せんがい‐かつどう〔セングワイクワツドウ〕【船外活動】
読み方:せんがいかつどう
「宇宙遊泳」に同じ。EVA(extravehicular activity)。
船外活動
宇宙飛行士が宇宙船の外に出て活動する「EVA」
船外活動/Extravehicular Activity(EVA)とは、宇宙飛行士が宇宙船の外に出て活動することです。宇宙船の外での活動であれば、月面や他の天体上であってもEVAとよばれます。人類初のEVAは、1965年3月18日、旧ソ連のウォスホート2号のレオノフ宇宙飛行士により24分間にわたっておこなわれました。ついで1965年6月3日、ジェミニ4号のエドワード・ホワイト宇宙飛行士が、米国初のEVAをおこなっています。
EVAの成果は、インテルサット衛星やハッブル宇宙望遠鏡の修理
米国でのEVAは、このあとアポロ計画、スカイラブ計画、スペースシャトル計画へと引き継がれ、宇宙服などの船外活動ユニットや、その他EVA支援設備機器の改良が続けられてきました。近年の成果としては、軌道投入に失敗した人工衛星インテルサット6型を捕獲しての固体ロケットモータの取り付けや、ハッブル宇宙望遠鏡の性能向上のための修理などがあげられます。
きびしい宇宙環境から宇宙飛行士を守る「船外活動ユニット」
EVAをおこなう際は、きびしい宇宙環境から宇宙飛行士を保護するために、宇宙服をはじめとする装置が必要となります。この装置は「船外活動ユニット」とよばれ、宇宙飛行士が着る「宇宙服」、宇宙服の中の気圧・温度をコントロールし、呼吸用の酸素を供給する「生命維持装置」、そして飲料水バッグ、ライト、テレビカメラなどの「補助装置」の3つで構成されます。
船外活動ユニット/Extravehicular Mobility Unit(EMU)
●生命維持装置
宇宙服の背中に取り付けられる装置で、宇宙服の中の気圧や温度をコントロールし、呼吸用の酸素や電力を供給します。中の酸素は再循環させ、水酸化リチウムカートリッジで二酸化炭素を取り除きます。故障などで酸素が供給できないなど万一の場合に備え、バックアップ用酸素も用意されています。
●宇宙服
宇宙服は、大きく分けると上半身、下半身、手袋とヘルメットで構成されています。このほかに、宇宙服の下に着る「冷却服」という、冷却水を流すための細いパイプが張りめぐらされた服や、通信用のヘッドセットなどもついています。
●補助装置
宇宙服の胴体の内部に取り付ける飲料水バッグや、ヘルメットに取り付けるライトやテレビカメラ、EVA用の道具や宇宙飛行士自身を宇宙船などにつなぎ止めておく「テザー」、宇宙服の胸のディスプレイ表示を見るための手首につけられた鏡など、さまざまな装置があります。
減圧症予防のプレブリースなど、EVA実施には複雑な手順が必要
EVAは、(1)プレブリース、(2)機器・設備の点権(3)船外活動ユニットの装着、(4)宇宙服からの窒素の追い出し・プレブリース、(5)エアロック(宇宙への出入口)の減圧、(6)EVA実施、(7)エアロックの加圧、(8)船外活動ユニットの脱着・メンテナンス・格納、の手順でおこないます。(1)~(4)が準備段階、(8)がEVA実施後の作業になります。
プレブリースとは、減圧症のリスクを減らすために、EVAの前に100%の酸素を呼吸し、体内の窒素分を追い出すことです。宇宙服の気圧は、地上や船内気圧の約1/3ですから、急に圧力の低い環境に移ると、体内の窒素が血液中に泡となって細い血管をつまらせる減圧症(潜水病)を引き起こしてしまうのです。
船外活動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/08 01:11 UTC 版)

船外活動(せんがいかつどう、英語: Extravehicular activity; EVA)とは、宇宙服を着た宇宙飛行士(船外活動員)が宇宙船の外に出て活動すること。狭義では、宇宙「船」外の宇宙空間で活動する宇宙遊泳(うちゅうゆうえい、spacewalk)と同義で用いられることもあるが、広義では、宇宙遊泳に加え、月面での活動など、文字通り宇宙「船」外での活動全般を含む。
宇宙遊泳が開始された当初は、命綱で宇宙飛行士と宇宙船を繋いで、船内から酸素の供給などを行っていた。現在では、宇宙服自体に酸素を供給する機能が付与されているため、移動の自由度は増している。しかし、安全上の理由で命綱を使用するのが基本的なルールである。スペースシャトルでは初期のミッションにおいて、自由に移動噴射や姿勢制御ができる有人機動ユニット (MMU) を使用したことがあったが、実用的ではなかったため、使用されなくなった。近年では、スペースシャトルや国際宇宙ステーション (ISS) のロボットアームの先端に足場を固定して行われる事が多い。
船外活動の記録


- 1965年3月18日、旧ソ連のアレクセイ・レオーノフがボスホート2号から人類初の宇宙遊泳を行った。長さ5mの命綱をつけて、約20分間宇宙遊泳した。
- 1965年6月3日、エドワード・ホワイトがジェミニ4号からアメリカ人初の宇宙遊泳を行った。
- 1971年8月5日、アポロ15号が月から帰還する軌道上で宇宙遊泳を実施。切り離す機械船から写真フィルムを回収するために行ったもの[1]。
- 1984年2月7日、ブルース・マッカンドレスがスペースシャトル・チャレンジャー号のSTS-41-Bにおいて、初めて命綱なしでMMUを使用した宇宙遊泳を行った。
- 1984年7月25日、旧ソ連のスベトラーナ・サビツカヤがサリュート7号から女性初の宇宙遊泳を行った。
- 1992年5月13日、STS-49で史上初めて3人同時に船外活動を行い、インテルサットVI-F3を修理するために手づかみで回収した。
- 1997年11月、土井孝雄がスペースシャトル・コロンビアから日本人初の宇宙遊泳を行った。
- 2001年3月11日、船外活動の最長記録がスーザン・J・ヘルムズとジャニス・E・ヴォスによって更新され、8時間56分となった(現時点でもこれが最長記録)。
- 2005年8月3日、スペースシャトルSTS-114の飛行中に機体修理のための初の船外活動が、アメリカのスティーブン・ロビンソンによって行われた。
- 2008年9月27日に中国の翟志剛(ZHAI Zhigang, ジャイ・ジーガン)が神舟7号から中国人初の宇宙遊泳を行った。
- 2013年7月9日、国際宇宙ステーションでLuca Parmitanoがイタリア人初の宇宙遊泳を行った。
- 2024年9月12日、米スペースX社の民間宇宙ミッションのポラリス ドーンが、民間初となる宇宙遊泳を行った。
船外活動の危険性について
船外活動の危険として、まず、スペースデブリとの衝突が挙げられる。スペースシャトルなどの船外活動で典型的な地球から高度300kmにおける軌道速度は、7.7km/sである。これは、通常の弾丸の速度の約10倍である。したがって、弾丸の100分の1程度の質量の物体、例えばペンキのかけらが、弾丸と同じ運動エネルギーを持つことになる。あらゆる宇宙空間での活動によって、この種の破片が発生し得るため、破片が衝突し合ってさらに破片を生むケスラーシンドロームのような問題が懸念される。
他の問題としては、宇宙船から誤って離れてしまうこと(この問題に関しては、NASAはセルフレスキュー用推進装置(SAFER)の装備で対処)や、宇宙服に穴が開く可能性、減圧症の発生などがありうる。宇宙服に穴が開いた場合は、速やかにエアロックに退避できなければ、無酸素と減圧により死にいたる危険がある(NASAのEMU宇宙服の場合、小さな穴が開いた場合でも予備の酸素パックで30分間の酸素供給が可能)。
レオーノフが初の船外活動で使用したベールクト宇宙服は内部の気圧が上がりすぎて服全体が膨張して細かな作業が出来なくなり、エアロックを通って船内に戻ることが出来なくなったため、与圧バルブを開いて空気を逃がして漸く事なきを得た。
人間の内面への影響
宇宙飛行士としての体験は、世界観・人生観・宗教観といった人間の内面にしばしば大きな影響を与えるとされるが、特に、宇宙空間を直接体感する船外活動(宇宙遊泳)は、宇宙船や宇宙ステーションといった環境内での活動と比べて、人間の内面へのインパクトが格段に大きいとの体験談が語られている。例えば、月面着陸と宇宙遊泳の双方の経験を有するジーン・サーナンは、「宇宙船の中に閉じ込められているのと、ハッチを開けて外に出るのとでは、全く質的にちがう体験だ。宇宙船の外にでたときにはじめて、自分の目の前に全宇宙があるということが実感される。宇宙という無限の空間のどまん中に自分という存在がそこに放り出されてあるという感じだ。そのときのセンセーションにくらべれば、地球軌道を離れて月に向かうとか、月の上を歩くといったことは、そう大したことではないといえるくらい、それは大きなちがいだ」と語っている[2]。
日本人宇宙飛行士として初めて船外活動(宇宙遊泳)を行った土井隆雄も、宇宙が自分たちを呼んでいるような「何とも言いようのない感じ」を体感。その感覚が何であったかを追い求める中で、アフリカの森に住んでいた人類の祖先がサバンナの草原へと降り立って活動範囲を広げていったように、人類の活動領域・視点が地球上にとどまっていた段階から、月や火星を含めた宇宙規模での活動・思考へと向かう過程にあることに伴う喜びと畏怖のまじりあった混とんとした感情であると解釈するに至っている。また、船外活動(宇宙遊泳)をこれまでに複数回行った野口聡一も、宇宙船内から見る宇宙はあくまで新幹線内から見る外の景色のようなものにとどまり、船外活動の際に「触感で感じる」のは圧倒的に違う体験であるとし、中でも地球という存在について、「ふと目の前にある地球が一個の生命体として-ある意味では自分と同じ生命体として-宇宙に存在しており、・・・そこに一対一のコミュニケーションが存在するかのような気持ちになった」と描写するとともに、太陽光の反射という物理現象だけでは説明し切れない命の「輝き」のようなものを感じたとしている[3]。
脚注
関連項目
- 宇宙服
- 宇宙ロボット - モバイルサービスシステム(カナダアーム2)のように、船外活動をロボットに行わせる場合がある。
- 宇宙遊泳累積時間記録の一覧
- 国際宇宙ステーションにおける船外活動の一覧
- ゼロ・グラビティ (映画)
- 宇宙空間での移動方法 ‐ 宇宙機の推進方法、宇宙靴(グリップシューズ、磁力靴)、宇宙飛行士推進ユニット、ワープ、サイエンスフィクションにおける宇宙旅行、鉤縄(ワイヤーガン、グラップルガン)
- 宇宙空間が人体に与える影響
- ペンギンスーツ - 宇宙空間で人体に負荷をかけて、帰還後の重力に慣れさせる服。
- エアロック、ズヴェズダ (ISS)、クエスト (ISS)
- 船外活動を行った宇宙飛行士の一覧
- 『スペースウォーカー (映画)』 - ガガーリンの船外活動を主題とした映画作品。
外部リンク
- 野口宇宙飛行士の宇宙暮らし - 野口聡一宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)滞在の模様を紹介するyoutubeチャンネルで、033から038までが船外活動とその前後の模様。054・056では宇宙服の解説・試着。
- 大西宇宙飛行士ISS長期滞在活動報告(Vol.21) - 大西卓哉宇宙飛行士が、他の宇宙飛行士の船外活動を撮影しながら、その内容を解説する動画。
- Spacewalks in HD 2020-2021 (NASA'S Johnson Space Center) - 2020年から2021年にかけてNASAの撮影した宇宙遊泳(spacewalk)の動画。2:13からは野口聡一宇宙飛行士も登場。
- NASA Spacewalk EVA 64 |Earth and the International Space Station
- 船外活動と宇宙服 -- JAXA
船外活動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/07 08:59 UTC 版)
EVAクルー実行日開始時間終了時間作業時間その他 Salyut 6 - PE-1 ユーリ・ロマネンコゲオルギー・グレチコ 1977年12月19日 21:36 23:04 1:28 オーラン-D宇宙服の試験。ドッキング装置の検査とMedusa cassetteの設置。 Salyut 6 - PE-2 ウラジーミル・コワリョーノクアレクサンドル・イワンチェンコフ 1978年7月29日 04:00 06:20 2:05 Medusa cassetteと受動式流星塵検知器の回収。放射線の線量計と新しい実験カセットの設置。 Salyut 6 - PE-3 ウラジーミル・リャホフワレリー・リューミン 1979年8月15日 14:16 15:39 1:23 KRT-10電波望遠鏡のアンテナの取り外し。実験カセットの回収。 日にちと時間は世界協定時
※この「船外活動」の解説は、「サリュート6号」の解説の一部です。
「船外活動」を含む「サリュート6号」の記事については、「サリュート6号」の概要を参照ください。
「船外活動」の例文・使い方・用例・文例
- その宇宙飛行士は船外活動を行った。
- 船外活動.
- 船外活動用の宇宙服.
- この任務で,野口飛行士は船外活動を行う予定だ。
- 野口飛行士が予定されていたすべての船外活動を完了
- 宇宙飛行士の野口聡(そう)一(いち)さんは,米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル・ディスカバリー搭乗5日目の7月30日,初めての船外活動を行った。
- 40歳の野口さんは船外活動をする2人目の日本人宇宙飛行士となった。
- 野口さんは船外活動を先導し,スティーブン・ロビンソン飛行士と協力して,ディスカバリーの貨物室でシャトルの耐熱タイルの補修技術を試した。
- 1回目の船外活動中,飛行士たちは他にもいくつかの任務を行った。
- 船外活動は約6時間半続いた。
- 8月1日,野口さんはロビンソンさんとともに2回目の船外活動を行い,ISSの故障した姿勢制御ジャイロを新しいものと交換した。
- 8月3日の3回目の船外活動には,あらかじめ予定されていた任務に新しい任務が追加された。
- 中国初の船外活動が成功
- 68時間の飛行中,中国の宇宙ミッションとして初めて船外活動が行われた。
- 宇宙飛行士は5回の船外活動を行い,製造から19年経った望遠鏡を修理した。
- 1997年にはスペースシャトル「コロンビア号」に搭乗し,日本人として初めて船外活動を行った。
- さらに,機会があれば,船外活動も行う予定だ。
- 船長として彼は,補給船の打ち上げ延期や,修理のための緊急船外活動など相次ぐ試練に見舞われた。
- 星出さんとNASAや欧州宇宙機関の宇宙飛行士3人は,模擬船外活動など海中でさまざまな活動を行った。
- そのサイトで,大西さんは船外活動から宇宙食までさまざまな話題について書いている。
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