り‐たい【履帯】
読み方:りたい
履帯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 15:16 UTC 版)
詳細は「無限軌道」を参照 戦車はキャタピラ、または無限軌道と呼ばれる走行装置によって、車体を支え走行する。 多くの場合無限軌道は、鋼製の各履板(りばん)がピンで接続されたもので輪を構成していて、履帯(りたい)、キャタピラ、無限軌道と呼ばれる。履帯と起動輪、誘導輪、転輪、上部転輪などをもつ車輛を装軌車両と呼ぶ。これに対しタイヤの駆動で走行する車両を装輪車両と呼ぶ。エンジンの出力は変速機、操向変速機、最終減速機を経て起動輪を駆動する。起動輪には歯輪があり、履板のピンブロックと噛み合って履帯を起動する。履帯では方向の変更は起動輪の左右回転数の差で行われる。 履帯はタイヤに比べて接地面積が広く荷重が分散され、装輪車両では走行不可能な泥濘などの不整地に対する「不整地走破能力」が優れる。また、接地面積の広さから地面との摩擦が大きいため「登坂能力」にも優れる。履帯は地形に追従して転輪を支え、穴や溝に差し掛かってもフタのような役を果たして転輪を落としこまない。この働きによって、装軌車両は装輪車両では越えられない幅の壕を越えられ、「越壕能力」に優れる。段や堤も装輪車両より高いものを越えられ、「越堤能力」に優れる。また鉄条網が引かれた阻止線もそのまま轢き倒して走行できる。川底の状態の良い河川ならば渡渉が可能である。 変速機はエンジンから出力された高回転の動力を順次低回転に調速し、低速ながら数十トンの質量を動かすトルクを作り出す。動力は操向変速機へ送られ左右の履帯へ分配される。操向変速機によって履帯は動力を増減し、または停止させられる。これによって装軌車両は向きを変えたり、緩く円を描くような旋回、または急旋回を行える。ブレーキは操向変速機に組み込まれており、走行中の減速に使用される油圧式で多板のディスクブレーキと停車中のパーキング・ブレーキがある。一部の戦車ではディスク・ブレーキに加えてオイル式のリターダを備える。 上記のように履帯は多くの長所を備えるが、短所も多い。履帯による走行はエネルギーロスが大きく、速度や燃費が犠牲になっている。装輪式のようにパンクはしないが、片方の履板1枚のキャタピラピンが切れたり、履帯が車輪から外れれば、その場で旋回以外の動きが出来なくなる。履帯は騒音と振動も大きく、騒音は戦場での行動が容易に発見されることを意味し、振動は車載する装置の故障の原因となり乗員を疲労させる。路面の状況によっては大きく砂塵を巻き上げて自ら位置を露呈してしまう。またキャタピラと転輪類の重量が車重の多くを占め、大きなものでは履帯1枚が数十kgになる場合もあり、履帯も数トンの重さとなる。装軌部分は車輛の側面の多くを占め、体積としても装輪車両より占有率が高い。 戦車の行動に適した場所としては開けた土地が挙げられる。これは戦車が攻撃に投入される兵科であり、速度と突進力を生かした機動がその戦術的な価値を高めるからである。電撃戦における機甲部隊は、迂回し、突破し、後方へ回り込んで敵の司令部、策原地などの急所をたたくことが用法の主たるものである。防御戦闘、市街地の防衛などは戦車の任務として本来不適である。戦車は開闊地(かいかつち・Open terrain)や多少凹凸のある波状地 (Rolling terrain) において本来の機動力を発揮できる。反対に密林地帯や森林地帯のような錯雑地 (Closed terrain)、都市部、急峻な山岳地帯、あるいは沼沢地のような車両の進入を拒む場所は、戦車の機動が阻害されるので不適な場所とされる。泥濘も履帯に絡みつき、転輪や起動輪を詰まらせて走行不能にすることがあり、不適である。またアメリカのシェリダンのように軽量な戦車が水中に入るとそれなりに浮力がかかり、その分無限軌道と水底との間の摩擦力が減ることから、走行は陸上よりも難しくなる。 橋梁による河川の通過は橋の強度が求められ、橋に頼れば移動経路が制約されて、戦争時には意図的に破壊されることもあり作戦上は好ましくない。川底のぬかるみがひどかったり、特に急流であれば水中渡河は困難だと考えられる。戦車を含む車両全般の渡河を行うため、比較的狭い幅の川では戦車相当の車台上に折り畳んだ橋体を搭載し川辺から素早く簡易の橋を展開設置する架橋戦車が使用される。また、幅の広い河に対しては架橋戦車の数両分で橋脚を備え連結出来るものも存在する。ポンツーンやポンツーン橋と呼ばれる小型艇を数艇以上を川面に並べることで応急・簡易に戦車等が渡河可能とするものもあり、さらに広い河ではこれを橋ではなく艀として使用することもある。この専用運搬車両も存在する。
※この「履帯」の解説は、「戦車」の解説の一部です。
「履帯」を含む「戦車」の記事については、「戦車」の概要を参照ください。
- >> 「履帯」を含む用語の索引
- 履帯のページへのリンク