じどうしゃ‐アセスメント【自動車アセスメント】
自動車アセスメント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/25 14:00 UTC 版)
自動車アセスメント(じどうしゃアセスメント)とは、自動車の安全性能評価のこと。
概要
実車を使用した衝突試験など、実際のデータを計測することにより個々の車種別にその衝突安全性を評価する。ユーザーが安全性の高い自動車を選択できるよう情報を提供する。また、自動車関連メーカーにはより安全な自動車の開発を促す。そのために信頼できる安全性能評価を行い、それを公開するものである。通常は新車が評価対象となっている。
行政サービスとして行われているもの、自動車メーカー関連団体や自動車保険の団体が行うもの、ユーザー団体が行うものなどがある。
日本では行政サービスとして国が、国土交通省管轄で行っているものがある。安全のためには、自動車自体と同時に道路の側の安全の検証も必要となる。この「自動車アセスメント」は自動車自体の検証となる。
世界
米国
米国では1979年からNew Car Assessment Programme(NCAP)として実施された。
実施団体には、米国運輸省の道路交通安全局(NHTSA)が行っており、一般には、政府5つ星評価(government 5-star ratings)として知られている。星マーク1個から5個で評価され、5個が最高点となる。車両購入時の意思決定に正確な安全性データを提供することを目的とする。前方衝突安全性のほか、1996年(1997年モデルイヤー)から側面衝突安全性、2000年(2001年モデルイヤー)からは転倒時安全性も加えられた。
その他、保険業界の非営利団体である米国道路安全保険協会(IIHS)は、自動車の衝突事故における人、車両、道路環境の3要素すべてを視野に入れた事故防止策、および事故発生前、事故発生時、事故発生後のそれぞれの損傷の軽減に焦点を置いた調査研究を行っている。乗用車の前面、背面、側面衝突試験などが行われ、その結果は公開されて専門家や車両ユーザーに利用されている。。
NHTSAとIIHSの評価が異なる場合もあり、購入者は双方の情報を比較することができる。
豪州
オーストラリアでは、オーストラレイシアン自動車アセスメント(Australasian New Car Assessment Program、ANCAP)がある。
1924年設立のオーストラリア自動車連盟(Australian Automobile Association、AAA)が、オーストラリアとニュージーランドの自動車クラブ、同国連邦を構成する各州の道路安全局(ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、南オーストラリア州、クイーンズランド州、タスマニア州および西オーストラリア州)、並びにニュージーランド政府および国際自動車連盟(FIA)の下部機関であるFIAファウンデーションの支援を得て実施しているものである。
欧州
欧州で、各国の交通行政組織、自動車クラブ、保険団体が合同で行い、結果が公表される。実事故の調査はSNRA(スウェーデン国有道路管理局)およびSARAC(Safety Rating Advisory Committee:欧州共同体(EC)資金援助団体:実事故分析に基づく安全評価手法に関する国際会議)により行われている。
アジア
中国自動車技術研究センター(CATARC)、韓国・建設交通部(KMOCT)でも事業が開始され、また、インド国立自動車試験・研究開発基盤プロジェクト(NATRIP)などでも検討されている。
日本
日本では、「自動車アセスメント」は国土交通省が実施している。運輸省主導で1995年から開始され、自動車事故対策センターが評価を行った。のちに実施機関は独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)に組み替えられ、車種別安全性評価が行われている。
前面衝突安全性能、ブレーキ性能、側面衝突試験から始まり、2000年度からはオフセット前面衝突安全性能、2003年度からは歩行者頭部保護性能試験が、2014年度には予防安全アセスメントがそれぞれ追加された。2024年度にはオフセット前面衝突試験のテスト内容が改められ[注釈 1]、新オフセット前面衝突試験に変更されるとともに、交差点内の対歩行者・車両用の衝突被害軽減ブレーキのテストも追加されている。
実施主体のNASVAは、車種別の「自動車アセスメント」および「予防安全アセスメント」、チャイルドシート別に「チャイルドシートアセスメント」を公開している。
世界NCAP会議
NASVAは、2006年10月31日から11月2日まで開催された、世界の自動車アセスメント(NCAP)機関が協力強化を図るための第4回世界NCAP会議をANCAPと共催した。
比較
- 衝突試験結果は、重量が同程度の車同士に限り比較が可能である[1]。
- NCAPによる車種別の衝突安全性評価は、規定された試験条件下における実車衝突試験結果の比較。
- 豪州や欧州では事故データによる車種別の衝突安全性評価が行われ、NCAPとの関係も検討されはじめている。同等な条件で車種別の衝突安全性を示すかが課題である。
- 日本自動車研究所ではJNCAP評価結果との対比をし、JNCAPの評価が実際の衝突安全性を反映しているかどうかの検証を行っている。
有効性
衝突安全性能を購入する際の指針として考えたとき、これらのデータがユーザーのクルマ選択に活かされているかとなると疑問符が付く。自動車アセスメントは、クルマ選択のアイテムとして認知度が十分高いとは言えない。
シンポジウム後のパネルディスカッションでも同様の意見が聞かれ、一般ユーザーに向けた親しみやすい形でのデータ開示方法が今後の課題である。また、自動車アセスメントが一定の成果を上げていくなかで、今後の課題とされているものもある。
車対車衝突の際は、安全性評価の高いクルマ同士であっても重量差があれば重いクルマより軽いクルマの方が被害が大きくなる。2009年4月にIIHSが発表したミッドサイズセダン対コンパクトカー64km/hオフセット前面衝突試験(相対速度:128km/h)では、ミッドサイズセダン側のダメージは許容範囲内に収まった一方で、コンパクトカー側は重大なダメージを負い、その安全性の低さが鋭く指摘された[2]。
交通事故の死傷者ゼロを目指すためには、クルマの安全性のみを追求しても限界がある。そのためには、自動車アセスメントだけでなく、クルマの設計も包括した交通システム全体の再整備が検討課題である。
自動車専門家の中にも批判的な意見もある。
脚注
注釈
- ^ 従来のオフセット前面衝突安全性能試験から、台車とテスト車両の正面衝突テストに変更されるとともに、実験速度が台車・テスト車両と共に50kmとされた。
出典
外部リンク
自動車アセスメント
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「自動車アセスメント (日本)」の記事における「自動車アセスメント」の解説
乗員保護性能評価(100点満点)、歩行者保護性能評価(100点満点)及びシートベルトリマインダー評価(8点満点)の合計208点満点で5段階評価を行う。 乗員保護性能評価 フルラップ前面衝突試験、オフセット前面衝突試験、側面衝突試験、後面衝突頚部保護性能試験を行う。 歩行者保護性能評価 歩行者頭部保護性能試験、歩行者脚部保護性能試験を行う。 シートベルトリマインダー評価 乗員がシートベルトを装着していない時に、運転者等に知らせる装置(パッセンジャーシートベルトリマインダー:PSBR)の装備状況を確認し、装置の作動要件の確認を行う。
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