スペクトル法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/19 19:14 UTC 版)
スペクトル法は、主に高速フーリエ変換を用いた微分方程式の数値解法の総称であり、応用数学や科学計算で使用されている。 微分方程式の解をある「基底関数」の和によって近似し、方程式を充足する和の係数を求める。基底関数の選び方としては、例えば正弦波を用いる方法があり、この場合の解の近似表現はフーリエ級数になる。
スペクトル法は有限要素法と密接に関連しており、基本的にはどちらも同じアイデアに基づいている。これらの主な違いは、近似に用いる基底関数の定義域にある。スペクトル法は近似対象とする関数の定義域全体に渡って非零になるような基底関数を使用するため全体をカバーできるのに対し、有限要素法はある点の近傍など限られた範囲にのみ基底関数を用い、残りはゼロであると仮定する。こうした理由から、スペクトル法と有限要素法はそれぞれ、大域的アプローチ、局所的アプローチと呼ばれ区別される。
大域的アプローチの性質から、スペクトル法は解が滑らかな関数である場合に誤差が指数関数に従い収束するという特性(「指数収束」)を持ち、有限要素法よりも遥かに高速に収束することが知られている。 ただし、指数収束は解が滑らかでない場合には保証されないため、たとえば単連結な三次元定義域における衝撃捕捉[1]といった課題に対しては一般に成立しない。これはインパルス波の微分不可能性に起因する。なお、有限要素法の分野でも、要素の次数がグリッド幅hと反比例して大きくなるような手法を「スペクトル要素法」と呼ぶことがあるが、これはスペクトル法とは厳密には異なる手法である。(「#スペクトル要素法との関係」で後述)
スペクトル法を使用すると、 常微分方程式 (ODE)や偏微分方程式 (PDE)などの微分方程式を含む固有値問題を解くことができる。 時間依存のPDEにスペクトル法を適用した場合、解は時間依存の係数を持つ基底関数の合計として記述される。これをPDEに代入すると、ODEの任意の数値法を使用して解くことができる係数のODEシステムが生成される。 ODEの固有値問題も同様に行列固有値問題に変換される[要出典] 。
スペクトル法は、1969年より数学者のスティーブン・オルザグによって出版された複数編に渡る論文により確立されたものであるが、一連の論文は今日で多く実装されている周期幾何問題を対象にしたフーリエ級数を用いたもの以外にも、以下のような手法を含んでいる。
- 有限幾何・非有界幾何のための多項式スペクトル法
- 高次非線形問題のための擬球スペクトル法
- 定常問題の高速解法のためのスペクトル反復法
これらのスペクトル法は、通常、選点法やガラーキン法、およびタウ法のいずれかを用いることで実装される。
スペクトル法は有限要素法よりも計算コストが低くなるが、複素幾何や不連続係数の問題では精度が低下する。 この誤差の増加は、 ギブス現象によるものである。
スペクトル法の例
具体例(線形の場合)
- スペクトル法のページへのリンク