日本国憲法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/03 08:25 UTC 版)
憲法典に述べられていない問題
日本の憲法の主たる法源は、日本国憲法(形式的意味の憲法)である。ここでは、日本国憲法には述べられていない憲法上の問題について述べる。
領土
ゲオルク・イェリネックのいう国家の三要素のうち、国民(Staatsvolk)・国家権力(Staatsgewalt)に関して日本国憲法は論じているが、国家領土(Staatsgebiet)に関しては、日本国憲法は沈黙している(これは比較憲法的には異例に属する)。日本国の領土を決定する法規範は、主として条約にある。
なお、大日本帝国憲法も、国家領土については沈黙していた。このため、帝国憲法施行後に獲得された領土については、憲法の場所的適用範囲が問題となった。これについては、肯定説・否定説・折衷説が対立した。
国家の自己表現
いわゆる国家の自己表現(Selbstdarstellung des Staates)について、日本国憲法は規定していないが、比較憲法的に珍しいケースである。主な法源として、次のようなものがある。
- 日本の国号、政体に関する規定(例 日本国は自由と民主主義に基く民主制国家である、など)。
- 国旗国歌法:日本国の国旗は日章旗、国歌は君が代であることを規定している。
- 元号法:元号は政令で定めるべきこと、元号は皇位の継承があった場合に限り改めること(一世一元の制)を規定している。
- 国民の祝日に関する法律
- 首都(都)に関しては、1950年(昭和25年)の首都建設法がある(ただし、1956年に廃止)。ここにおいて首都を東京都と定めていた(詳細は日本の首都を参照)。
憲法の解釈
日本国憲法の解釈は、それぞれの機関が権限の範囲内で行なっている。
法律制定にあたっての憲法解釈は、国会が行うとされている。
内閣は、法律を執行するに当たって必要とされる限りにおいて憲法を解釈するとされる。
ただし、憲法81条によって、裁判所の違憲審査権を明記しており、そのため、国会・内閣・司法による憲法の解釈の中でも、最高裁判所の行う解釈が最も強い効力を持つとされる[132]。
GHQ民政局草案との比較
GHQ民政局にて起草された憲法草案は、1946年2月10日の夜にマッカーサーに提出され、GHQ民政局内での対立を理由に、基本的人権を制限あるいは廃棄する内容での憲法改正を禁止する規定を削除することを指示し、その指示の上で、この草案を基本的に承認した。その承認の後、最終的な調整ののち、GHQ民政局草案は2月12日に完成した。改めてマッカーサーの承認を得て、2月13日に日本政府に提示され、2月22日の閣議において、日本政府はそのGHQ民政局草案の受け入れを決定した[133]。
そして、連合国最高司令官総司令部(GHQ)の民政局の主導により起草された日本国憲法の草案と実際に施行された憲法との条文の比較は(解釈にもよるが)、以下の通りである[134]。
- 民政局草案では前文や条文に「日本国人民」「人民」と称しているが、現行憲法では「国民」と称され、人民という言葉は使われていない。
- 第二十三条に「家族ハ人類社会ノ基底ニシテ」とあるが、現行憲法に人類社会の基底を示す条文は存在しない。
- 第二十四条に「有ラユル生活範囲ニ於テ法律ハ社会的福祉、自由、正義及民主主義ノ向上発展ノ為ニ立案セラルヘシ」とあるが、このような条文は現行憲法に存在しない。
- 「第二十八条 土地及一切ノ天然資源ノ究極的所有権ハ人民ノ集団的代表者トシテノ国家ニ帰属ス 国家ハ土地又ハ其ノ他ノ天然資源ヲ其ノ保存、開発、利用又ハ管理ヲ確保又ハ改善スル為ニ公正ナル補償ヲ払ヒテ収用スルコトヲ得」と定められている民政局草案だが、現行憲法に土地の国有に関する条文は存在しない。
- 第三十五条に「過大ナル保釈金ヲ要求スヘカラス」とある民政局草案だが、現行憲法に保釈金に関する条文は存在しない。
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