ギブズ現象とは? わかりやすく解説

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ギブズ現象

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/28 19:14 UTC 版)

ギブズ現象(ギブズげんしょう,: Gibbs phenomenon)は、区分的連続微分可能周期関数フーリエ級数において、その関数が第1種不連続 (discontinuity of the first kind 又は jump discontinuity) となる点付近では、フーリエ級数のn部分和が大きく振動して、部分和の最大値が関数自体の最大値より大きくなってしまうことがあるという振る舞いのことを指す(不連続点付近での収束の乱れ)。この超過量は、高調波の周波数(つまり、部分和の項数)が増えても無くならず、ある有限極限値に近付く。日本語表記として「ギブズの現象」、「ギブス現象」、「ギブスの現象」とされることもある。名称はジョシュア・ウィラード・ギブズにちなむ。

一般的には、大きさa の跳びを有する、区分的連続微分可能な関数の任意の第1種不連続点において、その関数のフーリエ級数の n 次部分和(n は非常に大きいとする)は、跳びが起こる一方の端では、約 0.089490... ×a だけ大きくなりすぎ、他方の端では、同じ分量だけ小さくなりすぎる。従って、フーリエ級数の部分和の「跳び」は、元の関数の跳びより約 18% 大きくなる。不連続点自体では、フーリエ級数の部分和は、跳びの中点に収束していく(これは、元の関数がこの点で如何なる値を実際に取るかとは無関係である)。

矩形波関数 f(x) の5次近似
矩形波関数 f(x) の25次近似
矩形波関数 f(x) の125次近似

右の3つの図は、矩形波

について、ギブズ現象を示したものである。矩形波は、 変数値x がπの整数倍になる全ての点において不連続であり、高さπ/2 の跳びを有する。

矩形波のフーリエ展開は以下の通り:

図から分かるように、部分和の項数が増えるに連れて、近似誤差は幅、エネルギーとも減少するが、その高さは固定値に収束する。矩形波について計算すると(後述の計算を参照)、この誤差の高さの極限値を与える明示的な式が得られる[2]。これから、フーリエ級数は、矩形波の高さπ/4 を、次の式で与えられる量だけ超過することが分かる。

より詳細な説明

この矩形波の場合、周期はL = 2πであり、不連続点はx0 = 0 であり、跳びはa = π/2 である。議論を単純にするため、N が偶数の場合だけを扱うことにする(奇数の場合の議論も、全く同様にできる)。このとき、N 次部分和は次のようになる(N は偶数なので、この例では、N 次高調波成分は存在しない)。

ここにx = 0 を代入すると、既述のように

が得られる。次に、

を計算するのだが、この式は、sinc関数 を用いると、次のように表せる。

右辺の角括弧内の式は、積分 数値積分近似である(より正確には、間隔 2π/N による中点法則近似である)。sinc 関数は連続だから、この近似は の時、実際の積分値に近付いていく。従って、次が得られる。

これは、本セクション冒頭で示された通りのものである。同様の計算で次が得られる。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ フーリエ級数の絶対収束について更に知りたい場合はw:en:Convergence of Fourier series#Absolute convergence(英語)を参照されたい。

出典

  1. ^ Gibbs, J. W., "Fourier Series". Nature 59, 200 and 606, 1899.
  2. ^ Antoni Zygmund (1955), Trigonometrical series, Dover publications  第8章 第5節

参考文献

  • フーリエ級数論に基づく不連続部分の探索法,児玉賢史,2014
  • Wilbraham, H. (1848), On a certain periodic function, Cambridge and Dublin Math. J., 3, pp. 198-201 

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