放射性物質とは? わかりやすく解説

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ほうしゃせい‐ぶっしつ〔ハウシヤセイ‐〕【放射性物質】

読み方:ほうしゃせいぶっしつ

放射線を出す物質放射能をもつ原子核放射性核種)を含む物質を指す。

[補説] 原子炉核燃料医療分野の放射線療法などに利用されるまた、核爆発原子力発電所事故など放出され場合外部被曝内部被曝により人体悪影響与えおそれがある


【放射性物質】(ほうしゃせいぶっしつ)

自己の質量一部崩壊させて放射線変換する性質放射能)を持った物質総称
広義の放射性物質は自然界のどこにでも存在し炭素14カリウム40等の生物必須元素含まれるし、考古学的な年代測定の手法として物体含有する放射性物質の質量調べる事も広く行われている。
ただし、報道などでこの語を用い場合放射線によって生体短期間死に至らしめるものだけを指す。

狭義の放射性物質は核兵器原材料として有名である。
ただし、これらの物質地球発生しうる自然環境核爆発起こす事はなく、濃度などを調節して外部からエネルギー加える事で初め起爆する
これは原子炉利用する発電所大型船舶についても同様で、このような施設兵器破壊されたとしても核爆発生じる事はない。
原子力での事故起こりうる最も悲惨な事態は、放射性物質が粉塵などに混ざって大気中に拡散したり、生物体内吸収されたり、紛失して知識のない民間人回収される事による放射線障害である。

特に問題なのは、何らかの用途使用された後の放射性廃棄物の処理である。
ほとんどの工業用途では、放射性物質がまだ十分な放射能維持したままの段階利用不可能になって廃棄されるので、それら廃棄物環境汚染引き起こさず廃棄する特別な処理が必要とされる
一般的な処置としては漏出ないよう固形化した上で放射線届かない地中奥深くなどに廃棄されるが、比較安全な廃棄物劣化ウラン弾などの使い捨て同然用途転用される事もあり、湾岸戦争症候群とは別の視点から環境問題としても議論かもしている。


放射性物質

読み方ほうしゃせいぶっしつ
英語表記radioactive material

放射線放出する物質、または放射性核種を含む物質一般的に放射性物質という。
下記法律では、核原料物質核燃料物質及び放射性同位元素という用語を定義している。
  1. 原子力基本法昭和30年
  2. 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律昭和32年
  3. 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律昭和32年

○「原子力基本法」の第三条
核燃料物質」とは、ウラントリウム原子核分裂過程において高エネルギー放出する物質であって政令定めものをいう
核原料物質」とは、ウラン鉱トリウム鉱その他核燃料物質原料となる物質であって政令定めものをいう

○「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」の第二条
この法律において「放射性同位元素」とは、りん三十二、コバルト六十放射線放出する同位元素及びその化合物並びにこれらの含有物機器装備されているものを含む)で政令定めものをいう

上記法律では、最低の放射能値と放射能濃度指定している。
●「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
放射性同位元素数量
  1. 密封されているもの(密封線源
     1個が3.7メガベクレル(3,700000ベクレル)。ただし時計その他の機器又は装置以外の物に密封のもの(放電管煙感知器その他の機器又は装置装備されたものを除く。)であって、それらの集合したものについては、その集合したものごとに3.7メガベクレル。  濃度規定濃度については74ベクレルグラム。 ただし自然に賦存する固体状のものは、370ベクレルグラム

  2. 密封されていないもの(非密封線源
    第1群ストロンチウム90及びアルファ線放出する同位元素
    3.7キロベクレル(3,700ベクレル
    第2群物理的半減期30日超える放射線放出する同位元素
    トリチウムベリリウム7炭素14硫黄355559を除く)
    37キロベクレル37000ベクレル
    第3物理的半減期30日以下の放射線放出する同位元素
    ふっ素18クロム51ゲルマニウム71タリウム201
    370キロベクレル370000ベクレル
    第4群トリチウムベリリウム7炭素14ふっ素18クロム51
    ゲルマニウム71タリウム201
    3.7メガベクレル(3,700000ベクレル

    核原料物質及び核燃料物質は、放射性同位元素であるが、この法律では定義していない。

●「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(使用許可要しない核燃料物質
第十五条
ウラン235ウラン238対す比率天然混合率であるウラン及びその化合物
ウランの量300グラム以下
ウラン235ウラン238対す比率天然混合率に達しないウラン及びその化合物
ウランの量300グラム以下
二号物質の一又は二以上を含む物質原子炉において燃料として使用できるもの。
ウランの量300グラム以下
トリウム及びその化合物
トリウムの量900グラム以下
前号物質の一又は二以上を含む物質原子炉において燃料として使用できるもの
トリウムの量900グラム以下

放射性物質

放射線を出す能力放射能といい、放射能をもっている原子放射性核種という)を含む物質一般的に放射性物質という。また、個々核種限定しない場合は、放射性核種のことを総称して放射性物質ということもある。 放射性物質、放射線及び放射能の関係は、「電灯」が放射性物質に、電灯から出る「光線」が放射線に、そして電灯の「光を出す能力」と「その強さワット数)」が放射能にあたる。 放射性物質

放射性物質

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/04 07:03 UTC 版)

プルトニウム

放射性物質(ほうしゃせいぶっしつ、英語: radioactive substance[1][2][3])とは、放射能を持つ物質の総称である。主に、ウランプルトニウムトリウムのような核燃料物質、放射性元素もしくは放射性同位体中性子を吸収又は核反応を起こして生成された放射化物質を指す[注釈 1]

定義

  • 原子炉で核燃料物質が核分裂して生成された物質を核分裂生成物、原子炉及び設備の鉄骨や水が中性子を吸収して生成された物質を「核燃料物質によって汚染された物質」、濃縮等の製錬によって核燃料物質となる原料を核原料物質という[4][注釈 2]
  • 放射線療法などで使用する放射線を生み出す放射性物質を、放射線源という。
  • 原子力施設や放射線利用施設などで発生する放射性物質を含む廃棄物を、放射性廃棄物という。

放射性物質の測定

放射性物質とは広義には放射性同位体を含む物質をいい、化学的には単一物質と混合物がある[3]。また、化学的には単一の物質であっても、同位体の比率が異なるなど同位体レベルでは異なる物質の混合物であることもあるが、この場合放射化学的に不純であるという[3]

放射性物質は放射能がかなり強くても質量換算および原子数、モル数では極めて微量であることも多く、通常用いる化学的手法で分析することが難しい場合は放射線や半減期を測定することによって分析する[3]。また放射性物質を化学的に単離するには、溶媒抽出やイオン交換など、同時に存在するほかの物質の影響を被りにくい化学的手法が用いられる[3]。また同位体レベルで分離するには化学的手法が通用しないため、質量差を利用した遠心分離など物理的手法が用いられる。

半減期

放射性物質は時間とともに崩壊し、最終的には放射能を持たない安定な同位体となる。その期間を示す指標として半減期という値を用いる。半減期は核種により異なり、1マイクロに満たないものから、ビスマス209の1900年に及ぶものがある。同じ元素でも質量数により大きく異なり、例えば55は2.73年なのに対し、鉄61は5.98秒とかなり短い。半減期が長い元素ほど少しずつ放射線を放出するため放射能濃度が低く、逆に半減期が短い元素は短期間に放射線を放出するため放射能濃度が高い。

自然の放射性物質

核燃料核兵器の製造や、加速器を用いて人工元素を合成することなどで人為的に取り扱われるものばかりが放射性物質ではない。

太陽恒星から降り注ぐ宇宙線中性子)は、大気に含まれる原子や人工物に吸収されて放射化する。例えば、炭素14は、空気中又は鉄骨中の窒素原子が宇宙からの中性子線を吸収して自然に生成される。また、ウラン235が放射線を放出しながら、ラドン等の娘核種を経て生成されていくものもある。

自然界には多種多様の放射性物質が存在し、そのうちのいくつかは生物に取り込まれている。土壌に含まれている放射性物質からは、その地に生息する生物は継続的に被曝している。

放射性物質の管理

人為的に発生させた放射性物質で被曝の恐れがある場所は放射線管理区域に指定されて、厳密に管理される。放射線管理区域には「汚染のおそれのある管理区域」と「汚染のおそれのない管理区域」があり、前者は中性子によって放射化された物質が付着する可能性がある区域、後者はガンマ線の被曝のみの区域である。

放射性物質の利用

放射性物質は工業、農業、医療その他の分野で広く利用されている(放射線)。自然環境に含まれる放射性物質の含有比によって年代測定を行うことができる。生物の必須元素である炭素14やカリウム40などがその指標として計測される。

放射性物質の危険性

核爆発

核爆発を引き起こすことは簡単にできないので、原子爆弾のイメージから放射性物質がたちまち核爆発を起こすと恐れる必要はない。核分裂速度よりも、核燃料物質が中性子を吸収する速度が大幅に大きい場合に臨界といわれる現象を生じるため、核爆発のためには核燃料物質の濃度を高める(中性子を核燃料物質が吸収する確率を高める)必要があり、人為的に核燃料物質を90%以上に濃縮した原子爆弾において生じる。

臨界事故

東海村JCO臨界事故のように、放射性物質が核分裂反応の連鎖を起こす臨界状態になると、短期間に核分裂生成物の生成が大量に行われるため、放射線量が致死量を超える場合がある。臨界になるための条件を臨界条件といい、主に放射性物質の核種質量濃度、形状と、その周囲の状態で決められる。臨界状態にならないように管理することを、臨界管理といい質量管理、濃度管理、形状管理が行われている。

人為的な事故だけでなく、核燃料物質の濃度が高くなった場合は、天然でもオクロの天然原子炉のように臨界状態になることがある。

放射線被曝

放射性物質が発見されたときには、放射線被曝が人体にどのような損傷を与えるかが知られていなかったために、キュリー夫妻のような初期の研究者は放射線障害に苦しんだり、白血病などで健康を害することが多々あった。

放射線のうち、アルファ線ベータ線に関しては特別な技術を用いなくても容易に遮蔽することができるが、ガンマ線X線中性子線は物質を透過する能力が高いため、できるだけ生態系に影響を与えない配慮が求められている。その具体的な方法は、放射線が十分に減衰するだけの間隔と遮蔽を取ることである。

放射性物質を体内に取り込んでしまった場合には間隔と遮蔽を取ることが不可能なので、内部被曝はすべての放射線が影響を及ぼす。また体内に取り込まれた放射性物質は元素の種類により、特定の組織・臓器に沈着する。例えばセシウム137は筋肉・全身に、ヨウ素131は甲状腺に、ストロンチウム90は骨に沈着する。プルトニウム238、239および240が放出するアルファ線は放射線荷重係数が大きく人体への影響も甚大である。

原子力発電所の周辺公衆の被曝基準(1mSv)は、具体的には「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」(平成2年8月30日原子力安全委員会決定)に定められており、これは「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」(昭和53年通商産業省令第77号)第2条第9号「核燃料物質及び核燃料物質によって汚染された物による放射線の被ばく管理並びに放射性廃棄物の廃棄に関する説明書」に示された評価について、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(昭和32年法律第166号)第23条第1項に基づく経済産業大臣への許可申請及び第24条第2項の原子力安全委員会の聴取において審査される。

また、放射壊変に伴ってニュートリノなどの素粒子が放射されるが、これらは物質をほぼ無限に透過する性質があるものの物質に対しての影響が実質的にないため、この種の問題の際は無視してよいものとされる。

脚注

注釈

  1. ^ 放射線物質や放射能物質などの用法は誤りである。
  2. ^ IAEA では "nuclear material" を "Any source material or special fissionable material" と定義している。[5]

出典

  1. ^ 文部省日本物理学会編『学術用語集 物理学編』培風館、1990年。ISBN 4-563-02195-4 
  2. ^ 原子力基本法(昭和30年法律第186号)第3条第二号
  3. ^ a b c d e 長倉三郎ほか編、『岩波理化学辞典』、岩波書店、1998年、項目「放射性物質」より。ISBN 4-00-080090-6
  4. ^ 同法第3条第3号
  5. ^ IAEA Safeguards Glossary 4.1 (PDF)

関連項目

参考文献

  • 日本放射性同位元素協会 編『ラジオアイソトープ―講義と実習』丸善、1966年。 
  • Raymond L.Murray 著、杉本 朝雄(訳) 編『原子核工学』丸善、1955年。 
  • クラーク・グッドマン 著、武谷 三男, 豊田 利幸, 小川 岩雄(訳) 編『原子炉入門―立教大学における講義にもとづく』岩波書店、1956年。 

外部リンク


放射性物質

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/12/26 13:24 UTC 版)

チチタケ」の記事における「放射性物質」の解説

チチタケキノコ中でも放射性物質を取り込みやすい傾向が高いといわれる2011年3月11日東日本大震災では、栃木県隣接する福島県福島第一原子力発電所事故発生しチチタケ消費地産地深刻な放射能汚染被害及ぼした2011年9月には福島県棚倉町自生していたチチタケから、当時暫定規制値(1キログラムあたり500ベクレル)の56倍に相当する1キログラムあたり28,000ベクレル放射性セシウム検出されており、翌年2012年10月には福島から離れた青森県でも、その時点での食品衛生法基準値(1キログラムあたり100ベクレル)を上回る1キログラムあたり120ベクレル放射性セシウム検出されている。 2017年現在山形県福島県栃木県長野県規制値100 Bq/kgを超える放射性セシウム検出されている。厚生労働省や県は該当地域での採取出荷及び摂取自粛呼び掛けている。

※この「放射性物質」の解説は、「チチタケ」の解説の一部です。
「放射性物質」を含む「チチタケ」の記事については、「チチタケ」の概要を参照ください。

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放射性物質

出典:『Wiktionary』 (2021/08/14 10:53 UTC 版)

名詞

放射性 物質ほうしゃせいぶっしつ

  1. 放射能を持つ物質

発音(?)

ほ↗ーしゃせーぶ↘っしつ

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