電子
「電子」とは、原子を構成する素粒子のうち、(負の)電荷を帯びて原子核の周りを取り巻くように運動している素粒子のことである。英語では「electron(エレクトロン)」という。
「電子メール」や「電子マネー」「電子カルテ」のように接頭辞的に用いられて複合語を作る「電子」は、たいてい、おおむね「電子工学に基づく技術」や「電子デバイスを活用するシステム」あるいは「デジタル化された」というような意味合いである。素粒子の「電子」を指す意味で用いられる例は少ない。
素粒子の「電子」は、1897年、イギリスの物理学者トムソン(Joseph J. Thomson)によって発見された。「原子」は「原子核」と「電子」で構成され、「電子」は「原子核」の外側を周回している。「電子」が「原子」から離れて移動することで電流を起こす。
電子のうち、負の電荷を帯びている電子を「陰電子」といい、正の電荷をもつ電子を「陽電子」という。通常、単に「電子」といえば、もっぱら陰電子を指す。陽電子はいわゆる反物質(反粒子)の一種であり、原子核のベータ崩壊や特殊な条件における電子の対生成によって生じる。
「電子」に関する知識は、主に中学2年生の化学の授業で習う。
「電子(エレクトロン)」の語源・由来
「電子」は英語の「electron(エレクトロン)」の訳語であるが、その「electron」は、もともと「琥珀(こはく)」を意味する古代ギリシア語の「ἤλεκτρον(エーレクトロン)」を語源とする。「琥珀をこすると帯電する(摩擦による電磁気現象が生じる)」という発見が電気の発見につながったためとされる。「電子」を含む熟語・言い回し
「電子的」とは
「電子的」という表現そのものは、名詞「電子」に接尾辞「的」が付いて形容動詞のように用いられる言葉である。必ずしも素粒子の「電子」を指すとは限らず、より広く「電子で動く」「電子工学の技術を用いた」「デジタル化された」といった意味合いで用いられることが多い。「電子レンジ」とは
「電子レンジ」とは、食品にマイクロ波を照射して分子を振動させて加熱する調理器具のことである。英語では「microwave oven(マイクロ波オーブン)」という。マイクロ波は電磁波の一種であり、電磁波は「電子」ではなく「光子」が生み出すエネルギーである。つまり素粒子としての「電子」は「電子レンジ」の技術の根幹には直接関係しない。(「電子レンジ」という呼び名は技術者が付けたものではない)
「電子タバコ」とは
「電子タバコ」とは、タバコのフレーバーを生む液体(リキッド)を電子デバイスで加熱することによって蒸発させる(その水蒸気を吸引して楽しむ)喫煙具のことである。タバコ葉を電子デバイスで加熱する「加熱式タバコ」とは区別される。「電子タバコ」はタバコ葉を使用せず、ニコチンも含有していない場合が多い(日本国内で販売されている電子タバコは基本的にニコチンを含まない)。ニコチンを含有していない電子タバコは「たばこ製品」には該当せず、「医薬品」として扱われている。
「電子ピアノ」とは
「電子ピアノ」とは、電子工学技術を用いてピアノ(アコースティックピアノ)の音を再現する鍵盤楽器の総称である。基本的には、アコースティックピアノに準じた鍵盤をスイッチとして音源を再生する機構を備えた楽器(いわゆる「デジタルピアノ」)を指す。「デジタルピアノ」は音を発生させる機構がピアノと全く異なるが、音を発生させる仕組み自体はピアノと同様であり(打弦楽器の機構を持っており)、この音を電気的に増幅させてグランドピアノばりの音量を生じる製品(いわゆる「エレクトリックピアノ」)もある。
「電子帳簿保存法」とは
「電子帳簿保存法」とは、1998年に施行された法令の名称である。納税者の軽減負担のため、電子データやスキャンデータを用いた「国税関係帳簿書類」の保管方法をとりまとめている。電子帳簿保存のために所轄税務署長の承認が必要とされていたが、2022年の改正により事前承認が廃止となった。「電子書籍」とは
「電子書籍」とは、紙の代わりに雑誌・漫画・小説などをデータ化し、画面上で見る書籍のことである。スマートフォンやタブレットに専用のアプリを入れて読んだり、電子書籍リーダーを用いて読んだりする。「デジタルブック」「オンライン書籍」とも言う。各出版社がそれぞれ独自の電子書籍サービスを提供していたり、出版社横断型のサービスもあったりする。「電子マネー」とは
「電子マネー」とは、現金の代わりに決済手段として利用される、現金と等しい貨幣価値を持ったデータのこと、および、そのデータを使って決済を行えるサービスやプラットフォームのことである。電子マネーは預金や現金を電子的貨幣価値に変換し、決済を行う。「PASMO」「Suica」などの「交通系電子マネー」、「WAON」「nanaco」などの「流通系電子マネー」、「iD」「QUICPay」などの「クレジット系電子マネー」がある。
電子マネーを使った決済は、現金(キャッシュ)のやりとりが生じないという意味で、「キャッシュレス決済」とも呼ばれる。もっとも、「キャッシュレス決済」には「クレジットカード決済」なども含まれる。
「電子計算機使用詐欺」とは
刑法第246条の2に規定されている犯罪行為である。コンピューターに虚偽の入力、あるいは不正の指令を与えることで財産上の利益を得る犯罪類型を指す。「コンピューター詐欺罪」ともいう。でん‐し【電子】
電子
【英】Electron
電子とは、素粒子のひとつで、原子核の周りに分布して原子を構成している、負の電気素量をもつ素粒子のことである。粒子のように、あるいは波のようにも振る舞う。すべての電磁現象の源となり、物質の性質を決める、きわめて重要な要素である。
電子
電子
電子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/19 07:13 UTC 版)
電子(でんし、英: electron、記号: e−
または β−
)は、電気素量に等しい大きさの負電荷を持つ亜原子粒子である[7]。電子はレプトン粒子族の第一世代に属し[8]、知られている限り構成要素や内部構造を持たないことから、一般に素粒子であると考えられている[9]。電子の質量は陽子のおよそ1/1836である[10]。電子の量子力学的な性質には、換算プランク定数 ħ の半整数倍の値の固有角運動量(スピン)を持つことがある。電子はフェルミ粒子であり、2つの電子が同じ量子状態を占めることはパウリの排他原理によって禁じられる[8]。すべての素粒子と同様に、電子は粒子と波の両方の性質を示す。すなわち、電子は他の粒子と衝突することも、光のように回折することもできる。電子の波動性は、中性子や陽子などの他の粒子よりも実験的に観測しやすい。それは、電子は質量が小さいので、同じエネルギーにおけるド・ブロイ波長が長いためである。
- 1 電子とは
- 2 電子の概要
電子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/15 09:40 UTC 版)
電子の電荷質量比 -e/me は、実験物理学で用いられる物理量である。電子の電荷質量比は、電子の質量 me の直接測定が困難な一方で、電子の電荷 e と電子の電荷質量比 e/me の測定は可能である事から、重要な意味を持つ。 また、電子の電荷質量比は歴史的な意義がある。J・J・トムソンは、e/me の測定によって陰極線が粒子の集まりから成る事を確信し、それは現在我々が電子と呼んでいるものにほかならない。 2014CODATA推奨値では、電子の質量電荷比を -e/me = 2988824117997600000♠−1.758820024(11)×1011 C⁄kg であるとする事を推奨している。さらに表記法としてelectron charge-to-mass quotientとする事を推奨しているが、現在でもratioが広く用いられている。 エレクトロンの"q⁄m"は、J・J・トムソンによって1897年に求められ、さらに垂直な 磁場による偏向と角運動量を取り込んだダニングトンによってより正確に求められた。J・J・トムソンとダニングトンの方法以外にも、よく知られた二つの方法で電荷質量比は測定されている。 1. マグネトロン法- GRD7管(フェランティ管)を用いて, 電子を加熱されたタングステンフィラメントからアノードへ放出させる。電子をソレノイドによって偏向させる。ソレノイドを流れる電流とフェランティ管を流れる電流から質量電荷比率 e/m を計算する事が出来る。 2. ファインビームチューブ法 - 電子をカソードから、キャップ状のアノードにむけて加速させる。電子は、ヘリウムの満たされた陰極線管に放出され、円形に光る。この光る円の半径から、質量電荷比 e/m を計算する。
※この「電子」の解説は、「質量電荷比」の解説の一部です。
「電子」を含む「質量電荷比」の記事については、「質量電荷比」の概要を参照ください。
電子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/16 10:07 UTC 版)
自由電子のバンド構造は放物線となる。また、自由電子の状態密度(三次元)も放物線となる。
※この「電子」の解説は、「放物線」の解説の一部です。
「電子」を含む「放物線」の記事については、「放物線」の概要を参照ください。
電子
出典:『Wiktionary』 (2021/06/20 13:35 UTC 版)
名詞
関連語
翻訳
- アイスランド語: rafeind (is) 女性
- イタリア語: elettrone (it) 男性
- インターリングア: electron
- 英語: electron (en)
- エスペラント: elektrono (eo)
- オランダ語: elektron (nl) 中性
- カタルーニャ語: electró 男性
- ギリシア語: ηλεκτρόνιο 中性 (ilektrónio)
- グルジア語: ელექტრონი
- クロアチア語: elektron (hr) 男性
- スウェーデン語: elektron (sv) 通性
- スペイン語: electrón (es) 男性
- チェコ語: elektron (cs) 男性
- 中国語: (繁): 電子/ (簡): 电子
- 朝鮮語: 전자 (ko)
- ドイツ語: Elektron (de) 中性
- トルコ語: elektron, çınca
- フィンランド語: elektroni (fi)
- フランス語: électron (fr) 男性
- ブルガリア語: електрон 男性
- ブルトン語: elektron (集合名詞); elektronenn 単数 女性
- ポーランド語: elektron (pl) 男性
- ポルトガル語: electrão (pt) 男性
- ラトヴィア語: elektrons 男性
- ルーマニア語: electron (ro) 男性
- ロシア語: электрон 男性 (elektron)
造語成分
関連語
語義3
- e-
「電子」の例文・使い方・用例・文例
- 彼に電子メールを受け取ったと知らせましたか
- これが私の電子メールアドレスです
- 日本は電子ビジネスにおいて米国に遅れている
- 電子掲示板
- 私たちは電子メールで友情を育てた
- 電子工学にいくつかの新しい発展があった
- 電子データ処理
- 電子決済
- 電子メールを送る
- 彼から電子メールが来るのを待っている
- ジェーンは電子メールで私に連絡を取ることができた
- 電子工学界の巨人たち
- 電子顕微鏡
- 祖母は電子レンジさえ使えないのにパソコンなどなおさら無理だ
- 電子オルガン
- 電子レンジ
- 私たちはビルの死をアメリカにいる彼の友人たちに電子メールで知らせた
- 電子メールを使う代わりに,便せんに手紙を書くともっと親密な感じがするよ
- 彼の電子メールがちょうど届いた
- 毎日彼女は何百通もの電子メールを読んでいる
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