商業主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/07 04:31 UTC 版)
商業主義(しょうぎょうしゅぎ、英: commercialism コマーシャリズム[1])とは、商業における利潤(利益)を最大化しようとする傾向[2]。金銭的利益を得ることを第一とする考え方[3]。他のあらゆる価値よりも営利(利益額)を最優先させる考え。営利主義とも[4]。
概説
商業主義とは、利潤(利益)を最大化しようとする考え方[2]や、金銭的利益を得ることを第一とする考え方[3]である。
商業主義が行き過ぎると、自社(自らの所属する組織)の側の目先の利益額、目先の金銭的利益の額(数字)が大きくなることだけを追い求め、他の重要なことがらや価値を軽視するあまり、法律・法規やルールを無視したり、顧客や消費者をないがしろにしたり、顧客や消費者に損失・損害を与えるようなことをしたり、果ては人命を軽視するようなことや人が死んでしまうようなことまでやりがちである。
報道では企業によって様々な不正や偽装事件が起きるたび、組織にはびこる営利主義(商業主義)が様々な反社会的行為・犯罪行為を生んでいるとも指摘され、営利主義は批判されている。
問題点
- 企業経営。営利主義の問題点の指摘
人間というのは「(企業組織の経営は)利潤を最大化さえすればよいのだ」などと考えだすと、「市場を独占して暴利をむさぼればいいんだ」[5]、などと考えたり、「自分以外の人々に不正な方法で損害を与えてでも、自分だけ巨大な利潤を得ればよいのだ」などと考える、とんでもない輩が出てくることがある。
ピーター・ドラッカーは、企業にとって利潤が重要であることは認めてはいるものの、「企業の経営目的は利潤ではなく、顧客の創造である」とも述べている[5]。
松下幸之助の経営哲学本には、企業の社会性というのは大事なことである、と書かれている[6]。松下幸之助は「適正利潤の確保」という概念で説明した[7]。(つまり経営哲学には「(利潤の)最大化」とか「利益最優先」などという愚かな考え方は避けた。 )
また松下は、企業が納税することは社会にとっても必要である、とした[7]。なお(民間組織というのはそれができる、と、すでに人々は知っているが)、松下幸之助は、政府というものも、単年度ごとの「予算」などという、不合理な方式で運用せず、民間組織同様に、何年もの運営を視野におさめた複数年の運営方式で、資金を溜めつつ運営すれば、税金を取ることなしに運営できる、と提言した。[8]、
スポーツにおける商業主義
スポーツの世界でも商業主義が横行してしまっており、スポーツの根幹を蝕む問題になっている[9]。たとえばオリンピックは、会場では広告看板は見えない(あたかもスポンサリングが行われていないかのような錯覚を生む)が、その舞台裏では莫大な放映権料やスポンサー料がIOCの懐を潤し、競技自体にまで影響を及ぼしている、という実態がある[10]。
関連事象、関連事件
- 納税の大がかりな回避。タックス・ヘイヴン。パナマ文書、パラダイス文書。
- スポーツ大会の商業化。近代オリンピック#アマチュアリズムの崩壊とプロ化[11]
- FIFA、2015年FIFA汚職事件
- いわゆる「ブラック企業」の諸問題。労働基準法の無視。長時間労働の強要。時間外労働の不計算("サービス残業") 等々。
- 構造計算書偽造事件
- 東洋ゴム工業#不祥事
- 旭化成建材#杭打ちデータ改ざん問題
- レオパレス21の施工不備事件
- 銀座眼科事件、山本病院事件
- 食の安全#歴史。残滓牛乳事件、雪印集団食中毒事件、雪印牛肉偽装事件、産地偽装、船場吉兆#不祥事
- 日本山岳会#ナイロンザイル事件
- セウォル号沈没事故
- フォルクスワーゲンによる排ガス試験すりぬけ工作事件
- 三菱自動車#燃費試験の不正事件
参考文献
- 土方千代子、惟野裕美子 『「経営学」の基本がすべてわかる本』秀和システム、2009
- ジェームズ ミッチェナー『スポーツの危機 上―人工化と商業主義横行への総批判』サイマル出版会、1978
- 小川勝『オリンピックと商業主義』集英社、2012
出典・脚注
- ^ 広辞苑第六版「商業主義」。「コマーシャリズムに同じ」との解説。
- ^ a b Oxford Dictionaries. "Emphasis on the maximizing of profit"
- ^ a b 大辞林第三版「営利主義」
- ^ 広辞苑第六版「コマーシャリズム」
- ^ a b 土方千代子; 惟野裕美子 『「経営学」の基本がすべてわかる本』、57頁。
- ^ 松下幸之助 『経営にもダムのゆとり』。
- ^ a b 松下幸之助 『経営にもダムのゆとり』、75-185頁。
- ^ http://www3.tokai.or.jp/kazuyoshi-giin/koenkai-news-muzei.htm
- ^ ジェームズ ミッチェナー『スポーツの危機 上―人工化と商業主義横行への総批判』1978
- ^ 小川勝 『オリンピックと商業主義』集英社, 2012年。
- ^ 小川勝『オリンピックと商業主義』集英社、2012
関連項目
関連書
- 國島弘之ほか『「社会と企業」の経営学―新自由主義的経営から社会共生的経営へ』ミネルヴァ書房、2009年
商業主義
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1984年のロサンゼルス大会は画期的な大会で、大会組織委員長に就任したピーター・ユベロスの指揮のもとオリンピックをショービジネス化した。結果として2億1500万ドルの黒字を計上した。スポンサーを「一業種一社」に絞ることにより、スポンサー料を吊り上げ聖火リレー走者からも参加費を徴収することなどにより黒字化を達成したのである。その後「オリンピックは儲かる」との認識が広まり立候補都市が激増し、各国のオリンピック委員会とスポーツ業界の競技レベル・政治力・経済力などが問われる総力戦の様相を呈するようになり、誘致運動だけですら途方もない金銭が投入されるようになってゆく。 1989年12月のマルタ会談を以て冷戦が終結してからオリンピックへの冷戦の影響は減り、共産圏と旧共産圏のステート・アマも減ったがその反面ドーピングの問題や過度の招致合戦によるIOC委員に対する接待や賄賂など、オリンピックに内外で関与する人物・組織の倫理面にまつわる問題が度々表面化するようになった。招致活動や関連団体への政治家の参入も増えている。 北京大会(+約10億元)やロンドン大会(+約3000万ポンド)は、黒字となり商業的には成功した。 一方でIOC加盟、非加盟にかかわらず、ほとんどの国際競技連盟主催の大会で会場広告は許されておりパラリンピックでも許されるようになったが、オリンピックではかたくなに禁止されている。広告収入がないだけでなく、オリンピック開催時の会場常設広告費の補償や撤去費、復元費は開催都市の負担を増している。
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