スペクトル密度とは? わかりやすく解説

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スペクトル密度

(エネルギースペクトル から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/28 04:43 UTC 版)

スペクトル密度(スペクトルみつど、: spectral density[1])は、信号を構成する成分を周波数関数として表したものであり[2]、単にスペクトルと言うこともある。成分として信号の全エネルギー[3]について表したものをエネルギースペクトル密度: energy spectral density、ESD[4])という[5]。また、仕事率(パワー)について表したものをパワースペクトル密度: power spectral density[6])といい、仕事率として電力が対象となる場合、電力スペクトル密度とも呼ばれる。スペクトル密度は定常過程に関する周波数値の正実数の関数または時間に関する決定的な関数である。直観的には、確率過程の周波数要素を捉えるもので、周期性を識別するのを助ける。

概要

信号のエネルギーは振幅の二乗和でしばしば定義される。信号を定常波の和すなわちスペクトルとして見たとき(フーリエ変換)、信号全体のエネルギーは部分定常波エネルギーの総和になると考えられる。より正確には、連続値である各周波数にエネルギー密度が定義出来てその積分値が信号全体のエネルギーになると考えられる(パーセバルの定理)。各周波数におけるエネルギー密度をエネルギースペクトル密度という。

また、信号の仕事率(パワー)は時間当たりのエネルギーでしばしば定義される。全く同じ議論がパワーに関してもでき、各周波数におけるパワー密度をパワースペクトル密度という。

物理学の観点では、信号とは波動であり、代表的な波動には電磁波音波がある。信号がどのような物理的次元を伝わるのかは問題ではないが、以下の議論では時間と共に変化する信号について解説する。次元解析の観点では、パワースペクトル密度の単位はワットヘルツ (W/Hz) か、ワット毎ナノメートル (W/nm) で表される(後者は周波数の代わりに波長を用いる)。

定義

エネルギースペクトル密度

連続信号

連続信号 f(t) のエネルギースペクトル密度は次の式で定義される。

のスペクトルとは、色に対応した各周波数で運ばれる力を示したものである。光スペクトルは周波数よりも波長で表されることが多く、厳密にはスペクトル密度ではない。分光測色器によっては、1から2ナノメートル単位の分解能を持つ。値は他の用途に使われたり、光源のスペクトル属性を示すために図示されたりする。これを使って光源の特性を解析する。

関連項目

脚注

  1. ^ IEC 60050 - International Electrotechnical Vocabulary - Details for IEV number 801-21-43: "spectral density"”. electropedia.org. 2024年12月28日閲覧。
  2. ^ 「スペクトル:信号を構成している周波数成分の振幅や位相の分布を周波数の関数として表したものの一般的呼称。振幅スペクトル、位相スペクトル、パワースペクトル、クロススペクトル、エネルギースペクトルなどがある」日本音響学会 編「スペクトル」『新版 音響用語辞典』コロナ社、2003年、190頁。ISBN 4-339-00755-2 
  3. ^ 全エネルギーが無限大に発散する場合は定義できず、そのときにはパワースペクトルが用いられる。
  4. ^ IEC 60050 - International Electrotechnical Vocabulary - Details for IEV number 702-04-49: "energy spectral density"”. electropedia.org. 2024年12月28日閲覧。
  5. ^ 日本音響学会 編「エネルギースペクトル」『新版 音響用語辞典』コロナ社、2003年、31頁。ISBN 4-339-00755-2 
  6. ^ IEC 60050 - International Electrotechnical Vocabulary - Details for IEV number 103-09-05: "power spectral density"”. electropedia.org. 2024年12月28日閲覧。
  7. ^ Fred Rieke, William Bialek, and David Warland (1999). Spikes: Exploring the Neural Code (Computational Neuroscience). MIT Press. ISBN 978-0262681087 
  8. ^ Scott Millers and Donald Childers (2012). Probability and random processes. Academic Press 
  9. ^ Hannes Risken (1996). The Fokker–Planck Equation: Methods of Solution and Applications (2nd ed.). Springer. p. 30. ISBN 9783540615309. https://books.google.co.jp/books?id=MG2V9vTgSgEC&pg=PA30&redir_esc=y&hl=ja 
  10. ^ Dennis Ward Ricker (2003). Echo Signal Processing. Springer. ISBN 1-4020-7395-X. https://books.google.co.jp/books?id=NF2Tmty9nugC&pg=PA23&dq=%22power+spectral+density%22+%22energy+spectral+density%22&lr=&as_brr=3&ei=HZMvSPSWFZyStwPWsfyBAw&sig=1ZZcHwxXkErvNXtAHv21ijTXoP8&redir_esc=y&hl=ja#PPA23,M1 
  11. ^ Andreas F. Molisch (2011). Wireless Communications (2nd ed.). John Wiley and Sons. p. 194. ISBN 978-0-470-74187-0. https://books.google.co.jp/books?id=vASyH5-jfMYC&pg=PA194&redir_esc=y&hl=ja 
  12. ^ Robert Grover Brown & Patrick Y.C. Hwang (1997). Introduction to Random Signals and Applied Kalman Filtering. John Wiley & Sons. ISBN 0-471-12839-2. http://www.amazon.com/dp/0471128392 
  13. ^ Storch, H. Von; F. W Zwiers (2001). Statistical analysis in climate research. Cambridge Univ Pr. ISBN 0-521-01230-9 
  14. ^ An Introduction to the Theory of Random Signals and Noise, Wilbur B. Davenport and Willian L. Root, IEEE Press, New York, 1987, ISBN 0-87942-235-1
  15. ^ "The log power spectrum can be considered as a 'frequency series'" B. P. Bogert, et al. (1963).

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