こう‐ふく〔カウ‐〕【降伏/降服】
ごう‐ぶく〔ガウ‐〕【▽降伏】
【降伏】(こうふく)
Surrender.
戦闘員、およびその集団である部隊が紛争当事者としての立場を放棄する事。
または、国家そのものが国家主権の一部または全部を放棄し、国民を保護する義務を放棄する事。
法律上の契約の一種であり、常に敵国の同意を必要とする点で敵前逃亡と異なる。
このため、奇襲などを目的とした虚偽の降伏は戦争犯罪とみなされる。
また、虚偽の降伏を行った国家は外交上の信用を失い、再び降伏を試みても拒絶されるリスクを負う。
現代ではジュネーブ条約・ハーグ陸戦条約などの戦時国際法で戦闘員に降伏する権利が保証されている。
従って、民兵・テロリスト・傭兵(民間軍事会社に勤務し、会社の業務として紛争地帯で戦闘行為に従事する従業員を含む)などは降伏を申し出ても認められない場合がある。
それらは非合法戦闘員であり、そもそも紛争に関与する権利を認められないからである。
そういう人物であっても投降する事は可能だが、それによって何らかの免責が保証される事はない。
文民統制による保護を受けられないため、現地の法に従って殺人・器物損壊などの罪を問われる。
一般的には敵軍に身を委ねて捕虜となる事を意味するが、定義上は虜囚を必須とするわけではない。
とはいえ、武装した人間が銃を構えたまま降伏する事は常識的に考えて認められない。
従って、降伏する人間は武装していてはならないし、いつでも武装できるような状態であってもならない。
よって普通、降伏する際は敵軍に身柄を預け、再武装する事が不可能な環境に隔離される必要がある。
関連:無防備都市宣言 玉砕
降伏の実態
一般に、戦闘継続と撤退のいずれも不可能と判断した指揮官は降伏を決断すべきだとされる。
何をもってそう判断するかは個々の事例によるが、原則としては以下のような場合に降伏すべきとされる。
降伏の意図を示すため、白旗・信号旗・ジェスチャー・口頭などでハッキリと意志を伝達する。
降伏を受けた側は、付帯条件などの要求を行った上で武装解除などの確認を行う。
この時、「虚偽の降伏」であると判断された場合は戦闘を再開して良いものとされる。
問題なく降伏を承認された者は敵国側に後送され、捕虜収容所などの紛争に関与できない環境に隔離される。
この隔離は基本的に紛争の終結まで続くが、外交交渉の一環として戦中に返還される事もある。
降伏した人間に対し、正当な理由なく危害を加えるのは戦争犯罪である。
よって、師団単位などの大規模な降伏が虐殺などの悲劇に繋がる事はほとんどない。
しかし、小規模な部隊、特に数人以下での降伏では惨劇が生じやすいのも事実である。
降伏のために姿を見せた者が誤って射殺され、そのまま皆殺しに至る、などという事例は珍しくない。
また、ヒューミントにおける拷問や、捕虜収容所での無意味な虐待などといった事態もしばしば発生する。
そうした悲劇を防ぐのは憲兵の職務であるが、実際の紛争では完全な抑止はできていない。
特に最前線の強ストレス環境下や、半ば密室と化した捕虜収容所では監視の目が行き届かない事が多い。
降伏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/15 03:53 UTC 版)
降伏(こうふく)とは、戦争において軍隊、あるいは個々の戦闘員が敵に対する戦闘行為をやめて、その支配下にある地点・兵員・戦闘手段を敵の権力内に置くこと。降服、投降ともいう。広義には抵抗を止めて相手に服従すること。
概要
軍人、その他の戦闘員が指揮官の命令、或いは個々の判断によって戦闘を中止し、捕虜となることである。白旗を掲げたり(白旗の掲示そのものは降伏を表すのではなく、軍使の派遣を要請している意思表示である)、何も持たずに両手を開いて挙げたりすることで投降の意思を示す。海上では白旗に加え、投降側の艦船は自らが降参する意思を持つことを具体的に示さねばならず[1]例えば砲撃・雷撃の停止や機関停止、砲口の向きを外す、戦闘旗を降ろすなど抗戦の意思を持たず武装解除を受ける用意があることを示すことが必要である。投降者は意志に反して傷つくのを避ける事ができ、相手は戦闘を回避できる。当事者双方にとって意味がある事であるので軍使による降伏交渉や降伏勧告が良く行われる。
兵士が個人で降伏する場合、戦場の混乱と戦闘中の激情のもとでその場で殺害されてしまう事例がしばしばあるが、これは戦時国際法(ハーグ陸戦条約23条ハ号)で禁止されており、違反行為は締約国の軍法あるいは国際戦犯法廷で裁かれる。組織的降伏においても、助命・安全その他一定の条件等を約して降伏させた者をそれに反し殺傷することは、背信行為として禁止事項に該当(ハーグ陸戦条約23条ロ号)し、また、助命しないことを宣することも禁止事項となる(ハーグ陸戦条約23条ニ号)ので、実質、助命を条件に降伏してきた兵士・部隊は殺害されることがないよう定められている。降伏の申出は一般に白旗を掲示した軍使によるが(ハーグ陸戦条約32条)、軍使を計略の手段として利用している場合は軍使の不可侵権は失われる(34条)。
降伏の条件や捕虜の権利はジュネーヴ条約やハーグ陸戦条約によって規定されている。
降伏する側が勝利者に対して、約束が確実に果たされるときのみに降伏を受け入れる場合、条件付降伏と呼ばれる。しかし、勝利者が国際法に定められたこと以外に何の約束もしないときや、通告した条件以外での降伏を認めず交渉拒否を宣言する場合[2]、これを受入れることも一般的に無条件降伏と呼ばれる。
国家が戦争および軍事衝突を終結させるために自国の軍を降伏させることがある。この場合、紛争国間の合意や片方の一方的な宣言によりなされるものであり、締約により条約的性格を持つ(降伏条約)[2]。戦時国際法の状況下においては、国際法に合意された諸条約において国家による降伏行為の当事適格性については不分明であるが、慣例的にハーグ陸戦条約付属書36条以降にもとづき休戦協定を結び、のち平和条約の締結をすることになるか、第三款「占領」による戦闘終結のいずれかとなる。この場合、被占領や降伏の帰結として軍を保有する政体が消滅したり(デベラチオ(戦亡)ナチスドイツの後継フレンスブルク政府やイラク共和国フセイン政権など)、亡命政権・抵抗政権にとって替わられたり(南ベトナム共和国など)、干渉戦争(アフガニスタン紛争など)や内戦終結時の終結宣言など、例外も多く一般的なプロトコルがあるわけではない。休戦協定から平和条約に至るまでの複数の条約を降伏条約群と呼ぶことがある。
占領時の戦闘を避けるために国家や軍が都市に無防備都市宣言を出すことがある。これは組織的降伏の一種でありハーグ陸戦条約付属書25条における無防備都市を具体化したジュネーヴ条約追加第1議定書によるもので、戦争中に相手国に対して宣言するものである。平和時に地方自治体が戦争に巻き込まれない事を条例で謳おうとする市民運動については無防備都市宣言#無防備地域宣言運動を参照。
脚注
関連項目
降伏
「降伏」の例文・使い方・用例・文例
- 彼らは敵に降伏した
- 無条件降伏
- 白旗を掲げる,降伏する
- 兵士たちは決して降伏しないように言われた。
- 彼は自発的に降伏した。
- 独裁者が部族に対しその降伏条件に無理矢理同意させた。
- 敵は我々に降伏しなかった。
- 敵に降伏する。
- 守備隊は降伏を強いられた。
- 降伏条件は過酷だった。
- 降伏に変わるものは戦いのみ。
- 降伏するより死んだほうがましだ。
- 降伏するくらいなら死んだほうが増しだ。
- 降伏しないとすれば死ぬしかない。
- 我々の軍隊に完全に包囲されてしまって敵はとうとう降伏した。
- 我々には死か降伏かのどちらかしかない。
- その兵士たちは勇敢に戦ったが、結局降伏しなければならなかった。
- 死か降伏か二つに一つ.
- 死か降伏か二つに一つだ.
- 降伏に代わるものは死のみ.
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