ハイパーカーとは? わかりやすく解説

ハイパーカー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/16 15:18 UTC 版)

ハイパーカー(Hyper Car)とは、自動車の分類の一種である。メガカーとも呼ばれる。スーパーカーよりも高性能で出力も高い車のことを指す。

メルセデス-AMG プロジェクトワン

概要

1999年のパガーニ・ゾンダの登場以降に生まれたとされる、スポーツカーの一区分[1]。既存のスーパーカーと比べ、さらに高額(一般的にはメーカーの販売価格が億円単位)で高性能なスポーツカーを指す。2000馬力や最高時速500km/hにも到達するものなど、スペックだけなら世界選手権レベルのレーシングカーを遥かに凌ぐものを有している[2]車種も多々あり、外観もレーシングカーに近い。特にハイブリッドカーEVの技術が発達した2010年代以降は多数の高級車メーカーが参入しているほか、普段量産車を手がけていない企業もハイパーカー市場に参入する例も後を絶たない。その高額さからほとんどが限定生産で、生産台数が5台未満のものも珍しくない。

モータースポーツ

トヨタ・GT-One TS020LM-GT1規定)

1990年代、公道規則に合致したスポーツカーをベースとするLM-GT1規定およびFIA-GT1規定のもとに、稀少生産の高性能公道モデルが多種登場した。これらは「ハイパーカー」という概念より先に登場したため一般的にはそうは呼ばれていないものの、億円単位の価格でレーシングカーのフォルムと性能を有しており、十分ハイパーカー足り得るものだった。しかしコストの高騰ゆえに相次ぐ撤退から、1999年をもって両規定は廃止された。

世界的なグランドツーリングカー(GT)レースのスポンサー活動で知られるブランパンは2015年に『ブランパンウルトラスポーツクラブ』を誕生させており、ハイパーカーを用いたアマチュアレースを開催している[3]

2020年、ル・マン24時間レースFIA 世界耐久選手権(WEC)ではハイブリッドのワークスとノンハイブリッドのプライベーターの戦闘力の乖離が著しいLMP1規定に代わり、ハイパーカーをコンセプトとしてコストも低く抑えた新たな『ル・マン・ハイパーカー』(LMH)規定を採用することになった[4]。一方でウェザーテック・スポーツカー選手権の主催者である国際モータースポーツ協会(IMSA)は、2020年に独自のプロトタイプ規定である『ル・マン・デイトナ・h』(LMDh)を発表したが、IMSAとFIA・ACOの話し合いによりLMH/LMDh規定のマシンが相互参戦することが認められている[5][6]

2021年3月現在、LMHについてはトヨタ(2021年〜)/グリッケンハウス(2021年〜)[7]バイコレス(2023年〜)/プジョー[8](2022年〜)/フェラーリ[9](2023年〜)が参戦する意向を示す一方で、LMDhはポルシェ[10](2023年〜)/アウディ[11](2023年〜[12])/アキュラ [13](2023年〜・現状IMSAのみへの参戦予定)が参戦を表明しており、メーカーによってどちらの規定を選択するか態度が分かれている。

ル・マン・ハイパーカー規定

2019年6月にフランス西部自動車クラブ(ACO)が発表した『ル・マン・ハイパーカー』のレギュレーションは以下の通り[14][15]

  • 車重は最低1030kg。
  • エンジン出力は最高670馬力に制限され、サルト・サーキットのラップタイムは3分30秒前後になる見込み。エンジン出力は後輪の駆動にのみ使用される。
  • ハイブリッドモーターの搭載は任意。ただしハイブリッドを採用する場合、モーター出力は最高270馬力に制限される。またモーターは前輪駆動にのみ用いられる(つまりハイブリッド車両は必然的に四輪駆動となる一方で、非ハイブリッド車両は二輪駆動となる)。
  • 現行のLM-GTEクラスにも採用されている、人間性を排除したアルゴリズムを採用するBoP(Balance of Performance)により、車種間の性能調整が随時行われる。
  • 市販車として参戦する場合、2年間で20台以上の車両を生産しホモロゲーションを得る必要がある。プロトタイプとして参戦する場合はこの制限を受けない。
  • 参戦メーカー

LMDh規定

2020年9月にACOとIMSAが発表した『LMDh』のレギュレーションは以下の通り[6]

車種

ハイパーカーに厳密な定義は存在しないが、ここでは製造メーカーが「ハイパーカー」と明記している車種に限り記載する。

ギャラリー

脚注

  1. ^ 自動車ニュースを読み解く(16) 「ハイパーカー」と「スーパーカー」その線引きは? マイナビニュース 2016年7月13日
  2. ^ 現在のF1は最大でも1000馬力・380km/h程度である
  3. ^ 2016.08.03 「世界最高のGTレースを提供する」拡大を続けるSROのGT3/GT4戦略
  4. ^ ACO、2020年WECの『新トップカテゴリー』の概要を発表。“ハイパーカー”とコスト削減を狙う as-web 2018年6月15日
  5. ^ IMSAとWECがプロトタイプカーの新カテゴリー、LMDh導入を発表 - motorsport.com 2020年1月25日
  6. ^ a b IMSA&WEC:“LMDh”規則の詳細発表。ハイブリッドシステム供給メーカーも明らかに - オートスポーツ・2020年9月19日
  7. ^ WEC:トヨタはLMH継続の意向。LMDhの哲学は「我々が探しているものではない」とバセロン - オートスポーツ・2020年2月22日
  8. ^ プジョー、LMH車両の開発を決定。2022年に耐久レース最高峰に復帰へ - motorsport.com 2020年9月19日
  9. ^ FERRARI ENTERS THE LE MANS HYPERCAR ERA
  10. ^ ポルシェが2023年からLMDhプロトタイプで再びル・マン24時間レースに参戦へ、トヨタに強敵出現!【モータースポーツ】 - Webモーターマガジン・2020年12月17日
  11. ^ アウディ、LMDhでスポーツカー復帰へ!「カーボンニュートラルと同時に顧客の願いも念頭に」 - オートスポーツ・2020年12月1日
  12. ^ アウディがLMDh車両イメージを初公開。2022年初頭の展開、23年デイトナ参戦を目指す
  13. ^ [1]
  14. ^ WEC finalises 'hyper sport' rules for 2020/21 - motorsport.com 2019年6月14日
  15. ^ 2020-2021年シーズン、ル・マン/WECはいよいよ「ハイパーカー」の戦いになる【モータースポーツ】 - Webモーターマガジン・2019年6月19日
  16. ^ ポルシェとアウディ、LMDhのベースシャシーにマツダDPiと協業中のマルチマチックを選定
  17. ^ ONE-77”. astonmartin. 2024年4月30日閲覧。
  18. ^ アストンマーティン Valkyrie”. astonmartin. 202 4-04-40閲覧。
  19. ^ Aspark Owl”. Aspark. 2024年4月30日閲覧。
  20. ^ THE PAGANI HUAYRA TRICOLORE”. pagani. 2024年4月30日閲覧。
  21. ^ WORLD PREMIERE OF THE NEW PAGANI UTOPIA”. Pagani. 2024年4月30日閲覧。
  22. ^ BATTISTA”. Pininfarina. 2024年4月30日閲覧。
  23. ^ BUGATTI CHIRON PUR SPORT NAMED ROBB REPORT'S BEST HYPERCAR FOR 2021”. BUGATTI. 2024年4月30日閲覧。
  24. ^ America’s Hypercar Hennessey Venom F5”. Hennessey Special Vehicles. 2024年4月30日閲覧。
  25. ^ Mercedes-AMG ONE”. mercedes-benz. 2024年4月30日閲覧。
  26. ^ ESSENZA SCV12”. Lamborghini. 2024年4月30日閲覧。
  27. ^ NEVERA”. RIMAC. 2024年4月30日閲覧。
  28. ^ Lotus Evija(ロータス エヴァイヤ)世界初、フル電動のブリティッシュ ハイパーカー、「Japan Lotus Day 2019(富士スピードウェイ)」にて日本初披露!”. lotuscars. 2024年4月30日閲覧。
  29. ^ FAST & FURIOUS”. wmotors. 2024年4月30日閲覧。

関連項目


ハイパーカー(LMH)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 07:59 UTC 版)

2022年のFIA 世界耐久選手権」の記事における「ハイパーカー(LMH)」の解説

2022年シーズンは、前年同様LMハイパーカーLMH)以外に、経過措置として従来LMP1(ノンハイブリッド)の参戦認められるチーム車両エンジンハイブリッドタイヤNo.ドライバーラウンド トヨタ・ガズー・レーシング トヨタ・GR010 HYBRID トヨタ 3.5 L V6ターボ ハイブリッド M 7 マイク・コンウェイ 1-3 小林可夢偉 1-3 ホセ・マリア・ロペス 1-3 8 セバスチャン・ブエミ 1-3 ブレンドン・ハートレイ 1-3 平川亮 1-3 アルピーヌ・エルフ・チーム アルピーヌ・A480 ギブソン GL458 4.5 L V8 - M 36 ニコラ・ラピエール 1-3 アンドレ・ネグラオ(英語版1-3 マシュー・バキシビエール(英語版1-3 プジョー・トタルエナジーズ プジョー・9X8 プジョー 2.6 L V6ターボ ハイブリッド M 93 ポール・ディ・レスタ 4- ミッケル・イェンセン(英語版) 4- ジャン=エリック・ベルニュ 4- 94 ジェームズ・ロシター 4- グスタヴォ・メネゼス 4- ロイック・デュバル 4- グリッケンハウス・レーシング グリッケンハウスSCG 007 LMH ピポ・モチュール 3.5 L V8ターボ - M 708 オリヴィエ・プラ 1-3 ロマン・デュマ 1-3 ライアン・ブリスコー 1 ピポ・デラーニ 2-3

※この「ハイパーカー(LMH)」の解説は、「2022年のFIA 世界耐久選手権」の解説の一部です。
「ハイパーカー(LMH)」を含む「2022年のFIA 世界耐久選手権」の記事については、「2022年のFIA 世界耐久選手権」の概要を参照ください。

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