環境基準
環境基本法第16条は,「大気汚染,水質汚濁,土壌汚染及び騒音に係る環境上の条件について,それぞれ人の健康を保護し,及び生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準」を環境基準としています。環境基準は行政上の目標値であり,直接に工場等を規制するための規制基準とは異なります。環境基準 (かんきょうきじゅん)
環境基準
【英】: environmental quality standards
1967 年(昭和 42 年)8 月に制定された公害対策基本法によると、環境基準とは、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染および騒音にかかわる環境上の条件について、それぞれ人の健康を保護し、および生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準としている。 現在までにわが国で設定されている環境基準は、大気汚染、水質汚濁、騒音、航空機騒音、並びに新幹線鉄道騒音にかかわる環境基準などがある。大気汚染にかかわる環境基準としては二酸化硫黄(硫黄酸化物)、二酸化窒素(窒素酸化物)、一酸化炭素、浮遊粒子状物質および光化学オキシダントがある。 1973 年 5 月に閣議決定された二酸化硫黄の環境基準は 1 時間値の 1 日平均が 0.04ppm 以下で、かつ、1 時間値が 0.1ppm 以下となっており、この基準の維持、または原則として 5 年以内に達成することと規定されている。また、水質汚濁にかかわる環境基準としては、人の健康の保護にかかわるものと、生活環境の保全に関するものとに分けてそれぞれ設定されている。人の健康保護に関するものとしてはカドミウム、シアンなどの 9 項目について、全公共水域に一律に適用するものとして設定されている。一方、生活環境の保全に関するものとしては、公共水域の類型ごとに水素イオン濃度や、BOD(生物化学的酸素要求量)など 5 項目の基準値が設定されている。このような環境基準は、排出などの規制や土地利用、施設設置の規制など、個々の公害対策の実施に当たって行政上の目標となる性格のものである。 |

環境基準(かんきょうきじゅん)
環境基本法において政府が定めることとされている人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい環境の質の基準。公害対策基本法に定められた、各用途別の大気質、水質などの共用される限界を汚染物質ごとに示した数値基準。
環境基準
環境基準
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/08 06:06 UTC 版)
環境基準(かんきょうきじゅん)は、日本の環境行政において、人の健康の保護及び生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準として、法令に基づき定められるものである。
概要
環境基準は、維持されることが望ましい基準として定められる行政上の政策目標である。その基本は、大気汚染、水質汚濁(地下水を含む)、土壌汚染、騒音に係る環境上の条件として、環境基本法第16条[1]に基づき定められているものである。環境基本法に基づくもの以外には、ダイオキシン類の環境中濃度の基準が、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき設定されている。
環境基準は、「維持されることが望ましい基準」として以下の性質を有する。
- 個別の発生源を対象に規制を行う「排出基準」とは別のものであり、「環境基準」で規制することはしない。
- 一方、許容限度あるいは被害の受忍限度(この基準まで環境負荷を大きくしても良いという限度)といった消極的な意味での限度と解されてはならないものである。
社会に公害をもたらすものであっても、すべてに対して環境基準が設定されているわけではない。 悪臭などは環境基準が設定されていないが、その場合でも国の法律や地方自治体の条例による制限が設定されている場合があり、最終的にはそうした全てを広範に運用することで解決が図られる[2][3][4]。
環境基準の設定
- 大気汚染に係る環境基準
- 水質の人の健康の保護に関する環境基準[6]
- カドミウム、全シアン、鉛、六価クロム、砒素、総水銀、アルキル水銀、PCB、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレン、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素、ほう素、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類
- 水質(河川)の生活環境の保全に関する環境基準
- 水質(湖沼)の生活環境の保全に関する環境基準
- 水質(海域)の生活環境の保全に関する環境基準
- 水素イオン濃度 (pH) 、化学的酸素要求量 (COD) 、溶存酸素量 (DO) 、大腸菌群数、全亜鉛、全窒素、全燐、n-ヘキサン抽出物質(油分等)
- カドミウム、全シアン、鉛、六価クロム、砒素、総水銀、アルキル水銀、PCB、ジクロロメタン、四塩化炭素、塩化ビニルモノマー、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレン、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素、ほう素、1,4-ジオキサン
- カドミウム、全シアン、有機燐、鉛、六価クロム、砒素、総水銀、アルキル水銀、PCB、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレン、ふっ素、ほう素、ダイオキシン類、銅(農用地に限る)
- 騒音に係る環境基準
- ダイオキシン類(以下の環境媒質における濃度の基準が、ダイオキシン類対策特別措置法により設定されている)
経過
- 1967年(昭和42年)8月3日 公害対策基本法施行 第9条において環境基準の設定が定められた。
- 1969年(昭和44年)2月12日 「いおう酸化物に係る環境基準について」(閣議決定) 初の環境基準が制定される。
- 1970年(昭和45年)2月20日 「一酸化炭素に係る環境基準について」(閣議決定)
- 1970年(昭和45年)4月21日 「水質汚濁に係る環境基準」(閣議決定)
- 1972年(昭和47年)1月11日 「浮遊粒子状物質に係る環境基準について」(環境庁告示)
- 1973年(昭和48年)6月12日 「大気汚染に係る環境基準について」(環境庁告示)
- 1973年(昭和48年)12月27日 「航空機騒音に係る環境基準について」(環境庁告示)
- 1975年(昭和50年)7月29日 「新幹線鉄道騒音に係る環境基準について」(環境庁告示)
- 1991年(平成3年)8月23日 「土壌の汚染に係る環境基準について」(環境庁告示)
- 1997年(平成9年)2月4日 「ベンゼン等による大気の汚染に係る環境基準について」(環境庁告示)
- 1997年(平成9年)3月13日 「地下水の水質汚濁に係る環境基準について」(環境庁告示)
- 1998年(平成10年)9月30日 「騒音に係る環境基準について」(環境庁告示)
- 1999年(平成11年)12月27日 「ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む)及び土壌の汚染に係る環境基準」(環境庁告示)
- 2009年(平成21年)9月9日 「微小粒子状物質による大気の汚染に係る環境基準について」(環境省告示)
関連項目
脚注
- ^ 1993年11月までは、環境基本法の前身となる公害対策基本法第9条に基づいて定められていた。
- ^ 各地域の悪臭に係る環境基準や規制基準が知りたい。|徳島県庁コールセンター すだちくんコール
- ^ 悪臭防止法の概要 | 大気環境・自動車対策 | 環境省
- ^ 悪臭の規制について - 埼玉県
- ^ 非メタン炭化水素 (NMHC) については、環境基準ではなく、「大気汚染に係る指針」(光化学オキシダントの生成防止のための大気中炭化水素濃度の指針)が設定されている。
- ^ 水質における人の健康の保護に関する環境基準については、その性質上、水量など水域の条件の如何を問わず、常に維持されるべきものであり、また設定後直ちに達成し、維持すべきものであるとされている。水質汚濁に係る環境基準の取扱いについて
外部リンク
- 環境基準について - 環境省
環境基準
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 16:39 UTC 版)
環境基本法で定める行政上の政策目標。最低限度ではない積極的な目標として、健康項目は全国一律、生活環境項目は河川、湖沼、海域について、その水域類型ごとに設定されている。環境基準は「維持されることが望ましい」水準であって、達成すべく行政・政策を動機づけるものとして定められている。仮に達成できなくても罰則があるわけではなく、主権者たる国民の要求がなければ放置されかねない性質のものである。従って、維持するためには行政を動機づける、意思の表明が必要となる。
※この「環境基準」の解説は、「水質汚濁」の解説の一部です。
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