自動車 自動車文化

自動車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/27 15:50 UTC 版)

自動車文化

自動車は多彩な車種・形状があり、また用途によって様々な自動車が使い分けられる。単に走ると言っても、整備された道路・行程だけでなく条件の悪い道路・行程などもあり、様々な楽しみ方がある。またデザイン性や機能性、エンジン性能、メカニカルな側面など、様々な魅力を自動車は保有しているため、自動車に乗ること、集めることなどを趣味にする人は多い。特に遠方の行楽地に向かう際に自動車による移動そのものを主目的の一つとしたり、目的地を決めずにただ自動車を運転する周遊旅行は一般に「ドライブ[注 2]」あるいは「遠乗り」と呼ばれ、最もスタンダードな自動車の楽しみ方である。

ここで、上記に述べた自動車の魅力やまたその愛好家たちによって生まれた文化を自動車文化と定義づけ、以下に内容を記すことにする(自動車愛好家については「カーマニア」を参照)。またこの項では、自動車に関して長い歴史を有する「欧米諸国」と「日本」双方の文化比較を基軸として述べていく。

「自動車の魅力」というとスポーツカースーパーカーハイパーカーといったハイエンドなタイプに焦点が当てられがちであるが、そういった部類のみでは語ることができないほど、自動車文化は多様性に富んでいる。実際にエンスージアストの多くは、様々なタイプの自動車に対して関心を持っている[31]。ただし、前述の自動車らは趣味としての使用をコンセプトにしているため、自動車愛好家のメインアイテムとなっていることも事実である。また自動車選びは、他の趣味と同様に"自己のライフスタイルを映し出す鏡"のような存在でもある[31]

自動車文化の形成

欧米

ミッレミリア1933のワンシーン。当時はレースと言えども観客は皆スーツを着こなし、"ジェントルマンの社交場"とも言える雰囲気であった。
フェラーリ335Sのハンドルを握る第11代ポルターゴ侯爵(ミッレミリア1957)。ヨーロッパ貴族にとって自動車趣味は教養の一部でもあった。

ヨーロッパ各国(イギリス、イタリア、フランス、ドイツなど)では、英国王立自動車クラブブリティッシュスポーツカーなどに代表されるように、20世紀初頭から貴族富裕層らによって自動車を趣味・娯楽の対象として扱う側面が発達し(かつての乗馬馬術の延長線上にあった)、のちに一般大衆にまでその貴族趣味的な気韻を持った、ハイカルチャーとも言うべき自動車文化が浸透していった[13][32][33]。それは、18世紀後半から19世紀に生まれた英国の新興富裕層が、貴族以上に貴族らしくあるために自分自身に磨きをかける「ダンディズム(≒貴族精神)」と呼ばれる思想に準拠している[34]自動車レース黎明期の時代においては、サーキットがそういったジェントルマンたちの社交場にもなっていた[35]。ただし貴族趣味的と言えども、彼らは自動車の価格(大衆車/高級車などの類別)や、またそれらから生じるステータスを重視していたのではなく、純粋に趣味・娯楽の対象として自動車を求めていたということは言うまでもない[36]

その一方で、"欧州では、縦列駐車する時はぶつけて止める"といった世説が出るほど、自動車を「移動手段の道具」として割り切って捉える思想もヨーロッパには根強くある[37][38]。実際に走行している自動車の多くは、日本に比べて車体が汚損している傾向にあり、この思想はサイクルカー(ヴォワチュレット)やバブルカーマイクロカーのその極端とも言える合理主義的な簡素な造りにも表れている。因みにこの文化は、その地の自動車愛好家にとっては非常に難儀なものであり、フランスにおいては都市部での治安の悪さも含め、駐車場所には特に気を使わけなければならないという話もある[37][39]

アメリカは、フォードによって自動車をいち早く大衆化させたことから、よりカジュアルで商業主義的な文化が目立つ[32]。特にその傾向は戦後になってから顕著に表れはじめ、1940 - 1950年代における、ドラッグレースストックカーといった単純明快なルールを持つ自動車レースの誕生は好例である。また、人種の多様性から多地域の自動車文化が数多く混在していることも特徴の一つである。それはカスタム文化に顕著に表れており、白人由来のホットロッドメキシコ系由来のローライダーアジア系由来のスポーツコンパクトなどがある[40]。自動車の美しさを競うコンテストや展示会も世界的な規模で開催される。ただし、いずれも大衆性やエンターテインメント性を意識したものであることは確かであり、権威主義的な面は少ない[32]。また大量生産方式から生まれたインダストリアルデザインは、後の自動車デザインにおける核となり、「自動車の消費」という概念を誕生させることになる[41]

日本

日本人初のレーサー、大倉喜七郎男爵。日本初のオーナーズクラブ『日本自動車倶楽部[注 3]』 (1910年) の創設にも貢献し、日本における自動車文化の基礎を作った[43]

日本に最初に渡来した自動車は、1899年(明治32年)に、当時の皇太子(後の大正天皇)の御成婚を祝してサンフランシスコ在留邦人会が献上した電気自動車であると見られる。最初の日本製ガソリン自動車は、1907年に東京自動車製作所が製造したものであった。1911年には橋本増次郎が東京に快進社自動車工場を設立。1919年には久保田鉄工(現クボタ)の社長の息子だった久保田篤次郎が、大阪に実用自動車製造を設立した。世界的な恐慌の煽りを受け、この両社が26年に統合され、33年に日産自動車となった。また三菱造船神戸造船所が1917年にイタリアのフィアット・ゼーロに学んで三菱A型乗用車を完成させており、三菱自動車の遠い先祖といえる。1918年には陸軍が定めた一定の規格に合致するトラックに補助金を出す軍用自動車保護法が施行されており、これは自動車工業の発達を促す日本で初めての法律だった。これにより東京瓦斯電気工業がTGE(Tokyo Gas Electric)トラックの生産を開始し、石川島造船所もイギリスのウーズレー車の製造権を得、初め乗用車を国産化していたが、まもなくトラックに転じ、後にはバスも製造した。この両社は33年から提携するようになり、37年には合併され、第二次世界大戦後にいすゞ自動車となった[44]

日本の自動車文化は、明治 - 大正期にかけて欧化主義の名残があったことや、20世紀半ばまで華族制度が存在したこと、また同じく20世紀半ばまで大衆車が普及せず一部の層のみしか自動車を所有できなかったことなどの理由から、必然的にヨーロッパにおける文化形成と似た道を辿ることとなった。これは自動車に限らず、ゴルフテニス別荘など当時輸入された西洋由来のハイカルチャーはみな同様の過程を経た。戦前の自動車愛好家としては、有栖川宮威仁親王[注 4]鍋島直泰侯爵、大倉喜七郎男爵、三井高公男爵、小早川元治男爵、福澤駒吉白洲次郎藤山一郎などが知られている。いずれも当時の日本に欧米の趣味を輸入した、いわゆるハイカラたちであった。そのために、戦後の日本においても伝統的な西洋式の自動車趣味を求める者はしばしば見受けられた。式場壮吉福澤幸雄といったレーシングドライバーのほか、徳大寺有恒夏木陽介などの著名人は、そういった際に名が挙げられる人物である[35][46]。中でも自動車評論家小林彰太郎は、自身が実業家(ライオン創業者)の一族出身でありながらも自動車評論家を生業とし、1962年に雑誌『CARグラフィック(現・カーグラフィック)』を創刊。当時では大衆の高嶺の花であった輸入車の魅力を積極的に発信し、また自身もイギリス流の自動車趣味を実践したことで、日本における自動車文化の普及に貢献した[47]

第二次世界大戦後に日本を占領した連合軍は自動車の開発を制限し、特に乗用車は事実上の禁止となった。この制限は1949年(昭和24)に解除され、1952年ごろからは先進国のメーカーと技術提携して外国車をノックダウン生産、しだいに国産化して技術の吸収に努めるメーカーが増えていった[44]

1960年代以降一般大衆に自動車が普及するようになると、サブカルチャーとしての側面も現れはじめる。中でもチューニングカーVIPカー痛車などのカスタム文化は現在では世界中に影響を与えるまでに発展している[48]。また、この文化は非常にユニークなものである一方で、速度超過、違法改造走り屋暴走族といった各種違法行為、或いは騒音、運転マナーの悪さといった迷惑行為との関連が少なからずあり(これもまた一種の文化と化している)、そういった面から自動車に対して不良なイメージを連想させることがある[49](「VIPカー#マイナスイメージ」も参照)。これらの文化の形成過程については、「チューニングカー#日本における歴史」などを参照のこと。

日本は、草創期から自動車生産を開始し[注 5]、また同じく草創期から外国車を比較的多く輸入していたこと、或いは戦後の国産車の普及などもあって自動車と接する機会は多く、ヨーロッパやアメリカに次いで自動車文化が定着しやすい環境にあった[13][42] 。そのため他のアジア各国やアフリカ諸国と比べて文化が十分成熟の域に達していると言える[50]軽自動車やチューニングカー、(見世物としての)ドリフト走行などは日本発祥であり、1970年代にはスーパーカーブームも到来している。上記でも触れたようにカーマニアを対象とした自動車雑誌やテレビ番組も多数ある(「Category:日本の自動車雑誌」、「Category:自動車番組」を参照)。ただし近年の日本では、カーマニアと一般大衆の間における自動車に対する興味の差が非常に大きくなっていることも指摘されている[51]

カルチュア・コンビニエンス・クラブ会長の増田宗昭は、「プレミアエイジ(60歳以上の富裕層)」の人々に自動車を楽しんでもらいたいとして[52]、同社が展開する商業施設において自動車関連の展示会やイベントを頻繁に開催している。また同社は、カー用品店「オートバックス」に対して生活提案型商業施設のコンセプトを取り入れた店舗づくりも行っている。このように、近年の日本における自動車関連産業では、店舗内にカフェを設置したり、より集客の見込める場所に店舗を設置することで、自動車に興味のある人以外も取り込んでいこうとする姿勢が見られている[53]

トヨタ自動車社長豊田章男は、「愛車」にこだわる理由として、"数ある工業製品の中で『愛』がつくのは自動車だけだから"であるという[54]。例えば冷蔵庫を「愛機」とは呼ばず、家は「愛家(ラブホーム)」ではなく「マイホーム(私の家)」と呼び『愛』はつかない、と述べている[54]

カーデザイン

カーデザインの重要性は自動車の誕生時から常に認識されており、自動車文化の形成にも大きな役割を果たしてきた。その変遷は製造技術の発達や空気力学の発展、或いは人々の思想などにも強く関わっている[55]

以下に並べるデザインの変遷は、あくまでも概略かつ主流を示しており、いずれの時代にもこれらに反するデザインや折衷的なスタイリングを持った自動車が見られるということには留意である。

1960年代以前のカーデザイン

自動車黎明期と言える1900年代までのデザインは、直線平面のみで構成された、極めて古風でシンプルなスタイリングが特徴であった。そのほとんどは馬車自転車の延長とも言えるような簡素な造りであったため、"馬なし馬車"とも呼ばれていた[56]。ただし1891年にパナール・ルヴァッソールによってフロントエンジン(システム・パナール)方式が確立されたことで、徐々に自動車らしいデザインへと変化していく[13]。まもなくして、馬車時代から続投したコーチビルダーによる貴族らしい装飾が施された豪華な自動車(=高級車)が誕生し[13]、またモータースポーツの発生によりレーシングカーも生まれたことで、本格的な自動車文化の礎が築かれていった。

1920年代に入ると、「流線型デザイン」の誕生によってカーデザインは大きな進展を迎える。その発端は、エンジン性能の向上によって過激さを増していたモータースポーツの世界において、空力を意識したデザインがレーシングカーに続々と起用されていったことにはじまる(ただし空力の意識の発生は1900年前後の速度記録車から既に見られはじめている[57][58])。それは「ポインテッドテール」や「ボートテール」と呼ばれる、窄まったリアの形状に代表される(ブガッティ・タイプ35が著名[59])。その中でエドムント・ルンプラーパウル・ヤーライによって空気抵抗を低減するボディ構造が確立されると、1930年代から一般的な乗用車にもそれに似た涙滴(ティアドロップ)型のボディが積極的に起用されはじめた[56]。また泥除けの機能として装着されていたフェンダーに関しても、プレス成型技術の発展もあってより流麗で立体的な渦巻状のデザインに変貌し、タイヤ全体を覆うモダンなスタイリングも出現(フェンダースカート)、それらは曲線的な美しさを印象づける重要な要素として機能しはじめた。特にその前後のフェンダーの終点部分は斜め下に向かって流れるように落ち込むため、ボディ全体を尻下がりのスタイリングに印象づけた。これら一連の特徴による、丸みと曲線で構成された自動車デザインは「流線型デザイン(Streamliner, Streamline Moderne)」と呼ばれ、この時代に大流行したデザイン様式となった[60](インダストリアルデザインの発展にも寄与することになる)。

"Art Deco Automobiles"としてカテゴライズされる3台のプジョー・402 ダルマット(1936 - 1939)。ボディはプルートー社による。このモデルは、ボディの美しさもさることながら、当時のル・マンに出場するほどのピュアスポーツでもあった。

このスタイリングの誕生は、流体力学理論に基づいた空気抵抗の低減と、イタリアのフトゥリズモによる「速度の美」の表現、そしてフランスのアール・デコ様式による装飾芸術という、モダニズムを根幹とした"芸術性と合理性の融合"にあった[60]。それは機械化の波の中で新たな芸術性を模索した結果の一つの完成形とも言え、その曲線美から生み出されるスピード感やダイナミズムは自動車が芸術品として捉えられる大きな契機となった[60]。そのため、この時代はコーチビルダーの全盛期となり、数多くのデザイナーが自動車(高級車)のボディで美しさを競い合った。この1930年代における豪奢と前衛、エレガンスが同居したデザインの一部高級車(主にフランス車)は、"Art Deco Automobiles(アール・デコ・オートモビルズ)"、或いは"Flamboyant(フラムボワイヤン)"と呼ばれ、かつては上流階級の社交界における花形的存在として君臨したほか、現在では耽美主義的な側面を持ったダイナミックな芸術作品群として認識されている[61]。その美しさに魅了された者の中には美学者芸術家も含まれ、日本では濱徳太郎が、欧米では、"アンドレ・ドランが「どんな芸術作品よりも、ブガッティは美しい」と述べると、マン・レイが深く頷いた"、といった逸話も残っている[62]

1950年代後半のストックホルム

前述の「流線型デザイン」は、その名称が取り沙汰されなくなった1940年代に至っても、曲線と丸みを帯びたスタイリングとして、カーデザインの主流を保っていた。ただし1947年のチシタリア・202や1949年のフォード・1949などの登場によって「フラッシュサイド[注 6]」ボディが大々的にフィーチャーされ、多くの自動車メーカーが採用しはじめた[63]。この変革によって自動車はより近代的なデザインとなり、ボディ全体としてまとまりを見せるスタイリングが1950年代以降の主流となる。前照灯とフェンダーはボディと一体化され、それによってボディサイドは隆起や凹凸がない滑らかな形状となった。この特徴は2020年現在でも主流となっている形態である。

1930年代のスポーツカー[注 7]
1940 - 1950年代のスポーツカー[注 8]
1950 - 1960年代のスポーツカー[注 9]
1921年 - 1965年のロールス・ロイスにおけるデザインの変遷。左からシルヴァーゴースト・ツアラー (1921年製) 、レイス (1938年製) 、シルヴァークラウドIII (1964年製) 。後継車種である1965年のシルヴァーシャドウからモノコック製のモダンな箱型ボディとなったことから、シルヴァークラウドIIIは伝統的なデザインを有したロールス・ロイス最後の車種と言われている[64]

1960年代以前、特に1920 - 1960年代の自動車の多くは、先述のようにプレスラインの少ないシンプルな造形、かつ曲線を纏ったダイナミックなスタイリングを有しており、これらは芸術性の高いカーデザインとして、展示会やオークションなどでも高い評価を受けている[65]。中でもこの1960年代までの欧州における高級車やスポーツカーは、その主な顧客である富裕層のマーケットが自動車文化の歴史が長い欧米の保守層に未だ限定的であったことから[66]、デザインは明らかに権威主義的でアダルティズムに富むものであった(=貴族趣味)。それ故に、そのスタイリングはしばしば「エレガント」、「紳士的」とも形容される[67][68][69]。これは戦前のアメリカの高級車やスポーツカーにおいても、欧州ほど純粋・明瞭ではないものの、同じく主流として存在していたデザイン性であった。また世界各国で開催されている「コンクール・デレガンス」は、この貴族趣味的な文化やデザイン性と密接に関連したクラシックカーイベントである。生前にエンツォ・フェラーリ"LA CORSA PIÙ BELLA DEL MONDO(世界で最も美しい自動車レース)"と形容した[70]伝説的な公道自動車レース、「ミッレミリア」(1927 - 1957)の参加車両も、この時代までのスタイリングを纏ったスポーツカー/レーシングカーである。それというのもレーシングカーに関しては、1960年代後半からプロトタイプのボディ構造が生産台数の緩和などによって本格的にサーキット仕様に傾いていったため[71]、自動車レースで優勝争いが行われたレーシングカーに、趣味として愛玩するレベルのデザイン性と実用性が備わっているのが、1960年代までであった(これは資産価値にも多大な影響を与える)。そのため「タルガ・フローリオ」や「トゥル・ド・フランス・オートモビル」など、他の著名な公道レースもこの時代に栄華を極めた(いずれもクラシックカーラリーとして後に復活を遂げている)。アウディチーフデザイナーであったシュテファン・ジーラフは、"今日、車のデザインは複雑なシェイプとラインの組み合わせが主流になっています。それで顧客の興味、関心を引こうというわけです。ですが、彼らの興味はすぐに冷めてしまいます。...よいデザインとは、細部で凝っているけれど全体で見るとシンプル、そういう方向です。もしあなたが2本のラインと面で1台の車をデザインできるなら、その車は未来永劫、傑作と呼ばれるものになるでしょう。"と述べており[72]、またそういった傑作を時代の変化に合わせながらも見事に創り続けているのが、ポルシェ・911であるとも話している[72]。ポルシェ・911は、デザインコンセプトを1948年の356から継承していることで知られており[73]、その普遍性に魅了された者は数多くいる[74]

1960年代以降になると、欧州の高級車やスポーツカーは、伝統にこだわらず常に新しいものを求める新たな顧客(富裕層)の台頭によって、そのイメージやコンセプトが変化、デザイン性も大きく揺らいでいくことになる[66](=カジュアル化。アメリカでは、1950年代に同様の理由から欧州よりも一足早く本格的なデザインの変化が訪れるが、こちらはその変化によって逆に「アメ車」としてのアイデンティティを確立させることに成功している[75]後述))。そのため、1990年代以降における、1960年代以前に製造されたクラシックカーへの関心の高まりや世界的な価格高騰は、人々が未だ紳士的な生活をしていた古き時代へのノスタルジアによるものだという意見もある[69]英国王室では、重要な式典における自動車の起用に際して、現行車種ではなく1960年代以前の古典的なデザインを有したイギリス車が抜擢されることも多い。ロールス・ロイス・ファントムIV(1953年製、特注のランドーレットスタイル)は40年以上に亘ってエリザベス女王の公務に使用され[76]ウィリアム王子キャサリン妃の結婚披露の際にはアストンマーティン・DB6(1969年製、チャールズ皇太子の愛車)が、ヘンリー王子メーガン妃の際にはジャガー・Eタイプ(1968年製、EV化が施された車両)が使用された[77]

1960年代以降のカーデザイン

1950年代初頭、アメリカの自動車ブランドの経営陣たちは、戦後の好景気と自動車の大衆化に煽られて、従来のコンサバティブなデザインからの完全な脱却を図ろうとしていた[78]。そこで1950年代中頃から後半にかけて誕生したのが、「フルサイズ」としてカテゴライズされる、異彩を放った高級車群である[79]。これらは、車高が低く、幅広・長大でエッジの効いたボディ、豪勢なテールフィンなど、今までの主流のデザインとは一線を画していた(ただし初期デザインに関しては、フェンダーの峰やボンネットの隆起など、フロントマスクに未だクラシカルな趣が残されていた)。その特徴の多くは国内のより安価な乗用車に対しても適用されていったが、後にそれらからテールフィンが取り除かれ、フロントノーズもフェンダーの峰が無くなり「フラットデッキ」化が図られたことで、隆起・丸みのない完全にモダンな箱型のデザインへと移行していく[80][81]。アメリカ国内におけるこれらのスタイリングの流行は国外に多大な影響を与え、特に後者の角張った箱型のデザインは1960年代以降の世界的な主流となった[82]。その起因は、製造技術の進化によって角張ったデザインでも十分な強度を確保できるようになったという技術的な理由の他に、好景気によって自動車をステータスシンボルとして扱うようになったことでデザインに対して強さや大きさを求めはじめたという心理的な理由などからであった[82]。これら一連のデザインがいわゆる「アメ車」のイメージを確立させたとも言われ[75]、テールフィン時代のアメリカ車は、ベトナム戦争泥沼化以前のアメリカにおける"娯楽に時間を費やした楽しい時代"の象徴として[83]、またフラットデッキ時代のアメリカ車は、ローライダーなどのカスタムや映画のカーチェイスに使用されるような頑丈・屈強でアウトローな自動車として(マッスルカーなど)[84]、或いは一貫して見られるその重厚感から「アメリカン・ドリーム」を具現化するものとしてイメージされている[85]

1960年代後半からはマイナーなコーチビルダーの消滅が顕著に見られはじめた。それは、この時期あたりからモノコック構造がスポーツカーや高級車にも普及しはじめ、ボディの架装という概念が無くなりつつあったためである[86]。或いは、同じく1960年代後半から3次元CADが自動車製造業界に参入したことで、自動車設計のデジタル化も徐々に見られるようになっている[87]

ウェッジシェイプを纏った1970年代のスーパーカー、ランボルギーニ・カウンタックLP400フェラーリ・512BBi

1970年代になると、ジウジアーロガンディーニによる「ウェッジシェイプ」デザインが注目を浴びる[88]。空気抵抗の低減を目的とした「フラッシュサーフェス[注 10]」化の確立とも言える近未来的でシャープなスタイリングは、スポーツカー業界を席巻した。その特徴は、ノーズ全体がくさび形(三角形)をした平滑な前傾型ノーズや、ウエストラインが後方にかけて持ち上がっていく、その前傾姿勢の形状にある。ダウンフォースを生み出し高速性能を向上させるほか、重心が後ろ側に加わった戦闘態勢のようなスタイリングにより、スピード感や躍動感が演出される効果があった[89]。また前照灯をボディ内に格納するリトラクタブル・ヘッドライトは、フラッシュサーフェスを成し遂げ、かつノーズの傾斜を強めるのに最適な構造であったため、ウェッジシェイプデザインと見事に融合し、その双方の流行を加速させた[90]。日本ではこのスタイリングが1970年代の少年らに大人気となり、「スーパーカーブーム」を引き起こした。因みに「スーパーカー」という名称もこの時点で誕生したため、この時代以前の高性能車に対して「スーパーカー」と呼ぶことはほとんどない[91]

1987年のミュンヘン

1980年代以降は、1970年代の2度のオイルショックによるガソリン価格高騰や排ガス規制によって空力の重要性が量産車にも意識されはじめたことに加え、プレス成型技術も進化したことから、空気抵抗を意識しながらも室内を広く設計できる、「丸」と「角」を組み合わせたデザインへと自動車業界全体が徐々にシフトしていく[82]。そのため、角張った箱型のデザインは姿を消しはじめ、ウェッジシェイプも以前のような明確なエッジを用いなくなり、滑らかなものとなった。またメッキ製であった前後バンパー樹脂製となり、ボディ全体の一体感がより増すことになる[92]。1990年代後半には、ATの普及や電子制御化によるイージードライブが自動車のブラックボックス化を加速させたために、デザインに「プロダクト・セマンティクス(製品意味論)」を注視しはじめ、ヘッドライトに有機的な意匠(人間の目や猛禽類の目をモチーフにしたデザイン)を取り入れていく[93]。また自動車部品の標準化やプラットフォームの共通化も1990年代から加速の一途を辿っている[94][95]

2006年のデンマークにおける、カー・オブ・ザ・イヤーの選考対象車

2000年代には、大衆車や量産車においてもウェッジシェイプ化が加速したほか[96]、従来の「丸」や「角」といった業界全体のトレンドがなくなり、デザインの多様化が進んだ[97]。ただし安全規則が増えたことでフロント部分ないしボディ全体が膨らみ・厚みを持つようになり、以前のように自由なデザイン性を見出すことは難しくなった[98]。加えて、コンピュータによって空力性能の解析が著しく発展したことにより、デザインの幅が却って狭まることに繋がった[99]。その他に、異型ヘッドライト[注 11]の高度化によって縦に引き伸ばされたような前照灯の巨大化とそのLED化によって照明類のデザインの自由度が増したことで、各メーカーは前照灯や尾灯でその自動車の個性を見出しはじめ、かつてのボディの造形に注力する姿勢は相対的に少なくならざるを得なかった[100]

マツダ3(2019年製)。ボディサイドに波打つような造形が見られる。
フェラーリ・ローマ(2020年製)。フェラーリはこのモデルを1950 - 1960年代のエレガンスを有したフェラーリGTモデルの正統な後継車種としており[101]、新たなテクノロジーを用いながらもデザイン性を原点回帰させた形となった[67][102]

2010年代に入ると、今までの単なる直線的なプレスラインを使用しなくとも、ボディに奥行きを持つ立体的かつ複雑なシェイプを持たせることが可能になり、それによってシンプルな造形でありつつもボディ各部に波打つような局部的な陰影が発生するようになった[103]。或いは、1990年代からクラシックローテクノロジーを注視する兆しが各分野で見られはじめており、パイクカーの発売を筆頭に、2010年代になると高級車やスポーツカーにおいても、かつての伝統的なクラシックカーのイメージを彷彿させるデザイン性が潮流となっている[104]2020年代以降は、自動運転の実用化により、インテリアデザインの造形がより注目されるようになる可能性や[105]、完全自動運転によって自動車事故が全く起こり得なければ、カーデザインに対して自由度が格段に上昇するという可能性もあり[106]、自動車の存在意義が左右される新たなデザイン時代に突入しようとしている。

インテリアデザイン

洗練されたジャガー・MK-IX(1960年製)のインテリア

自動車におけるインテリアデザインには、装飾の効果的な使用や素材の質感により生み出される重厚感、機能性・合理性の追求によるミニマリズム、或いはダッシュボード上に埋め込まれた計器類によるメカニカルな魅力、ステアリング・ホイールの曲線美、といった自由な表現力を見出すことができる。近年では安全性や耐久性もデザイン設計における大きな指標となっている。また自動車は運転が主な使用法であるために、エクステリア以上にインテリアは重要な地位を占めており、車外の景色との調和性も考慮される。

モータースポーツ

フォーミュラ1(F1)

自動車を操縦し、より高速なスコアタイムを目指すことはスポーツの一種として認識されており、モータースポーツと呼ばれる。とにかく速く走るためのスポーツ専用車であるフォーミュラカーで走ることが全てではなく、市販車や自作車でのレース、また長時間の運転となる耐久レース、一般公道で行われるラリーや、自然のままの過酷な道を走破するラリーレイドなど、多彩なものが世界各国で開催されている。フォーミュラ1(F1)やインディ500ル・マン24時間レースダカール・ラリーといったものは特に著名な国際大会である。またその中でも、1929年からモナコ公国で行われているF1レース「モナコグランプリ」は、モナコ公爵家が後援、観覧し、トロフィーも公爵家から直接授与されることから、自動車レースの古き伝統、格式を保守している大会として知られている。

日本におけるモータースポーツの進展は、1936年に、日本初の常設サーキットとして多摩川河川敷に『多摩川スピードウェイ』が創設されたことから始まる。第一回大会では、三井高公男爵が輸入したブガッティやベントレーをはじめ、ホンダ創業以前の本田宗一郎が自作車でレースに参戦したほか、日産創業者の鮎川義介がスタンドでレースを観戦するなど、日本自動車レースの幕開けとも言えるレースであった[107]。その後1957年の群馬県北軽井沢での『浅間高原自動車テストコース』開設に続き、1962年には三重県鈴鹿市に本格レーシングコース『鈴鹿サーキット』が登場した。翌年に当サーキットで「第一回日本グランプリ」が開催され、これが日本における本格的な自動車レースのはじまりとなった。1965年には千葉県船橋市に『船橋サーキット』が、翌1966年には静岡県小山町に『富士スピードウェイ』が開設されている。『船橋サーキット』では、浮谷東次郎生沢徹黒澤元治といった名ドライバーたちがしのぎを削ったが、たった2年で閉鎖されたことから「伝説のサーキット」とも言われるようになった[108]。また1965年は、F1世界選手権メキシコグランプリで、ホンダがフェラーリロータスを抑え初優勝を飾った年でもある。

自動車趣味

愛好家により廃車の状態から修理・復元されたクラシックカー
日本発祥の文化である自動車のチューニング(東京オートサロン2019)
欧州のクラシックカーイベントでは、貴族文化へのオマージュとして、リゾート地のほかに宮殿が開催地となることも多い。画像はドイツのディック城で毎年開催されるイベント、「ディック城クラシック・デイズ」 (2008年) 。

趣味としては、自動車を走行させるだけに限らず、プラモデルミニチュアカーなどといった精巧な自動車のミニチュアの製作や収集、また部品の収集や写真の撮影など多岐に渡る。走行する自動車に関する趣味としては、様々な自動車に乗車することを趣味にしたり、自動車の改造やメンテナンスを趣味にすることもある。改造車の形態としては、アート化に重点を置いたローライダーやデコトラ、スピード化に重点を置いたチューニングカーやスポーツコンパクトといったものまで多様に存在する(詳細は「Category:改造車の形態」を参照)。

また、クラシックカーや旧車・ヴィンテージカーなどと呼ばれる、過去に製造された車両を復元・保存する愛好家もいる。クラシックカーに関しては文化的・歴史的・資産的価値が認められることもあり、それらを使用した展示会や走行会は、愛好家と地方行政とが密に連携することで地域活性化の一環とされることもあ(もとより公道を走行するイベントでは、行政との連携が必須である)。また、特に価値を認められたクラシックカーは、各種オークションなどで極めて高い値で取引されることもある(日本円にして数千万円から数十億円の値が付くこともある。詳しくは「オークションで落札された高額な車の一覧」を参照)。ヨーロッパはクラシックカーに対する造詣が深いとも言われているが[109]、年々排ガス規制が厳しくなっており、パリでは2016年から「1997年以前に製造された自動車(いわゆるクラシックカー)」の平日の市内走行を全面禁止とする[110]など、自動車を取り巻く状況は刻々と変化している。

自動車を格納するガレージは、自動車のメンテナンス場所としても使われる。趣味の拠点として独り籠って利用されることもあるため「隠れ家」とも形容され、しばしば男性の憧れの対象となる。バラエティ番組所さんの世田谷ベース』は、これらの魅力を前面に出した番組である。また最近では、リビングなどの居住空間からガラスを通して自動車を眺めることができるビルドインガレージも話題となっている[111]

バス(「バスファン」を参照)やトラックタクシーを趣味にするものもいる。書店販売上の分類などでは別の範疇に含まれることも多いが、これも広義での自動車趣味である。

リゾート地は、美しい風景や冷涼な気候といった良好なドライブ環境に加え、人々の来訪によって自動車に重要なインフラも十分に整備されているといった理由から、自動車関連のイベントが数多く開催されている。ドライブを主目的とした観光道路有料道路などもしばしば点在している。ヨーロッパではイタリアのコモ湖畔やフランスのビアリッツ、スイスのレマン湖畔など、日本では首都圏近郊の別荘地である箱根軽井沢日光富士五湖周辺などが挙げられる[112][113][114][115]。これらの地域は、いずれもかつて貴族や上流階級の人々が休暇を楽しんだ場所であり、そのオマージュとしてクラシックカーのイベントが行われることも多い[112]。また日本では前述した地域に自動車展示施設も多くあり、人気を博した。世界的自動車コレクターの松田芳穂は、1980年に「軽井沢古典車館」を旧軽井沢に創設、翌年には仙石原に「ポルシェ博物館」を、その後御殿場市に「フェラーリ美術館」を開館するなどしている[116](現在は全て閉館)。河口湖付近には、同じく自動車コレクターであった原田信雄の私的コレクションが「河口湖自動車博物館」として公開されている[117](毎年8月のみ開館)。言わずもがな、これら以外にも全国各地に自動車博物館は存在している(「Category:日本の自動車博物館」を参照)。

このように、自動車は単に人や物資を輸送するだけの存在に留まらない。ただし若者の「自動車離れ[注 12]」は、近年になって、日本はもとよりヨーロッパなどにおいても顕著に表れはじめている(詳しくは「若者の車離れ」を参照)。

自動車とファッション

ジャケットとドライビンググローブ

自動車はファッションと密接な関係がある[118][119]

自動車は、本質的には馬車から派生した移動手段の道具であるが、その長い歴史の中で他の様々な文化、事物からモチーフを得ながら独自に発展していった。それは貴族文化やダンディズム、サブカルチャー、或いは航空機船舶など実に様々である。これらは現代においても、乗車する際に身につけるアクセサリーなどにその名残として残されている場合がある。また逆に自動車が服飾品に影響を与えることもあり、腕時計は特に著名な例である。加えて、自動車のエクステリアが女性のファッションに例えられることもあり、イベントコンパニオンはその代表例として挙げられる[120]

ファッション雑誌などでは自動車を広告塔として利用する例がある。ファッションデザイナーで知られるラルフ・ローレンは、2017年に、自宅ガレージにて自身のカーコレクションを用いたファッションショーを開催している[121]

自動車ブランドと服飾ブランドが共同で作品を製作することがあり、モーターショーなどで披露されている[122]。運転の際に使用されるドライビンググローブやドライビングシューズなどについても、ヨーロッパ各国の服飾ブランドで数多く販売されており、グローブではデンツが、シューズではトッズサルヴァトーレ・フェラガモなどが著名である[123]。またポルシェが「ポルシェデザイン」と称する服飾ブランドを個別に展開、或いはフェラーリやベントレーが香水をプロデュースするなど、自動車ブランドが服飾部門を別途に立ち上げることもある[122]。日本車においては、トヨタGRレクサス日産ホンダなどが参入している。

イタリアのピニンファリーナや日本のKEN OKUYAMA DESIGNといったカロッツェリアは、自動車のデザインから建築家具眼鏡化粧品に至るまで、様々な分野のプロダクトデザインを手掛けている。

ショパール「ミッレミリア2018」
タグ・ホイヤー「モナコ/40周年記念復刻モデル」

スイス高級時計で知られるショパールは、1988年からミッレミリアの公式スポンサーとなり、毎年リミテッドモデルをリリースしている[124]。同社社長のカール・フリードリヒ・ショイフレは、"上質な車の愛好家は得てして上質なタイムピースを好みます。その逆もまた然り。どちらにおいても、最高の精度とスポーティなエレガンスが最も大切な要素であるからです。"と述べる[124]。同じくスイス高級時計のタグ・ホイヤーは、古くからレーシングスピリッツを重視していたが、1971年にスクーデリア・フェラーリとパートナーシップを結び、そして同年のレース映画『栄光のル・マン』の制作中にスティーブ・マックイーンが同社モデル「モナコ」を着用したことで、自動車業界の一躍人気時計ブランドとなる[125]。また上記でも述べたラルフ・ローレンは、"Art Deco Automobiles"時代の名車ブガッティ・タイプ57SCアトランティックをコンセプトにした腕時計を製作している[126]。他にも、A.ランゲ&ゾーネIWCカルティエジャガー・ルクルトジラール・ペルゴブレゲリシャール・ミルロレックスなど、数多くの時計メーカーが自動車との関わりを持っている。

白洲次郎、ヘルベルト・フォン・カラヤン三船敏郎マイルス・デイヴィス、スティーブ・マックイーン、ジェームズ・ディーンなどは、熱狂的な自動車愛好家であったとともに、その洗練された装いからファッションリーダーとしても注目された。

自動車とステータス

自動車に限らず、古くから「モノ」とステータスは相互関係にある。かつての人々は先天的に社会的地位が固定されていたため、それに付随して、個々の階級の人々が使用する「モノ」に対しても自ずと社会的地位が発生した。これがステータスシンボルブランド)として大衆に認知されるようになる。

中流階級でも財を成すことが可能になった近代ヨーロッパにおいては、多くの新興富裕層が伝統的な上流階級のライフスタイルを模倣し、そのステータスに準じたプリンシプル、教養を身に付けた。この貴族精神の文化から生まれたステータスシンボルの典型例として英国車が挙げられる。いずれも伝統的なブリティッシュネスを保守しているためにロイヤル・ワラントを授与された、ランドローバーやベントレーなどの高級車ブランド、或いはジャガーアストンマーティンといった古典的スポーツカーブランドである[127]。ただしこの文化では、あくまでも"自身の使用していた「モノ」が自然とステータスシンボルに転じた"という無頓着な立場をとっており、"周囲に対して故意にステータスを誇示する"のは恥とされた(「ダンディズム」思想・「スローン」主義)[34][128]

しかし競争社会に入り、誰もが後天的に社会的地位を獲得し得るようになると、他者との差別化を目に見える形で反映させるために、かつてのプリンシプルや教養を無視し、あからさまにステータスを誇示するようになる(「成金」思想)[129]。日本では高度経済成長期からバブル期に至り、社会的地位の象徴を「モノ」に求める思想が過度に増幅された[130][131]。それは自動車業界にも反映され、スペシャルティカーハイソカー、スーパーカーの誕生にも寄与した[132]

因みに現代の日本では、"モノを買うこと"ではなく、"仲間と共感すること"に対してステータスを得ているといい、「若者の車離れ」もこれに起因するという[133]。いずれにしても、民衆がステータスを追求することに終始しているという事実は、古くから変化していない。

自動車と映像作品

レース映画やカーアクション映画などの自動車を主題とした映画は、長年に亘り世界中で人気である(「Category:自動車を題材とした映画作品」を参照)。

一方で、自動車を直接的な主題としていない映画においても、自動車の魅力を効果的に利用した類のものがある。著名な例としては、『007 シリーズ』(1962年 - )のボンドカーや『死刑台のエレベーター』(1957年)のメルセデス・ベンツ300SL、『タクシードライバー』(1976年)のチェッカー・イエローキャブなどである[134]。ドラマでもそのような例は多くあり、『刑事コロンボ』(1968年 - 2003年)のプジョー・403や『相棒シリーズ』(2000年 - )の日産・GT-R日産・スカイラインなどがある。またミュージック・ビデオCMなどにおいても、自動車の魅力を効果的に利用した作品は少なくない。

自動車とサウンド・音楽


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"天使の咆哮"とも称される2009年式(市販型プロトタイプレクサス・LFAのエンジンサウンド(V型10気筒DOHC40バルブ(1LR-GUE型

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ガソリンエンジン内燃機関より自然に発生するエンジンサウンドは、物理的な技術によって芸術的な音が生まれるというその特異なメカニズムから、幾多の自動車ファンを魅了してきた。そのため自動車ブランドの多くは、エンジン音にも積極的なチューニングを施している。中でもフェラーリに代表されるV12エンジンや、或いはF1カーなどから発せられる高音のエンジンサウンドは、旧来から魅力的とされてきた[135]。ただし近年のF1では、レギュレーションの変更や技術の向上などによってエンジン音の静音化が進んでおり、この音の変化に対して否定的な意見を持つ者もいる[136]

昨今のトレンドである電気自動車では、エンジン音が存在しないため、電子的な合成音を使って魅力的なエンジンサウンドを作りだそうとするブランドが増えている[135]。その中でも2019年6月に発表されたBMWのEVコンセプトカー "Vision M Next"では、エンジンサウンドの制作に作曲家ハンス・ジマーが起用されており[137]、エンジン音に対する概念は変化しつつある。

自動車の車内は、一定の空間を保有しながら、それでいて閉鎖的でもあるため、音楽を楽しむには好適な環境である。そのため、カーオーディオは自動車関連用品の中でも重要な位置を占めている。

音楽プロデューサー/自動車評論家の松任谷正隆は、音楽と自動車について、"音楽はサブスクリプション、クルマはカーシェアが普及していくのでは、という状況は共通していて、ビジネスモデルの変化が危機感を持って語られたりしていますが、これは音楽やクルマがコモディティ化していくこととは違うと思うんです。音楽やクルマも状況が変わってもその中で情熱を持ってつくられていくものだと思う。"と述べている[83]。自動車を題材とした音楽作品については、「Category:自動車を題材とした楽曲」を参照。音楽の存在を重視した自動車映画としては、『チキ・チキ・バン・バン』(1968年)や『ワイルド・スピードシリーズ』(2001年 - )、『ベイビー・ドライバー』(2017年)などがある。


注釈

  1. ^ en:taxiなど。
  2. ^ オートバイによる同様の行為は「ツーリング」、自転車によるものは「サイクリング」あるいは「ポタリング」である。
  3. ^ 事務局は帝国ホテルに置かれ、会長に大隈重信、メンバーには大倉喜七郎、伊東巳代治寺内正毅後藤新平渋沢栄一尾崎行雄といった政財界の名士が名を連ねた。またイギリス、ドイツ、オーストリア、オランダの各大使、公使も参加し、クラブは一大サロンとなった[42]。当時の自動車所有者はほとんど入会したためにその影響力は大きく、自動車税の決定など行政的な業務も行なっていた。
  4. ^ 有栖川宮は日本で初めてドライブツアーを行った人物として知られる[45]
  5. ^ 1907年には純国産の実用化されたガソリン車が開発されている。
  6. ^ 別名スラブサイド、フルワイズ、ポントンボディ。フェンダーとボディが独立せず、一体になっている構造のこと。
  7. ^ 手前からBMW・328アルファロメオ・8C
  8. ^ 手前がジャガー・Cタイプ、左奥がジャガー・XK120、右奥がポルシェ・356
  9. ^ 手前からアルファロメオ・TZマセラティ・250Sフェラーリ・250GT SWBアストンマーティン・DB4
  10. ^ ボディ表面から突起や凹凸をなるべく少なくして、空力特性や見栄えを向上させる構造のこと。1970年代のウェッジシェイプ化に伴って注目されはじめ、1980年代から量産車にも普及。2020年現在までの主流となっている。
  11. ^ 1980年代から普及した、丸型や角型以外の形状をしたヘッドライトのこと。1980 - 1990年代までは、主に横長の長方形台形、或いは楕円形のようなデザインが多かった。ヘッドライトカバーがガラス製から樹脂製に変わったことで、より複雑な形状が見られるようになる。
  12. ^ この場合の「自動車」とは、趣味・娯楽として利用される「自動車」のこと。
  13. ^ 出典元に記載がないため、記載されている台数と台湾の頁の人口より算出。
  14. ^ Google Mapでロサンゼルスの午前6時版から午前9時半、午後3時から午後7時の間のトラフィックを見るとピーク時には大半の高速道路で渋滞が見られる。

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