戦中のアメリカでは殆ど無名で、「ロージー・ザ・リベッター」とは上述のように工場労働などに従事する女性全般をさすものであった。

このポスターはもともと1942年に、ピッツバーグの作家 J・ハワード・ミラー、によって製作された。 ウェスチングハウス社の軍事物資生産調整委員会に雇われたミラーは、戦争への協力を訴えるポスターのシリーズの1つとしてこれを製作した。ミラーはこのポスターのモデルとして、UPI通信社によって撮影されたミシガン州の若い女性の軍事品工場の労働者 ジェラルディーン・ホフの写真を使ったとされる。 [16] しかし、より最近の資料では、その写真は実際にはカリフォルニア州のNaval Air Station Alamedaで撮られたナオミ・パーカーという人物の写真であるという。[17][18][19]

このポスターが作られた当時、ポスターはウェスチングハウス社の中西部の施設でその社員のみが、しかもわずか2週間(1943年2月中の二週間)のあいだ掲示されただけであった。 そのため、このポスターは、特別ロージーという名前と結びつけられることもなければ、元々はウェスチングハウス社内のモチベーション向上が目的で、戦時中の自発的な向上就労を推奨するものでもなかった。 それから40年近くもの間このポスターは忘れ去られていた後、1980年代の初頭になってミラーのポスターは"再発見"された。ポスターは、フェミニズム運動と結びつき一躍有名になり、そうして、特にこのポスターを指して「ロージー・ザ・リベッター」とする"誤解"が広まった。[20][21][22][23]

参考文献

脚注

  1. ^ Rosie's proud of her band of sisters by Kevin Cullen, Seattle Times, May 30, 2004
  2. ^ Ware, Susan. Modern American Women: A Documentary History. 2nd edition. Boston: McGraw-Hill, 2002.
  3. ^ Switky, W. Raymond Duncan, Barbara Jancar-Webster, Bob (2008). World Politics in the Twenty-first Century Brief. (Student choice ed.). Boston: Houghton Mifflin College Div. p. 268. ISBN 978-0-547-05634-0 
  4. ^ Tawnya J. Adkins Covert, Manipulating Images: World War II Mobilization of Women through Magazine Advertising (2011)
  5. ^ Marcano, Tony (1997年6月2日). “Famed Riveter In War Effort, Rose Monroe Dies at 77”. The New York Times. https://www.nytimes.com/1997/06/02/us/famed-riveter-in-war-effort-rose-monroe-dies-at-77.html?scp=1&sq=Famed%20Riveter%20In%20War%20Effort,%20Rose%20Monroe%20Dies%20at%2077&st=cse 
  6. ^ Rosie the Riveter: Real Women Workers in World War II”. Journeys and Crossings. Library of Congress. 2009年10月8日閲覧。
  7. ^ Sickels, Robert (2004). The 1940s. Greenwood Publishing Group. p. 48. ISBN 9780313312991. https://books.google.com/books?id=G4IkgU7jpLwC&lpg=PA48&dq=Convair%20San%20Diego&pg=PA48#v=onepage&q=Convair%20San%20Diego&f=false 2013年2月5日閲覧。 
  8. ^ Young, William H.; Young, Nancy K. (2010). World War II and the Postwar Years in America: A Historical and Cultural Encyclopedia, Volume 1. ABC-CLIO. p. 606. ISBN 9780313356520. https://books.google.com/books?id=YjbR9EXABPEC&lpg=PA606&ots=rujFDJH7Me&dq=Rosina%20Bonavita&pg=PA606#v=onepage&q=Rosina%20Bonavita&f=false 2013年2月5日閲覧。 
  9. ^ Ambrose, Stephen E. (2001). The Good Fight: How World War II Was Won. Simon and Schuster. p. 42. ISBN 9780689843617. https://books.google.com/books?id=uuycI2bkDVQC&lpg=PA42&ots=pv6ZQRO9zv&dq=Rosina%20Bonavita&pg=PA42#v=onepage&q=Rosina%20Bonavita&f=false 2013年2月5日閲覧。 
  10. ^ “Ronnie the Bren Gun Girl”. (2010年3月15日). http://www.thestar.com/opinion/editorials/2010/03/15/ronnie_the_bren_gun_girl.html 2013年4月8日閲覧。 
  11. ^ Joyce K. Schiller (2011-06-30), She's a WOW, The Rockwell Center for American Visual Studies, https://www.rockwell-center.org/essays-illustration/shes-a-wow/ 
  12. ^ Young, William H.; Young, Nancy K. (2010). World War II and the Postwar Years in America: A Historical and Cultural Encyclopedia. 1. ABC-CLIO. p. 606. ISBN 0-313-35652-1. https://books.google.com/books?id=YjbR9EXABPEC&pg=PA606 
  13. ^ a b Fischer, David Hackett (2005). Liberty and Freedom. America, a cultural history. 3. Oxford University Press. pp. 537–538. ISBN 0-19-516253-6. https://books.google.com/books?id=uc8KP_QtW-sC&pg=PA537 
  14. ^ Society, The Saturday Evening Post. “Rosie the Riveter | The Saturday Evening Post”. www.saturdayeveningpost.com. 2016年11月29日閲覧。
  15. ^ a b Weatherford, Doris (2009). American Women during World War II: an encyclopedia. Taylor & Francis. p. 399. ISBN 0-415-99475-6. https://books.google.com/books?id=F5wukQLkavoC&pg=PA399 
  16. ^ Tale of two Rosie the Riveters untangled”. 2016年3月1日閲覧。
  17. ^ All This and Overtime, Too - 42-62386550 - Rights Managed - Stock Photo - Corbis”. 2016年3月1日閲覧。
  18. ^ Museum Collections, U.S. National Park Service -”. 2016年3月1日閲覧。
  19. ^ Naomi Parker Fraley”. 2016年3月1日閲覧。
  20. ^ Sharp, Gwen; Wade, Lisa (January 4, 2011). “Sociological Images: Secrets of a feminist icon”. Contexts 10 (2): 82–83. ISSN 1536-5042. http://lisawadedotcom.files.wordpress.com/2011/02/sharp-wade-2011-secrets-of-a-feminist-icon.pdf. 
  21. ^ 'Rosie the Riveter' is not the same as 'We Can Do It!'”. Docs Populi. 2012年1月23日閲覧。 Excerpted from:
    Cushing, Lincoln; Drescher, Tim (2009). Agitate! Educate! Organize!: American Labor Posters. ILR Press/Cornell University Press. ISBN 0-8014-7427-2 
  22. ^ Kimble, James J.; Olson, Lester C. (Winter 2006). “Visual Rhetoric Representing Rosie the Riveter: Myth and Misconception in J. Howard Miller's 'We Can Do It!' Poster”. Rhetoric & Public Affairs 9 (4): 533–569. http://www.mendeley.com/research/visual-rhetoric-representing-rosie-the-riveter-myth-and-misconception-in-j-howard-millers-we-can-do-it-poster/. 
  23. ^ Bird, William L.; Rubenstein, Harry R. (1998). Design for Victory: World War II posters on the American home front. Princeton Architectural Press. p. 78. ISBN 1-56898-140-6. https://books.google.com/books?id=SSNo6on0F8EC&pg=PA78 

関連項目

  • ロージー・ザ・リベッター第二次世界大戦ホーム・フロント国立歴史公園英語版 - カリフォルニア州リッチモンドにある国立歴史公園

ロージー・ザ・リベッター

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We Can Do It!」の記事における「ロージー・ザ・リベッター」の解説

詳細は「ロージー・ザ・リベッター」を参照 第二次世界大戦中に「We Can Do It!」のポスター1942年の歌「ロージー・ザ・リベッター」と結びつけられわけではないノーマン・ロックウェルの「ロージー・ザ・リベッター」と呼ばれる絵は、1943年5月29日サタデー・イブニング・ポスト戦没将兵追悼記念号で表紙飾りよく知られていたが、こちらも関係はない。銃後軍需品生産する婦人啓発する「ロージー」あだ名された女性たちはウェイスティングハウスのポスターとは何の関係も無かったのだ。というよりも1943年2月に2週にわたって一部工場労働者向けて掲載されると、その後40年近く渡ってこのポスター表舞台から姿を消したのである。しかしその他の「ロージー」はよく普及しなかでも実際労働者がよく写真となってイメージを形づくった。アメリカ戦時情報局戦争宣伝のために国家的に大規模な広告キャンペーン展開しているが、「We Can Do It!」はそれに含まれなかった。 ロックウェル代表的な作品である「ロージー・ザ・リベッター」の絵は「ポスト」紙を通じて財務省貸し出された。これは戦時公債宣伝するポスターキャンペーン使用するめだった。しかしその後の戦争中にロックウェルの絵はしだい人々記憶のなかに埋もれていった。その原因著作権にあった。つまりロックウェル死後全ての絵が彼の財産として強力に保護されのである。こうして守られた絵はそれゆえに高い値段がつき、真作2002年500ドル近い金額売却された。それは裏を返せばパブリックドメインとなることから逃れられなかった「We Can Do It!」というポスター・イメージ復活した理由一つでもあった。

※この「ロージー・ザ・リベッター」の解説は、「We Can Do It!」の解説の一部です。
「ロージー・ザ・リベッター」を含む「We Can Do It!」の記事については、「We Can Do It!」の概要を参照ください。

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