スペースプレーン【spaceplane】
スペースプレーン
高度2万mから宇宙機を発射
宇宙活動の拡大にともない、地上と宇宙の行き来はますます活発化しますが、輸送費用を大幅に削減するまったく新しい輸送システムとして「スペースプレーン」が考えられています。構想中のスペースプレーンは2段式で、1段目の大型の高速ジェット機に宇宙機を乗せて飛行機のように離陸します。高度2万mで宇宙機は離脱、ロケットエンジンで大気圏を脱出し、1段目は地上に帰還します。宇宙機には翼があり、軌道上での仕事を終えると、スペースシャトルのように大気圏を滑空し滑走路へ着陸します。両機ともに何度も使用することが可能で、従来のロケットにくらべ非常に経済的な輸送システムといえます。
輸送コストを大幅に削減
1段目の高速ジェット機は、長さ65m、翼の幅が30m、重量140tで、マッハ6の超音速機です。空気中の酸素を利用するジェットエンジンであるため、ロケットのように大量の酸化剤をかかえる必要はありません。そのため軽量でエンジンの圧力が低く、操縦性や安全性が高くなります。また上に乗る宇宙機は、長さ39m、翼の幅17m、重量130tで、8tの荷物を積むことが可能で、さまざまな資材の運搬ができます。
スペースプレーン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/01 23:51 UTC 版)


スペースプレーン(英語: Spaceplane)は、航空機と同様に特別な打ち上げ設備を必要とせず、自力で滑走し離着陸および大気圏離脱・突入を行うことができる宇宙船。今まで複数の機体が構想されているが、技術的な問題により、実現に至った例はまだ無い。
広義には、スペースシャトルのような、翼を持ち飛行機のように滑空して着陸できる機体を含める。
概要
スペースプレーンは、航空機と同じように滑走路から離陸し、そのまま大気圏を離脱、そして大気圏再突入後は再び滑走路に着陸する宇宙船である。現在主流である使い捨て型ロケットのような複雑な打ち上げ設備を不要とし、コストの減少や運用地点の増加を見込む。
技術的特徴として、大気圏内においてはエアブリージング(空気吸い込み型)エンジンを利用することが挙げられる。通常のロケットでは燃料となる液体水素以外に酸化剤として液体酸素等を自重に含むため、ツィオルコフスキーの公式により一層の性能向上は難しい。そこで、大気圏内では酸化剤を搭載するのではなく、空気中の酸素を酸化剤として使用することが考えられている。また、大気圏内飛行のために主翼もしくはリフティングボディなどの揚力発生機構を有する。
スペースプレーン計画には、弾道飛行を目指すものと、衛星軌道と往還する再使用型宇宙往還機を目指すものがある。最初期の構想であるSilbervogelは弾道飛行を予定しており、X-30は「ワシントン-東京の間を2時間」とうたった「衛星軌道経由の旅客機」という構想であった。2段式(空中発進)で完全再利用の有人弾道飛行はX-15とスペースシップワンで達成されているが、これらは通常はスペースプレーンに分類されない。
現在のところ、スペースプレーンは、各国に計画があるものの実用化の目処は立っていない。宇宙飛行の大幅なコスト削減に繋がるとして期待されていたが、スクラムジェットエンジンの開発が難航しており、2009年現在の技術では飛行速度・高度に応じて複数種類のエンジンを搭載しなければならず、また大気圏外ではロケットエンジンも必要不可欠であるため、実用的な機体を設計できない。また、部分再使用型宇宙往還機のスペースシャトルが使い捨て型ロケットよりも高コストとなったことで、完全再使用型宇宙往還機のスペースプレーンに対しても懐疑的な見方がされている。
主なスペースプレーン
以下のリストには、翼を持ち飛行機のように滑空して着陸するものの打ち上げにはロケットを用いるといった、広義のスペースプレーンも含まれている。
開発元 | 名称 | 画像 | 初出 | 初飛行 | 状態 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
![]() |
Silbervogel | 1930年代 | 中止 | ナチス・ドイツ敗戦と共に研究中止 | ||
![]() |
X-15 | ![]() |
1954年 | 1959年 9月17日 |
退役 | 有人弾道飛行ロケットプレーン |
![]() |
アイシングラス計画 (Project Isinglass) | 1964年 | 中止 | A-12/SR-71の後継として1964年から1968年にかけて進められたが中止された。 | ||
![]() |
スペースシャトル | ![]() |
1969年 | 1981年 4月12日 |
退役 | 有人宇宙船。ロケットにより打ち上げ |
![]() |
エネルギア-ブラン | 1960年代 | 1988年 11月15日 |
退役 | ロケットにより打ち上げ | |
![]() |
DC-3 | ![]() |
1960年代 | 中止 | ||
![]() |
HOTOL | 1985年 | 中止 | 研究中止(1985年~1988年) | ||
![]() |
X-30 NASP | ![]() |
1986年 | 中止 | 開発中止(1986年~1994年) | |
![]() |
MAKS・スペースプレーン | 1988年 | 中止 | |||
![]() |
ゼンガーII | 1988年 | 中止 | 将来型欧州宇宙輸送調査計画 (FESTIP) に移行(1988年~1994年) | ||
![]() |
スペースプレーン | 1980年代 | 構想 | 2010年時点で研究レベル。実現はかなり先。[1] | ||
![]() |
HOPE | 1990年代始め | 中止 | ロケットにより打ち上げ | ||
![]() |
ベンチャースター | ![]() |
1996年 | 中止 | 垂直離陸水平着陸の単段式ロケットプレーン | |
![]() |
X-37 | ![]() |
1996年 | 2010年 4月22日 |
運用中 | 無人研究機。ロケットにより打ち上げ。アメリカ航空宇宙局が手を引いたため、2006年以降はアメリカ空軍専属プロジェクトとなる。 |
![]() |
Avatar | 1998年 | 構想 | |||
![]() |
クリーペル | ![]() |
1990年代 | 中止 | 有人宇宙船。ロケットにより打ち上げ | |
![]() |
スペースシップワン | ![]() |
2003年 12月17日 |
退役 | 有人弾道飛行。母機から空中発射するロケットプレーン | |
![]() |
ドリームチェイサー | ![]() |
2004年 | 開発中 | 無人宇宙船。ロケットにより打ち上げ | |
![]() |
スペースシップツー | ![]() |
2006年 | 2013年 4月29日 |
退役 | 有人弾道飛行。母機から空中発射するロケットプレーン |
![]() |
神竜 | 2007年 | 開発中 | 無人研究機。ロケットにより打ち上げ[2] | ||
![]() |
ペガサス | 2009年 | 開発中 | 有人弾道飛行スペースプレーン | ||
![]() |
スカイロン | ![]() |
2000年代 | 中止 | エアブリージングエンジンを用いる単段式スペースプレーン | |
![]() |
プロメテウス | 2010年 | 中止 | 有人宇宙船。ロケットにより打ち上げ | ||
![]() |
XS-1 | 2013年 | 中止 | 無人弾道飛行。多段式ロケットの1段目をスペースプレーンに置き換える計画。 | ||
![]() |
風神 | 2018年 | 開発中 | 無人弾道飛行スペースプレーン | ||
![]() |
再使用可能実験宇宙機 | 2020年 9月4日 |
運用中 | 無人研究機。ロケットにより打ち上げ。 | ||
![]() |
スペースシップ III | 2021年 | 中止 | 有人弾道飛行。母機から空中発射するロケットプレーン |
JAXAのスペースプレーン
旧NALは1980年代からスペースプレーンの研究を行っており、2003年のJAXAへの統合後も研究は続けられている。このスペースプレーンには2006年現在も特別な名称が無く、単に「スペースプレーン」と呼ばれている。アメリカのNASPに似た形状の想像図や、スペースシャトルのような宇宙船を背負った二段式の想像図が公開されている。 また、旧ISASで基礎研究が行われ、統合後も研究が続けられているATREXにおいても、応用例として2段式スペースプレーンの想像図を示している。
関連項目
参考文献
- ^ “第一部「国際宇宙ステーション『きぼう』が拓く有人宇宙開発」 で出された意見”. 第53回JAXAタウンミーティング in 宮崎. JAXA (2010年11月27日). 2012年6月8日閲覧。
- ^ “Shenlong Space Plane: China’s Answer To U.S. X-37B Drone?”. ハフポスト. (2017年12月6日) 2019年10月21日閲覧。
- 松浦晋也『われらの有人宇宙船-日本独自の宇宙輸送システム「ふじ」-』裳華房、2003年。ISBN 4-7853-8758-0。
外部リンク
- JAXA オンライン・スペースノート ロケット - スペースプレーン - ウェイバックマシン(2006年5月8日アーカイブ分)
スペースプレーン(宇宙旅行)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/17 22:42 UTC 版)
「SPACE WALKER」の記事における「スペースプレーン(宇宙旅行)」の解説
高度100kmの宇宙空間への弾道飛行を行う有人スペースプレーン。全長15.9m、重量18.7tで、乗員2名と乗客6名が搭乗可能となり、約3~4分の無重力状態を提供する。エンジンにはIHI製の推力10t級のLNGエンジンを3機搭載する。同じく当初は2027年の初飛行を予定していたが、2021年現在は2029年初飛行予定とされている。
※この「スペースプレーン(宇宙旅行)」の解説は、「SPACE WALKER」の解説の一部です。
「スペースプレーン(宇宙旅行)」を含む「SPACE WALKER」の記事については、「SPACE WALKER」の概要を参照ください。
- スペースプレーンのページへのリンク