宇宙線とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 自然科学 > 宇宙 > 宇宙線 > 宇宙線の意味・解説 

宇宙線

宇宙銀河系太陽など)から地球上降り注いでいる放射線を宇宙線という。宇宙線は大部分陽子若干のヘリウムイオン及び重粒子イオンからなる。この宇宙線が大気圏突入し大気中の酸素窒素炭素などの原子核反応しミューオン素粒子)や中性子などの二次宇宙線をつくる。これがさらに空気中の物質核反応して、トリチウム炭素-14ベリリウム-7などの放射性物質生成する。 宇宙線の量(強さ)は、緯度海抜(高度)によって異なり、高度が高くなる増加する国連科学委員会2000年報告)によると、宇宙線によって私たち1年間に受ける放射線量は、世界平均で、約0.4ミリシーベルトである。

宇宙線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/16 07:06 UTC 版)

天文学上の未解決問題
なぜ、宇宙線のうちのいくつかは「神の素粒子」と呼ばれるほどの非常に高いエネルギーをもっているのか? 地球近辺には十分にエネルギーのある宇宙線源がないにもかかわらず、なぜそれほどのエネルギーを持っているのか? 遠くの線源から放射される宇宙線のうちのいくつかが明らかにGZKカットオフ以上のエネルギーを持っているのはなぜか?
宇宙線のエネルギースペクトル

宇宙線(うちゅうせん、: cosmic ray[1])は、宇宙空間を飛び交う高エネルギーの放射線のことである[2]。主な成分は陽子であり、アルファ粒子リチウムベリリウムホウ素などの原子核が含まれている[3]。なお、地球にも常時飛来していることが観測されている。1900年に発見された。発生源は、巨大な星の爆発やブラックホールからガスが噴き出るといった大規模な天体現象と考えられているが、特定されていない[4]

概要

宇宙線には太陽宇宙線や銀河宇宙線等がある[5][6]。宇宙線のほとんどは銀河系内を起源とする銀河宇宙線であり、超新星残骸などにより加速されていると考えられている。これらは、銀河磁場で銀河内に長時間閉じ込められるため、銀河内物質との衝突で破砕し、他の原子核に変化することがある。実際、LiBeBScVなどの元素の存在比が、太陽系内のものと宇宙線中とで大きく異なることが知られている。このため、宇宙線の元素比や同位元素の存在比を測定することで、宇宙線の通過した物質量を推測することが出来る。

エネルギーの高い宇宙線の到来頻度は極端に低くなるが、そのエネルギースペクトル冪関数 dI/dE∝E(α〜3)で近似できる。このため、宇宙線の加速は熱的なものではなく、星間磁気雲や衝撃波との衝突を繰り返すフェルミ加速のような機構が考えられる。

地球大気内に高エネルギーの宇宙線が入射した場合、空気シャワー現象が生じ、多くの二次粒子が発生する。寿命の短いものはすぐに崩壊するが、安定な粒子は地上で観測される。このとき、大気中に入射する宇宙線を一次宇宙線、そこから発生した粒子を二次宇宙線と呼ぶ[7][8]。一次宇宙線の大部分は陽子をはじめとする荷電粒子である。それに対して、二次宇宙線は地上高度では大半がμ粒子である。

粒子加速器などで人間が作り出せるエネルギーは、重心系で最大1013 eVのオーダー(CERNで計画されているLHCが 1.4×1013 eV)であり、実験室系に換算しても、1017 eV程度である。それに対し、宇宙線のエネルギーは実験室系で最大 1020 eVに達する。このため、宇宙線によって超高エネルギー領域での素粒子反応について重要な知見を得ることができる。実際に、様々な新粒子が素粒子実験より先に宇宙線中から見つかった。

一般にはGZK限界を越えるエネルギーを持つ宇宙線(超高エネルギー宇宙線)は観測されないとされているが、その観測を目的とした実験計画(テレスコープアレイ実験)がある。

宇宙線は、集積回路中の素子のようなごく微小な電子装置の誤作動の原因ともなる。基本的なところは他の放射線等と同じだが、地上ではどこへでも降り注いでいる点など特異な点などもあり、理学的な研究としてだけではなく、実務的工学的な対策などが検討される対象でもある。

発見

以下、記述はM. S. Longair "High Energy Astrophysics Third Edition" 2011 Cambridge University Pressの1.10節に従う。


1900年頃、自然放射線源から離れた暗い場所に設置された検電器(electroscope)が放電することが観測され、これは宇宙線の存在を示す最初の手がかりとなった。

その後、1912年と1913年にビクター・フランツ・ヘスとKolhörsterによって有人気球実験が行われた。高度が上がるにつれて大気のイオン化が増加することが観測され、これは宇宙線の放射源が地球大気の外に存在することを示す重要な結果となった。この業績により、彼は1936年ノーベル物理学賞を受賞している。

1929年には、Skobeltsynが放射性崩壊によって放出される電子の特性を研究するために霧箱(cloud chamber)を発明した。彼は霧箱の中で宇宙線の粒子が引き起こすトラックを観察し、これが宇宙線の存在をさらに裏付けるものであった。

同じ年、GeigerとMullerによってガイガー・ミュラー検出器が発明された。この検出器を用いることで、個々の宇宙線を検出し、到着時刻を非常に正確に測定することが可能となった。

霧箱実験は、宇宙線が荷電粒子のシャワーを引き起こすことを示した。空気シャワーとは、一次宇宙線(地球外起源)が大気圏に突入したときに大気中に発生する、電離粒子と電磁放射線の広範囲(何キロもの幅)に及ぶカスケードのことである。1934年にB.Rossiによって発見され、1937年、P.AugerはRossiの報告を知らずに同じ現象を発見した。Augerは高エネルギーの一次宇宙線粒子が大気圏の高い位置で空気核と相互作用し、二次、三次相互作用のカスケードが始まり、最終的に電子や光子のシャワーが地上に到達することを観測から明らかにした。Rossiは、検出器を互いに離して宇宙線を観測することで、多くの粒子が同時に検出器に到達することを発見した。

また、1930年代から1950年代初頭にかけて、宇宙線は新粒子の発見において重要な役割を果たした。

1930年には、MillikanとAndersonとがスコベルツィンよりも10倍強力な電磁石を使用して、霧箱を通過する粒子の軌跡を調べ、特にAndersonは、正の電荷の、電子のような動きをみせる粒子(陽電子)を観測した(Anderson 1932)。また、1933年にBlackettとOcchialiniによって、宇宙線がチェンバーを通過したときに自動的にトリガーされる霧箱を使って再確認された(Blackett and Occhialini, 1933)。陽電子の存在は、1928年、Diracによって既に理論的に予測されていた。

1936年には、AndersonとNeddermeyerが宇宙線から、中間子(mesotron)と呼ばれる電子と陽子の間の質量を持つ粒子を発見した。これは1935年、湯川によって理論的に予測されていた。

2023年11月24日、大阪公立大学の研究チームが、計算上は1グラムで地球が破壊されるほどの強いエネルギーの宇宙線を発見したと発表。研究チームは2008年からアメリカ、ユタ州の砂漠地帯に507台の検出装置を設置し、観測を続けている[9]

宇宙線による被曝

生成される娘核種例

この節には内容がありません。 加筆して下さる協力者を求めています。

参考文献

出典

脚注

  1. ^ ATOMICA「宇宙線」
  2. ^ 名越 2011 p.3
  3. ^ 住 2010 p.177
  4. ^ “1グラムで地球破壊” 超高エネルギーの「宇宙線」捉える”. 2023年11月24日閲覧。
  5. ^ 乗鞍岳におけるミューオン強度の精密測定”. 東京大学. 2016年7月2日閲覧。
  6. ^ 宇宙放射線”. JAXA. 2016年7月2日閲覧。
  7. ^ 宇宙船搭乗員の放射線防護”. ATOMICA (2002年). 2016年7月2日閲覧。
  8. ^ 小玉正弘「宇宙線と土壌科学」『山梨医科大学紀要= 山梨医科大学紀要』第3巻、山梨医科大学、1986年、50-56頁、doi:10.34429/00000870ISSN 0910-5069NAID 110000495133 
  9. ^ “1グラムで地球破壊” 超高エネルギーの「宇宙線」捉える”. 2023年11月24日閲覧。

関連項目

外部リンク


宇宙線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/28 11:02 UTC 版)

アーサー・コンプトン」の記事における「宇宙線」の解説

1930年代初頭までに、宇宙線に興味を持つようになった当時、その存在知られていたが、その起源性質不確かであった。その存在圧縮空気もしくはアルゴン気体を含む球体の「爆弾」を使用しその導電率測定することで検出できるヨーロッパインドメキシコペルーオーストラリアへ旅行により、様々な高度と緯度で宇宙線を測定する機会得た世界中で観測行った他のグループとともに、彼らは宇宙線が赤道よりも15%強いことを発見したコンプトンはこの原因ロバート・ミリカン提案した光子ではなく、主に荷電粒子構成される宇宙線の効果とし、緯度影響地磁気よるものとした。

※この「宇宙線」の解説は、「アーサー・コンプトン」の解説の一部です。
「宇宙線」を含む「アーサー・コンプトン」の記事については、「アーサー・コンプトン」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「宇宙線」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

宇宙線

出典:『Wiktionary』 (2021/08/22 13:19 UTC 版)

名詞

宇宙 (うちゅうせん)

  1. (天文学, 物理学) 宇宙空間飛び交うエネルギー放射線

「宇宙線」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



宇宙線と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「宇宙線」の関連用語

宇宙線のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



宇宙線のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
福井原子力環境監視センター福井原子力環境監視センター
Copyright (C)2001-2025 FERMC(福井県原子力環境監視センター) All rights reserved.
文部科学省文部科学省
Copyright (C) 2025 文部科学省 All rights reserved.
環境防災Nネットホームページ原子力防災基礎用語集
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの宇宙線 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのアーサー・コンプトン (改訂履歴)、太陽活動周期 (改訂履歴)、火星の生命 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの宇宙線 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS